この5問で身につくこと
- エコノマイザの回収熱量を給水条件から計算する
- 三装置の配置を固定暗記せず、温度帯と系統図で判断する
- 空気予熱器のシール漏れと低温腐食を運転値から疑う
- 蒸気流量低下による過熱器管の過熱リスクを説明する
結論:エコノマイザは給水、空気予熱器は燃焼用空気、過熱器は飽和蒸気を加熱します。三装置は同じ「熱交換器」でも、温める流体と目的が違います。また、排ガス経路の順番はすべてのボイラーで同一ではありません。温度、流量、差圧、系統図から判断します。
三装置の構造と異常の全体像は「エコノマイザ・空気予熱器・過熱器」で確認できます。
最初に「何を温めるか」を固定する
| 装置 | 加熱される流体 | 主目的 |
|---|---|---|
| エコノマイザ | 給水 | 排熱回収 |
| 空気予熱器 | 燃焼用空気 | 排熱回収・燃焼安定 |
| 過熱器 | 飽和蒸気 | 過熱蒸気を作る |
エコノマイザと空気予熱器は、煙突へ逃げる熱を水または空気へ戻します。過熱器は飽和蒸気へさらに顕熱を加え、その圧力の飽和温度より高い過熱蒸気を作ります。
エコノマイザの回収熱量を計算する
給水が受け取る熱量
Q = 給水流量 × 比熱 × 温度上昇
給水12,000kg/hを80℃から130℃へ加熱し、水の比熱を4.2kJ/(kg・K)と近似すると、12,000×4.2×50=2,520,000kJ/hです。電力に直せば2,520,000÷3,600=700kWの熱回収に相当します。
これは給水が受け取った熱だけを求める簡略計算です。実際は排ガス・周囲への損失、比熱変化、流量計と温度計の誤差を含めて熱収支を確認します。回収熱が減ったときは、給水流量、入口・出口温度、排ガス温度、差圧、伝熱面の汚れを同じ負荷で比較します。
排ガス経路の順番は設備ごとに確認する
代表的な温度利用
過熱器など
エコノマイザ
空気予熱器
この流れは熱を高温から低温まで利用する代表例で、固定の配列規則ではありません。過熱器には放射形・対流形・両者の組合せがあり、ボイラー形式によって配置が変わります。エコノマイザと空気予熱器も、必要温度、燃料、腐食対策、通風抵抗で設計が変わります。
旧稿からの訂正:「過熱器→エコノマイザ→空気予熱器が必ず正しい」「空気予熱器は必ず最下流」とした説明を削除しました。試験では与えられた図と温度条件、実設備では煙道図・P&IDを確認します。
空気予熱器は漏れ・閉塞・腐食を分けて見る
空気予熱器は排ガスから燃焼用空気へ熱を移します。伝熱式は管や板を隔てて熱交換し、再生式は蓄熱体が排ガス側で受熱して空気側で放熱します。
| 観測した変化 | 疑うこと |
|---|---|
| ガス側O₂上昇・ガス量増加 | 空気側からのシール漏れなど |
| 差圧上昇 | 灰・未燃物の付着、閉塞 |
| 低温部の減肉・漏れ | 酸性凝縮液による低温腐食 |
O₂上昇だけで漏れを断定せず、分析計の状態、炉内漏れ込み、シール差圧、空気・ガス流量も確認します。空気予熱器の熱回収が増えると燃焼用空気温度が上がり、条件によってはサーマルNOxが増える傾向もあるため、効率と排出物を同時に管理します。
低温腐食は「排ガス温度だけ」で決めない
硫黄分を含む燃料では、燃焼で生じた硫黄酸化物と水分から酸性の凝縮液が生じ、低温部を腐食することがあります。判断で重要なのは排ガスの平均温度だけでなく、伝熱面の金属温度と酸露点です。
対策は「排ガスを高温のまま捨てる」一つではありません。燃料・排ガス性状、給水温度、入口空気温度、低温端の金属温度、耐食材料、洗浄、減肉測定を組み合わせます。IHIの実設備報告でも、空気入口付近の低温伝熱管で硫酸凝縮による腐食へ注意し、耐食鋼とメタル温度管理を用いています。
過熱器は蒸気流量で管を冷却する
過熱器管は高温の燃焼ガスから熱を受け、内部を流れる蒸気へ渡します。同じ燃焼状態で蒸気流量だけが減ると、管から熱を持ち去る量が減り、管壁温度が上がるおそれがあります。出口蒸気温度が平均値で正常でも、偏流した一部管が過熱する可能性があります。
流量・出口温度
ドレン・偏流
燃焼量・ガス温度
汚れ・偏流
管壁温度・膨出
減肉・支持
現行のボイラー構造規格は、過熱器出口付近の安全弁、出口付近の蒸気温度を示す温度計、過熱器のドレン抜きを求めています。運用では過熱器用安全弁を胴の安全弁より先に作動するよう調整します。
公式・技術資料の確認先
- 厚生労働省:ボイラー構造規格 第63・68・77条
- 厚生労働省:ボイラー及び圧力容器安全規則 第28条
- 安全衛生技術試験協会:ボイラー技士 公表試験問題
- IHI:空気予熱器の熱回収と低温腐食の実設備報告
現行規格・技術情報確認日:2026年7月30日。令和8年4月掲載の公表問題は2026年1月以降施行の法令に未対応との注意書きがあるため、法令事項は現行の厚生労働省資料と照合しています。問題文・計算値・診断事例・表は独自作成です。
第1問:エコノマイザの回収熱量を求める
【問1】給水12,000kg/hをエコノマイザで80℃から130℃へ加熱します。水の比熱を4.2kJ/(kg・K)とし、損失を無視したとき、給水が受け取る熱量は何kWですか。
(1) 70kW
(2) 350kW
(3) 700kW
(4) 2,520kW
(5) 25,200kW
第2問:三装置の配置を判定する
【問2】形式不明のボイラーについて、名称だけから過熱器・エコノマイザ・空気予熱器の正確な煙道順序を決めるよう求められました。最も適切な対応はどれですか。
(1) すべてのボイラーで過熱器→エコノマイザ→空気予熱器と断定する
(2) すべてのボイラーで空気予熱器→過熱器→エコノマイザと断定する
(3) 代表的な温度利用は参考にするが、形式・ガス温度・煙道図を確認して決める
(4) 三装置は必ず同じ場所へ重ねて設置する
(5) 順序は効率・腐食・通風抵抗と一切関係しない
第3問:空気予熱器の漏れを診断する
【問3】再生式空気予熱器で、燃焼条件は同じなのにガス側O₂とガス流量が装置通過後に増え、シール差圧にも変化があります。分析計は正常です。まず疑うものはどれですか。
(1) 空気側からガス側へのシール漏れ
(2) 給水弁の閉止
(3) 蒸気トラップの閉塞だけ
(4) 水面計ガラスの破損
(5) 安全弁の個数不足だけ
第4問:低温腐食の対策を選ぶ
【問4】硫黄分を含む燃料を使う空気予熱器で、低温端に酸性凝縮液と減肉が確認されました。対応として最も適切なものはどれですか。
(1) 排ガス温度だけを限界まで下げ、金属温度は測らない
(2) 燃料・酸露点・低温端の金属温度を確認し、入口空気予熱や耐食材料、点検を組み合わせる
(3) 腐食は高温部だけで起きるため放置する
(4) 給水量をゼロにして運転を続ける
(5) 表面へ水を常時掛ければ必ず解決する
第5問:蒸気流量低下時の過熱器を判断する
【問5】燃焼ガス条件はほぼ同じですが、過熱器を流れる蒸気量が急に減り、管壁温度が上昇しています。最も適切な判断はどれですか。
(1) 蒸気による冷却が減って管が過熱するおそれがあるため、手順に従い燃焼・蒸気流路・温度制御を確認する
(2) 蒸気流量が減るほど管壁は必ず冷えるので放置する
(3) 出口蒸気温度が平均で正常なら、局部過熱は起こらない
(4) 過熱器にはドレン抜きも温度計も不要である
(5) 空気予熱器を停止すれば原因確認なしに必ず直る
採点結果と誤答別の復習先
| 正解数 | 次の行動 |
|---|---|
| 5問 | 第2回へ進み、形式と安全装置を練習 |
| 3〜4問 | 熱量・温度帯・異常兆候を再確認 |
| 0〜2問 | 水・空気・蒸気の対応から復習 |
- 問1を誤答:kJ/hを3,600で割ってkWへ換算する
- 問2を誤答:代表順序と固定配列を区別する
- 問3〜5を誤答:単一値で断定せず、温度・流量・差圧を組み合わせる
次の練習と学習ルート
まとめ
エコノマイザは給水、空気予熱器は燃焼用空気、過熱器は飽和蒸気を加熱します。給水の回収熱量は流量×比熱×温度差で求め、kJ/hをkWへ直すときは3,600で割ります。
三装置の配置は温度利用の代表順序だけで固定せず、形式と煙道図で確認します。低温腐食は金属温度と酸露点、空気予熱器の漏れはO₂・流量・差圧、過熱器の過熱は蒸気流量・ガス条件・管壁温度を組み合わせて判断します。
最終更新日:2026年7月30日
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