ボイラーの構造

【二級ボイラー技士・構造】鋳鉄製ボイラー・特殊ボイラー(温水ボイラー・ハートフォード式連結法)

鋳鉄製ボイラー・特殊ボイラーとは? ─ まず結論から

ボイラーには、鋼(はがね)で作られたものだけでなく、鋳鉄(ちゅうてつ)という素材で作られたボイラーもあります。

鋳鉄製ボイラーは、ブロック(セクション)を組み合わせて作る構造で、腐食(さび)に強く、ビルや学校の暖房・給湯に広く使われています。

また、ボイラーの世界には「温水ボイラー」「廃熱ボイラー」など、ちょっと特殊なタイプも存在します。

この記事では、二級ボイラー技士の試験でよく出る鋳鉄製ボイラー・温水ボイラー・ハートフォード式連結法・廃熱ボイラーをまとめて解説します。試験では「ハートフォード式連結法の目的は?」「鋳鉄製ボイラーの特徴は?」といった問題が繰り返し出題されるので、しっかり押さえましょう。

蒸気や熱の基本をまだ学んでいない方は、先に「熱と蒸気の基礎(熱量・比熱・顕熱・潜熱・飽和蒸気・過熱蒸気)」を読んでおくと理解がスムーズです。

鋳鉄製ボイラーの基本知識

鋳鉄製ボイラーとは

鋳鉄(ちゅうてつ)とは、鉄に炭素を多く含ませた金属のことです。フライパンや鉄鍋にも使われている、あの「鋳物(いもの)」と同じ仲間です。

鋳鉄製ボイラーは、この鋳鉄で作ったセクション(区画)と呼ばれるブロックをいくつも並べて、ボルトで組み合わせた構造をしています。

イメージとしては、レゴブロックを並べて1台のボイラーを作るような感じです。セクションの数を増やせば容量が大きくなり、減らせば小さくなります。

鋳鉄製ボイラーの特徴まとめ

項目 内容
構造 セクション(区画)をボルトで組み合わせる
容量の調整 セクションの増減で可能
耐食性 腐食(さび)に強い
使用圧力 低圧用(蒸気:0.1MPa以下、温水:120℃以下が一般的)
主な用途 暖房用温水ボイラー、給湯用
弱点 熱による不同膨張(ふどうぼうちょう)に弱い。急激な温度変化で割れやすい

ポイントは「低圧で使う」「腐食に強い」「セクションで容量を調整できる」の3つです。試験では、この3つのどれかが問われることがほとんどです。

鋳鉄製ボイラーの用途

鋳鉄製ボイラーは、主に暖房用の温水ボイラー給湯用ボイラーとして使われています。

具体的には、次のような場所で活躍しています。

  • オフィスビルの暖房システム
  • 学校や病院の給湯設備
  • マンションのセントラルヒーティング

高圧の蒸気を作るような大型プラントには向いていません。あくまで「建物の中を暖かくする」「お湯を作る」という用途がメインです。

ハートフォード式連結法 ─ 低水位事故を防ぐ安全構造

ハートフォード式連結法とは

蒸気ボイラーでは、蒸気になった水がどんどん出ていくので、使った分の水を「返り管(かえりかん)」を通じてボイラーに戻す仕組みがあります。

ところが、もし返り管が途中で壊れたり、漏れたりしたらどうなるでしょう?

ボイラーの中の水が返り管を通って外にどんどん流れ出てしまいます。水がなくなると空焚き(からだき)になり、最悪の場合は爆発事故につながります。これを低水位事故(ていすいいじこ)といいます。

ハートフォード式連結法は、この低水位事故を防ぐために考えられた、返り管の接続方法です。

仕組みをわかりやすく解説

通常の接続では、返り管をボイラーの底に直接つなぎます。しかしハートフォード式連結法では、返り管をボイラーの水面より少し下の位置で、蒸気管から分岐した管に接続します。

こうすることで、たとえ返り管が途中で破損しても、水面がこの接続位置より下がらない仕組みになっています。

通常の接続

【ボイラー本体】

水面

↓ 返り管が底に接続

破損すると水が全部抜ける!

ハートフォード式

【ボイラー本体】

水面

← この位置で返り管を接続

破損しても水面はここで止まる!

覚え方:ハートフォード式連結法 = 「低水位事故を防ぐための返り管の接続方法」。試験では「目的は何か?」と聞かれたら「低水位事故の防止」と答えればOKです。

なぜ水面が下がらないのか?

返り管の接続位置が水面より少し下にあるため、もし返り管が途中で破れても、水が流れ出るのは接続位置の高さまでです。

それより下の水は、蒸気の圧力によって押さえられ、外に流れ出ることができません。つまり、接続位置がストッパーの役割を果たしているわけです。

お風呂で例えると、浴槽の横に穴が開いているイメージです。穴の位置より上の水はあふれますが、穴より下の水は残りますよね。ハートフォード式連結法もこれと同じ原理です。

温水ボイラーの特徴と蒸気ボイラーとの違い

温水ボイラーとは

温水ボイラーは、水を沸騰させずに温水(あたたかいお湯)を作るボイラーです。蒸気ボイラーのように蒸気を発生させるのではなく、水を加熱してお湯の状態で送り出します。

身近な例でいえば、マンションの床暖房や、ビルの暖房設備の熱源として使われています。

蒸気ボイラーと温水ボイラーの違い

比較項目 蒸気ボイラー 温水ボイラー
作るもの 蒸気 温水(お湯)
安全装置 安全弁 逃がし弁(または安全弁)
水の膨張対策 不要 膨張タンクが必要

膨張タンクとは?

水は温められると体積が増えます(膨張します)。温水ボイラーでは水を循環させているので、膨張した分の水の「逃げ場」が必要です。この逃げ場が膨張タンクです。

膨張タンクには2種類あります。

開放式膨張タンク

  • タンクの上部が大気に開放されている
  • 構造がシンプルで安価
  • 逃がし管でボイラーとつなぐ
  • 大気圧で運転する暖房向き

密閉式膨張タンク

  • タンクが密閉されている
  • 内部にゴム膜(ダイヤフラム)がある
  • 加圧運転が可能
  • 高温水ボイラーにも使える

逃がし弁と安全弁の違い

蒸気ボイラーには安全弁がついていますが、温水ボイラーには逃がし弁(にがしべん)がついています。

どちらも「圧力が上がりすぎたときに開いて圧力を逃がす」装置ですが、違いがあります。

  • 安全弁:蒸気を逃がす。蒸気ボイラー用
  • 逃がし弁:水(温水)を逃がす。温水ボイラー用

逃がすものが蒸気か水かの違いです。温水ボイラーは水を沸騰させないので、蒸気用の安全弁ではなく、水用の逃がし弁を使うわけです。

試験のひっかけ注意:「温水ボイラーには安全弁を取り付ける」は誤り。正しくは「逃がし弁」です。ただし、密閉式の温水ボイラーでは安全弁を取り付ける場合もあるので、問題文をよく読みましょう。安全弁と逃がし弁の法定基準は附属品の管理規定で詳しく解説しています。

廃熱ボイラー ─ 捨てる熱を再利用する特殊ボイラー

廃熱ボイラー(はいねつボイラー)は、工場の炉やガスタービンなどから出る高温の排ガス(廃熱)を利用して蒸気や温水を作るボイラーです。

通常のボイラーは燃料を燃やして水を加熱しますが、廃熱ボイラーは「どうせ捨てる熱」を再利用するので、燃料を使わない(または少なくて済む)のが大きな特徴です。

廃熱ボイラーの具体例

  • ゴミ焼却施設:ゴミを燃やしたときに出る高温の排ガスで蒸気を作り、発電や暖房に使う
  • 製鉄所:高炉から出る排ガスの熱を回収して蒸気を発生させる
  • ガスタービン発電所:タービンの排気ガスで廃熱ボイラーを動かす(コンバインドサイクル発電)

エネルギーを無駄にしない、環境にやさしいボイラーといえます。

各ボイラーの比較表

種類 特徴 主な用途
鋳鉄製ボイラー セクション構造、腐食に強い、低圧用 ビル・学校の暖房・給湯
温水ボイラー 水を沸騰させず温水を作る、膨張タンクが必要 暖房・給湯・床暖房
廃熱ボイラー 排ガスの熱を再利用、燃料不要または少量 工場・焼却施設・発電所

実務・日常での具体例

ビルの地下機械室で見る鋳鉄製ボイラー

実際のビルメンの現場では、鋳鉄製ボイラーはビルの地下にある機械室(ボイラー室)に設置されていることが多いです。

見た目は、四角いブロック(セクション)がいくつも並んでいるような形をしています。鋼製ボイラーに比べると小ぶりで、「暖房用のボイラーだな」とわかるサイズ感です。

冬場になると、このボイラーで温水を作り、ビル全体に温水を循環させて各フロアを暖めます。ビルメンの仕事では、暖房シーズンの前にボイラーの点検・試運転を行うのが恒例です。

学校の暖房とボイラー

寒い地域の学校では、各教室にパネルヒーター(温水が流れる暖房器具)が設置されていることがあります。この温水を作っているのが、地下のボイラー室にある鋳鉄製ボイラーだったりします。

鋳鉄製ボイラーは腐食に強いので、長い年月使い続けられるのが学校や公共施設で好まれる理由のひとつです。

膨張タンクは屋上にある?

開放式の膨張タンクは、暖房配管の中で一番高い場所に設置します。そのため、ビルの屋上や最上階の天井裏に置かれていることが多いです。

ビルメンが屋上の点検に行ったとき、水槽のような箱を見かけたら、それが膨張タンクかもしれません。

よくある疑問・間違い

Q1. 鋳鉄製ボイラーは高圧でも使えるの?

いいえ、低圧専用です。鋳鉄は衝撃や急激な温度変化に弱いため、高圧の蒸気を作る用途には向いていません。蒸気で使う場合は0.1MPa以下、温水では120℃以下が一般的です。

Q2. ハートフォード式連結法は温水ボイラーにも使うの?

いいえ、ハートフォード式連結法は蒸気ボイラーの返り管の接続方法です。温水ボイラーは水を循環させるだけなので、この仕組みは使いません。試験でひっかけ問題として出ることがあるので注意しましょう。

Q3. 鋳鉄製ボイラーの「セクション」って溶接してるの?

いいえ、セクションは溶接ではなくボルトで締め付けて組み立てます。鋳鉄は溶接が難しい素材なので、ボルト締めが基本です。だからこそ、セクションの数を増減して容量を調整できるのです。

Q4. 廃熱ボイラーには燃焼装置があるの?

基本的には燃焼装置はありません。他の設備から出る排ガスの熱を利用するので、自分で燃料を燃やす必要がないのです。ただし、補助的に燃焼装置を備えるタイプもあります。

🎯 試験で狙われるポイント

  • 鋳鉄製ボイラーの制限 — 蒸気ボイラーは圧力0.1MPa以下、温水ボイラーは温度120℃以下。溶接による修繕不可
  • ハートフォード式連結法 — 返り管を安全低水面の位置に接続して低水位事故を防ぐ。蒸気ボイラーで使用
  • 温水ボイラーの安全装置 — 安全弁ではなく「逃がし弁」。膨張タンクの設置も必須
  • 廃熱ボイラー — 自前の燃焼装置を持たない。他の設備の排ガスから蒸気を回収

理解度チェック

ここまでの内容を、3問のクイズで確認しましょう。

【第1問】 鋳鉄製ボイラーの特徴として、正しいものはどれか。

  1. 高圧蒸気の発生に適している
  2. セクションを溶接して組み立てる
  3. 腐食に強く、セクションの増減で容量を調整できる
  4. 鋼製ボイラーより急激な温度変化に強い
解答を見る

正解:C
鋳鉄製ボイラーは腐食に強く、セクションの数を変えることで容量を調整できます。低圧用であり(Aは誤り)、セクションは溶接ではなくボルトで組み立てます(Bは誤り)。急激な温度変化には弱いです(Dは誤り)。

【第2問】 ハートフォード式連結法の目的として、正しいものはどれか。

  1. ボイラーの熱効率を向上させる
  2. 低水位事故を防止する
  3. 温水ボイラーの水を循環させる
  4. 蒸気の圧力を一定に保つ
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正解:B
ハートフォード式連結法は、蒸気ボイラーの返り管の接続方法で、返り管が破損しても水位が一定以下に下がらないようにすることで、低水位事故を防止する安全構造です。

【第3問】 温水ボイラーに取り付ける圧力逃がし用の安全装置の名称として、最も適切なものはどれか。

  1. 安全弁
  2. 減圧弁
  3. 逃がし弁
  4. 逆止弁
解答を見る

正解:C
温水ボイラーには逃がし弁を取り付けます。安全弁は蒸気ボイラー用です。温水ボイラーは水(温水)を逃がす必要があるため、逃がし弁を使用します。

【第4問】 廃熱ボイラーの説明として、正しいものはどれか。

  1. 廃棄物を燃料として使うボイラーである
  2. 他の設備から出る排ガスの熱を利用して蒸気や温水を作るボイラーである
  3. 使用済みのボイラーを再利用したものである
  4. 廃棄予定の古い型式のボイラーの総称である
解答を見る

正解:B
廃熱ボイラーは、工場の炉やガスタービンなどから出る高温の排ガス(廃熱)を利用して蒸気や温水を作るボイラーです。「廃熱」とは「捨てる熱」のことで、廃棄物やボイラー自体の廃棄とは関係ありません。

もっと問題を解きたい方へ

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まとめ

この記事で学んだポイントをおさらいしましょう。

  • 鋳鉄製ボイラーは、セクション構造で容量調整が可能。腐食に強いが、低圧専用。暖房・給湯がメインの用途
  • ハートフォード式連結法は、蒸気ボイラーの返り管の接続方法で、低水位事故を防止する安全構造
  • 温水ボイラーは、水を沸騰させず温水を作る。膨張タンク(開放式・密閉式)が必要。安全装置は逃がし弁
  • 廃熱ボイラーは、排ガスの熱を再利用するエコなボイラー

次のテーマに進む前に、ここで学んだ内容をしっかり復習しておきましょう。

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