理論

半導体と電子回路|pn接合とダイオード、トランジスタの動作領域、FET、オペアンプの負帰還【電験三種・理論】

過渡現象までは、抵抗・コンデンサ・コイルのように、電圧と電流の関係が素子の値だけで決まる部品を扱ってきました。この記事の主役の半導体素子は、そうではありません。ダイオードは向きによって電流の流れやすさがまるで違い、トランジスタは別の端子の電流や電圧で、流れる電流の大きさが変わります。オームの法則や重ね合わせはそのままでは使えないので、「素子がどの状態にあるかを仮定し、簡単なモデルに置き換えて解き、仮定が成り立っているかを確かめる」という手順で扱います。電験三種では、理論科目の「電子理論」にあたる範囲です。ここでは、半導体の中で電気を運ぶものから始めて、ダイオード、トランジスタ、FET、オペアンプの順に、式と例題の数字で確かめていきます。

この記事で押さえること

  • 不純物のない半導体では電子と正孔が同じ数。15族の元素を加えるとn形(多数キャリアは電子)、13族を加えるとp形(多数キャリアは正孔)になる。
  • pn接合は、順方向では電圧に対して電流が指数関数で増え、逆方向では少数キャリアによる小さな電流しか流れない。「0.7 V」は、指数関数を一定の電圧で近似した値。
  • ダイオードやトランジスタを含む回路は、状態を仮定する→モデルで計算する→仮定を検算する、の順で解く。
  • 半波整流の1周期の平均値は最大値の1/π、実効値は1/2。コンデンサで平滑すると、負荷が軽いほど直流の電圧は交流の最大値に近づく。
  • ツェナーダイオードの直列抵抗は、「入力が最低・負荷が最大」でツェナー電流が残り、「入力が最高・無負荷」で損失が定格内になるように選ぶ。
  • IC=hFEIB は能動領域だけの関係。飽和では、コレクタ電流は外の回路で決まる。
  • FETはゲートの電圧で電流を制御し、直流ではゲートにほとんど電流が流れない。サイリスタはゲートで導通させられるが、ゲートでは止められない。
  • オペアンプの「2つの入力が同じ電位」は、負帰還がかかり、出力が飽和していないときだけ使える。

記号と前提。温度はとくに断りがなければ300 K(約27 ℃)とします。大文字の V、I は直流の値、小文字の v、i は時々刻々の値や、動作点からの小さな変化分です。例題の素子の値(順方向電圧、hFE、飽和電圧など)は、計算の流れを見せるために当サイトが決めたもので、実際の部品の値は型番ごとのデータシートで確かめる必要があります。問題文に「理想ダイオード」「順方向電圧0.7 V 一定」などのモデルが指定されていれば、それに従って解きます。

半導体の中で電気を運ぶもの|真性半導体とn形・p形

電気を運ぶ粒子をキャリアと呼びます。金属には自由電子がたくさんあり、その数は温度でほとんど変わりません。シリコン(Si)の結晶では、1個の原子が4個の価電子(いちばん外側の電子)を隣の原子と出し合って結合しているので、低い温度では自由に動ける電子がほとんどありません。熱などのエネルギーで電子が結合から外れると、その電子は結晶の中を動けるようになり、抜けた穴は正孔(ホール)になります。正孔は、隣の電子が次々に穴を埋めていくことで、正の電荷が動いているように振る舞います。

不純物を加えていない真性半導体では、電子が1個外れるたびに正孔が1個できるので、電子の数 n と正孔の数 p は等しくなります。この数を真性キャリア密度 ni と呼びます。結合から電子を外すのに要るエネルギー(バンドギャップ)はシリコンで約1.1 eV で、室温での ni は1 cm3 あたり1010 個程度です。シリコンの原子は1 cm3 あたり約5×1022 個あるので、結合から外れている電子はごくわずかです。

ドナーとアクセプタ|「5価・3価」は価電子の数

価電子が5個の15族の元素(リンなど)をシリコンに少し加えると、結合に使われない電子が1個余り、室温ではほぼすべてが動ける電子になります。電子を与えるのでドナーと呼び、できた半導体をn形と呼びます。価電子が3個の13族の元素(ホウ素など)を加えると、結合の手が1本足りず、そこへ周りの電子が入ることで正孔ができます。電子を受け取るのでアクセプタと呼び、できた半導体はp形です。「5価の不純物」「3価の不純物」という言い方は、この価電子の数のことです。なお、ゲルマニウムはシリコンと同じ14族で、それ自体が半導体の材料です。

種類 加える元素と、キャリア
n形 15族(価電子5個):
リン、ヒ素、アンチモン
不純物の名前:ドナー
多数キャリア:電子
少数キャリア:正孔
p形 13族(価電子3個):
ホウ素、アルミニウム、
ガリウム、インジウム
不純物の名前:アクセプタ
多数キャリア:正孔
少数キャリア:電子
真性
不純物なし
電子と正孔が同じ数
(n=p=ni)。
数は温度で大きく変わる。

少数キャリアの数は np=ni2 で決まる

熱平衡の状態では、不純物を加えても、電子の数と正孔の数の積は ni2 のまま変わりません。電子が増えると、正孔と出会って再結合する機会も増えるからです。

n×p=ni2(熱平衡)

計算用に ni=1.0×1010 個/cm3 として、リンを1 cm3 あたり2.0×1015 個加えたn形を考えます。シリコン原子2,500万個に1個の割合です。ドナーはほぼすべて電子を出すので n≒2.0×1015 個/cm3、正孔は p=(1.0×1010)2/(2.0×1015)=5.0×104 個/cm3 です。電子は真性のときの20万倍に増え、正孔は20万分の1に減りました。多数キャリアと少数キャリアの数は4×1010 倍違いますが、少数キャリアは0ではありません。この少数キャリアが、あとで出てくる逆方向の漏れ電流のもとになります。

温度と抵抗率|「温度が上がると抵抗が下がる」が成り立つ範囲

ni は温度に非常に敏感です。バンドギャップを1.12 eV で一定とした概算では、シリコンの ni は300 K から310 K へ上がるだけで約2.1倍、350 K では約28倍になります。真性半導体では、キャリアがこれだけ増えるので、温度が上がると抵抗率が大きく下がります。温度センサーに使うNTCサーミスタも、半導体のこの性質を利用した素子です(金属の抵抗の温度係数とサーミスタの比較は直流回路の基礎)。

一方、不純物を多く加えた半導体では、室温付近のキャリアの数はほぼ不純物の数で決まり、温度ではあまり変わりません。このとき温度が上がると、結晶の振動にぶつかってキャリアが動きにくくなる(移動度が下がる)ため、抵抗率はむしろ上がる範囲があります。さらに高温になって ni が不純物の数を超えると、真性半導体と同じように下がります。「半導体は負の温度係数」という言い方は、真性半導体やサーミスタについての話だと読んでください。

pn接合|電流が一方向にしか流れないしくみ

1つの結晶の中でp形とn形をつなぐと、境目の近くでは、n側の電子がp側へ、p側の正孔がn側へ広がっていき(拡散)、出会ったものは再結合して消えます。境目には動けないイオン(n側に正のドナーイオン、p側に負のアクセプタイオン)だけが残り、キャリアのほとんどない層ができます。これを空乏層と呼びます。イオンの電荷がつくる電界は、それ以上の拡散を押し返す向きで、境目には電位の段差(拡散電位)ができます。外から電圧を加えないときは、拡散しようとする流れと電界で押し戻される流れがつり合って、電流は0です。

p側を+、n側を−にする順方向の電圧をかけると、電位の段差が低くなり、多数キャリアが境目を越えて相手側へ注入されます。段差を越えられるキャリアの数は、段差が下がった分に対して指数関数で増えるので、電流は電圧の指数関数になります。逆方向の電圧では段差が高くなって空乏層が広がり、多数キャリアは越えられません。流れるのは、段差を下る向きに運ばれる少数キャリアだけです。少数キャリアはごくわずかなので電流は小さく、電圧を上げてもほとんど増えません(逆方向の飽和電流)。ただし少数キャリアの数は ni で決まるので、温度が上がると大きく増えます。

pn接合の電圧と電流(ショックレーの式)

ID=IS×{eVD/(ηVT)−1}

VT=kT/q≒25.9 mV(300 K)

IS は逆方向の飽和電流、η は1〜2の係数(理想係数)、VT は熱電圧です。k はボルツマン定数、q は電気素量で、国際単位系(SI)では2019年から k=1.380649×10−23 J/K、q=1.602176634×10−19 C という誤差のない値に定められています。300 K では VT=25.85 mV です。

順方向で VD が0.1 V 以上あれば e の項が1よりずっと大きいので、1を無視できます。すると、電流が10倍になるたびに電圧は ηVT ln10、η=1なら59.5 mV(約60 mV)ずつ増えます。電流が1 mA から100 mA へ100倍になっても、電圧は約0.12 V しか変わりません。電圧が少し変わるだけで電流が大きく変わるので、目盛りが等間隔のグラフでは、ある電圧から急に電流が立ち上がるように見えます。小信号用のシリコンダイオードに数 mA を流したときの順方向電圧は0.6〜0.7 V 程度になることが多いので、計算ではこれを一定の電圧とみなします。電流が0から急に流れ出す境目の電圧があるわけではありません。

電流を一定にしたまま温度を上げると、IS が大きく増えるので、同じ電流に要る順方向電圧は下がります。シリコンでは1 K あたり約2 mV 下がるという値がよく使われます(素子と電流によって変わります)。50 K 上がれば約0.1 V 下がる計算です。逆方向の漏れ電流は、同じ理由で温度とともに急に増えます。

空乏層は、キャリアのない層をキャリアのある層ではさんだ形なので、コンデンサとしても働きます。逆方向の電圧を大きくすると空乏層が広がり、極板の間隔を広げたのと同じで静電容量は小さくなります(コンデンサの基礎と計算の C=ε0εrS/d)。これを積極的に使うのが、後で出てくる可変容量ダイオードです。

ダイオードを回路の中で解く|モデルの選び方と動作点

ダイオードと抵抗 R を直列にして直流電圧 E をかけると、キルヒホッフの電圧則から E=RID+VD です。この直線(負荷線)とダイオードの特性曲線の交点が、実際に流れる電流と電圧(動作点)です。特性が指数関数なので、式を一度では解けません。そこで、目的に合わせて次のモデルに置き換えます。

モデル 置き換え方と、使ってよい場面
理想
ダイオード
順方向は電圧0の導線、
逆方向は開放。
電源電圧が順方向電圧より
ずっと大きいとき。
定電圧
モデル
順方向は一定の電圧 VF
(0.7 V など)の電池。
電流のおよその大きさが
分かっているとき。
定電圧+
抵抗
電池 VF0 と抵抗 rF の直列。
電流が大きく変わる、
電力用の整流素子など。
指数関数 ショックレーの式のまま。
電源電圧が小さいときや、
誤差を詰めたいとき。
くり返し計算で解く。

どのモデルでも、手順は「導通か遮断かを仮定する→その状態のモデルで回路を解く→仮定と矛盾しないか確かめる」の3段です。導通と仮定して電流が負になったり、遮断と仮定してダイオードに順方向の電圧が VF 以上かかったりしたら、仮定が誤っているので、もう一方の状態で解き直します。ダイオードが2つ以上あるときも、組合せを1つずつ確かめます。

計算例1|動作点をくり返し計算で求め、モデルの誤差を比べる

設定。電流2.0 mA のとき順方向電圧が0.64 V で、電流が10倍になるごとに電圧が0.060 V 増えるシリコンダイオードがある(η≒1)。これを1.5 kΩ の抵抗と直列にして6.0 V の直流電源につなぐ。動作点を求め、定電圧モデル(0.7 V)と理想ダイオードの結果と比べる。次に電源を1.5 V にして同じ比較をする。

① 特性の式:VD=0.64+0.060 log10(ID/2.0 mA)

② VD=0.64 V と置く:ID=(6.0−0.64)/1.5 kΩ≒3.57 mA

③ この電流で電圧を直す:VD=0.64+0.060 log10(3.57/2.0)≒0.655 V

④ もう一度:ID=(6.0−0.655)/1.5 kΩ≒3.56 mA。電圧の変化が0.1 mV 未満になったので止める。動作点は約3.56 mA、0.655 V

⑤ 定電圧モデル:(6.0−0.7)/1.5 kΩ≒3.53 mA(−0.8%)。理想ダイオード:6.0/1.5 kΩ=4.0 mA(+12%)

⑥ 電源1.5 V では、同じくり返しで約0.594 mA、0.608 V。定電圧モデルは 0.8/1.5 kΩ≒0.533 mA(−10%)、理想ダイオードは1.0 mA(+68%)

検算:1.5 kΩ×3.56 mA+0.655 V≒6.0 V で、電源電圧に戻ります。

読み取り。電源電圧が順方向電圧の約9倍ある6.0 V では、どのモデルでも大きくは外れません。1.5 V では、同じダイオードでも理想ダイオードの誤差が7割近くになります。モデルの良し悪しは素子だけでは決まらず、回路の電圧との比で決まります。

小さな変化には「動的抵抗」を使う

動作点の近くで電流を少しだけ変えたときの「電圧の変化÷電流の変化」を、動的抵抗(微分抵抗)と呼びます。ショックレーの式を微分すると rd=ηVT/ID です。計算例1の特性では ηVT=0.060/ln10≒26.1 mV なので、3.56 mA の動作点で rd≒7.3 Ω です。動作点での電圧÷電流(0.655 V/3.56 mA≒184 Ω)とはまったく違う値です。

6.0 V の電源に±0.10 V の小さな揺れが重なったとすると、揺れの分だけを見れば、1.5 kΩ と7.3 Ω の抵抗の直列回路と同じです。電流の揺れは 0.10/(1,500+7.3)≒0.066 mA、ダイオードの電圧の揺れは約0.49 mV です。ダイオード自体は非線形でも、動作点のまわりの小さな変化に限れば線形の素子として扱え、直流回路の解析の重ね合わせも「直流の動作点+小さな変化分」に分けて使えます。トランジスタの増幅回路の計算も、この考え方でできています。

整流と平滑|平均値・実効値と、直流の電圧が最大値近くまで上がる理由

ダイオードが一方向にしか電流を通さない性質を使って、交流を一方向の電流に変えるのが整流です。交流電源 v=Vm sin ωt、理想ダイオード、抵抗 R を直列にすると、正の半周期だけ i=Im sin ωt(Im=Vm/R)の電流が流れ、負の半周期は0になります(半波整流)。平均値は「どの区間で平均したか」で値が変わるので(交流回路の基礎)、整流では1周期で平均した値を使います。

半波整流の1周期の平均値と実効値

Iavg=(1/2π)∫0πIm sinθ dθ=Im/π

Irms=√{(1/2π)∫0πIm2sin2θ dθ}=Im/2

sin の山1つの面積は2なので、平均値は 2Im/2π=Im/π です。正弦波の平均値としてよく使う 2Im/π は正の半周期だけで平均した値で、半波整流では1周期のうち半分しか流れないので、その半分になります。2乗の平均は、正弦波なら1周期で Im2/2 のところ、半分の時間しか流れないので Im2/4 になり、実効値はその平方根の Im/2 です。負の半周期も折り返して使う全波整流では、平均値 2Im/π、実効値 Im/√2(正弦波と同じ)です。直流側の平均電圧を交流の実効値 V で表すと、半波で √2V/π≒0.45V、全波で 2√2V/π≒0.90V になります。ブリッジ回路や三相の整流、サイリスタで直流電圧を変える方法は、機械科目の範囲のパワーエレクトロニクスで扱います。

コンデンサで平滑すると、電圧は最大値近くまで上がる

負荷と並列に大きなコンデンサを置くと、電源電圧が山に近いときだけダイオードが導通してコンデンサを充電し、それ以外の時間はコンデンサが負荷へ放電します。ダイオードは、電源電圧がコンデンサの電圧より順方向電圧の分だけ高いときしか導通しないので、コンデンサの電圧は Vm−VF まで上がり、次の山までに少し下がります。負荷の電流が小さいほど下がり方が小さく、直流の電圧は交流の最大値に近づきます。

脈動(リプル)の概算

半波:ΔV≒IL/(fC)

全波:ΔV≒IL/(2fC)

放電がほぼ1周期(全波なら半周期)続き、その間の負荷電流 IL が一定だとみなして、ΔV=IL×時間/C(コンデンサの基礎と計算の Q=CV)から出した式です。実際には充電している時間の分だけ放電の時間が短く、電圧が下がるにつれて負荷電流も減るので、本当の脈動はこれより少し小さくなります。平滑したときのダイオードの電流は、山の近くの短い時間にまとめて流れる、とがった形になります。

半波整流で平滑すると、電源が負の山 −Vm になったとき、ダイオードの両端にはコンデンサの電圧と合わせて約 2Vm の逆方向電圧がかかります。ダイオードの逆方向の耐電圧は、この値をもとに選びます。

計算例2|平滑なしと平滑ありの半波整流、全波整流と比べる

設定。実効値24 V、50 Hz の交流電源に、ダイオードと200 Ω の抵抗負荷をつなぐ。(a) 平滑なしの半波整流で、理想ダイオードとして負荷電流の最大値・平均値・実効値と負荷の電力を求める。(b) 負荷と並列に1,000 µF のコンデンサを入れ、ダイオードの順方向電圧を0.80 V 一定として、直流電圧の山、脈動の概算、ダイオードにかかる逆方向電圧を求める。(c) 同じコンデンサで全波整流(ブリッジ。電流の通り道にダイオード2個)にした場合と比べる。

① (a) Vm=√2×24≒33.9 V、Im=33.9/200≒170 mA

② Iavg=170/π≒54.0 mA、Irms=170/2≒84.9 mA

③ P=Irms2R=0.08492×200≒1.44 W。平均値で 0.0542×200≒0.58 W とすると、4割しかない

④ (b) 山は 33.9−0.80≒33.1 V、負荷電流は約 33.1/200≒166 mA

⑤ ΔV≒0.166/(50×1,000×10−6)≒3.3 V。直流電圧はおよそ30〜33 V で、平滑なしの平均電圧 33.9/π≒10.8 V の約3倍

⑥ 逆方向電圧は 33.9+33.1≒67 V(約 2Vm)

⑦ (c) 山は 33.9−2×0.80≒32.3 V、ΔV≒0.162/(2×50×1,000×10−6)≒1.6 V。各ダイオードの逆方向電圧は約 Vm=33.9 V

検算:コンデンサの充放電を1 µs 刻みで数値計算すると、脈動は半波で約2.9 V、全波で約1.4 V でした。概算の式は少し大きめに出ますが、見当をつけるには十分です。

よくある誤り。平滑したあとの直流電圧を「0.45×24≒10.8 V」とするのは誤りです。0.45 は抵抗負荷だけの半波整流の平均値で、コンデンサがあると山の値の近くまで上がります。

逆方向の降伏とツェナーダイオード|定電圧回路の設計

逆方向の電圧をさらに上げると、ある電圧で電流が急に増えます。これを降伏と呼びます。不純物を多く入れて空乏層を薄くしたダイオードでは、強い電界で電子が空乏層を突き抜けるツェナー効果(トンネル効果)が起きます。不純物が少なく空乏層が厚いものでは、電界で加速された電子が原子にぶつかって次々に電子と正孔を作る、なだれ降伏が起きます。おおむね5 V より低い降伏電圧ではツェナー効果が、6〜7 V より高いとなだれ降伏が主になり、温度係数は前者が負、後者が正です。その中間の5〜6 V 付近では2つが打ち消し合い、温度で電圧が変わりにくい品が多くなります。どちらの降伏でも、この領域で使うように作られたダイオードを、まとめてツェナーダイオード(定電圧ダイオード)と呼びます。

降伏領域では、電流が大きく変わっても電圧がほぼ一定なので、直列抵抗と組み合わせて定電圧回路を作れます。ふつうのダイオードでも降伏は起きますが、許容損失を超える電流が流れると熱で壊れます。降伏そのものが故障なのではなく、電流を抑えずに降伏させると熱で壊れる、という順序です。

ツェナー定電圧回路の電流

IR=(Vin−VZ)/R

IZ=IR−IL

ツェナー電流 IZ は、降伏を保つための最小値 IZmin を下回ってはいけません。IZ がいちばん小さくなるのは、入力が最も低く、負荷の電流が最も大きいときです。ツェナーダイオードの損失 VZIZ がいちばん大きくなるのは、入力が最も高く、負荷がないとき(IR が全部ツェナーに流れる)です。直列抵抗 R は、この2つの条件を両方満たすように選びます。

計算例3|直列抵抗の範囲を決めて、選んだ値を確かめる

設定。13.5〜16.5 V で変動する直流電源から、6.2 V のツェナーダイオードで負荷へ電圧を供給する。負荷電流は0〜30 mA、降伏を保つ最小のツェナー電流は5.0 mA、ツェナーダイオードの許容損失は1.0 W とする。直列抵抗の範囲を求め、180 Ω を選んだときの各条件を確かめる。

① 上限:入力13.5 V・負荷30 mA で IZ≧5.0 mA だから R≦(13.5−6.2)/(30+5.0) mA≒209 Ω

② 下限:入力16.5 V・無負荷で損失1.0 W 以下だから IZ≦1.0/6.2≒161 mA、R≧(16.5−6.2)/161 mA≒64 Ω

③ 180 Ω を選ぶ。13.5 V・30 mA:IR=7.3/180≒40.6 mA、IZ≒10.6 mA(5.0 mA 以上)

④ 16.5 V・無負荷:IR=10.3/180≒57.2 mA、PZ=6.2×57.2 mA≒0.355 W(1.0 W 以下)

⑤ 抵抗の損失は 10.32/180≒0.59 W。1/4 W や 1/2 W の抵抗では足りない

⑥ 220 Ω にすると、13.5 V・30 mA で IR≒33.2 mA となり、IZ は3.2 mA しか残らない。降伏を保てず、出力電圧が下がり始める

読み取り。「一定」の程度も見ておきます。降伏領域の動的抵抗を8 Ω とすると、入力が3.0 V 変わったときの出力の変化は、負荷の抵抗が8 Ω よりずっと大きいとして 3.0×8/(180+8)≒0.13 V。負荷電流が0から30 mA へ変わったときは、180 Ω と8 Ω の並列(約7.7 Ω)に30 mA を掛けて約0.23 V です。もっと安定した電圧が必要なら、トランジスタやオペアンプと組み合わせます。

光と半導体、そのほかのダイオード

順方向に電流を流すと、n側から注入された電子とp側の正孔が再結合し、そのエネルギーが光として出る素子が発光ダイオード(LED)です。光子1個のエネルギーはほぼバンドギャップ Eg に等しいので、光の波長は材料で決まります。

λ=hc/Eg

λ[nm]≒1,240/Eg[eV]

h はプランク定数、c は光の速さで、どちらもSIで値が定められています(h=6.62607015×10−34 J·s、c=299,792,458 m/s)。hc/q≒1,239.8 nm·eV から1,240 が出ます。Eg=1.9 eV なら約653 nm の赤、2.7 eV なら約459 nm の青です。シリコン(1.12 eV)では約1,107 nm で目に見えない赤外線になり、しかもシリコンは光を出しにくい材料なので、LEDにはガリウムなどを使った化合物半導体が使われます。流す電流を大きくすると明るくなりますが、色(波長)は主に材料で決まります。

LEDの順方向電圧は色によって違い、シリコンダイオードより高いものが多いので、データシートの値を使います。たとえば24 V の直流電源で、10 mA のとき順方向電圧2.0 V のLEDを点灯するなら、直列抵抗は (24−2.0)/10 mA=2.2 kΩ、抵抗の損失は 22 V×10 mA=0.22 W で、LED自身の損失20 mW の11倍です。逆方向の耐電圧が小さいLEDも多いので、逆向きの電圧がかかりうる回路では保護を考えます。

素子 使う向き・しくみ・使い道
ツェナー
ダイオード
逆方向(降伏領域)。
電圧がほぼ一定になる。
定電圧・基準電圧に使う。
発光
ダイオード

LED
順方向。
再結合のエネルギーが光に。
表示灯・照明に使う。
フォト
ダイオード
逆方向。
光で生まれた電子と正孔が
電流になる。光の検出に。
太陽電池 外から電圧をかけない。
光で生まれた電流を
外へ取り出して発電する。
ショットキー
バリア
ダイオード
順方向(整流)。
金属と半導体の接合。
順方向電圧が低く、
切替が速い。
逆方向の漏れは大きめ。
可変容量
ダイオード
逆方向。
電圧で空乏層の厚さ、
つまり静電容量が変わる。
同調回路に使う。

バイポーラトランジスタ|電流の関係と3つの動作領域

バイポーラトランジスタ(BJT)は、n・p・n(npn形)または p・n・p(pnp形)の3層を重ねた素子で、端子はエミッタ(E)、ベース(B)、コレクタ(C)です。npn形で、ベース・エミッタ間の接合を順方向、ベース・コレクタ間を逆方向にすると、エミッタからベースへ電子がたくさん注入されます。ベースはごく薄く、不純物も少なくしてあるので、注入された電子の大部分は、ベースの正孔と再結合する前にコレクタ側の空乏層に届き、その電界でコレクタへ引き込まれます。ベースで再結合するわずかな分を補うのがベース電流です。小さなベース電流で大きなコレクタ電流を制御できるのはこのためで、電子と正孔の両方が働くのでバイポーラ(2極性)と呼びます。

IE=IB+IC
(どの状態でも成り立つ)

IC=αIE、IC=hFEIB
(能動領域だけ)

hFE=α/(1−α)

1行目はキルヒホッフの電流則そのもので、どの動作状態でも成り立ちます。エミッタ電流のうちコレクタに届く割合 α(ベース接地の電流増幅率)は1よりわずかに小さく、IC=αIE と1行目から hFE=IC/IB=α/(1−α) が出ます。α=0.990 なら hFE=99、0.995 なら199、0.996 なら249 です。αがわずか0.6% 違うだけで hFE が2.5倍になるので、hFE は同じ型番でも個体ごとに大きくばらつき、コレクタ電流や温度でも変わります(温度が上がると大きくなるのがふつうです)。hFE の値そのものを覚えるより、ばらついても動くように回路を作る、と考えるほうが実際的です。

状態 接合の向きと、電流・電圧
遮断 B-E が順方向になっていない。
IB≒0、IC≒0。
スイッチの「切」。
能動 B-E は順方向、
B-C は逆方向。
IC=hFEIB。増幅に使う。
飽和 B-E、B-C とも順方向。
VCE は飽和電圧 VCE(sat)
(小さな値)まで下がる。
IC は外の回路で決まり、
hFEIB より小さい。
スイッチの「入」。

動作状態がわからないときは、まず能動と仮定して IC=hFEIB を計算し、コレクタ側の回路から VCE を求めます。VCE が飽和電圧より大きければ仮定どおり能動です。小さく(あるいは負に)なったら飽和で、コレクタ電流は (VCC−VCE(sat))/RC に抑えられます。

計算例4|hFE のばらつきで、能動にも飽和にもなる

設定。24 V の電源から1.5 kΩ の抵抗を通してnpn形BJTのコレクタへつなぎ、エミッタは接地する。ベースには5.0 V の信号を47 kΩ の抵抗を通して加える。VBE=0.70 V、VCE(sat)=0.15 V とする。(a) hFE=150 のとき、(b) 同じ型番の別の個体で hFE=250 のときの動作状態、IC、VCE、コレクタ損失を求める。(c) hFE が最小100 の個体でも、2倍の余裕をもって飽和させるベース抵抗を求める。

① IB=(5.0−0.70)/47 kΩ≒91.5 µA

② (a) 能動と仮定:IC=150×91.5 µA≒13.7 mA、VCE=24−1.5 kΩ×13.7 mA≒3.41 V。0.15 V より大きいので能動で正しい

③ 損失 PC=VCEIC≒3.41×13.7 mA≒46.9 mW

④ (b) 能動と仮定すると IC=22.9 mA、VCE=24−34.3=−10.3 V となり矛盾する。飽和して IC=(24−0.15)/1.5 kΩ=15.9 mA、VCE=0.15 V、損失 0.15×15.9 mA≒2.4 mW

⑤ 飽和の境目は hFE=15.9 mA/91.5 µA≒174。これより大きい個体は飽和、小さい個体は能動

⑥ (c) IB≧2×15.9 mA/100≒0.318 mA、RB≦4.3 V/0.318 mA≒13.5 kΩ。12 kΩ を選ぶと IB≒0.358 mA

読み取り。同じ回路でも、hFE のばらつきだけで、増幅に使える能動の状態にも、スイッチの「入」の状態にもなります。増幅に使う回路では、エミッタに抵抗を入れて負帰還をかけ、動作点が hFE にほとんど左右されないようにするのがふつうです。スイッチとして使うなら、(c) のように最小の hFE でも確実に飽和させます。飽和ではコレクタ損失が能動のときの約20分の1になっています。

小さな信号の増幅|動作点のまわりで線形の回路として扱う

増幅回路では、ベースに直流の電流(バイアス)を流して能動領域の中に動作点を置き、そこに小さな交流信号を重ねます。ダイオードの動的抵抗と同じく、動作点のまわりの小さな変化だけを見れば、トランジスタは線形の素子として扱えます。そのときの等価回路を表すのが h パラメータです。

エミッタ接地の h パラメータ

vbe=hieib+hrevce

ic=hfeib+hoevce

hie は入力インピーダンス[Ω]、hfe は小信号の電流増幅率、hre は電圧帰還率、hoe は出力アドミタンス[S]です。hre と hoe は小さいので0とみなすことが多く、そうすると入力側は抵抗 hie、出力側は hfeib の電流源という簡単な回路になります。直流の比 hFE(添字が大文字)と、小さな変化の比 hfe(小文字)は別の量ですが、値は近いことが多いです。hie は動作点の電流で変わり、ベース広がり抵抗を無視した目安では hie≒hfeVT/IC(IC=1.0 mA、hfe=160 なら約4.1 kΩ)です。

交流の等価回路では、結合コンデンサと、エミッタ抵抗に並列のバイパスコンデンサを短絡し、直流電源も短絡(交流分は0)として扱います。するとコレクタ抵抗 RC と負荷 RL は並列になり、その合成を RL' とすると、出力電圧は vo=−hfeib×RL'、入力は vi=hieib です。

Av=vo/vi=−hfeRL'/hie

hfe=160、hie=4.0 kΩ、RC=4.7 kΩ、RL=10 kΩ なら、RL' は4.7 kΩ と10 kΩ の並列で約3.20 kΩ、Av=−160×3.20/4.0≒−128 です。負号は、入力と出力の位相が180°ずれる(反転する)ことを表します。デシベルで表すと電圧利得は 20 log10128≒42.1 dB です。負荷へ流れる電流は、hfeib が RC と RL に分かれるうちの RL 側なので、電流利得は 160×4.7/(4.7+10)≒51.2、電力利得は 128×51.2≒6,540 倍で 10 log106,540≒38.2 dB です。電圧や電流の比は20 log、電力の比は10 log で、取り違えやすいところです。ここではベースのバイアス抵抗(信号源から見て hie と並列に入る)を十分大きいとして省いています。

FETとサイリスタ|スイッチとして使う半導体

電界効果トランジスタ(FET)は、ゲート(G)の電圧でドレイン(D)とソース(S)の間の通り道(チャネル)の太さを変え、電流を制御します。チャネルを流れるのはn チャネルなら電子、p チャネルなら正孔の一方だけなので、ユニポーラ形とも呼ばれます。

  • 接合形FET(JFET):ゲートとチャネルのpn接合に逆方向の電圧をかけ、空乏層の広がりでチャネルを細くする。ゲート電圧0で電流が流れ、逆方向の電圧を大きくすると減る。
  • MOSFET:ゲートを薄い酸化膜(絶縁物)でチャネルから隔て、電界でチャネルを作ったり変えたりする。ゲート電圧0では流れず、しきい値電圧を超えると流れ始めるものがエンハンスメント形、0でも流れるものがデプレション形。

どちらも、直流ではゲートにほとんど電流が流れないので、入力インピーダンスが非常に大きくなります。JFETのゲートは逆方向のpn接合、MOSFETのゲートは絶縁物だからです。ただしMOSFETのゲートは酸化膜をはさんだコンデンサなので、オンとオフを切り替える瞬間には、その静電容量を充放電する電流が流れます。FETの増幅の度合いは相互コンダクタンス gm=ΔID/ΔVGS[S]で表し、ソース接地の増幅回路の電圧増幅度は Av≒−gmRD'(RD' はドレイン抵抗と負荷の合成)です。たとえば gm=4.0 mS、ドレイン抵抗3.0 kΩ、負荷6.0 kΩ なら RD'=2.0 kΩ で、Av≒−8.0 です。

比べる点 BJT MOSFET
制御 ベース電流 ゲート電圧
入力側 電流が要る 直流ではほぼ0
キャリア 電子と正孔 どちらか一方
オン時 電圧 VCE(sat) 抵抗 RDS(on)
高温 電流が
増えやすい
RDS(on) が
大きくなる

スイッチとして使うときの損失は、BJTが「飽和電圧×電流」、MOSFETが「オン抵抗×電流の2乗」です。VCE(sat)=0.30 V のBJTと RDS(on)=0.060 Ω のMOSFETなら、2.0 A ではBJT 0.60 W・MOSFET 0.24 W、10 A ではBJT 3.0 W・MOSFET 6.0 W で、0.30/0.060=5.0 A を境に大小が入れ替わります(BJTには、ベース電流を流す損失も別にかかります)。パワーMOSFETのオン抵抗は、十分にオンしている状態では温度が上がると大きくなるのが一般的で、並列につないだとき熱い素子の電流が減る向きに働きます。BJTは温度が上がると同じ VBE で電流が増えるので、並列にすると熱い素子に電流が集まりやすく、熱暴走に注意が要ります。耐電圧の高いMOSFETほどオン抵抗が大きくなりやすいので、高電圧・大電流のインバータでは、MOSFETのゲートとBJTの出力を組み合わせたIGBTが多く使われます(パワーエレクトロニクス、誘導電動機の始動法と速度制御)。

サイリスタは、ゲートで入れて、電流で止める

サイリスタ(SCR、逆阻止三端子サイリスタ)は p・n・p・n の4層の素子で、アノード(A)・カソード(K)・ゲート(G)の3端子をもちます。アノードが正の向きの電圧のときにゲートへ電流のパルスを入れると導通し、その後はゲートの電流をなくしても導通を続けます。止めるには、アノード電流を保持電流より小さくするか、逆方向の電圧をかけます。交流の回路では、電流が0を横切るたびに自然に止まります。ゲートの信号で止められるGTOやIGBTは自己消弧形と呼ばれ、区別されます。電流を流し始める時刻(点弧角)で直流電圧を変える位相制御はパワーエレクトロニクスで扱います。

オペアンプ|理想の性質と、仮想短絡が使える条件

演算増幅器(オペアンプ)は、非反転入力(+)と反転入力(−)の電圧の差を大きく増幅する集積回路です。出力は vo=A(v+−v−) で、A を開ループ増幅度と呼びます。実際のオペアンプの A は直流付近で105 倍(100 dB)以上のものが多く、周波数が高くなると下がります。出力は電源電圧の範囲を超えられません。

性質 理想の値と、言えること
開ループの
増幅度
∞。出力が有限なら、
入力の電圧差は0。
入力
インピーダンス
∞。入力端子に
電流は流れない。
出力
インピーダンス
0。負荷をつないでも
出力電圧が変わらない。
周波数帯域 ∞。どの周波数でも
同じ増幅度。
オフセット 0。入力の差が0なら
出力も0。

仮想短絡(2つの入力が同じ電位)は、表の1行目の「出力が有限なら」から出てきます。v+−v−=vo/A なので、A が非常に大きくても、vo が電源の範囲におさまっていなければ、差は0になりません。出力を反転入力へ戻す負帰還があると、出力が上がりすぎれば v− も上がって差を縮める向きに働くので、出力は差がほぼ0になる値に落ち着きます。負帰還がないとき(比較器として使うとき)や、出力が電源の範囲の端に張り付いた(飽和した)ときは、入力電流0は成り立っても、仮想短絡は成り立ちません。

反転・非反転の増幅度を、電流の式から導く

反転増幅回路(入力を R1 で反転入力へ、出力を Rf で反転入力へ戻し、非反転入力は接地)では、仮想短絡で v−=0 V(仮想接地)です。R1 を流れる電流 vi/R1 はオペアンプに入れないので、全部 Rf を流れます。Rf の電圧降下の分だけ出力は0 V より下がり、vo=−Rf×vi/R1 です。入力を2本以上の抵抗から入れれば、電流が反転入力の点で足し合わされて vo=−Rf(v1/R1+v2/R2)(加算回路)になります。信号源から見た入力抵抗は、仮想接地までの R1 です。

非反転増幅回路(入力を非反転入力へ、反転入力と接地の間に R1、出力と反転入力の間に Rf)では、v− は出力を R1 と Rf で分圧した値で、仮想短絡でこれが vi に等しくなります。

反転:Av=−Rf/R1

非反転:Av=1+Rf/R1

非反転増幅回路で Rf=0 とし、R1 を外すと、増幅度1のボルテージフォロワになります。入力インピーダンスが大きく出力インピーダンスが小さいことを利用して、電流を取り出せない信号源と負荷のあいだに入れる緩衝(バッファ)に使います。

計算例5|開ループ増幅度が有限のときと、出力が飽和したとき

設定。非反転増幅回路で R1=2.0 kΩ、Rf=18 kΩ とする。出力は±10 V で飽和するものとする。(a) 開ループ増幅度 A が105 のときと、200 のとき(高い周波数で開ループ増幅度が下がった場合)の増幅度を求める。(b) 入力が0.50 V と1.2 V のときの出力と、反転入力の電圧を求める。

① 理想の増幅度:1+18/2.0=10

② 帰還率 β=R1/(R1+Rf)=0.10。vo=A(vi−βvo) から vo/vi=A/(1+Aβ)

③ A=105:105/(1+104)≒9.999(理想との差0.01%)

④ A=200:200/(1+20)≒9.52(−4.8%)

⑤ (b) 0.50 V:vo=10×0.50=5.0 V。±10 V の範囲内なので、v−=5.0×2.0/20=0.50 V となり、仮想短絡が成り立つ

⑥ 1.2 V:式どおりなら12 V だが、10 V で飽和する。v−=10×2.0/20=1.0 V で、v+=1.2 V と0.2 V 違う。仮想短絡は成り立たない

読み取り。「A は∞」とみなしてよいのは、Aβ が1よりずっと大きいときです。増幅度を大きくする(βを小さくする)ほど、また周波数が高くなって A が下がるほど、理想の式からずれます。飽和しているのに v+=v− として計算を進めると、答えがまったく合わなくなります。

よく聞く言い方と正しい読み方

よく聞く言い方 正しい読み方
「半導体は
高温で
抵抗が減る」
真性半導体と
サーミスタの性質。
不純物の多い半導体は
室温付近で逆の範囲も。
「順方向電圧
は0.7 V」
電流10倍で約60 mV、
温度1 K で約2 mV
変わる近似値。
問題文のモデルに従う。
「逆方向には
流れない」
少数キャリアによる
小さな漏れ電流がある。
降伏電圧を超えると
急に増える。
「IC は
hFEIB」
能動領域だけ。
飽和では外の回路で
決まり、それより小さい。
「オペアンプ
の入力は
同じ電位」
負帰還があり、
出力が飽和して
いないときだけ。
「FETの
ゲートには
流れない」
直流ではほぼ0。
切り替える瞬間は
ゲートの静電容量を
充放電する電流が流れる。
「サイリスタ
はゲートで
切れる」
ゲートで入るが、
ゲートでは切れない。
電流を保持電流未満に
下げると止まる。

理解度チェック

どの問題も、正解の理由に加えて、ほかの4つの選択肢のどこが誤りかを書いています。問題文と数値は当サイトのオリジナルで、過去問を書き写したものではありません。

確認1|ツェナー定電圧回路の直列抵抗と最大の損失

直流電源の電圧が10〜14 V の範囲で変わる。直列抵抗 R を通して、ツェナー電圧5.6 V のツェナーダイオードと負荷を並列につなぐ。負荷電流は0〜25 mA の範囲で変わり、降伏を保つにはツェナー電流が4.0 mA 以上必要である。すべての条件で降伏を保てる R の最大値と、その R を使ったときにツェナーダイオードで生じる最大の損失の組として、最も近いものを1つ選べ。

  1. (1)152 Ω、0.310 W
  2. (2)176 Ω、0.267 W
  3. (3)290 Ω、0.162 W
  4. (4)152 Ω、0.170 W
  5. (5)152 Ω、0.465 W

確認2|反転増幅回路の出力が飽和するとき

理想オペアンプ(入力電流0、開ループ増幅度は十分大きい)の非反転入力を接地し、入力信号を4.0 kΩ の抵抗で反転入力へ、出力を60 kΩ の抵抗で反転入力へ戻した。出力は±13 V で飽和する。入力が+0.60 V のときの出力、入力が+1.2 V のときの出力、入力が+1.2 V のときの反転入力の電圧を並べた組のうち、正しいものはどれか。

  1. (1)−9.0 V、−13 V、+0.31 V
  2. (2)−9.0 V、−18 V、0 V
  3. (3)−9.0 V、−13 V、0 V
  4. (4)−9.6 V、−13 V、+0.31 V
  5. (5)+9.0 V、+13 V、+0.31 V

確認3|半導体素子の記述

半導体素子についての記述として、正しいものを1つ選べ。

  1. (1)シリコンにホウ素を少し加えると、多数キャリアが電子のn形半導体になる。
  2. (2)pn接合に逆方向の電圧を加えると、降伏電圧に達するまで電流はまったく流れない。
  3. (3)飽和領域のBJTでは、コレクタ電流は hFEIB より小さく、コレクタ側の電源と抵抗で決まる。
  4. (4)パワーMOSFETのオン抵抗は温度が上がると小さくなるので、並列につなぐと熱い素子に電流が集まりやすい。
  5. (5)LEDの発光色は、主に流す電流の大きさで決まる。

まとめ

  • 真性半導体は n=p=ni。15族でn形、13族でp形。熱平衡では np=ni2 で、少数キャリアは少ないが0ではない。
  • pn接合の電流は電圧の指数関数。電流1桁で約60 mV(η=1)、電流一定なら温度1 K で約2 mV 下がる。逆方向には少数キャリアの小さな電流が流れる。
  • ダイオードとトランジスタは、状態を仮定→モデルで計算→検算。モデルの誤差は、回路の電圧との比で決まる。
  • 半波整流の1周期の平均値は Im/π、実効値は Im/2。平滑すると直流の電圧は Vm−VF 近くまで上がり、脈動は IL/(fC) 程度。
  • ツェナーの直列抵抗は「入力最低・負荷最大」で上限、「入力最高・無負荷」で下限を決める。抵抗自身の損失も確かめる。
  • BJTの IC=hFEIB は能動領域だけ。hFE は個体・電流・温度で大きく変わる。小信号の電圧増幅度は −hfeRL'/hie。
  • FETは電圧で制御し、直流のゲート電流はほぼ0。サイリスタはゲートで入り、電流を保持電流未満にすると止まる。
  • オペアンプの仮想短絡は、負帰還があり出力が飽和していないときだけ。反転は −Rf/R1、非反転は 1+Rf/R1。

演習と、前後のテーマ

本文の出典は2026年9月30日に原文を開いて確認しています。電気素量・ボルツマン定数・プランク定数・光の速さの値は、国際度量衡局(BIPM)が公表しているSIの定義定数の表の表の値です。理論科目に電子理論が含まれることと解答方式は、電気技術者試験センターの試験内容の表で確かめました。シリコンの真性キャリア密度、順方向電圧の温度係数、降伏の種類が切り替わる電圧などは教科書で広く使われている目安で、素子や条件によって変わります。例題と確認問題の素子の値は計算の流れを見せるために当サイトで選んだもので、特定の部品の値ではありません。実際の部品を選ぶときは、型番ごとのデータシートで確かめてください。

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

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