建築物環境衛生管理技術者 清掃

汚れの分類と清掃用具・機械|周速12.5倍・1,512m²/時

「砂やほこりは水溶性の汚れ」は誤りです。砂・泥・ほこり・すすは水にも油にも溶けない固体汚れで、水溶性汚れや油溶性汚れとは落とし方が違います。ここを取り違えると、洗剤を強くしても落ちない汚れを相手に時間を使うことになります。

この記事では、標準型ポリッシャーの周速4.19m/sに対して超高速バフ機が52.4m/sと約12.5倍になることを計算し、自動床洗浄機の実効作業能率を1,512m²/時と積算します。用具と機械を、名称の暗記ではなく「汚れの状態にどの力を与えるか」で選べるようにします。

制度・資料確認日:2026年8月5日。厚生労働省「建築物における維持管理マニュアル 第5章 清掃の管理」、e-Gov法令検索の建築物衛生法施行規則、日本石鹸洗剤工業会の洗浄科学解説を照合しています。作業能率や稼働率は建物の形状・什器量・動線で変わるため、実際の積算は自館の実測値を使ってください。

結論|清掃は「汚れの状態 × 与える力」で決まる

汚れの状態 必要な力 主な用具・機械
表面に載っている粒子 捕捉・吸引 ダストモップ、真空掃除機
床材の凹凸に入った粒子 かき出し+吸引 アップライト型掃除機
床維持剤の表面の汚れ 洗剤+中程度の摩擦 ポリッシャー、自動床洗浄機
床維持剤ごと除去 剥離剤+強い摩擦 ポリッシャー+茶・黒パッド
光沢の回復 高速の摩擦熱 超高速バフ機

用具や機械の名前を先に覚えると、現場で「どれを使うか」の判断につながりません。汚れがどの状態にあるかを見て、必要な力の種類を決め、その力を出せる機械を選ぶ。この順序で覚えると、機種が変わっても判断できます。

汚れは水溶性・油溶性・固体の3つに分ける

分類 下位の分かれ方 具体例
水溶性汚れ 易溶性・難溶性 食塩、糖、汗、変性した蛋白質
油溶性汚れ 強極性・中極性・無極性 脂肪酸、動植物油、鉱油
固体汚れ 親水性・親油性 泥、砂、ほこり、すす

固体汚れは溶けないため、洗剤で「溶かして落とす」対象ではありません。水や洗剤の役割は、粒子を床材から引き離して分散させ、再付着を防ぐことです。だからこそ、砂やほこりに対しては洗剤を強くするより先に、物理的に取り除く工程が効きます。

同じ固体汚れでも、泥のような親水性のものは水系の作業で扱いやすく、すすのような親油性のものは水だけでは分散しにくく広がります。玄関まわりの土砂と、駐車場や機械室の油分を含む黒い汚れを同じ方法で扱うと、後者は拭くほど広がります。

付着の段階も判断材料です。表面に載っているだけなら日常清掃で取れます。床材の凹凸や床維持剤の中に入り込んだ段階では、洗剤と機械の摩擦が要ります。素材そのものが変色したり腐食したりした段階になると、清掃ではなく補修や取替えの領域です。「落ちないから強い洗剤にする」前に、どの段階かを確かめてください。洗剤と床維持剤の選定は「洗剤と床維持剤」で扱っています。

清掃の目的は美観だけではない

厚生労働省の「建築物における維持管理マニュアル」第5章は、清掃の目的を衛生性・美観・保全性・安全性の4つとしています。人の健康を守り、快適さを与え、建築物の機能を長持ちさせ、各室の安全を確保するという整理です。

この4つを意識すると、用具の選定基準が変わります。たとえば床材に合わないパッドを使えば美観は一時的に上がっても保全性を損ないます。濡れたまま放置すれば安全性が下がります。ほこりを舞い上げる方法で除じんすれば、衛生性の面では逆効果です。同マニュアルは、清掃資機材や作業手順に不備があると浮遊粉じんや細菌等の発生を助長する場合があると明記しています。

ポリッシャーは回転数ではなく「周速」で用途が分かれる

パッドの外周が床をこする速さ(周速)は、直径Dと回転数Nから v=πDN/60 [m/s] で求まります。同じ「回転する機械」でも、周速が一桁違えば起きる現象が変わります。

機種 直径×回転数の例 外周の周速
標準型(低速)ポリッシャー 0.40m×200rpm 約4.19m/s
高速型ポリッシャー 0.40m×600rpm 約12.6m/s
超高速バフ機(バーニッシャー) 0.50m×2,000rpm 約52.4m/s

超高速バフ機の周速は標準型の約12.5倍です。摩擦による発熱は速度が上がるほど大きくなるため、バフ機は床維持剤の表面をわずかに軟化させて平滑にし、光沢を出します。逆に標準型は熱をほとんど出さないので、洗剤の化学的な作用と機械的なかき取りで汚れを落とす作業、つまり洗浄と剥離に向きます。

ここから現場の注意が2つ出ます。第一に、熱に弱い床材にバフ機を使うと変色や軟化を起こします。第二に、剥離作業を高速機で行っても効率は上がりません。剥離は剥離剤の反応時間と機械的なかき取りで決まるためです。「速い機械のほうが早く終わる」は、この2点で成り立ちません。

標準型ポリッシャーは重量とハンドル位置で機体が左右に振られます。パッドの回転方向に対して機体が動くため、押さえつけるのではなくハンドルの高さで接地圧を調整するのが基本です。床材ごとの適合は「床材別清掃方法」を参照してください。

フロアパッドは白から黒へ研磨力が上がる。茶を忘れない

研磨力 主な用途
最も弱い バフ仕上げ・光沢出し
弱い スプレーバフ・軽い洗浄
中程度 通常の表面洗浄
強い 汚れの厚い床の洗浄
かなり強い 剥離
最も強い 剥離

「白→赤→青→緑→黒」と5色で覚えている人が多いのですが、実際の製品体系と教材では緑と黒の間に茶が入ります。剥離作業で黒を選ぶ前に、茶で足りないかを検討すると床材への負担を減らせます。

また、この色分けは製品体系として広く共通していますが、レモンイエローなど中間の色を持つシリーズもあり、メーカーや商品ラインで並びが完全に一致するわけではありません。色の記憶だけで選ばず、パッドの用途表示と床材の適合を確認してください。新しい床材が入った区画では、目立たない場所で試験施工してから全面に広げます。

自動床洗浄機の能率は幅×速度×稼働率で出す

自動床洗浄機は、洗剤の供給、ブラシによる洗浄、スクイージーでの汚水回収を1台で行います。導入の判断は「速そうだから」ではなく、作業能率の積算で行います。

洗浄幅0.7m、作業速度を時速3.6km(=1.0m/s)とすると、理論上の能率は0.7×1.0×3,600=2,520m²/時です。ただし実際には旋回、給水・排水、什器の回避、手作業での隅処理が入ります。稼働率を0.6とすると実効能率は2,520×0.6=1,512m²/時となります。

方法 能率 2,000m²の所要時間
自動床洗浄機(実効) 1,512m²/時 約1.3時間
ポリッシャーによる手作業 150m²/時 約13.3時間

差は約10倍です。ただしこれは、機械が走れる連続した面積があってこその数字です。什器が多い、区画が細かい、段差がある、給排水位置が遠いといった条件では稼働率が0.6を大きく下回り、優位性は縮みます。導入前に、機械が入れない面積の比率を平面図で出しておいてください。

定期清掃の年間工数の考え方は「清掃計画と品質評価」で整理しています。機械の導入効果は、時間で比較して初めて予算の話につながります。

掃除機は「吸引」か「かき出し」かで選ぶ

種類 働き方 適する場所
アップライト型 回転ブラシでかき出し吸引 カーペット
キャニスター型 吸引が中心 硬質床、什器まわり
バックパック型 背負って吸引 階段、狭所、什器の多い区画
ウェットバキューム 汚水を吸引回収 洗浄・剥離作業の後処理
エクストラクター 洗剤液の噴射と吸引 カーペットの湿式洗浄

カーペットにアップライト型が向くのは吸引力が強いからではなく、回転ブラシがパイルを起こして奥の粒子をかき出すからです。吸引だけの機種では、パイルの根元に入り込んだ砂は残ります。この砂がパイルを内側から削るため、除じんの不足はカーペットの寿命を直接縮めます。

ダストモップで床の粒子を集める作業も、原理は捕捉です。繊維に付いた吸着剤が粒子を保持するので、舞い上げずに集められます。ただし吸着剤が飽和すると集じん力が落ち、床に薄い膜を残すことがあります。使用後の洗浄と交換の周期を作業手順書に入れてください。

汚れの持ち込みは入口で止めるのが最も安い

建物内の土砂の多くは、外部から靴底で持ち込まれます。いったん床面に広がった砂を除去するより、入口で受け止めるほうが工数も床材の摩耗も小さくて済みます。

除じんマットは、歩行方向の長さが効きます。歩幅を0.6mとすると、6歩分を確保するには3.6mが必要です。風除室の奥行が1.8mしかなければ3歩分にとどまり、屋外側にもマットを置かない限り砂は室内へ入ります。マットの必要長さは面積ではなく歩数で考えてください。

もう一つの注意は、マット自体が汚れの供給源になることです。土砂を保持したままのマットは、歩行のたびに粒子を放出します。マットの清掃・交換頻度を、エントランス床の清掃頻度と別に決めておく必要があります。

剥離洗浄の廃液は、排出先を確認してから作業する

意外に抜けやすいのが廃液の処理です。厚生労働省の維持管理マニュアル第5章は、表面洗浄と剥離洗浄の廃液について、pH、BOD、COD、浮遊物質(SS)、ノルマルヘキサン抽出物質、亜鉛が、剥離剤や洗剤に含まれる界面活性剤・溶剤等の有機物、床維持剤、土砂、ほこりの影響で排出基準値を超えるおそれがあると指摘しています。

下水道へ排出する場合は下水排除基準を守り、浄化槽へ排出する場合は浄化槽の処理能力を確認する必要があります。大量の剥離廃液を一度に流すと、浄化槽の微生物に負荷がかかり処理水質が悪化します。作業計画を立てる段階で、排出先、1回あたりの廃液量、希釈や分割排出の可否を決めてください。排水側の基準と判定手順は「浄化槽と排水処理の判定」で整理しています。

ここまで見ると、清掃用具・機械の選定が、床材の保全、作業時間、排水管理までつながっていることが分かります。「どのパッドを使うか」は色の暗記ではなく、この連鎖のどこに影響するかの判断です。

理解度チェック

【問1】汚れの分類に関する記述のうち、正しいものはどれですか。

  1. 砂やほこりは水溶性汚れに分類される
  2. 砂やほこりは固体汚れに分類される
  3. 脂肪酸や動植物油は水溶性汚れに分類される
  4. 固体汚れは親水性と親油性に分かれず、すべて同じ方法で除去できる
  5. 素材が変色・腐食した段階の汚れは日常清掃で容易に除去できる
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正解:2
砂・泥・ほこり・すすは水にも油にも溶けない固体汚れです。溶かすのではなく引き離して分散させます。4は誤りで、泥のような親水性とすすのような親油性では扱いが変わります。

【問2】直径0.50mのパッドを2,000rpmで回転させる超高速バフ機の、パッド外周の周速に最も近いものはどれですか。

  1. 約5.2m/s
  2. 約16.7m/s
  3. 約52.4m/s
  4. 約105m/s
  5. 約1,000m/s
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正解:3
v=πDN/60=3.1416×0.50×2,000÷60=約52.4m/sです。標準型(0.40m×200rpm)の約4.19m/sに対して約12.5倍で、この速度差が摩擦熱を生み、光沢が出る理由になります。

【問3】洗浄幅0.7m、作業速度1.0m/sの自動床洗浄機を、稼働率0.6で運用したときの実効作業能率はどれですか。

  1. 252m²/時
  2. 907m²/時
  3. 1,512m²/時
  4. 2,520m²/時
  5. 4,200m²/時
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正解:3
理論値は0.7×1.0×3,600=2,520m²/時、稼働率0.6を掛けて1,512m²/時です。2,000m²なら約1.3時間で、ポリッシャー手作業の約13.3時間に対して約10倍の能率になります。

【問4】清掃用具・機械および廃液に関する記述のうち、正しいものはどれですか。

  1. 白パッドは研磨力が最も強く、床維持剤の剥離に用いる
  2. 黒パッドは研磨力が最も弱く、バフ仕上げに用いる
  3. アップライト型掃除機は回転ブラシでカーペットの粒子をかき出す
  4. エクストラクターは硬質床の剥離洗浄に用いる機械である
  5. 剥離洗浄の廃液は水で薄めれば排出先の基準を確認しなくてよい
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正解:3
1と2は白と黒が逆です。4はエクストラクターがカーペットの湿式洗浄用。5は誤りで、維持管理マニュアルはpH・BOD・COD・SS・ノルマルヘキサン抽出物質・亜鉛が基準値を超えるおそれを指摘しており、下水排除基準や浄化槽の処理能力の確認が必要です。

公式の確認先

まとめ|色と機種名の前に、汚れの状態と与える力を決める

汚れは水溶性・油溶性・固体の3つに分かれ、砂やほこりは固体汚れです。溶かす対象ではないため、洗剤を強くする前に物理的に取り除く工程を組みます。親水性の泥と親油性のすすでは、同じ固体汚れでも扱いが変わります。

機械は周速で理解します。標準型4.19m/sに対して超高速バフ機は52.4m/sで約12.5倍。この速度差が摩擦熱を生むため、バフ機は光沢出し、標準型は洗浄と剥離という役割の違いが生まれます。熱に弱い床材への使用と、剥離を高速機で行う誤りに注意してください。

フロアパッドは白・赤・青・緑・・黒の順に研磨力が上がります。5色で覚えていると剥離で黒を選びがちですが、茶で足りることがあります。色の並びは製品体系によって中間色が異なるため、用途表示と床材の適合を必ず確認します。

自動床洗浄機は、洗浄幅0.7m・速度1.0m/s・稼働率0.6で実効1,512m²/時。2,000m²なら約1.3時間で、手作業の約13.3時間に対して約10倍でした。ただし機械が入れない面積が多ければ優位性は縮みます。最後に、剥離洗浄の廃液はpH・BOD・COD・SS・ノルマルヘキサン抽出物質・亜鉛が基準を超えるおそれがあるため、排出先を決めてから作業計画を組んでください。

次は薬剤の側から見た「洗剤と床維持剤」へ、演習は「汚れの分類と清掃用具・機械 ミニテスト第1回」へ進んでください。管理体系は「清掃計画と品質評価」に戻って確認できます。

制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月5日

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