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【電験三種・法規】電気主任技術者の選任と職務(免状の範囲・許可・外部委託・事故報告)

電気主任技術者を選任するのは設置者です。選任された人は、電気工作物の工事・維持・運用について、保安の監督を行います。

免状を持つこと、ある設備の主任技術者に選ばれること、保安管理を外部へ委託することは、それぞれ別の話です。設備の区分、免状の監督範囲、必要な手続きの順に確認しましょう。

この記事は、主にビル・工場の自家用電気工作物を想定した電験三種・法規の学習用解説です。2026年11月3日時点の電気事業法、施行規則、電気関係報告規則を確認しています。

1.選任の基本|資格を持つ人から設置者が選ぶ

電気事業法第43条第1項では、設置者が主任技術者免状の交付を受けた者から主任技術者を選任することを原則としています。試験の合格、免状の交付、実際の選任は区別してください。試験に合格しただけで、あるビルの主任技術者に自動的になるわけではありません。

監督する対象には運転開始後だけでなく工事も含まれます。新設時も、使用開始まで保安の監督を考えなくてよいわけではありません。施行規則第52条第1項には、設備の設置工事のための事業場についての区分もあります。

また、小規模事業用電気工作物は、法第42条冒頭でこの款の対象から外され、第43条の選任義務も適用されません。一般用にもこの選任義務はありません。ただし、主任技術者が不要なことと、安全上の義務がないことは別です。設備の区分は電気事業法の目的と電気工作物で復習できます。

通常の選任・許可選任・外部委託承認を比べる

制度 誰を、どのように扱うか
免状による通常の選任 監督範囲に合う免状の交付を受けた人を選任する。選任後の届出が必要。
許可選任 免状の交付を受けていない人を、許可を受けて選任する。本人が主任技術者になる。
外部委託承認 設備・委託先・契約等の要件を満たして承認を受けると、電気主任技術者を選任しないことができる。

外部の人と契約して選任する形態もあるため、「外部の人が担当する」だけで外部委託承認制度とは判断できません。選任する制度なのか、承認を受けて選任しない制度なのかを見分けることが大切です。

2.免状の監督範囲|電圧だけで決めない

施行規則第56条による電気主任技術者免状の範囲は、次のとおりです。表は電気的設備についての要点です。同条の表第4号・第6号にあるダム水路やボイラー・タービン等の非電気的設備は別の範囲であり、第一種電気主任技術者免状でもすべてを兼ねるわけではありません。

免状 事業用電気工作物の監督範囲
第一種 電圧の上限なし。上記の非電気的設備を除く。
第二種 電圧170,000V未満。上記の非電気的設備を除く。
第三種 電圧50,000V未満。ただし出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所を除き、上記の非電気的設備も除く。

「未満」は境界の数値を含みません。50,000Vちょうどは第三種の範囲外です。また第三種では、発電所だけでなく蓄電所の出力も確認します。需要設備の受電電圧と、発電所・蓄電所の出力を同じ基準として扱わないでください。

練習|第三種の範囲を設備ごとに判定する

次のA〜Dについて、第三種免状で電気的設備の保安を監督できる範囲に入るか考えてみましょう。いずれも自家用で、小規模事業用には該当せず、併設設備はないものとします。選任形態など、ほかの条件はここでは判定しません。

  • A:33,000V受電の需要設備。
  • B:50,000V受電の需要設備。
  • C:6,600V・出力4,600kWの太陽電池発電所。
  • D:6,600V・出力5,200kWの蓄電所。

3.選任・解任の届出と許可選任

法第43条第3項の通常の選任届は、選任した後、遅滞なく行います。解任したときも同様です。「年度末にまとめて」や「30日以内」への置き換えはできません。

条文上の届出先は主務大臣です。通常のビルの自家用設備では経済産業省の所管となり、権限の委任などに従った実際の提出先は、所在地を管轄する産業保安監督部などで確認します。「法第43条の文言」と「自分の設備の提出窓口」を区別して読みましょう。

許可選任は、法第43条第2項に基づき、小規模事業用を除く自家用電気工作物で、免状を持たない人を許可を受けて選任する制度です。学歴や経験を自己判断して、届出だけで選任できる制度ではありません。

施行規則第54条では、選任を必要とする理由と、候補者の保安に関する知識・技能の説明書を添えるとしています。設備の種類・規模や候補者の要件は運用上の基準も関わるため、管轄窓口で確認します。「一定の学歴と経験があれば、どんな設備でも許可される」という覚え方は避けましょう。

第43条第3項は、第2項の許可を受けて選任した場合を、通常の選任届から除外しています。一方、解任時の届出は必要です。許可申請と通常の選任届は同じ手続きではありません。

4.外部委託承認|設備の条件・委託先・承認を確認

施行規則第52条第2項は、一定の自家用設備について、所定の委託契約を結び、保安上支障がないとして承認を受けた場合に、電気主任技術者を選任しないことができる制度です。設備の電圧だけ、契約だけでは成立しません。

対象設備 設備側の主な条件
太陽電池発電所・蓄電所 出力5,000kW未満で、電圧7,000V以下で連系等をするもの。
水力・火力・風力発電所 出力2,000kW未満で、電圧7,000V以下で連系等をするもの。
その他の発電所 出力1,000kW未満で、電圧7,000V以下で連系等をするもの。
需要設備 受電電圧7,000V以下。
配電線路 電圧600V以下。

例えば、発電設備のない6,600V受電のビルは需要設備の電圧条件に入りますが、外部委託契約と承認が別途必要です。22,000V受電なら、この需要設備の条件には入りません。発電所の出力上限を一律2,000kW未満としないことも確認してください。

委託先は、施行規則第52条の2の要件を満たす個人事業者又は法人です。個人では免状・告示の要件、機械器具、担当できる業務量など、法人では担当者や保安業務の管理体制などを確認します。一般的な呼び方だけで判断せず、設備の種類と規模、併設設備、契約内容も含めて確認します。

申請と承認の基準は同第53条に定められ、点検の頻度、非常時の連絡、双方の義務と責任、遅滞なく到達できる連絡場所なども関係します。外部委託承認を受けても、設置者の技術基準適合維持や保安規程の義務まで消えるわけではありません。

5.職務と指示|「従う」と「尊重」の根拠を分ける

主任技術者が行うのは、工事・維持・運用に関する保安の監督です。工事方法や保護装置の設定の確認、点検結果に基づく対応の検討、異常時の保安上の判断などが具体例です。すべての点検や工事を本人が直接行う、という意味ではありません。

設計についても、「設計作業をすべて担当する義務」と「設計段階で安全上の内容を確認すること」は別です。監督のために必要な仕様・図面の確認まで職務外と決めつけることはできません。また、主任技術者免状は、工事を施工するための電気工事士等の資格を自動的に兼ねるものではありません。

誰の、どの義務か 根拠と適用範囲
選任された主任技術者の誠実な職務遂行 法第43条第4項。保安の監督を誠実に行う。
工事・維持・運用の従事者の指示遵守 法第43条第5項。主任技術者が保安のためにする指示に従う。
外部委託承認を受けた設置者の意見尊重 施行規則第53条第4項。承認に係る委託契約の相手方の意見を尊重する。
設置者・従業者の保安規程遵守 法第42条第4項。適用される保安規程の職務・組織・権限などを守る。

法第43条に「設置者は主任技術者の意見を尊重する」という一律の条文があるわけではありません。選任された人の意見の扱いは、選任形態に応じた条件や保安規程などを確認します。保安規程に設置者の意見尊重が定められている場合、その規程を守る必要があります。外部委託承認では、上表のとおり施行規則に直接の規定があります。

一方、「設置者だから指示に従わなくてよい」という結論にもなりません。設置者自身が工事・維持・運用に従事する場合は、従事者として第43条第5項との関係を考えます。役割と根拠を確かめず、「従事者=従う、設置者=尊重だけ」で終わらせないことが大切です。

6.事故報告|報告義務者・対象・起算点を押さえる

一般的な自家用設備の事故報告は、設置者が、電気関係報告規則第3条の表に該当する事故について行います。主任技術者が調査や書類作成に関わることと、法令上の報告義務者は区別します。

対象には、感電や電気工作物の破損・誤操作・不操作による死傷事故で死亡又は入院に至ったもの、電気火災(工作物は半焼以上)、他の物件への損傷、条件に該当する主要電気工作物の破損、波及事故などがあります。軽微な故障を含め、すべてが同じ報告対象になるわけではありません。

例えば、主要電気工作物の破損について、需要設備は同表第4号で電圧10,000V以上という条件があります。6,600Vのビルでその号に該当しなくても、死傷・火災・波及など別の号に該当すれば報告が必要です。波及事故の第12号は、電圧3,000V以上の自家用設備の破損・誤操作・不操作により、接続先の一般送配電事業者等へ供給支障を生じさせた場合を定めています。

報告 第3条第2項の期限と内容
速報 事故の発生を知った時から24時間以内、可能な限り速やかに。発生日時・場所・設備・概要を電話等で報告する。
詳報 事故の発生を知った日から起算して30日以内。様式第13の報告書を提出する。

24時間は、原因調査の完了を待ってから数えるものではありません。例えば8時に報告対象の事故の発生を知ったなら、翌日8時は24時間の上限であり、そこまで待ってよいという意味ではありません。判明している概要から、可能な限り速やかに連絡します。

例えば、同条の表第8〜13号に該当し、事故の原因が自然現象である場合など、第3条第2項ただし書には様式第13の提出を要しない例外があります。例外の対象と条件は同項で確認してください。これは速報も不要という規定ではありません。報告先も事故の区分により異なり、通常のビルの死傷事故等は所轄産業保安監督部長ですが、全事故の報告先が一律ではありません。

小規模事業用は主任技術者の選任義務がなくても、同規則第3条の2に定める死傷・火災・他物損傷・主要設備破損の事故報告義務があります。詳細は電気関係報告規則第3条・第3条の2と、設備所在地の管轄窓口で確認してください。提出方法の確認にはNITEの詳報作成支援システム案内も使えます。

7.確認問題|4問で手続きと義務を復習する

各問の正しい説明を1つ選んでください。問題と解説は学習用に独自作成したものです。

第1問|通常の選任と許可選任

小規模事業用を除くビルの自家用需要設備について、法第43条に沿った説明はどれですか。

  1. (1)免状の交付前でも、試験合格だけで第1項の通常の選任ができる。
  2. (2)免状を持つ人の通常の選任届は、年度末にまとめて提出する。
  3. (3)許可選任とは、主任技術者を誰も選任しない制度である。
  4. (4)通常の選任は免状交付者から行い遅滞なく届け出る。免状を持たない人の選任には第2項の許可制度がある。
  5. (5)許可選任の許可は、保安管理業務の委託契約だけで得られる。

第2問|第三種と外部委託の数値

免状の範囲と施行規則第52条第2項の外部委託承認について、正しい説明はどれですか。

  1. (1)第三種免状の電圧範囲は7,000V以下である。
  2. (2)需要設備の7,000V以下という条件は外部委託承認の設備条件で、第三種免状の50,000V未満とは異なる。
  3. (3)太陽電池発電所の外部委託承認の出力条件も2,000kW未満である。
  4. (4)第三種免状では、蓄電所なら出力5,000kW以上でも監督できる。
  5. (5)需要設備は7,000V以下なら、契約も承認もなく主任技術者を選任しなくてよい。

第3問|指示に従う義務の範囲

法第43条の職務・指示について、正しい説明はどれですか。

  1. (1)主任技術者は、すべての工事を本人だけで施工する。
  2. (2)保安のための指示に従うのは、正社員の作業者だけである。
  3. (3)設置者は、作業に従事していても従事者には当たらない。
  4. (4)選任すれば、設置者の技術基準適合維持義務が主任技術者へ移る。
  5. (5)工事・維持・運用に従事する者は、主任技術者が保安のためにする指示に従う。

第4問|事故報告の起算点

通常のビルの自家用設備で、電気関係報告規則第3条の死傷事故に該当し、速報と詳報が必要な事故が起きました。同条第2項に沿う説明はどれですか。

  1. (1)速報は発生を知った時から24時間以内、可能な限り速やかに行い、詳報は発生を知った日から起算して30日以内に提出する。
  2. (2)速報は、原因を特定した時から24時間以内に行う。
  3. (3)詳報の30日は、速報を提出した日から起算する。
  4. (4)24時間以内であれば、概要が分かっていても必ず翌日まで待つ。
  5. (5)主任技術者が選任されていれば、設置者に報告義務はない。

8.演習と公式資料で確かめる

法令は改正されます。試験では適用法令の時点を確認し、実際の設備の選任・申請では所在地を管轄する窓口で最新の様式と適用条件を確認しましょう。

確認日:2026年11月3日。法令の参照版は、電気事業法(2026年8月3日施行)、電気事業法施行規則(2026年4月1日施行)、電気関係報告規則(2025年11月20日施行)です。本文・表・練習は当サイトで独自に作成しました。運営者は資格を独学中の個人です。

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