結論:浄化槽は「下水道がない地域で汚水をきれいにする自前の処理施設」
結論から言います。浄化槽とは、下水道が整備されていない地域で、建物から出る汚水や雑排水を微生物の力で浄化し、きれいな水にして放流するための施設です。
都市部では下水道に排水すれば下水処理場が処理してくれますが、郊外や地方では下水道が通っていない場所がまだ多くあります。そうした場所では、建物ごとに浄化槽を設置して、自前で排水を処理する必要があります。
ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)試験では、浄化槽の処理方式、水質指標(BOD・COD)、浄化槽法と水質汚濁防止法の規制が出題されます。
浄化槽法の基礎
浄化槽の定義
浄化槽法では、浄化槽を「し尿および雑排水を処理し、公共用水域等に放流するための設備」と定義しています。
かつては「単独処理浄化槽」(し尿のみを処理するもの)が認められていましたが、現在は新設が禁止されており、し尿と雑排水を合わせて処理する「合併処理浄化槽」のみが設置できます。
| 種類 | 処理対象 | 現在の扱い |
|---|---|---|
| 合併処理浄化槽 | し尿+雑排水 | 現在の標準 |
| 単独処理浄化槽 | し尿のみ | 新設禁止。既設は合併への切替えを推進 |
浄化槽の管理義務
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 保守点検 | 浄化槽管理士等による技術的な点検(頻度は処理方式による) |
| 清掃 | 毎年1回以上、市町村長の許可業者が実施 |
| 法定検査 | 設置後の7条検査(使用開始後3〜8ヶ月)と毎年の11条検査 |
排水の水質指標(★超頻出★)
排水の汚れ具合を測る指標を理解しましょう。試験では数値を問われることがあります。
BOD(生物化学的酸素要求量)
水中の有機物が微生物によって分解されるとき、消費される酸素の量です。単位はmg/Lです。
わかりやすく言うと、「この水にどれだけ汚れ(有機物)が含まれているか」を微生物が食べるのに必要な酸素の量で表したものです。BODが高いほど有機物が多い=水が汚い、ということです。
BODの測定は、水温20℃で5日間培養して消費された酸素量を測定します。
COD(化学的酸素要求量)
水中の有機物を化学的に酸化分解するとき、消費される酸素の量です。BODが微生物で測るのに対し、CODは薬品(過マンガン酸カリウムなど)で測定します。
BODとCODの使い分けを覚えましょう。
| 指標 | 適用 |
|---|---|
| BOD | 河川の水質基準に使用 |
| COD | 湖沼・海域の水質基準に使用 |
なぜ使い分けるかというと、河川は流れがあるため微生物が有機物を分解する過程(BOD)が水質に直結します。一方、湖や海は流れが緩やかなため化学的な指標(COD)のほうが実態を反映しやすいのです。
その他の水質指標
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| SS(浮遊物質量) | 水中に浮遊する微粒子の量。濁りの原因 |
| DO(溶存酸素量) | 水中に溶けている酸素の量。高いほど水がきれい |
| pH | 水の酸性・アルカリ性の度合い |
| ノルマルヘキサン抽出物質 | 油脂類の量。排水中の油分を測定 |
浄化槽の処理方式
浄化槽では主に微生物の力で有機物を分解します。処理方式は以下のとおりです。
接触ばっ気方式
浄化槽の中に接触材(プラスチック製の充填材)を入れ、その表面に微生物(生物膜)を繁殖させます。ブロアー(送風機)で空気を送り込み、好気性微生物が有機物を分解します。
小型の合併処理浄化槽で最も多く採用されている方式です。家庭用の浄化槽はほとんどがこのタイプです。
活性汚泥法
ばっ気槽で微生物の塊(活性汚泥)を浮遊させ、有機物を分解する方式です。大規模な下水処理場で広く使われています。
処理能力が高いのが強みですが、微生物の管理(汚泥の量や空気の量の調整)が複雑で、専門的な運転管理が必要です。
回転板接触法
回転する円板の表面に微生物を付着させ、円板が排水に浸かったり空気に触れたりを繰り返すことで有機物を分解する方式です。省エネルギーで運転できるのが特長です。
処理のフロー(一般的な合併処理浄化槽)
- 沈殿分離槽:固形物を沈殿させて分離(嫌気性処理も行う)
- ばっ気槽(接触ばっ気槽):空気を送り込み、好気性微生物が有機物を分解
- 沈殿槽:処理水と汚泥を分離
- 消毒槽:塩素消毒してから放流
水質汚濁防止法
水質汚濁防止法は、工場・事業場からの排水を規制する法律です。特定施設を持つ事業場は排水基準を遵守しなければなりません。
特定施設
水質汚濁防止法で規制対象となる施設を「特定施設」と呼びます。ビル管理に関係する特定施設としては、次のものがあります。
- ちゅう房施設(業務用の厨房):総面積が420m²以上(2021年改正で追加)
- 洗濯施設:営業用のもの
- 入浴施設:一般公衆の用に供するもの
排水基準
特定施設からの排水は、一律排水基準を満たさなければなりません。
| 項目 | 一律排水基準 |
|---|---|
| BOD | 160 mg/L以下(日間平均120 mg/L以下) |
| COD | 160 mg/L以下(日間平均120 mg/L以下) |
| SS | 200 mg/L以下(日間平均150 mg/L以下) |
| pH | 5.8以上8.6以下 |
| ノルマルヘキサン抽出物質(鉱油類) | 5 mg/L以下 |
自治体によっては一律排水基準より厳しい「上乗せ排水基準」を条例で定めている場合があります。ビルの管理者は、その地域の排水基準を把握しておく必要があります。
下水道法の基礎
下水道が整備されている地域では、排水は下水道に流します。下水道法では以下のことが定められています。
- 下水道への接続義務:公共下水道が供用開始された区域では、遅滞なく排水設備を下水道に接続しなければならない
- 水洗化の義務:下水道が使える区域では、汲み取り式トイレは3年以内に水洗化しなければならない
- 除害施設:下水道に悪影響を与える排水(強酸・強アルカリ・油脂類など)は、除害施設で前処理してから下水道に流す
理解度チェック
【第1問】BODとCOD
水質指標に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) BODは湖沼の水質基準に用いられる。
(2) CODは河川の水質基準に用いられる。
(3) BODの測定は水温20℃で5日間培養して行う。
(4) BODの値が高いほど水がきれいである。
(5) DOの値が高いほど水が汚染されている。
【第2問】浄化槽の管理
浄化槽法に基づく浄化槽の管理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 浄化槽の清掃は毎年1回以上行う。
(2) 法定検査には7条検査と11条検査がある。
(3) 合併処理浄化槽はし尿と雑排水を合わせて処理する。
(4) 現在でも単独処理浄化槽を新設することができる。
(5) 浄化槽の清掃は市町村長の許可業者が行う。
【第3問】排水基準
水質汚濁防止法に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 特定施設からの排水には一律排水基準が適用される。
(2) 自治体は条例で上乗せ排水基準を定めることができる。
(3) BODの一律排水基準は160 mg/L以下である。
(4) pHの排水基準は5.8以上8.6以下である。
(5) すべての事業場に水質汚濁防止法の排水基準が適用される。
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まとめ
この記事では、浄化槽と排水処理について解説しました。最後に重要ポイントを振り返りましょう。
| テーマ | 暗記ポイント |
|---|---|
| BODの適用 | 河川の水質基準に使用 |
| CODの適用 | 湖沼・海域の水質基準に使用 |
| BODの測定条件 | 20℃、5日間 |
| 合併処理浄化槽 | し尿+雑排水を処理。単独処理は新設禁止 |
| 法定検査 | 7条検査(設置後)と11条検査(毎年) |
浄化槽と排水処理は、下水道法・水質汚濁防止法と合わせて出題されるテーマです。BODとCODの使い分けは必ず覚えておきましょう。
排水設備の基礎については排水設備とトラップを、通気設備と排水槽については通気設備と排水槽をあわせて確認してください。
ビル管理士試験の科目別ロードマップで、効率よく学習を進めましょう。
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