この記事で分かること
- 熱量・比熱・顕熱・潜熱の違い
- 水を加熱する熱量の計算方法
- 湿り蒸気・乾き飽和蒸気・過熱蒸気の位置関係
- 絶対圧力と飽和温度の読み方
結論:温度上昇は顕熱、状態変化は潜熱で考える
ボイラーは、水へ熱を移して温度を上げ、さらに蒸気へ変える装置です。水の温度を上げる間に加えるのが顕熱、沸騰中に水を蒸気へ変えるのが蒸発潜熱です。
その後、乾き飽和蒸気を同じ圧力の飽和温度より高く加熱すると過熱蒸気になります。試験では、熱の名前を暗記するだけでなく、温度・状態・圧力のどれが変わるかを対応させましょう。
水
顕熱で
温度上昇
湿り蒸気
水+蒸気
潜熱を吸収
乾き飽和蒸気
水滴なし
飽和温度
過熱蒸気
さらに顕熱で
温度上昇
公式・標準情報の確認先
物性値・試験情報確認日:2026年7月26日
熱量は「物体が持つ温かさ」ではなく移動したエネルギー
熱は、温度差によって高温側から低温側へ移動するエネルギーです。物体の中に蓄えられた状態量そのものを「熱」と呼ぶのではありません。熱として移動したエネルギーの量を熱量といい、SI単位はジュール(J)です。
- 1kJ=1,000J
- 1kWh=3.6MJ
- 1cal≒4.186J
ボイラーでは扱う量が大きいため、kJ、MJ、kWhなどを使います。温度だけを見ても総熱量は分かりません。100℃の水でも、1kgと100kgでは冷えるまでに放出できる熱量が大きく異なります。
比熱:1kgを1K上げるのに必要な熱量
比熱は、物質1kgの温度を1K(温度差1℃)上げるために必要な熱量です。2026年4月掲載の二級ボイラー技士公表問題では、水の比熱を4.187kJ/(kg・K)として扱っています。
比熱が大きいほど、同じ質量へ同じ熱量を加えたときの温度上昇は小さくなります。「温まる速さ」は加熱出力、形状、熱損失にも左右されるため、比熱だけで決まるとは限りません。
Q = m × c × ΔT
Q:熱量[kJ] m:質量[kg] c:比熱[kJ/(kg・K)] ΔT:温度差[K]
計算例:水10kgを20℃から100℃へ加熱
熱損失がなく、比熱を4.187kJ/(kg・K)で一定とみなすと、温度差は80Kです。
Q=10×4.187×(100-20)=3,349.6kJ
実際のボイラーでは本体や配管の昇温、排ガス、放熱などにも熱が使われるため、燃料から同じ3,349.6kJを入れれば済むわけではありません。燃料側まで扱う計算は「ボイラーの容量・効率・伝熱面積」で整理します。
顕熱と潜熱を区別する
| 熱 | 主な変化 | 水の例 |
|---|---|---|
| 顕熱 | 温度が変わる | 20℃→100℃ |
| 潜熱 | 相が変わる | 水→蒸気 |
純水が一定圧力で沸騰している間は、液体と蒸気が共存し、温度はその圧力に対応する飽和温度に保たれます。加えた熱は主に蒸発へ使われます。大気圧付近では、100℃の飽和水1kgを乾き飽和蒸気へ変える蒸発潜熱は約2,257kJです。
条件を省略しない:「沸騰中は必ず100℃」ではありません。100℃は標準大気圧付近での値です。圧力が変われば飽和温度も変わります。
飽和温度は絶対圧力で決まる
水と蒸気が平衡状態で共存する温度が飽和温度です。圧力が高いほど飽和温度は高くなります。蒸気表の圧力は通常、真空を0とする絶対圧力で扱います。
| 絶対圧力 | 飽和温度 | 関係 |
|---|---|---|
| 約0.101MPa | 約100℃ | 標準大気圧付近 |
| 0.2MPa | 約120℃ | 圧力上昇 |
| 0.5MPa | 約152℃ | さらに上昇 |
| 1.0MPa | 約180℃ | さらに上昇 |
圧力計が示すゲージ圧力は大気圧を0とします。概算では、絶対圧力=ゲージ圧力+大気圧約0.1MPaです。例えばゲージ圧力0.4MPaは、絶対圧力約0.5MPaに相当します。
湿り蒸気・乾き飽和蒸気・過熱蒸気
湿り蒸気
飽和水と飽和蒸気が共存し、細かな水滴を含む状態です。全質量に対する蒸気質量の割合を乾き度xといい、湿り蒸気では0<x<1です。
乾き飽和蒸気
水滴を含まない飽和蒸気で、乾き度はx=1です。圧力に対応する飽和温度にあります。大気中で見える白い「湯気」は、蒸気が冷えてできた微細な液滴です。水蒸気そのものは目に見えないため、白い湯気を乾き飽和蒸気や湿り蒸気の見本とは決めつけません。
過熱蒸気
乾き飽和蒸気へさらに熱を加え、同じ圧力の飽和温度より高温にした蒸気です。実際の設備では「エコノマイザ・空気予熱器・過熱器」で扱う過熱器が、飽和蒸気を過熱します。
過熱度=過熱蒸気温度-同じ圧力の飽和温度です。絶対圧力1.0MPaの飽和温度を約180℃とし、蒸気温度が250℃なら過熱度は約70Kです。
エンタルピーは状態ごとのエネルギーを比較する物性値
蒸気表では、単位質量当たりの比エンタルピー[kJ/kg]を使って水・蒸気の状態を比較します。基準状態を定めたうえで、飽和蒸気について次の関係で整理できます。
乾き飽和蒸気の比エンタルピー hg
= 飽和水の比エンタルピー hf + 蒸発潜熱 hfg
大気圧付近・100℃では、おおよそhf=419kJ/kg、hfg=2,257kJ/kg、hg=2,676kJ/kgです。蒸気が凝縮すると大きな潜熱を放出するため、同じ100℃でも蒸気による熱傷は重症化しやすくなります。
理解度チェック
【問1】水5kgを20℃から60℃へ加熱する。比熱を4.187kJ/(kg・K)、熱損失なしとすると必要熱量はどれですか。
(1) 167.5kJ
(2) 418.7kJ
(3) 837.4kJ
(4) 1,674.8kJ
(5) 4,187kJ
【問2】一定圧力で純水が沸騰している間に加えた熱の主な働きはどれですか。
(1) 水の圧力だけを下げる
(2) 水を蒸気へ相変化させる
(3) 比熱をゼロにする
(4) 必ず100℃を超えさせる
(5) 乾き度を負の値にする
【問3】蒸気表の絶対圧力とボイラー圧力計のゲージ圧力の関係として適切なものはどれですか。
(1) 常に同じ
(2) 絶対圧力はゲージ圧力より大気圧分だけ大きい
(3) ゲージ圧力は絶対圧力より1MPa大きい
(4) 飽和温度と無関係
(5) 真空をゲージ圧力1MPaとする
【問4】過熱蒸気の説明として正しいものはどれですか。
(1) 必ず水滴を含む
(2) 同じ圧力の飽和温度より低温
(3) 乾き飽和蒸気をさらに加熱した蒸気
(4) 乾き度が0の飽和水
(5) 白く見える湯気だけを指す
次に読む記事
まとめ
熱は温度差によって移動するエネルギーで、比熱は物質1kgの温度を1K上げるのに必要な熱量です。水の温度上昇には顕熱、蒸発には潜熱が使われます。
飽和温度は絶対圧力で決まり、圧力が上がると高くなります。湿り蒸気、乾き飽和蒸気、過熱蒸気を、水滴の有無と飽和温度との関係で区別しましょう。
最終更新日:2026年7月26日
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。