結論:雑用水は「飲めないけれど使える水」を賢く活用する仕組み
結論から言います。雑用水とは、飲料水としては使えないけれど、トイレの洗浄や散水・清掃などに再利用できる水のことです。
ビルで使う水のうち、実は飲料水として必要なのは一部だけです。トイレの洗浄水、植栽への散水、冷却塔の補給水──これらは飲料水の品質でなくても問題ありません。そこで、排水や雨水を処理して「雑用水」として再利用することで、水道水の使用量を大幅に削減できます。
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)試験では、雑用水の水質基準と排水再利用システムの種類が出題されます。この記事では、雑用水の用途・水質基準から、排水再利用と雨水利用の仕組みまで解説します。
雑用水の用途と種類
雑用水は、その用途によって求められる水質レベルが異なります。
| 用途 | 具体例 |
|---|---|
| 水洗トイレ用水 | 便器の洗浄水 |
| 散水用水 | 植栽への水やり、グラウンドへの散水 |
| 修景用水 | 噴水、池、せせらぎ |
| 清掃用水 | 床の清掃、外壁の洗浄 |
| 冷却塔補給水 | 空調用冷却塔への補給 |
大規模なオフィスビルでは、トイレの洗浄水だけで1日に数十トンもの水を使います。この水をすべて上水道(飲料水)でまかなうのはもったいないですよね。そこで、排水を処理して雑用水として再利用することで、水道料金を大幅に節約しつつ、水資源の有効活用にもつながります。
雑用水の水質基準(★頻出★)
雑用水は飲料水ではありませんが、衛生面での基準は定められています。建築物環境衛生管理基準による雑用水の水質基準は次のとおりです。
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| pH値 | 5.8以上8.6以下 |
| 臭気 | 異常でないこと |
| 外観 | ほとんど無色透明であること |
| 大腸菌 | 検出されないこと |
| 濁度 | 2度以下 |
| 遊離残留塩素 | 0.1 mg/L以上(結合残留塩素の場合0.4 mg/L以上) |
注目すべきは、残留塩素の基準が飲料水と同じ(遊離残留塩素0.1 mg/L以上)という点です。雑用水であっても、人が触れる可能性のある水ですから、消毒は必須です。
また、散水・修景・清掃用水に使う場合は上記に加えてBOD(生物化学的酸素要求量)の基準が設けられることがあります。
水質検査の頻度
| 検査項目 | 頻度 |
|---|---|
| 残留塩素・pH・臭気・外観 | 7日以内ごとに1回 |
| 大腸菌・濁度 | 2ヶ月以内ごとに1回 |
排水再利用システムの種類
排水を雑用水として再利用するシステムは、規模によって3つに分類されます。
個別循環方式
1つの建物の中で排水を処理し、その建物内で雑用水として再利用する方式です。最も一般的な方式で、大規模オフィスビルやショッピングモールで採用されています。
仕組みはこうです。建物内で発生した排水(手洗い・洗面・風呂など)を集め、建物内に設置した排水処理装置(中水処理装置)でろ過・消毒します。処理後の水を「中水」として雑用水槽に溜め、トイレの洗浄水などに再利用します。
大型のオフィスビルの地下機械室に行くと、飲料水の受水槽とは別に「雑用水槽」が設置されているのを見ることがあります。配管も飲料水とは完全に分離されており、雑用水管は茶色に色分けされています。
地区循環方式
複数の建物が集まった地区(再開発エリアなど)で、排水を集中処理して地区内の建物に雑用水を供給する方式です。
新宿副都心や臨海部の大規模再開発地域などで採用されています。個別の建物ごとに処理装置を設けるよりも、まとめて処理する方がコスト効率が良いからです。
広域循環方式
下水処理場で高度処理した水を、広域的な配管ネットワークで供給する方式です。
自治体の下水処理場が処理水を「再生水」として供給する大規模なシステムです。東京都の一部地域では、下水再生水をトイレの洗浄水として供給する「循環利用下水道事業」が実施されています。
| 方式 | 規模 | 特徴 |
|---|---|---|
| 個別循環 | 1建物内 | 最も一般的。自前の処理装置で完結 |
| 地区循環 | 複数建物・地区 | 再開発地域で採用。集中処理でコスト効率◎ |
| 広域循環 | 市町村単位 | 下水処理場の再生水を広域供給 |
排水の原水と処理方法
排水再利用の「原水」(処理前の排水)にはいくつかの種類があります。原水の種類によって処理のしやすさが変わります。
| 原水の種類 | 汚染度 |
|---|---|
| 冷却水ブロー水 | 低(処理しやすい) |
| 洗面・手洗い排水 | やや低 |
| 雑排水(台所・浴室) | 中程度 |
| 汚水(トイレ排水) | 高(処理コスト大) |
一般的に、汚染度の低い排水ほど処理が容易で、再利用に適しています。手洗い排水や冷却水のブロー水は比較的きれいなので、簡易な処理で雑用水にできます。一方、トイレの汚水は高度な生物処理が必要です。
主な処理方法
- スクリーン処理:ゴミや大きな異物を除去
- 沈殿処理:重力で沈降する汚れを分離
- 生物処理:微生物の力で有機物を分解(活性汚泥法など)
- ろ過:砂ろ過や膜ろ過で微細な汚れを除去
- 消毒:塩素消毒で細菌を殺菌(残留塩素0.1 mg/L以上を確保)
雨水利用
排水再利用とは別に、雨水を集めて雑用水として活用するシステムもあります。
屋上に降った雨水を集水管で集め、地下の雨水貯留槽に溜めます。沈殿・ろ過・消毒の処理を経て、トイレの洗浄水や散水に利用します。
雨水利用のメリットは、原水のコストがゼロ(雨は無料)であることと、大雨時の雨水流出の抑制効果(都市型洪水の緩和)があることです。
ただし、弱点もあります。降水量に依存するため、渇水期や少雨期は雑用水の供給が不安定になります。安定供給のため、排水再利用システムと雨水利用を組み合わせる建物もあります。
雑用水配管の管理上の注意
雑用水の配管管理で最も重要なのは、飲料水との誤接続(クロスコネクション)を絶対に防ぐことです。
- 配管の色分け:雑用水管は茶色、飲料水管は青色
- 表示:雑用水の蛇口やトイレには「この水は飲めません」の表示を掲示
- 完全分離:飲料水管と雑用水管は絶対に接続しない
実際のビルでは、雑用水のトイレに「この水は飲料水ではありません」というステッカーが貼られているのを見たことがあるかもしれません。これは法令に基づく義務表示です。間違えて飲んでしまう事故を防ぐために不可欠です。
理解度チェック
【第1問】雑用水の水質基準
雑用水の水質基準に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 遊離残留塩素は0.1 mg/L以上保持する。
(2) 大腸菌は検出されないこと。
(3) pH値は5.8以上8.6以下とする。
(4) 濁度は5度以下とする。
(5) 外観はほとんど無色透明であること。
【第2問】排水再利用システム
排水再利用システムに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 個別循環方式は、複数の建物の排水を集中処理する方式である。
(2) 地区循環方式は、1つの建物内で排水を処理・再利用する方式である。
(3) 広域循環方式は、下水処理場の処理水を広域的に供給する方式である。
(4) 個別循環方式は、小規模な戸建て住宅にのみ採用される方式である。
(5) 排水再利用の原水として、トイレの汚水が最も処理しやすい。
【第3問】雑用水の管理
雑用水設備の管理に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 雑用水管と飲料水管は、配管の色分けにより識別する。
(2) 雑用水の給水栓には「飲料水ではない」旨の表示をする。
(3) 雑用水管は茶色で色分けする。
(4) 雑用水管と飲料水管をバルブを介して接続してもよい。
(5) 残留塩素の検査は7日以内ごとに1回行う。
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まとめ
この記事では、雑用水設備と排水再利用について解説しました。最後に重要ポイントを振り返りましょう。
| テーマ | 暗記ポイント |
|---|---|
| 雑用水の残留塩素 | 飲料水と同じ0.1 mg/L以上 |
| 雑用水の濁度 | 2度以下 |
| 個別循環方式 | 1建物内で処理・再利用(最も一般的) |
| 配管の色分け | 雑用水=茶色、飲料水=青色 |
| 表示義務 | 雑用水の蛇口に「飲料水ではない」旨の表示 |
雑用水の管理は、給水管理と排水管理の両方にまたがる重要なテーマです。特に水質基準と配管の色分けは確実に覚えておきましょう。
給水設備の全体像については給水方式と給水設備を、クロスコネクションの詳細については給水設備の保守管理をあわせて確認してください。
ビル管理士試験の科目別ロードマップで、効率よく学習を進めましょう。
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