建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

【ビル管理士・空気環境】自動制御と流体力学(PID制御・フィードバック・ベルヌーイの定理・レイノルズ数)

結論:自動制御は空調の「頭脳」、流体力学は空調設計の「物理法則」

現代のビル空調は、人が手動でバルブを回したりファンのスイッチを入れたりはしません。センサーで温度・湿度・CO2濃度などを検知し、コントローラーが判断して、弁や送風機を自動で操作する——これが自動制御です。

また、ダクトや配管を流れる空気・水の挙動を理解するには流体力学の基礎知識が必要です。試験では制御方式の種類ベルヌーイの定理が頻出です。

自動制御の基本構成

制御の3要素

検出部(センサー)→ 温度・湿度等を測定
調節部(コントローラー)→ 設定値と比較して操作量を決定
操作部(アクチュエータ)→ 弁やダンパを動かす

身近な例:家庭のエアコンも自動制御です。室温センサーが部屋の温度を測り(検出部)、マイコンが「設定温度26℃より高い→もっと冷やせ」と判断し(調節部)、圧縮機の回転数を上げます(操作部)。ビルの空調も同じ原理で、規模が大きくなったものです。

フィードバック制御のループ
センサ
(検出部)
調節器
(判断)
操作器
(弁・ダンパ)
制御対象
(室温等)

← 結果をセンサで測定し、ループを繰り返す ←

温度センサが室温を測定し、調節器が設定値との偏差を計算し、操作器(弁やダンパ)を動かして室温を調整する。この繰り返しがフィードバック制御の基本ループです。

制御方式の種類(★超頻出★)

方式 特徴
二位置制御(オンオフ制御) ON/OFFの2段階で制御。最もシンプル
設定値付近でハンチング(ON/OFFの繰り返し)が起きやすい
例:サーモスタットによるヒーターのON/OFF
比例制御(P制御) 偏差(設定値と現在値の差)に比例して操作量を変える
オフセット(定常偏差)が残る
積分制御(I制御) 偏差の時間積分に基づいて操作。オフセットを解消する
応答が遅い
微分制御(D制御) 偏差の変化速度に基づいて操作。応答を速くする
急な変化に先回りして対応
PID制御 P+I+Dを組み合わせた制御。最も高精度
空調の温度制御で広く使用

超頻出ポイント:比例制御(P制御)ではオフセット(定常偏差)が残る。つまり、設定温度が26℃でも実際には26.5℃で安定してしまうような「ズレ」が生じます。このオフセットを解消するために積分(I)制御を追加します。I制御が偏差を時間をかけて蓄積し、ゼロに近づけるのです。

覚え方のコツ

P(比例)→ 今のズレに比例して動かす → オフセット残る
I(積分)→ 過去のズレの蓄積で補正 → オフセット消す
D(微分)→ ズレの変化速度で先読み → 応答を速くする

フィードバック制御とフィードフォワード制御

フィードバック制御

結果を測定して修正する制御
「室温が上がった→冷房を強める」
外乱に対する応答は遅いが確実
空調の基本はこちら

フィードフォワード制御

外乱を予測して先に対処する制御
「外気温が上がりそう→先に冷房を強める」
応答は速いが予測が外れると逆効果
フィードバックと併用するのが一般的

流体力学の基礎

ベルヌーイの定理

ダクトや配管内の流体(空気・水)について、流速・圧力・高さのエネルギーの合計は一定という法則です。

ベルヌーイの定理(簡略版)

静圧 + 動圧 = 全圧(一定)

静圧:流体が壁面を押す力
動圧:流体の運動エネルギーに相当する圧力(= ½ × ρ × v2
全圧:静圧と動圧の合計

身近な例:水道のホースの先を指でつまむと、水が勢いよく飛びますよね。これがベルヌーイの定理です。断面積が狭くなると流速が上がり(動圧が増加)、その分静圧が下がります。ダクトでも同じで、断面が狭い部分では風速が上がり、広い部分では風速が下がります。

静圧と動圧の関係

用語 意味
静圧 流れの方向に関係なくあらゆる方向に作用する圧力
ダクトの壁面にかかる圧力
動圧 流れの速度に起因する圧力。速度の2乗に比例
ピトー管で測定できる
全圧 静圧 + 動圧。流体が持つ圧力エネルギーの合計

試験のポイント:「ダクトの断面が狭くなると静圧は下がり、動圧は上がる」。全圧(静圧+動圧)は摩擦損失を無視すれば一定です。ピトー管は全圧と静圧を同時に測定し、その差から動圧(つまり風速)を求める計測器です。

レイノルズ数と流れの状態

流れの状態 特徴
層流 流体が整然と平行に流れる。レイノルズ数が小さいとき
圧力損失は流速に比例
乱流 流体が乱れて不規則に流れる。レイノルズ数が大きいとき
圧力損失は流速の2乗に比例
ダクト・配管内の流れは通常こちら

DDC(ダイレクトデジタルコントロール)とBEMS

用語 内容
DDC コンピュータで直接制御する方式。現在の主流
プログラムの変更で制御内容を柔軟に変えられる
BEMS ビルエネルギーマネジメントシステム
空調・照明・電力を一元監視・制御して省エネを推進

ビル管理の現場での自動制御

実務で押さえるポイント:

  • BEMS画面の見方 ― 中央監視室のモニターに空調・照明・電力の状態が表示される。温度が設定値から大きくずれている場合、センサの故障か制御弁の固着を疑う
  • ハンチングの発見 ― 温度のトレンドグラフが激しく上下していたら、制御の調整不良か二位置制御のハンチング。PIDパラメータの再調整が必要
  • 省エネとの関係 ― BEMSのデータ分析で、無駄な空調運転(深夜の運転放置など)を発見できる。省エネルギーと維持管理で詳しく学びます
  • 計測データの活用環境測定機器で得たCO2や温湿度のデータをBEMSに取り込み、自動で換気量を最適化する「デマンド制御換気」も増えています

理解度チェック

【問題1】自動制御に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)比例制御(P制御)ではオフセット(定常偏差)は生じない
(2)積分制御(I制御)はオフセットを解消する機能がある
(3)微分制御(D制御)は偏差の蓄積に基づく制御である
(4)二位置制御はハンチングが起きにくい
(5)PID制御はP制御よりも精度が低い

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正解:(2)
積分制御(I制御)は偏差の時間積分に基づいて操作し、オフセットを解消します。比例制御ではオフセットが残ります。微分制御は偏差の変化速度に基づきます(蓄積は積分制御)。二位置制御はON/OFFの繰り返しでハンチングが起きやすいです。PID制御はP制御より高精度です。

【問題2】ベルヌーイの定理に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)ダクトの断面が狭くなると流速が下がり静圧が上がる
(2)全圧は静圧と動圧の合計である
(3)動圧は流速に比例する
(4)静圧は流れの方向にのみ作用する
(5)ピトー管は静圧のみを測定する

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正解:(2)
全圧 = 静圧 + 動圧です。ダクトの断面が狭くなると流速が上がり静圧は下がります。動圧は流速の2乗に比例します。静圧はあらゆる方向に作用します。ピトー管は全圧と静圧の両方を測定し、差から動圧を求めます。

【問題3】制御方式に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)フィードバック制御は外乱を予測して先に対処する制御である
(2)フィードフォワード制御は結果を測定して修正する制御である
(3)DDCはアナログ信号で制御する旧式の方式である
(4)フィードバック制御は制御結果を測定して修正する方式である
(5)BEMSは空調のみを管理するシステムである

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正解:(4)
フィードバック制御は結果を測定して修正する制御です。フィードフォワード制御が外乱を予測して先に対処する制御です。DDCはデジタルコンピュータによる制御で現在の主流です。BEMSは空調だけでなく照明・電力なども一元管理するシステムです。

【問題4】流体の流れに関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)層流の圧力損失は流速の2乗に比例する
(2)乱流はレイノルズ数が小さいときに発生する
(3)ダクト内の流れは通常、層流である
(4)乱流の圧力損失は流速の2乗に比例する
(5)レイノルズ数は流体の温度のみで決まる

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正解:(4)
乱流の圧力損失は流速の2乗に比例します。層流の圧力損失は流速に比例(1乗)です。乱流はレイノルズ数が大きいときに発生します。ダクト内の流れは通常乱流です。レイノルズ数は流速・管径・動粘度で決まります。

まとめ ― 試験で狙われるポイント

この記事の重要ポイント

  • P制御=オフセット残る。I制御=オフセット解消。D制御=応答を速く
  • 二位置制御=ハンチングが起きやすい
  • フィードバック=結果を見て修正。フィードフォワード=予測して先に対処
  • ベルヌーイの定理:静圧 + 動圧 = 全圧(一定)
  • 動圧は流速の2乗に比例。ピトー管で全圧と静圧を測定→動圧(風速)を算出
  • 層流=整然・損失∝v、乱流=不規則・損失∝v2
  • DDC=デジタル制御(主流)。BEMS=空調+照明+電力の一元管理

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