電気事業法は、電気事業のしくみと、電気設備の安全をまとめて定めた法律です。
電気工作物の分類は、受電電圧だけでは決まりません。構外とのつながり方、発電設備の種類と出力、設置場所まで順に確かめます。太陽電池なら、10kW未満が一般用、10kW以上50kW未満が小規模事業用です。「50kW未満は一般用」は2023年3月19日までの区分なので、古い教材の説明には注意しましょう。
この記事では、第1条の目的、電気工作物の範囲、分類の判定手順、電圧の区分を、条文に沿って順に整理します。練習と確認問題では、判定の理由と全選択肢の理由を確認できます。法令の内容は、2026年11月2日にe-Gov法令検索で確認した現行版によります。
1.第1条の目的|「手段」と「結果」に分けて読む
法律の第1条には、その法律が何のためにあるのかが書かれています。電気事業法の第1条は次のとおりです。「よつて」は条文の表記のままです。
この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによつて、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによつて、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。
長い一文ですが、「〜によつて」が2回出てきます。そこで区切ると、「手段」と「結果」の組が2つ見えてきます。
| 手段(何をするか) | 結果(何を実現するか) |
|---|---|
| 電気事業の運営を適正かつ合理的にする | 電気の使用者の利益の保護 電気事業の健全な発達 |
| 電気工作物の工事、維持及び運用を規制する | 公共の安全の確保 環境の保全 |
前の組は、電気を届ける事業のルールです。後の組は、設備を安全に工事し、保ち、動かすためのルールです。ビルの受変電設備の点検や保安規程は、後の組の話だと考えると位置づけがつかめます。
「電気料金を安くする」「電気工事士を育てる」という語句は、第1条にありません。電気工事の資格は電気工事士法のテーマです。語句を入れ替えた穴埋めに出会ったら、まず手段と結果の組が正しいかを見ましょう。
2.電気工作物とは|発電から電気の使用までの設備
電気工作物は、第2条第1項第18号で定義されています。発電、蓄電、変電、送電、配電、電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物です。電線や機器だけでなく、水力発電のダムや水路まで含みます。
ただし、電気事業法施行令第1条の工作物は除かれます。主なものは次の3つです。
- 鉄道車両、船舶、自動車などに設置される工作物(外の設備へ電気を供給するためのものを除く)
- 航空機に設置される工作物
- 電圧30V未満の電気的設備で、30V以上の電気的設備と電気的に接続されていないもの
3つ目で大切なのは後半です。30V未満でも、30V以上の設備と電気的に接続されていれば、この除外には当たりません。
3.分類の全体像|まず一般用かどうかを見る
第38条は、先に一般用電気工作物を定め、それ以外をすべて事業用電気工作物とします。名前に「事業用」とありますが、会社の設備という意味ではありません。「一般用ではない」という意味で読むと間違えません。
言葉を2つ確認します。構内は、まず「同じ敷地の中」と考えてください(法律では、これに準ずる区域も含みます)。需要設備は、受電して電気を使うための設備のことです。
| 区分 | 定義の要点 | 例 |
|---|---|---|
| 一般用 | 構内に設置し、低圧受電の電線路以外で構外とつながらない需要設備や、一定出力未満の小規模発電設備 | 住宅や小さな店舗の屋内配線、住宅の太陽電池6kW |
| 小規模事業用 | 小規模発電設備のうち、一般用の出力以上のもの。構外との接続の条件は一般用と同じ | 低圧受電の店舗の太陽電池30kW、風力10kW |
| 電気事業の用に供するもの | 一般送配電、送電、配電、特定送配電の各事業と、要件に該当する発電事業に使うもの | 一般送配電事業者の配電線路 |
| 自家用 | 電気事業の用に供するものと一般用の、どちらでもないもの | 6,600Vで受電するビルや工場の受変電設備 |
発電事業は、電気事業法施行規則第48条の2の要件に該当するものだけが、自家用から除かれます。「発電の事業だから、自動的に電気事業の用に供するものになる」とは限りません。
小規模事業用と自家用の関係も確認します。第38条第4項の定義文は、小規模事業用を除いていません。一方で第42条は保安規程などの対象から小規模事業用を除き、第43条第2項も「自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。)」と書きます。経済産業省の「太陽電池発電設備を設置する場合の手引き」も、自家用と小規模事業用を別々に案内しています。義務を考えるときは、小規模事業用を別の枠として読むと整理しやすくなります。
4.一般用の判定|4つの順に確かめる
- 構内に設置しているか。
- 構外とのつながりは低圧の受電だけか。電気を使う設備なら、600V以下で受電する電線路以外で、構外の電気工作物とつながっていないことが条件です。
- 同じ構内に、小規模発電設備以外の発電設備がないか。あれば一般用になりません。
- 除外される場所ではないか。施行規則第48条第3項の場所は、火薬類(煙火を除く)を製造する事業場と、石炭坑です。
つまり、600Vを超える電圧で受電すれば2番の条件を満たしません。逆に、600V以下で受電していても、3番か4番に当たれば一般用ではありません。4番は、爆発性や引火性の物がある場所を広く指すのではなく、省令で定めた場所に限られます。
発電設備は「種類」と「出力」で分かれる
発電設備は、種類ごとに区分の境目が違います。低圧(600V以下)の発電設備で、次の表の出力に入るものを小規模発電設備といいます。2023年3月より前の条文では「小出力発電設備」と呼ばれていました。
| 発電設備 | 一般用になる出力 | 小規模事業用になる出力 |
|---|---|---|
| 太陽電池 | 10kW未満 | 10kW以上50kW未満 |
| 風力 | なし | 20kW未満のすべて |
| 水力 | 20kW未満 | なし |
| 内燃力 | 10kW未満 | なし |
| 燃料電池 | 10kW未満 | なし |
| スターリングエンジン | 10kW未満 | なし |
根拠は施行規則第48条第2項と第4項です。風力は、第4項の出力が0kWなので、一般用には入りません。水力と燃料電池には、出力のほかにも条件があります。水力なら、例えば最大使用水量が毎秒1m³未満でダムを伴わないものです。
2023年3月20日に小規模事業用電気工作物が新設され、太陽電池10kW以上50kW未満と風力20kW未満がこの区分に移りました。それ以前の説明をそのまま覚えないようにしましょう。
出力の計算には、2つの決まりがあります。
- 2台以上の太陽電池を同じ構内で電気的に接続するなら、合計の出力を10kWと比べます。
- 表の発電設備どうしを同じ構内で電気的に接続し、合計が50kW以上になると、小規模発電設備から外れます(第48条第2項ただし書)。
太陽電池の出力は、経済産業省の手引きでは、原則として太陽電池モジュールの合計出力で判断します。モジュールとパワーコンディショナーの間に、蓄電池など電気を消費・貯蔵する機器を接続しない場合は、パワーコンディショナーの出力で判断してもよいとされています。
練習|5つの設備を判定してみよう
どれも除外場所ではなく、発電設備は600V以下、構外とは受電の電線路だけでつながるものとします。書いてある出力を判定に使う値とし、Eの燃料電池は種類などの条件を満たすものとします。それぞれの区分を考えてから、解答を開きましょう。
- A:200Vで受電する住宅に、太陽電池6kWを接続
- B:200Vで受電する店舗に、太陽電池6kWと7kWを接続
- C:200Vで受電する事業所に、太陽電池30kWを接続し、ディーゼル発電機20kWも設置
- D:6,600Vで受電するビルに、太陽電池8kWを接続
- E:200Vで受電する事業所に、太陽電池45kWと燃料電池8kWを接続
5.区分で何が変わるか|設置者の義務を比べる
分類を学ぶのは、区分によって設置者がすることが変わるからです。主な違いを並べます。
| 区分 | 主な義務と条文 |
|---|---|
| 一般用 | 保安規程の届出と主任技術者の選任はありません。技術基準に適合させる必要があり、適合しないと所有者や占有者が命令を受けることがあります。電線路を管理する者の調査も定められています(第56条・第57条)。 |
| 小規模事業用 | 保安規程の届出と主任技術者の選任はありません。技術基準への適合の維持、使用開始前の基礎情報の届出、使用前自己確認の結果の届出が必要です(第39条・第46条・第51条の2)。 |
| 自家用(小規模事業用を除く) | 技術基準への適合の維持、保安規程の届出、主任技術者の選任が必要です。工事計画の届出などは、設備の種類や規模で変わります(第39条・第42条・第43条)。 |
「自家用なら、必ず自社で電気主任技術者を選任する」とまでは言えません。電圧7,000V以下で受電する需要設備などは、施行規則第52条第2項により、要件を満たす者に保安管理業務を委託して承認を受ければ、選任しないことができます。保安規程と主任技術者は事業用電気工作物の保安体制、電気主任技術者の選任と職務で詳しく学びます。
6.電圧の区分|電技省令と第38条の「低圧」を分ける
低圧・高圧・特別高圧の区分は、電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)の第2条に定められています。
| 区分 | 直流 | 交流 |
|---|---|---|
| 低圧 | 750V以下 | 600V以下 |
| 高圧 | 750V超7,000V以下 | 600V超7,000V以下 |
| 特別高圧 | 7,000V超 | 7,000V超 |
「以下」はその値を含み、「超」は含みません。交流600Vは低圧、交流7,000Vは高圧です。kVで書かれていたら、1kV=1,000Vで直しましょう。6.6kVは6,600Vなので高圧、22kVは22,000Vなので特別高圧です。
注意したいのは、第38条の「低圧」です。こちらは「経済産業省令で定める電圧以下」で、施行規則第48条第1項が600Vと定めています。直流だけを750Vとする書き方にはなっていません。同じ「低圧」という言葉でも、電圧そのものの区分は電技省令、一般用の判定は電気事業法と施行規則と、見る場所を分けておきましょう。
7.確認問題|条文と判定手順で解く5問
各問で答えを考えてから解答を開きましょう。問題は学習用に作成したもので、公式過去問の転載ではありません。
第1問|第1条の語句
電気事業法第1条に、目的を表す語句として書かれていないものはどれですか。
- (1)電気の使用者の利益の保護
- (2)電気事業の健全な発達
- (3)公共の安全の確保
- (4)電気料金の低廉化
- (5)環境の保全
第2問|電圧の区分
電技省令の区分で、高圧に当たるものはどれですか。
- (1)交流600V
- (2)直流750V
- (3)交流6,600V
- (4)交流7,200V
- (5)交流22,000V
第3問|自家用電気工作物
自家用電気工作物に当たるものはどれですか。どれも除外場所ではなく、書かれていない発電設備はないものとします。
- (1)100Vで受電する住宅の屋内配線
- (2)200Vで受電し、太陽電池6kWを接続した店舗の設備
- (3)6,600Vで受電するビルの受変電設備
- (4)30V以上の設備と電気的に接続されていない12Vの設備
- (5)一般送配電事業者が維持・運用する配電線路
第4問|太陽電池12kWの扱い
200Vで受電する店舗に、太陽電池12kWを設置します。電圧は600V以下で、同じ構内にほかの発電設備はなく、除外場所でもありません。この太陽電池について正しいものはどれですか。
- (1)50kW未満なので一般用電気工作物である。
- (2)小規模事業用電気工作物で、使用開始前の基礎情報の届出が原則として必要である。
- (3)保安規程の届出と主任技術者の選任が必要である。
- (4)電気事業の用に供する電気工作物である。
- (5)低圧なので、技術基準に適合させる必要はない。
第5問|低圧受電でも一般用にならない例
いずれも600V以下で受電し、除外場所ではないものとします。需要設備が一般用電気工作物にならないのはどれですか。
- (1)電灯回路だけの住宅
- (2)同じ構内に太陽電池8kWがある住宅
- (3)同じ構内にディーゼル発電機20kWがある事業所
- (4)店舗として使っている建物
- (5)使用電力が少ない事務所
8.次の学習と公式確認先
第1条は「手段と結果」の2組で読みます。分類は、まず一般用かどうかを4つの順で確かめ、一般用以外を事業用として見ます。太陽電池は10kWと50kWが境目で、風力は一般用に入りません。第38条の低圧は600V、電圧の区分は電技省令と、見る場所も分けておきましょう。
- 電気事業法の目的と電気工作物 ミニテスト第1回:この記事の内容を5問で復習。
- 同ミニテスト第2回・第3回:追加の演習。
- 電気設備技術基準・総則と電路の絶縁:電圧の区分を技術基準の側から確認。
- 前テーマ:自動制御の基礎/次テーマ:事業用電気工作物の保安体制
公式の確認先は次のとおりです。法令は改正されるので、試験や実務では最新の条文を確認しましょう。
- e-Gov法令検索「電気事業法」
- e-Gov法令検索「電気事業法施行令」
- e-Gov法令検索「電気事業法施行規則」
- e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」
- 神奈川県「電気工作物とは」:区分の説明
太陽電池の出力の数え方や届出の流れは、経済産業省「太陽電池発電設備を設置する場合の手引き」を名前で検索して確認できます。
試験の原問題と公表解答は電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の問題と解答」で確認できます。本文は上記の法令と公的資料を確認して独自に構成しており、資料の文章・図表や過去問を転載していません(条文の引用を除きます)。
2026年11月2日確認・改訂。e-Gov法令検索の現行版(電気事業法は2026年8月3日施行、施行規則は2026年4月1日施行の版)で、条文と区分を確認しました。運営者は資格を独学中の個人です。実際の設備の区分や手続きは、産業保安監督部などにご確認ください。
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