シックビルの調査は、1つの数値だけで「原因」や「安全」を決めないことが出発点です。個別VOCの指針値、TVOC暫定目標値、建築物衛生法の管理基準、建築基準法の建材・換気規制は、それぞれ役割が違います。
この第1回は、改修後の測定値と設備記録から次の行動を選ぶ独自5択5問です。濃度の単位、換気による減衰、法定測定と原因調査の違いまで確認しましょう。
制度・資料確認日:2026年8月8日。厚生労働省の2025年1月17日時点の室内濃度指針値、建築物環境衛生管理基準、国土交通省のシックハウス対策、石綿総合情報ポータルを確認しました。制度と調査手順は「シックビル対策の実務|VOC指針値・ホルムアルデヒド・石綿」で解説し、このページは測定値から判断する演習に特化しています。
解く前の3分整理|4つの物差しを分ける
| 物差し | 役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| 個別指針値 | 物質ごとの濃度目安 | 指針値内でも全原因を否定しない |
| TVOC | VOC総量の目安 | 個別物質とは独立に評価 |
| 衛生管理基準 | 特定建築物等の維持管理 | 対象・測定条件を確認 |
| 建築基準法 | 建材と換気設備の規制 | F☆☆☆☆でもゼロ放散ではない |
測定結果には、採取時刻、室温・湿度、換気運転、在室人数、改修・家具・清掃剤の変更履歴を添えます。濃度だけでは、発生源と曝露(ばくろ)の関係を再現できないからです。
第1問|TVOCが低くても個別VOCは確認する
改修後の室内で、ホルムアルデヒド80μg/m3、エチルベンゼン420μg/m3、TVOC360μg/m3だった。2025年1月17日時点の指針値等による評価として、最も適当なものはどれか。
- TVOCが400μg/m3以下なので、すべての個別VOCも指針値以下である。
- ホルムアルデヒドだけが100μg/m3を超えている。
- エチルベンゼンが指針値370μg/m3を超えており、TVOCが暫定目標値以下でも個別に調査する。
- エチルベンゼンの現行指針値は3,800μg/m3なので問題はない。
- TVOCは石綿繊維を含む総粉じん濃度である。
第2問|換気3時間後の理論濃度を計算する
容積180m3の室内濃度が900μg/m3、外気濃度が100μg/m3だった。発生源なし・完全混合・外気量60m3/h一定と仮定する。3時間後の理論濃度に最も近いものはどれか。
- 100μg/m3
- 294μg/m3
- 394μg/m3
- 600μg/m3
- 800μg/m3
第3問|ホルムアルデヒドの法定測定時期
特定建築物で大規模模様替えを終え、2026年4月20日に使用を開始した。建築物環境衛生管理基準上のホルムアルデヒド測定として、最も適当なものはどれか。
- 他の空気環境6項目と同じく、2か月以内ごとに測る。
- 使用開始前だけ測ればよい。
- 使用開始後、直近の2026年6月1日から9月30日までの間に1回測る。
- F☆☆☆☆建材だけなら、法定測定の対象条件を確認しなくてよい。
- 冬の最も濃度が低い日に毎年1回測る。
第4問|F☆☆☆☆と24時間換気の限界
改修担当者が「内装材はすべてF☆☆☆☆だから、家具搬入後に刺激臭が出ても換気設備を止めて問題ない」と説明した。最も適当な評価はどれか。
- 正しい。F☆☆☆☆は全化学物質の放散ゼロを保証する。
- 正しい。F☆☆☆☆なら機械換気設備は不要になる。
- 誤り。F☆☆☆☆は告示対象建材を面積制限なしで使える区分だが、ゼロ放散や家具・接着剤等の安全を一括保証しない。
- 誤り。星が少ないほどホルムアルデヒド放散量が少ない。
- 正しい。刺激臭は必ず心理的要因だけで起こる。
第5問|改修現場ではVOCと石綿を分ける
税込80万円の設備改修で、古い天井材を開口する計画がある。VOC・石綿リスクの扱いとして、最も適当なものはどれか。
- 100万円未満なので、石綿の事前調査は不要である。
- 臭いがなければ、石綿もVOCも存在しない。
- 設備担当者が材料を削り、粉を目視して石綿含有を判定する。
- 石綿はVOCではなく繊維の飛散リスクであり、報告対象規模と事前調査の要否を分け、改修部分を工事前に調査する。
- 工事を終えてから、図面だけで事前調査を行う。
採点|数値と制度をつないで判断できるか
| 正解数 | 判定 | 復習ポイント |
|---|---|---|
| 5問 | 現場判断は安定 | 測定条件まで説明する |
| 4問 | 1制度を再確認 | 総量と個別値を分ける |
| 2~3問 | 物差しが混在 | 基準の目的から整理 |
| 0~1問 | 親記事から復習 | 発生源・換気・測定の順 |
正解番号だけでなく、「どの制度の値か」「何を測っていないか」「異常時に誰へつなぐか」まで言えれば合格です。呼吸困難、意識障害、薬品漏えいなど緊急性がある場合は、通常の測定計画より退避・救護を優先します。
間違えた分野の戻り先
- 指針値・TVOC・石綿:シックビル対策の実務
- CO2・CO・粉じんの初動:室内空気汚染の見分け方
- 空気7項目と法定測定:建築物環境衛生管理基準
- 換気量と設備診断:換気量計算と換気方式
追加演習
個別VOC・TVOC・オゾン等は「化学物質とシックビル症候群 ミニテスト第2回」、建材・石綿・発生源の横断問題は「化学物質とシックビル症候群 ミニテスト第3回」で確認できます。第1回で物差しの役割を固めてから進んでください。
公式の確認先
- 厚生労働省「シックハウス対策」
- 厚生労働省「室内濃度指針値一覧」(2025年1月17日時点)
- 厚生労働省「室内濃度指針値についてのQ&A」
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準」
- 国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策」
- 石綿総合情報ポータル「改修・リフォーム業者のみなさまへ」
まとめ|測定値は原因の断定ではなく、次の調査を選ぶ材料
TVOCが暫定目標値以下でも、エチルベンゼンなど個別物質の指針値超過は起こり得ます。換気計算は改善の見通しを作れますが、継続発生と不完全混合を含む実室では、同条件の再測定が必要です。
F☆☆☆☆、24時間換気、ホルムアルデヒドの法定測定、石綿の事前調査は代用関係ではありません。人・場所・時間、変更履歴、設備運転、測定条件を一つの記録へまとめ、発生源対策と換気の効果を確かめましょう。
制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月8日
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