結論:交流電力は「3つの電力」で考える
直流では P = VI だけで済んだ電力計算。交流では、電圧と電流に位相差があるため、電力も3種類に分かれます。この3つの電力と、現場で超重要な力率改善を理解しましょう。
💡 有効電力 P
実際に仕事をする電力
[W](ワット)
🔄 無効電力 Q
蓄えて返すだけの
「往復」する電力 [var]
📐 皮相電力 S
電圧×電流の
見かけの電力 [VA]
交流電力の3兄弟
有効電力(消費電力)P
実際に仕事をする電力です。モーターを回し、ヒーターを温め、照明を灯す――この「使える電力」が有効電力です。
有効電力
P = VI cosφ [W]
cosφ が力率で、電力をどれだけ「有効に」使えているかを示す指標です。
無効電力 Q
コイルやコンデンサがエネルギーを蓄えて返すことで生じる「往復するだけの電力」です。仕事はしませんが、送電線には電流が流れるので損失の原因になります。
無効電力
Q = VI sinφ [var](バール)
皮相電力 S
電圧と電流をただ掛けたもの。有効電力と無効電力を含む「見かけ上の電力」です。変圧器や発電機の容量はこの単位で表されます。
皮相電力
S = VI [VA](ボルトアンペア)
3つの電力の関係(電力三角形)
インピーダンス三角形とまったく同じ形の三角形が成り立ちます。
S2 = P2 + Q2
| インピーダンス三角形 | 電力三角形 | 対応 |
|---|---|---|
| R(底辺) | P(底辺) | 消費成分 |
| X(高さ) | Q(高さ) | 蓄積成分 |
| Z(斜辺) | S(斜辺) | 合計 |
力率 cosφ ― 電力の「使用効率」
力率とは?
力率の定義
cosφ = PS = RZ
- cosφ = 1(力率100%)→ すべて有効電力。理想的
- cosφ = 0 → 有効電力ゼロ。電気代がかかるのに仕事しない
- 一般的な工場の力率は0.7〜0.85程度
かみ砕くと:力率は「バケツで水を汲んだとき、何%がこぼれずに運べたか」のようなもの。力率0.8なら、送った電力のうち80%が実際に仕事に使われ、残り20%は行って帰ってくるだけの無駄遣い。電力会社は力率の悪い工場に割増料金を請求することがあります。
力率改善 ― 進相コンデンサで無駄を減らす
なぜ力率が悪くなるのか?
工場にはモーター(コイル成分)が大量にあり、電流が遅れ位相になります。この遅れが力率を悪くする原因です。
進相コンデンサによる力率改善
コイルの「遅れ」をコンデンサの「進み」で打ち消すことで力率を改善します。
力率改善に必要なコンデンサ容量
QC = P(tanφ1 − tanφ2) [var]
C = QCωV2 [F]
φ1 は改善前の位相角、φ2 は改善後の目標位相角です。
試験のコツ:力率改善の計算は次の手順で解きましょう。
① 改善前の有効電力 P と力率 cosφ1 を確認
② 目標の力率 cosφ2 から tanφ2 を求める(cosφ = 1 なら tanφ = 0)
③ QC = P(tanφ1 − tanφ2) で必要な無効電力を計算
④ C = QC/(ωV²) でコンデンサ容量を求める
試験に出る!典型的な計算パターン
パターン1:交流電力の計算
例題
200 V、10 A、力率 0.8 の負荷がある。有効電力、無効電力、皮相電力を求めよ。
【解答】
皮相電力:S = VI = 200 × 10 = 2,000 VA
有効電力:P = VI cosφ = 2000 × 0.8 = 1,600 W
sinφ = √(1 − 0.8²) = √0.36 = 0.6
無効電力:Q = VI sinφ = 2000 × 0.6 = 1,200 var
パターン2:力率改善
例題
200 V、50 Hz の回路に接続された負荷が P = 3 kW、力率 cosφ1 = 0.6(遅れ)である。力率を 1.0 に改善するために必要なコンデンサの容量を求めよ。
【解答】
cosφ1 = 0.6 → sinφ1 = 0.8 → tanφ1 = 0.8/0.6 = 4/3
cosφ2 = 1.0 → tanφ2 = 0
QC = P(tanφ1 − tanφ2) = 3000 × 4/3 = 4000 var
C = QCωV² = 40002π × 50 × 200² = 4000100π × 40000
C = 11000π ≈ 3.18 × 10−4 F ≈ 318 μF
まとめ ― 覚えるべき公式と出題のポイント
| 公式名 | 式 | ポイント |
|---|---|---|
| 有効電力 | P = VIcosφ | 実際に仕事をする [W] |
| 無効電力 | Q = VIsinφ | 蓄えて返すだけ [var] |
| 皮相電力 | S = VI | 見かけの電力 [VA] |
| 力率 | cosφ = P/S = R/Z | 1に近いほど効率的 |
| 力率改善 | QC = P(tanφ1−tanφ2) | コンデンサで遅れを打ち消す |
| 電力三角形 | S² = P² + Q² | インピーダンス三角形と相似 |
学習アドバイス:力率はビルメンの実務で毎日のように意識する概念です。受変電設備の力率計を監視し、進相コンデンサの投入・遮断を行うのは設備管理者の基本業務。試験の知識がそのまま現場で活きるテーマなので、しっかりマスターしましょう。
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