建築物環境衛生管理技術者 給水及び排水の管理

【ビル管理士・給排水】給水設備の保守管理(クロスコネクション防止・ウォーターハンマー・赤水対策)

給水トラブル3大原因 ― 現場で起きる水の事故

クロスコネクション

上水と雑用水の
誤接続
飲料水汚染の
最大リスク

ウォーターハンマー

急な弁閉止で
衝撃圧発生
配管破損・騒音
の原因

赤水

鋼管内面の
さび溶出
朝一番の水に
多い

結論:給水設備の保守管理は「安全な水を蛇口まで守り抜く仕事」

結論から言います。給水設備の保守管理とは、水道本管から届いた安全な水を、品質を落とさずに蛇口まで届けるための維持活動です。

いくら水道局が送り出す水がきれいでも、建物内の配管や機器に問題があれば、蛇口から出る水は汚染されたり、異常が起きたりします。たとえば、配管の接続ミスで汚水が混入する「クロスコネクション」や、蛇口を閉めた瞬間にドンッと音がする「ウォーターハンマー」は、保守管理が不十分だと起きる代表的なトラブルです。

ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)試験では、クロスコネクションの定義と防止策ウォーターハンマーの原因と対策が超頻出です。この記事では、給水設備で起きる主要なトラブルとその防止策を、現場のリアルなイメージとともに解説します。

クロスコネクション(★超頻出★)

クロスコネクションとは?

飲料水の給水管と、飲料水以外の配管(雑用水・排水・冷温水など)が直接接続されている状態のことです。日本語では「誤接合」とも呼ばれます。

これがなぜ危険かというと、水圧の変動によって飲料水の配管に汚水が逆流する可能性があるからです。たとえば、給水管と雑用水管がバルブ1つで接続されていたとします。通常はバルブを閉めているので問題ないように見えますが、バルブが故障したり、誰かが誤って開けたりすると、雑用水(トイレの洗浄水や冷却水など)が飲料水に混入してしまいます。

絶対に覚えてください:クロスコネクションはバルブや逆止弁を挟んでいても違法です。飲料水管と他の配管が物理的に接続されている時点でアウトです。「バルブを閉めているから大丈夫」は通用しません。

クロスコネクションが起きやすいケース

実際の現場で遭遇しやすいパターンを紹介します。

  • 冷却水の補給:空調用冷却水の補給管を飲料水管に直結してしまうケース。冷却水には防食剤や殺藻剤が添加されていることがあり、非常に危険
  • 雑用水との誤接合:ビルの改修工事時に、雑用水管(中水)と給水管を誤って接続してしまうケース
  • 消火設備との接続:消火水槽の補給管を給水管に直結。消火水槽の水は長期間滞留しており水質が劣化している
  • ボイラー給水:ボイラーの補給水管を給水管に直結。ボイラー水には薬品が添加されている

防止策

クロスコネクションの防止は「物理的に接続しないこと」が唯一の正解です。

  • 吐水口空間の確保:補給水は、必ず吐水口空間(エアギャップ)を介して間接的に供給する。配管同士を直接つながない
  • 配管の色分け:飲料水管と雑用水管は異なる色で識別する。一般的に、飲料水管は青色、雑用水管は茶色
  • 定期的な配管調査:特にビルの改修工事後に、誤接合がないか確認する
試験のポイント:「クロスコネクションはバルブを設けても認められない」「吐水口空間(エアギャップ)で間接的に給水する」が最頻出です。

ウォーターハンマー(水撃作用)

ウォーターハンマーとは?

配管内の水の流れが急に止まったとき、衝撃波が発生して配管がガンガンと叩かれるような音がする現象です。日本語では「水撃作用」と呼びます。

たとえば、蛇口を勢いよく閉めた瞬間に「ドンッ!」「ガンッ!」と壁の中から音がした経験はありませんか?あれがウォーターハンマーです。配管内を流れていた水が急停止すると、行き場を失った水の運動エネルギーが衝撃波に変わり、配管を内側から叩くのです。

軽い症状なら音がするだけですが、ひどい場合は配管の破損・接続部のゆるみ・漏水を引き起こします。長期間放置すると配管の寿命を大幅に縮めてしまいます。

ウォーターハンマーの原因

原因 具体例
急閉止 レバー式水栓を一気に閉める、電磁弁の急閉
過大な水圧 給水圧力が高すぎる場合、流速が速くなり衝撃も大きくなる
長い直管 配管が長く直線的だと衝撃波が減衰しにくい
ポンプの急停止 停電によるポンプの急停止

防止策

対策 内容
エアチャンバー 配管に空気室を設け、衝撃を空気のクッションで吸収する
水撃防止器 ショックアブソーバー(ダイヤフラムやベローズ式)で衝撃を吸収
減圧弁の設置 過大な給水圧力を適正値まで下げる
管内流速の制限 流速を2.0 m/s以下にする(配管口径を大きくするなど)
ゆっくり閉まる弁 急閉止しない構造の水栓・弁を採用する

実務で最もよく見かけるのはエアチャンバーです。給水管の途中に小さな空気室(タンク)を取り付けておくと、水が急停止したときに空気がクッションの役割を果たして衝撃を吸収します。自動車のサスペンションのような仕組みです。

試験のポイント:ウォーターハンマーの対策として「エアチャンバー」「水撃防止器」「流速2.0 m/s以下」は頻出です。

赤水・白濁水・青水のトラブル

蛇口から出る水の色がおかしいときは、配管に問題がある可能性があります。水の色によって原因が異なります。

症状 原因 対策
赤水(赤茶色) 鋼管内面のサビ(鉄さび) 管洗浄、ライニング更生、配管取替え
白濁水(白く濁る) 配管内の微細な空気の泡 しばらく放置すると透明になる(人体に害なし)
青水(青緑色) 銅管からの銅イオン溶出 しばらく使用すると管内面に保護皮膜が形成され改善

ビルの管理室に「朝一番に蛇口を開けると赤い水が出る」という苦情が来たら、真っ先に疑うのは鋼管のサビです。夜間は水が流れないため管内で鉄が溶出し、朝一番の水に混ざるのです。

対策として、まずは朝一番に数分間水を流し続ける「捨て水」で当面をしのぎます。根本的な解決には、配管内面にエポキシ樹脂を塗布するライニング更生工事や、配管自体をステンレス管や樹脂管に取り替える配管更新工事が必要です。

配管の腐食と劣化

給水管は年月とともに劣化します。管種によって劣化のパターンが異なります。

鋼管(SGP)の腐食

かつて最も多く使われていた給水管ですが、内面の錆びが最大の弱点です。

  • 赤水:鉄さびが水に溶出
  • スケール付着:カルシウム等の沈着で管内径が狭くなり、水量が低下
  • 孔食(ピンホール):局部腐食で管に穴が開き、漏水が発生

築20〜30年のビルでは、鋼管の劣化による漏水トラブルが頻発します。天井裏や壁内で漏水が進行し、テナントの内装を汚損してしまうこともある深刻な問題です。

配管の更新・更生工法

工法 内容
配管更新(取替え) 古い配管を撤去し新しい管に交換。根本的解決だが大規模工事
ライニング更生 管内面にエポキシ樹脂等を塗布して保護膜を作る。配管を取り替えずに延命

ライニング更生は配管取替えに比べて工期が短く、コストも安いのがメリットです。ただし、管の劣化が進みすぎている場合(穴が開いている場合など)はライニングでは対応できず、取替えが必要になります。

給水管の管種と特徴

現在使われている主な給水管の種類を整理します。

管種 特徴
ステンレス鋼管 耐食性に優れ、衛生的。現在の新設で主流。高価
銅管 殺菌性あり、加工しやすい。給湯管に多用。初期に青水が出ることがある
硬質塩化ビニルライニング鋼管(VLP) 鋼管内面に塩ビをライニング。防錆効果あり
架橋ポリエチレン管 軽量・柔軟・耐食性あり。さや管ヘッダー工法で使用
ポリブテン管 柔軟で施工しやすい。給水・給湯兼用可能

さや管ヘッダー工法

近年の集合住宅で普及している配管工法です。各水栓にヘッダー(分配器)から個別の管を1本ずつ通します。管の途中に接続部がないため漏水リスクが低く、将来の配管取替えも管を引き抜くだけで済むのが大きなメリットです。

給水設備の日常管理

ビル管理士が日常的に行う給水設備の点検項目を整理します。

頻度 点検内容
毎日 受水槽の水位確認、異常音・漏水の目視確認
7日に1回 残留塩素測定、色・濁り・臭い・味の検査
6ヶ月に1回 飲料水の水質検査(一般項目16項目)
1年に1回 受水槽の清掃、法定検査

毎日の点検で最も重要なのは「いつもと違う」に気づくことです。受水槽の水位がいつもより低い、ポンプ室から普段聞こえない音がする、配管周辺に水のシミがある──こうした小さな変化を見逃さないことが、大きなトラブルの予防につながります。

理解度チェック

【第1問】クロスコネクション

クロスコネクションに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) 飲料水管と雑用水管を逆止弁を介して接続することは認められている。
(2) 飲料水管と雑用水管を仕切弁を介して接続することは認められている。
(3) クロスコネクションとは、飲料水管と他の配管を直接接続することをいい、いかなる場合も認められない。
(4) 空調用冷却水の補給管を飲料水管に直結してもよい。
(5) クロスコネクションの防止には、逆止弁の設置が最も確実である。

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正解:(3)
クロスコネクション(誤接合)は、バルブ・逆止弁・仕切弁などいかなる器具を介しても認められません。飲料水管と他の配管を物理的に接続すること自体が禁止されています。補給水は必ず吐水口空間(エアギャップ)を介して間接的に供給する必要があります。(5)は誤りで、逆止弁ではなく「吐水口空間」が最も確実です。

【第2問】ウォーターハンマー

ウォーターハンマーに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) ウォーターハンマーは、配管内の水の流れが急に停止したときに発生する。
(2) エアチャンバーは、空気のクッションでウォーターハンマーの衝撃を吸収する装置である。
(3) 管内流速を2.0 m/s以下にすることはウォーターハンマーの防止に効果がある。
(4) ウォーターハンマーは配管の振動や騒音の原因となるが、配管の破損には至らない。
(5) 減圧弁の設置は、ウォーターハンマーの防止対策の一つである。

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正解:(4)
ウォーターハンマーは騒音だけでなく、配管の破損・接続部のゆるみ・漏水を引き起こす可能性があります。長期間放置すると配管の寿命を大幅に縮めてしまいます。「破損には至らない」は誤りです。

【第3問】赤水のトラブル

給水管の赤水に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 赤水の原因は、鋼管内面のサビ(鉄さび)である。
(2) 朝一番の使い始めに赤水が出やすい。
(3) ライニング更生工事は、管内面に保護膜を作る工法である。
(4) ステンレス鋼管に取り替えることは根本的な解決策である。
(5) 銅管の場合は赤水が発生しやすい。

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正解:(5)
銅管の場合は赤水ではなく「青水」が出ることがあります。これは銅イオンが溶出するためで、鉄さびによる赤水とは原因が異なります。赤水は鋼管(鉄管)で発生する現象です。

【第4問】給水管の種類

給水管に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) 架橋ポリエチレン管は、金属管であるため耐食性が低い。
(2) さや管ヘッダー工法は、配管の途中に接続部が多いため漏水リスクが高い。
(3) ステンレス鋼管は耐食性に優れ、現在の新設で主流の管種の一つである。
(4) 硬質塩化ビニルライニング鋼管は、管の外面にライニングを施した管である。
(5) 銅管は給水管に適しているが、給湯管には使用できない。

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正解:(3)
ステンレス鋼管は耐食性に優れ衛生的であり、現在の新設工事で主流の管種です。(1)は誤りで、架橋ポリエチレン管は樹脂管であり耐食性が高いです。(2)は誤りで、さや管ヘッダー工法は途中に接続部がないため漏水リスクが低い工法です。(4)は誤りで、硬質塩化ビニルライニング鋼管は管の内面にライニングを施した管です。(5)は誤りで、銅管は給湯管にも多用されます。

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まとめ

この記事では、給水設備の保守管理について、主要なトラブルと防止策を解説しました。最後に重要ポイントを振り返りましょう。

テーマ 暗記ポイント
クロスコネクション バルブ・逆止弁を介しても禁止。吐水口空間で対策
ウォーターハンマー エアチャンバー、流速2.0 m/s以下
赤水 鋼管の鉄さびが原因。ライニング更生or配管更新
青水 銅管からの銅イオン溶出が原因
さや管ヘッダー工法 接続部なし→漏水リスク低、将来の更新も容易

給水設備の保守管理は、ビル管理士の日常業務の中核です。試験では特にクロスコネクションとウォーターハンマーが繰り返し問われますので、仕組みと対策をセットで覚えておきましょう。

貯水槽の管理については貯水槽の構造と管理を、給水方式の全体像については給水方式と給水設備をあわせて確認してください。

ビル管理士試験の科目別ロードマップで、効率よく学習を進めましょう。

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