建築物環境衛生管理技術者 給水及び排水の管理

浄化槽と排水処理の判定|除去率90%・排水量50m³の境界

浄化槽の水質は「放流水BOD 20mg/L以下」だけでは判定できません。浄化槽法は、これと同時に「BOD除去率90%以上」を求めています。放流水が基準内でも、流入が薄ければ除去率で不適合になります。

この記事では、流入BOD180mg/Lのときに必要な放流水質を18mg/L以下と計算し、2つの基準が入れ替わる分岐点が流入200mg/Lであることを示します。さらに、一律排水基準が当たるかどうかを分ける日平均50m³の境界と、2025年4月1日に施行された大腸菌数800CFU/mLまで、判定の順に整理します。

制度・資料確認日:2026年8月5日。e-Gov法令検索の浄化槽法、環境省関係浄化槽法施行規則、浄化槽法施行令、建築基準法施行令、水質汚濁防止法施行令、排水基準を定める省令、下水道法と、環境省の一般排水基準を照合しています。上乗せ排水基準や下水道条例は自治体ごとに異なるため、所在地の条例、設置届、維持管理記録を優先してください。

結論|放流先と水量が決まらないと基準は決まらない

状況 最初に確認する値 根拠となる規定
浄化槽で公共用水域へ放流 流入・放流BODと除去率 浄化槽法4条・規則1条の2
浄化槽の新設・構造変更 区域と処理対象人員 建築基準法施行令32条
特定施設から公共用水域へ 日平均排出水量 排水基準省令 別表第二
公共下水道へ排除 排出口の水質と条例値 下水道法12条・12条の2

同じ厨房排水でも、公共下水道へ流すのか、浄化槽で処理して河川へ出すのかで、当たる法令も測る項目も変わります。「BODは160mg/L以下」と覚えても、下水道区域の建物では条例値が優先し、浄化槽なら20mg/L以下です。数値より先に放流先を確定させます。

浄化槽は「便所と連結している」ことが定義の起点

浄化槽法第2条第1号は浄化槽を、便所と連結してし尿およびこれと併せて雑排水を処理し、終末処理場を有する公共下水道以外に放流するための設備または施設と定義しています。便所とつながっていない厨房排水だけの処理設備は、この定義には入りません。設備の名前ではなく、便所と連結しているか、どこへ放流するかで判断します。

かつての単独処理浄化槽は、法令上はみなし浄化槽と呼ばれます。平成12年改正の附則で「浄化槽とみなす」と整理され、施行規則の保守点検回数の表もこの用語で書かれています。第3条の2で浄化槽以外の設備の設置が禁じられているため、新設できるのはし尿と雑排水を併せて処理する浄化槽だけです。

令和元年改正では、そのまま放置すれば生活環境の保全および公衆衛生上重大な支障が生ずるおそれのある既存単独処理浄化槽を特定既存単独処理浄化槽とし、都道府県知事が助言・指導、勧告、命令を段階的に行える仕組みが設けられました。命令違反には30万円以下の罰金があります。あわせて浄化槽台帳の作成(第49条)と公共浄化槽の制度も加わっています。

放流水質は「20mg/L以下」と「除去率90%以上」の両方で見る

環境省関係浄化槽法施行規則第1条の2は、放流水のBODが1リットルにつき20mg以下であること、および流入BODから放流BODを引いた値を流入BODで割った割合が90%以上であることを、浄化槽法第4条第1項の技術上の基準としています(みなし浄化槽を除く)。この2つはどちらか一方ではなく両方です。

流入BODが180mg/Lの浄化槽で放流水が20mg/Lだった場合、除去率は(180-20)÷180=0.889、つまり約88.9%にとどまり、除去率の基準を満たしません。この浄化槽が適合するには、放流水を180×0.10=18mg/L以下にする必要があります。

流入BOD 除去率90%から求まる値 実際に守る放流水質
150mg/L 15mg/L以下 15mg/L以下
180mg/L 18mg/L以下 18mg/L以下
200mg/L 20mg/L以下 20mg/L以下
250mg/L 25mg/L以下 20mg/L以下
300mg/L 30mg/L以下 20mg/L以下

分岐点は流入200mg/Lです。これを下回る薄い流入水では除去率のほうが厳しく、上回る濃い流入水では20mg/Lの上限が効きます。雨水や地下水の侵入、清水の混入で流入BODが下がっている建物は、放流水が20mg/Lを切っていても除去率で不適合になり得ます。放流水だけを測っても判定できないのはこのためです。

設計上の性能基準は建築基準法施行令で人員別に決まる

浄化槽を新設・変更するときの構造の性能は、建築基準法施行令第32条で定められています。区域の指定と処理対象人員で段階が変わります。

区域と処理対象人員 BOD除去率 放流水BOD
その他の区域/500人以下 65%以上 90mg/L以下
その他の区域/501〜2,000人 70%以上 60mg/L以下
その他の区域/2,001人以上 85%以上 30mg/L以下
支障ありと指定/50人以下 65%以上 90mg/L以下
支障ありと指定/51〜500人 70%以上 60mg/L以下
支障ありと指定/501人以上 85%以上 30mg/L以下
支障なしと指定/全人員 55%以上 120mg/L以下

同条第1項第2号は、放流水に含まれる大腸菌数を1mLにつき800コロニー形成単位以下とする性能も求めています。従来の大腸菌群数から指標が切り替わった項目です。

この表は構造(設計)の技術的基準であり、維持管理時の水質基準ではありません。第32条第3項第2号は、浄化槽法第4条第1項の技術上の基準のほうが厳しい場合はそちらによると定めています。つまり設計上は60mg/L以下でよい浄化槽でも、稼働後は20mg/L以下・除去率90%以上で評価されます。設計値をそのまま維持管理の合格ラインだと思い込まないでください。

保守点検の回数は処理方式と付帯装置で変わる

浄化槽法第10条第1項は保守点検と清掃を毎年1回と定め、環境省令で回数の特例を置いています。規則第6条第2項の表は、方式名だけでなくどんな装置が付いているかで回数を分けています。

処理方式 浄化槽の種類・装置構成 期間ごとに1回以上
分離接触ばっ気・嫌気ろ床接触ばっ気・脱窒ろ床接触ばっ気 処理対象人員20人以下 4月
同上 処理対象人員21〜50人 3月
活性汚泥方式 区分なし 1週
回転板接触・接触ばっ気・散水ろ床 砂ろ過装置、活性炭吸着装置または凝集槽を有する 1週
同上 スクリーンおよび流量調整タンクまたは流量調整槽を有する 2週
同上 上記以外 3月

ビルの大型浄化槽は活性汚泥方式や高度処理を備えた構成が多く、1週ごとの保守点検が必要になります。「浄化槽の点検は数か月に1回」という小型槽の感覚のまま契約回数を決めると、法定回数を下回ります。点検票の実施日を並べて、間隔が規則の期間内に収まっているか確認してください。

清掃は毎年1回以上が原則で、規則第7条により全ばっ気方式はおおむね6月ごとに1回以上です。また浄化槽法施行令第1条により、処理対象人員が501人以上の浄化槽には技術管理者を置く義務があります。501人は建築基準法施行令第32条で除去率が上がる区分とも重なるため、規模の節目として覚えておくと判断が速くなります。

法定検査は7条検査と11条検査で目的が違う

検査 時期 主な目的
第7条検査(設置後等の水質検査) 使用開始後3月を経過した日から5月間 設置工事の適否と初期の稼働状態
第11条検査(定期検査) 毎年1回 維持管理の適正と水質の継続確認

どちらも都道府県知事が指定する指定検査機関が行います。保守点検業者が毎月来ているから法定検査は不要、という誤解が現場に残っていますが、保守点検・清掃は第10条、法定検査は第7条・第11条で、実施主体も目的も別です。第7条検査は使用開始後3か月経過日から5か月間なので、実務上は使用開始から3〜8か月の間に受けることになります。

BODとCODは測り方ではなく適用先で分かれる

BODは水温20℃で5日間培養し、微生物が有機物を分解する際に消費した酸素量を測ります。CODは酸化剤で化学的に分解したときの消費酸素量です。ここまでは測定方法の違いですが、規制での使い分けは放流先で決まります。

排水基準を定める省令の別表第二には備考があり、BODの排水基準は海域および湖沼以外の公共用水域に排出される排出水に限って、CODの排水基準は海域および湖沼に排出される排出水に限って適用されます。「BODは河川、CODは湖沼・海域」という整理は、環境基準だけでなく排水基準の適用範囲としても成り立ちます。

汚れの量を把握するときは、濃度ではなく負荷量で見ると設備の余力が分かります。処理対象人員300人、設計汚水量を1人1日200Lと仮定すると、汚水量は300×0.2=60m³/日です。流入BODを200mg/Lとすると、BOD負荷は60m³/日×200g/m³=12,000g/日、すなわち12.0kg/日になります。

この浄化槽の生物反応槽の有効容量が40m³なら、BOD容積負荷は12.0÷40=0.30kg/(m³・日)です。汚泥の堆積やスカムで実質的な有効容量が30m³相当まで落ちると、同じ流入でも12.0÷30=0.40kg/(m³・日)となり、負荷は約33%増えます。処理水の悪化を「微生物の不調」で片づける前に、汚泥の堆積、短絡流、返送汚泥量など容量と流れを確認してください。

一律排水基準は「特定施設」と「日平均50m³」で当たるかが決まる

水質汚濁防止法が規制するのは、特定施設を設置する工場・事業場(特定事業場)から公共用水域へ排出される水です。ビルで問題になりやすい特定施設は、政令別表第一に面積や規模の要件つきで並んでいます。

施設 規模の要件 別表第一の番号
旅館業のちゅう房・洗濯・入浴施設 面積要件なし 66の3
共同調理場のちゅう房施設 総床面積500m²以上 66の4
飲食店のちゅう房施設 総床面積420m²以上 66の6
そば・うどん・すし店、喫茶店等 総床面積630m²以上 66の7
料亭・バー・キャバレー等 総床面積1,500m²以上 66の8
病院のちゅう房・洗浄・入浴施設 病床数300以上 68の2

「業務用の厨房は420m²以上で特定施設」とまとめるのは誤りです。420m²は通常主食と認められる食事を提供する飲食店の数値で、そば店・うどん店・すし店・喫茶店等は630m²、料亭やバーなどは1,500m²、旅館業のちゅう房施設には面積要件がありません。自館の業態がどの号に当たるかを条文で確認してください。

項目 許容限度 適用の条件
水素イオン濃度 海域以外5.8〜8.6 海域は5.0〜9.0
BOD 160(日間平均120)mg/L 海域・湖沼以外へ排出
COD 160(日間平均120)mg/L 海域・湖沼へ排出
浮遊物質量(SS) 200(日間平均150)mg/L
ノルマルヘキサン(鉱油類) 5mg/L
ノルマルヘキサン(動植物油脂類) 30mg/L
大腸菌数 日間平均800CFU/mL 2025年4月1日施行

大腸菌の項目は、指標性の問題から大腸菌群数から大腸菌数へ改められ、許容限度は日間平均800CFU/mLとなりました。旧基準の「大腸菌群数 日間平均3,000個/cm³」で覚えていると誤答します。あわせて六価クロム化合物の許容限度も0.2mg/Lに強化されています(2024年4月1日施行)。

もう一つの落とし穴が適用条件です。別表第二の生活環境項目は、備考により1日当たりの平均的な排出水の量が50m³以上の工場・事業場に適用されます。月間排出水量1,260m³を稼働30日で割ると日平均42m³/日となり、この規模ではBODやSSの一律排水基準は当たりません。厨房を増設して月1,560m³になれば日平均52m³/日となり、適用対象へ移ります。差はわずか10m³/日です。

ただし別表第一の有害物質には水量の要件がありません。排出水量が50m³未満でも、カドミウム、シアン、六価クロムなどの基準は適用されます。「うちは小規模だから排水基準は関係ない」という判断は成り立ちません。さらに法第3条第3項により、都道府県は条例で一律排水基準より厳しい上乗せ排水基準を定められます。

公共下水道へ流す建物は条例値と除害施設で判定する

下水道法第10条は、公共下水道の供用が開始された排水区域の土地所有者等に、遅滞なく排水設備を設置して接続することを求めています。処理区域内のくみ取便所は、第11条の3により処理を開始すべき日から3年以内に水洗便所へ改造しなければなりません。

下水道へ流す場合でも、何を流してもよいわけではありません。第12条は、著しく施設の機能を妨げたり損傷したりするおそれのある下水を継続して排除する者に対し、条例で除害施設の設置を義務づけられると定めています。特定施設を設置する事業場については、第12条の2で排出口の水質基準が政令と条例で決まります。

建物側で実際に問題になるのは、グリース阻集器の清掃不足による油脂の流出、地下駐車場からの油分、診療所や実験室の薬品です。「下水道だから薄めて流せる」ではなく、排出口の水質が条例値に適合しているかで判断します。どの法令が当たるかの全体像は「ビル管理の関連法令」で整理しています。

現場での判定順序

  1. 放流先:公共下水道か、浄化槽で公共用水域か、直接公共用水域かを確定する
  2. 設備:浄化槽なら処理方式、処理対象人員、設置年、設置届と竣工図を確認する
  3. 水質:流入と放流のBODを同時に測り、20mg/L以下と除去率90%以上の両方で判定する
  4. 規模:特定施設の有無と、日平均排出水量が50m³の境界のどちら側かを確認する
  5. 地域:上乗せ排水基準、下水道条例、除害施設の要否を所在自治体で確認する
  6. 記録:保守点検・清掃・法定検査の実施日を並べ、回数と間隔が法定を満たすか突き合わせる

この順序で見ると、水質の数値だけを追いかけるより早く原因にたどり着けます。放流水の悪化は、微生物の状態だけでなく、流入側の希釈、槽容量の減少、点検回数の不足として現れることが多いためです。排水が槽へ届くまでの経路は「排水設備とトラップの診断」と「通気設備と排水槽の管理」を参照してください。

理解度チェック

【問1】ある浄化槽の流入BODが180mg/L、放流BODが19mg/Lでした。浄化槽法第4条第1項の技術上の基準に照らした評価として正しいものはどれですか。

  1. 放流水が20mg/L以下なので適合している
  2. 除去率が約89.4%で90%以上を満たさないため不適合である
  3. 除去率は問われないため適合している
  4. 流入水質が200mg/L未満なので基準は適用されない
  5. 放流水BODの基準は30mg/L以下なので適合している
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正解:2
(180-19)÷180=0.894、約89.4%です。放流水は20mg/L以下ですが、規則第1条の2は除去率90%以上も同時に求めます。この槽が適合するには放流水を18mg/L以下にする必要があります。

【問2】特定行政庁の指定がない「その他の区域」に、処理対象人員600人の合併処理浄化槽を新設します。建築基準法施行令第32条が求める性能はどれですか。

  1. 除去率55%以上・放流水BOD120mg/L以下
  2. 除去率65%以上・放流水BOD90mg/L以下
  3. 除去率70%以上・放流水BOD60mg/L以下
  4. 除去率85%以上・放流水BOD30mg/L以下
  5. 除去率90%以上・放流水BOD20mg/L以下
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正解:3
その他の区域では501〜2,000人が除去率70%以上・放流水BOD60mg/L以下です。ただしこれは構造の技術的基準で、稼働後は同条第3項第2号により、より厳しい浄化槽法の20mg/L以下・除去率90%以上で評価されます。

【問3】水質汚濁防止法の一律排水基準について、正しいものはどれですか。

  1. 生活環境項目は日平均排出水量10m³以上の事業場に適用される
  2. 生活環境項目は日平均排出水量50m³以上の事業場に適用される
  3. 大腸菌の項目は「大腸菌群数 日間平均3,000個/cm³」である
  4. BODの許容限度は海域へ排出される排出水にも適用される
  5. 有害物質の基準は日平均排出水量50m³未満の事業場には適用されない
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正解:2
別表第二の備考が50m³以上と定めています。3は2025年4月1日に「大腸菌数 日間平均800CFU/mL」へ改正済みです。4はBODが海域・湖沼以外に限られるため誤り。5は有害物質に水量要件がないため誤りです。

【問4】浄化槽の維持管理に関する記述のうち、正しいものはどれですか。

  1. 活性汚泥方式の浄化槽の保守点検は3月ごとに1回以上でよい
  2. 全ばっ気方式の浄化槽の清掃はおおむね6月ごとに1回以上である
  3. 技術管理者を置くのは処理対象人員201人以上の浄化槽である
  4. 第7条検査は使用開始後1年を経過してから受ける
  5. 第11条検査は保守点検を行った業者が実施する
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正解:2
規則第7条の規定です。1は活性汚泥方式が1週ごとに1回以上。3は施行令第1条により501人以上。4は使用開始後3月を経過した日から5月間。5は指定検査機関が行うため、いずれも誤りです。

公式の確認先

まとめ|数値の前に、放流先と適用条件をそろえる

浄化槽の水質は、放流水BOD 20mg/L以下と除去率90%以上の両方で判定します。流入180mg/Lなら放流18mg/L以下が必要で、2つの基準が入れ替わる分岐点は流入200mg/Lでした。建築基準法施行令第32条の表は設計の基準であり、稼働後の合格ラインではありません。

維持管理では、活性汚泥方式が1週ごと、高度処理の有無で1週・2週・3月と分かれる保守点検回数、全ばっ気方式の6月ごとの清掃、処理対象人員501人以上の技術管理者、第7条検査と第11条検査の役割の違いを押さえます。

公共用水域へ直接出す事業場では、特定施設に当たるか、日平均排出水量が50m³以上かで一律排水基準の当たり方が変わります。例では42m³/日で生活環境項目が適用外、52m³/日で適用対象でした。大腸菌数は800CFU/mLへ、六価クロムは0.2mg/Lへ改正済みです。下水道区域なら、判断の中心は排水基準ではなく条例値と除害施設に移ります。

次は配管と器具の側から見た「配管材料・衛生器具・消火設備」へ、演習は「浄化槽と排水処理 ミニテスト第1回」へ進んでください。塩素消毒の濃度計算は「消毒法と希釈計算」で扱っています。

制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月5日

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-建築物環境衛生管理技術者, 給水及び排水の管理