理論

三相交流回路|Y・Δ結線の√3と30°、1相分の等価回路、三相電力、二電力計法【電験三種・理論】

交流電力と力率改善では、1組の電圧と電流から有効電力と無効電力を出しました。発電機から送電線、建物の動力設備まで、大きな電力を運ぶ回路の多くは、その1組を3つ組み合わせた三相交流です。三相の計算には √3 という係数が何度も出てきます。ただ、どこに √3 が付くかを表で覚えただけだと、相順が逆になったり、3つの負荷がそろっていなかったりしたときに手が止まります。この記事では、√3 と30°のずれを「2つのフェーザの差」から導き、そろった負荷を1相分に直して解く手順、三相電力の式が使える条件、電力計2台で三相の電力を測るしくみ、負荷がそろっていないときに中性線で起きることまでを、計算しながら確かめます。

この記事で押さえること

  • 対称三相の3つの電圧は、大きさが等しく120°ずつずれている。3つのフェーザを足すと0になる。
  • Y結線の線間電圧は2つの相電圧の差、Δ結線の線電流は2つの相電流の差。どちらも大きさは√3倍になり、30°の位相のずれを伴う。30°の向きは相順で反対になる。
  • そろった負荷は、ΔならYに直し(ZY=ZΔ/3)、1相分の単相回路で解いてから3相に戻す。
  • 三相電力は1相分の3倍で、P=√3VLIL cosφ。φ は相電圧と相電流の角度の差で、線間電圧と線電流の角度の差ではない。
  • そろった三相負荷の瞬時電力は、時刻によらず一定になる。
  • 中性線のない三相3線式の電力は、電力計2台の指示を符号つきで足せば測れる。負荷がそろっていなくてもよい。
  • 負荷がそろっていないと中性線に電流が流れる。中性線が切れると負荷の中性点がずれ、軽い負荷の相に高い電圧がかかる。

記号と向きの約束。電圧・電流は、正弦波の定常状態の実効値フェーザで書きます。相は a・b・c、線の端子は A・B・C、中性点は N と呼び、断らない限り正相順(a→b→c の順に最大値が来る)とします。線間電圧は VAB=VAN−VBN の向き、線電流は電源から負荷へ入る向き、Δの枝の電流 IAB は A から B へ流れる向きを正にとります。φ は1相の電圧の角度から電流の角度を引いた値で、遅れを正とします。

3つの電圧は120°ずつずれ、対称なら和が0になる

三相の電源は、大きさの等しい3つの正弦波電圧を、120°ずつ位相をずらして並べたものです。1相の実効値を V とすると、瞬時値は次のとおりです。

va=√2V sinωt

vb=√2V sin(ωt−120°)

vc=√2V sin(ωt−240°)

フェーザでは V∠0°、V∠−120°、V∠120° です(−240°と120°は同じ向き)。大きさを1として、3本を実部と虚部に分けて足してみます。

相 角度 実部 虚部
a 0° 1 0
b −120° −0.5 −0.866
c 120° −0.5 +0.866
和 — 0 0

実部も虚部も打ち消し合って、和は0です。フェーザの和が0なので、瞬時値の和もどの時刻で見ても0になります。ただし、これは3つの大きさが等しく、ずれがちょうど120°の対称三相だから言えることです。大きさか角度のどちらかがずれれば、和は0になりません。後半で扱う中性線の電流は、この「打ち消し切れなかった残り」です。

相順|どの順に最大値が来るか

a→b→c の順に最大値が来る並びを正相順、a→c→b の順を逆相順と呼びます。電源の3本の線のうち2本を入れ替えると、相順は逆になります。三相誘導電動機の中にできる回転磁界は相順の向きに回るので、2本を入れ替えると電動機は逆向きに回ります(しくみは誘導電動機の原理と構造)。回路の計算では、相順が変わると、次に出てくる30°のずれの向きが反対になります。

Y結線|線間電圧は2つの相電圧の差

3つの電源(または負荷)の片端を1点にまとめ、残りの端から A・B・C の3本の線を出す結線がY結線(星形結線)です。まとめた点が中性点 N です。1つの相にかかる VAN などを相電圧、線と線のあいだの VAB などを線間電圧と呼びます。線と相は1本の電線でつながっているので、線電流と相電流は同じです。

線間電圧は、キルヒホッフの電圧則から2つの相電圧の差になります。相電圧の大きさを VP として、VAN=VP∠0° から VBN=VP∠−120° を引きます。

VAB=VAN−VBN

=VP{1−(−0.5−j0.866)}

=VP(1.5+j0.866)

=√3VP∠30°

大きさは √(1.52+0.8662)=√3、角度は tan−1(0.866/1.5)=30° です。引き算は「引く側を180°回して足す」ことなので、VAN と、VBN を反転した −VBN=VP∠60° を足していることになります。60°離れた同じ長さの2本を足すと、長さは√3倍になり、向きは2本のちょうど中間の30°になる。これが√3と30°の出どころで、交流回路の基礎の「位相差60°の2つの電圧の和」と同じ計算です。

Y結線(対称な相電圧・正相順)

VL=√3VP、IL=IP

VAB は VAN より30°進む

逆相順では VBN=VP∠120° になるので、同じ引き算で VAB=√3VP∠−30°、つまり30°遅れます。√3倍という大きさは相順によりませんが、30°の向きは相順と引き算の順序で決まります。「線間電圧はいつも30°進む」と覚えるのではなく、その都度フェーザの引き算から確かめてください。

数値にすると、線間電圧415 V の三相4線式の相電圧は 415/√3≒240 V です。Y結線では、線と線のあいだの電圧と、線と中性線のあいだの電圧の2種類を、1つの電源から取り出せます。

中性線と1本の線のあいだにつなぐ機器は相電圧で動きますが、法令上の扱いは、つないだ電路全体の電圧に合わせる場合があります。電気設備技術基準の省令(題名:電気設備に関する技術基準を定める省令)では、第2条の第2項が、高圧または特別高圧の多線式電路(中性線をもつものに限る)で、中性線と他の1線とにつないで施設する電気設備を、使用電圧がその多線式電路の使用電圧に等しいものとして扱うとしています。低圧・高圧・特別高圧の区分そのもの(同じ条の第1項)は電気設備技術基準・総則と電路の絶縁で扱います。

Δ結線|線電流は2つの相電流の差

3つの電源(または負荷)を三角形の輪につなぎ、3つの角から線を出す結線がΔ結線(三角結線)です。各相は2本の線のあいだに直接入っているので、相電圧と線間電圧は同じです。中性点はありません。

そのかわり、1つの角には2つの枝がつながっていて、線電流はその2つの枝電流の差になります。A の角でキルヒホッフの電流則を書くと、入ってくる IA と ICA の和が出ていく IAB に等しいので、IA=IAB−ICA です。正相順のそろった負荷では、ICA は IAB を120°進めたフェーザです。これを代入します。

IA=IAB−ICA

=IAB(1−1∠120°)

=IAB(1.5−j0.866)

=√3IAB∠−30°

Yと同じ形の引き算なので、大きさはやはり√3倍です。ただし今度は、引かれる ICA のほうが進んでいるので、線電流は枝電流より30°遅れます。逆相順なら30°進みです。

Δ結線(そろった枝電流・正相順)

VL=VP、IL=√3IP

IA は IAB より30°遅れる

1つの角に来る枝は2本だけなので、「枝が3本あるから線電流は3倍」にはなりません。2本分だからといって大きさを単純に2倍するのも誤りで、120°ずれた2本の差だから√3倍です。

2つの結線を並べます。角度は、正相順とこの記事の向きの約束で書いています。

結線 電圧 電流
Y VL=√3VP
VAB は VAN の30°先
IL=IP
線と相が同じ電線
Δ VL=VP
相が2本の線の間
IL=√3IP
IA は IAB の30°後

√3が付く量はYとΔで入れ替わりますが、理由はどちらも「120°ずれた2つのフェーザの差」です。変圧器の一次をΔ、二次をYにつなぐと、一次と二次の電圧にもこの30°のずれが現れます(変圧器の構造と原理)。

そろった負荷は、1相分に直して解く

3相のインピーダンスがすべて等しい負荷を平衡負荷と呼びます。平衡負荷を対称三相電源につなぐと、3つの電流も大きさが等しく120°ずつずれます。Y結線の負荷なら3つの電流の和は0で、電源の中性点と負荷の中性点は同じ電位になります。2つの中性点を電線で結んでもその電線には電流が流れないので、結んだと考えても結果は変わりません。そう考えると、3つの相はそれぞれ「相電圧を1つのインピーダンスに加えた単相回路」として別々に解けます。これが1相分の等価回路です。

  1. 負荷がΔなら、ZY=ZΔ/3 でYに直す。
  2. 線間電圧から相電圧を出す(大きさは1/√3、正相順なら角度は−30°)。
  3. 1相分の電流 IA=VAN/ZY を複素数で計算する。
  4. b相・c相の電流は、IA をそれぞれ120°遅らせたもの、120°進めたもの。
  5. 元の負荷がΔなら、枝電流は線電流の1/√3で、角度は30°進める。電力は1相分の3倍。

平衡のときの Y-Δ変換は、一般の式から出てくる

3つの枝が違う値のときのΔ-Y変換の式は、直流回路の解析で抵抗を使って導きました。インピーダンスでも式の形は同じで、Δ→Y なら「その端子につながる2つの枝の積÷3つの枝の和」です。3つの枝がすべて ZΔ なら、次のようになります。

ZY=ZΔ×ZΔ/(3ZΔ)

=ZΔ/3

逆向きは ZΔ=3ZY

複素数のまま3で割るだけなので、インピーダンスの角度、つまり負荷の力率は変換しても変わりません。3つの枝が等しくなければこの1/3の式は使えないので、一般の式に戻ります。変換で保たれるのは、3つの端子から見た関係(線電流と、負荷全体の有効電力・無効電力)だけです。1つの素子にかかる電圧や流れる電流は、変換の前後で違います。

計算例1|Y負荷を1相分で解き、電力を3通りで確かめる

設定。正相順の対称三相4線式で、線間電圧 VAB=415∠0° V。1相あたり ZY=15+j8 Ω の平衡Y負荷をつなぐ。相電圧、線電流、三相の有効電力・無効電力・皮相電力、力率を求める。

① |ZY|=√(152+82)=17 Ω、角度 tan−1(8/15)≒28.07°

② VAN=(415/√3)∠−30°≒239.6∠−30° V

③ IA=239.6∠−30°/17∠28.07°≒14.09∠−58.07° A

④ IB≒14.09∠−178.07° A、IC≒14.09∠61.93° A。3つの和は0で、中性線の電流は0

⑤ 力率 15/17≒0.882(遅れ)

⑥ P=3×14.092×15≒8,939 W、Q=3×14.092×8≒4,767 var

⑦ 検算:|S|=√3×415×14.09≒10,131 VA、10,131×0.882≒8,939 W(途中の値は丸めずに計算)

よくある誤り。φ に、線間電圧 VAB(0°)と線電流 IA(−58.07°)の角度の差58.07°を使うと、cos58.07°≒0.529 で有効電力は約5,358 W になり、正しい値の6割しかありません。線間電圧は相電圧より30°進んでいるので、その30°がまるごと上乗せされるからです。また、415 V を1相のインピーダンスにそのまま加えて 415/17≒24.4 A とするのも、Y結線でよく起きる誤りです。

計算例2|Δ負荷を、Δのままと1相分の2通りで解く

設定。線間電圧200 V の対称三相3線式(正相順、VAB=200∠0° V)に、各枝 ZΔ=24+j7 Ω の平衡Δ負荷をつなぐ。枝電流、線電流、三相の電力を求める。

Δのまま解く

① |ZΔ|=25 Ω、角度16.26°、力率 24/25=0.96(遅れ)

② IAB=200∠0°/25∠16.26°=8.0∠−16.26° A

③ IA=√3×8.0∠(−16.26°−30°)≒13.86∠−46.26° A

④ P=3×8.02×24=4,608 W、Q=3×8.02×7=1,344 var、|S|=3×200×8.0=4,800 VA

1相分で解く

⑤ ZY=(24+j7)/3≒8.0+j2.33 Ω、|ZY|≒8.33 Ω

⑥ 相電圧 200/√3≒115.5 V を1相分に加える:IA=115.5∠−30°/8.33∠16.26°≒13.86∠−46.26° A(③と一致)

⑦ √3×200×13.86×0.96≒4,608 W(④と一致)

枝電流8.0 A を3倍して24 A としたり、枝電流をそのまま線電流としたりすると、2つの解き方の答えが合いません。同じ回路を2通りで解いて一致を確かめるのが、三相でいちばん確実な検算です。

等価変換と、同じ素子のつなぎ替えは別の話

ZΔ=3ZY は、端子から見て同じふるまいになるように値を変えて置き換える計算です。これに対して、同じ3つの素子をYからΔへつなぎ替えると、1つの素子にかかる電圧が√3倍になるので、端子から見たふるまいが変わります。

計算例3|同じ抵抗3本をYとΔでつなぐ

設定。18 Ω の抵抗3本を、線間電圧200 V の対称三相電源にYでつないだ場合と、同じ3本をΔにつなぎ替えた場合で、線電流と電力を比べる。

① Y:1本の電圧 200/√3≒115.5 V、線電流 115.5/18≒6.42 A、P=3×115.52/18≒2,222 W

② Δ:1本の電圧200 V、枝電流 200/18≒11.1 A、線電流 √3×11.1≒19.2 A、P=3×2002/18≒6,667 W

③ 比:線電流 19.2/6.42≒3、電力 6,667/2,222≒3

素子の電圧が√3倍で素子の電流も√3倍、Δの線電流でさらに√3倍なので、線電流は3倍になります。電力は素子の電圧の2乗に比例するので、これも3倍です。Yのときと同じ線電流にしたいなら、Δ側の抵抗を 3×18=54 Ω に替える必要があり、それが等価変換です。素子の定格電圧がYの115.5 V で決まっているなら、Δでは定格を超えることにも注意します。

三相誘導電動機のY-Δ始動は、この「つなぎ替えると3倍」を逆向きに使い、始動のあいだだけYにして電流を抑える方法です(誘導電動機の始動法と速度制御)。

三相電力|1相分の3倍を、線の量で書き直す

三相の負荷全体の有効電力は、3つの相の有効電力の和です。平衡していれば3つとも同じなので、1相分の3倍です。この相の量を、測りやすい線の量に書き直します。Yでは VP=VL/√3、IP=IL、Δでは VP=VL、IP=IL/√3 なので、どちらでも 3VPIP=√3VLIL です。

平衡三相の電力

P=3VPIP cosφ=√3VLIL cosφ [W]

Q=√3VLIL sinφ [var]

|S|=√3VLIL [VA]

φ:相電圧と相電流の位相差
(1相の負荷インピーダンスの角度)

式の形がYとΔで同じなのは、どちらの結線でも「相の電圧×相の電流」を線の量で書くと、√3と3が組み合わさって同じ係数になるからです。結線の違いが消えたわけではありません。そして、これは平衡しているときの式です。3相の負荷がそろっていなければ、相ごとの電力を出して足します。複素電力で書くなら S=3VANIA*=P+jQ で、共役をとる理由と Q の符号の約束は交流電力と力率改善と同じです。

平衡三相の瞬時電力は一定になる

前のテーマで、単相の瞬時電力は p=VI{cosφ−cos(2ωt−φ)} と、電源周波数の2倍で脈動することを確かめました。三相では相ごとに電圧も電流も120°ずつずれるので、第2項の角度は相ごとに 2×120°=240° ずつずれます。0°、−240°、−480° は、向きで言えば0°、120°、−120° です。大きさの等しい3つが120°ずつずれているので、最初の表と同じく足すと0になり、第1項だけが残ります。

pa+pb+pc=3VPIP cosφ=P

計算例1の負荷で確かめると、1相だけの瞬時電力は約−397 W から約6,357 W まで振れますが、3相の和はどの時刻でも8,939 W です。電動機でいえば、電源から受け取る電力が時間とともに脈動しないということです。ただし、負荷が平衡していなかったり、電流がひずんでいたりすると、第2項は打ち消し切れません。

二電力計法|電力計2台で三相3線の電力を測る

中性線のない三相3線式では、3本の線電流の瞬時値の和がいつも0です(iA+iB+iC=0)。これを使うと、電力計を2台に減らせます。3本の線の電圧を、ある基準点 N から測った vAN などで書き、瞬時電力の和に iB=−iA−iC を代入します。

p=vANiA+vBNiB+vCNiC

=(vAN−vBN)iA+(vCN−vBN)iC

=vABiA+vCBiC

右辺の2つの項は、どちらも「線間電圧×線電流」です。電力計の電流コイルを A 線と C 線に入れ、電圧コイルをそれぞれ A−B 間と C−B 間につなげば、2台の指示 W1 と W2 の和が三相の有効電力になります。基準点 N はどこにとっても結果は同じです。導く途中で使ったのは電流の和が0であることだけなので、負荷が平衡していなくても、電流がひずんでいても成り立ちます。中性線に電流が流れうる三相4線式では和が0とは限らないので、電力計が3台要ります。

平衡負荷なら、2台の指示を φ で書けます。正相順では、VAB は IA より 30°+φ 進み、VCB は IC より φ−30° 進むので、次のとおりです。

W1=VLIL cos(30°+φ)

W2=VLIL cos(30°−φ)

W1+W2=√3VLIL cosφ=P

√3(W2−W1)=Q

(Q の式は平衡・正弦波のときだけ)

和は加法定理で 2cos30° cosφ=√3 cosφ、差は 2sin30° sinφ=sinφ になるからです。相順が逆なら、2台の役割が入れ替わります。VLIL を1としたときの指示を、φ ごとに並べます。

φ 力率 W1 W2 和
0° 1.000 0.866 0.866 1.732
30° 0.866 0.500 1.000 1.500
60° 0.500 0 0.866 0.866
75° 0.259 −0.259 0.707 0.448
90° 0 −0.500 0.500 0

力率1なら2台は同じ値です。力率が0.5(φ=60°)まで下がると W1 が0になり、それより低いと W1 は負、つまり指針が逆に振れます。このときは電圧コイルか電流コイルのどちらかの接続を入れ替えて読み、その値を負として足します。負の読みを捨てたり、大きさだけで足したりすると、電力を大きく読み違えます。平衡しているとわかっていれば、2つの指示から無効電力と力率も出せますが、√3(W2−W1) が無効電力になるのは、平衡した正弦波のときだけです。

計算例4|計算例2の負荷を二電力計法で測る

設定。計算例2の平衡Δ負荷(線間200 V、線電流13.86 A、φ=16.26°)で、A 線と C 線に電力計を入れる(電圧コイルは A−B 間と C−B 間)。

① VLIL=200×13.86≒2,771 VA

② W1=2,771×cos46.26°≒2,771×0.6915≒1,916 W

③ W2=2,771×cos13.74°≒2,771×0.9714≒2,692 W

④ W1+W2≒4,608 W(計算例2の P と一致)

⑤ √3×(2,692−1,916)≒1,344 var(計算例2の Q と一致)

φ=16.26°と力率が高いので、2台の指示はどちらも正で、差は小さめです。同じ負荷の力率が下がると差が開き、φ が60°を超えると W1 が負になります。

電力計そのもののしくみ(電流力計形の電力計が、電圧と電流の積の平均を指示する理由)は電気計測と測定器で扱います。

平衡していないとき|中性線の電流と、中性点のずれ

三相4線式の各相と中性線のあいだに、別々の単相負荷をつなぐと、3つの相電流はそろいません。このとき中性線には、3つの相電流のフェーザの和が流れます。大きさを足したり引いたりした値ではありません。

計算例5|中性線の電流と、中性線が切れたときの電圧

設定。相電圧240 V(線間は約416 V)の対称三相4線式。各相と中性線のあいだに抵抗負荷をつなぎ、a相に40 A、b相に25 A、c相に25 A が流れている(力率1)。

① 中性線の電流:40∠0°+25∠−120°+25∠120°=40−12.5−12.5=15 A(虚部は −21.65+21.65=0)

② 各相の抵抗:a相 240/40=6.0 Ω、b相・c相 240/25=9.6 Ω

③ 中性線が切れると、負荷側の中性点 N' の電位が電源の中性点 N からずれる。ミルマンの定理で、分子は 240/6.0+240∠−120°/9.6+240∠120°/9.6=15 A、分母は 1/6.0+2/9.6=0.375 S、VN'N=15/0.375=40∠0° V

④ 各負荷の電圧:a相 240−40=200 V、b相・c相 |240∠∓120°−40|≒262 V

中性線があれば3つの負荷とも240 V でしたが、切れると、重い負荷のa相は200 V に下がり、軽い負荷のb相・c相は約262 V(約9%高い)に上がります。実際の機器は電圧によって抵抗や電流が変わるので、この数値どおりにはなりません。それでも、中性線が切れると負荷の軽い相の電圧が上がりやすい、という傾向は同じです。

単相3線式で中性線が切れたときに起きることの、三相版です(配電方式と配電計算)。ミルマンの定理そのものは直流回路の解析で扱っています。

負荷がそろっていても、中性線に電流が流れることがあります。整流回路をもつ機器の電流には第3調波が含まれやすく、第3調波は3つの相で 3×120°=360° ずれる、つまり3相とも同じ位相になるので、打ち消し合わずに中性線で足し合わされます。たとえば各相の電流が基本波30 A と第3調波12 A からなるとき、相電流の実効値は √(302+122)≒32.3 A ですが、中性線には基本波が0、第3調波が 3×12=36 A 流れ、相の電流より大きくなります。電流に高調波が生じるしくみはパワーエレクトロニクスで扱います。

いつでも成り立つ関係と、平衡のときだけの関係

三相の式には、条件なしで使えるものと、平衡・正弦波が前提のものが混ざっています。問題を解く前に、どちらの式を使おうとしているかを確かめてください。

式・性質 成り立つ条件
VAB+VBC+VCA=0 いつでも。
線間を1周すれば元の電位に戻る
IA+IB+IC=0 3線式ならいつでも。
4線式では、中性線の電流の分だけ0からずれる
W1+W2=P 3線式ならいつでも。
不平衡でも、ひずんだ電流でもよい
各相の電力の和 いつでも P に等しい
VL=√3VP(Y)
IL=√3IP(Δ)
相電圧(Y)や枝電流(Δ)が対称なとき
P=√3VLIL cosφ 平衡・正弦波のとき
中性線の電流=0 平衡・正弦波のとき。
第3調波があれば流れる
ZΔ=3ZY 3つの枝が等しいとき
√3(W2−W1)=Q 平衡・正弦波のとき
瞬時電力が一定 平衡・正弦波のとき

三相が使われる理由を、ここまでの計算で確かめる

  • 同じ電力を少ない電線で送れる。ただし「単相は2本、三相は3本で3倍の電力」ではありません。線間電圧と1本あたりの電流が同じなら、単相2線式は VI、三相3線式は √3VI を送れるので、電線1.5倍で電力は約1.73倍です。同じ電力・同じ距離・同じ損失・同じ線間電圧という条件で比べると、三相3線式に要る電線の量は単相2線式の3/4になります(計算は配電方式と配電計算)。
  • 回転磁界が自然にできる。空間的に120°ずつずらした3つのコイルに三相の電流を流すと、大きさが一定で回転する磁界ができます(誘導電動機の原理と構造)。相順を入れ替えると逆に回ります。
  • 瞬時電力が脈動しない。平衡していれば、上で確かめたとおり3相の和は一定です。
  • 2種類の電圧を取り出せる。Y結線の三相4線式なら、線間と相の2つの電圧を1つの系統で使えます。

理解度チェック

3問とも、5つの選択肢のそれぞれについて、正しい理由か誤りの理由を解説に書いています。

確認1|相順を逆にすると何が変わるか

対称三相電源の相順を逆相順(a→c→b)に変えた。VAB=VAN−VBN、IA=IAB−ICA という向きの約束はそのままとする。平衡負荷について、正しいものを1つ選べ。

  1. (1)Y結線で、VAB は VAN より30°進む。
  2. (2)Δ結線で、線電流 IA は枝電流 IAB より30°進み、大きさは√3倍である。
  3. (3)Y結線で、線間電圧の大きさは相電圧の大きさと等しくなる。
  4. (4)平衡Y負荷でも、中性線に電流が流れるようになる。
  5. (5)三相誘導電動機をつないだ場合、回転の向きは変わらない。

確認2|逆に振れた電力計の読み方

線間電圧200 V の平衡三相3線式負荷の電力を、二電力計法で測った。一方の電力計の指針が逆に振れたので、電流コイルの接続を入れ替えて読むと0.40 kW、もう一方は2.20 kW だった。正しいものを1つ選べ。

  1. (1)三相の有効電力は 0.40+2.20=2.60 kW である。
  2. (2)逆に振れたのは接続の誤りなので、その読みは捨て、有効電力は2.20 kW である。
  3. (3)有効電力は1.80 kW、無効電力は約4.50 kvar、力率は約0.37である。
  4. (4)無効電力は 2.20−(−0.40)=2.60 kvar である。
  5. (5)一方の指示が負になったのは、負荷が平衡していない証拠である。

確認3|中性線に流れる電流

相電圧240 V の対称三相4線式で、各相と中性線のあいだに抵抗負荷をつなぎ、a相に36 A、b相に24 A、c相に12 A が流れている(基本波のみ、力率1)。正しいものを1つ選べ。

  1. (1)中性線の電流は 36−24−12=0 A である。
  2. (2)中性線の電流は 36+24+12=72 A である。
  3. (3)中性線の電流は約20.8 A である。
  4. (4)中性線を外しても、各負荷の電圧は240 V のまま変わらない。
  5. (5)3相の負荷をそろえて電流を同じにすれば、各相の電流に第3調波が含まれていても、中性線の電流は0になる。

まとめ

  • 対称三相は、大きさが等しく120°ずつずれた3つの電圧。フェーザの和は0で、そこからのずれが中性線の電流になる。
  • Y結線は線間電圧が相電圧の差で VL=√3VP、Δ結線は線電流が枝電流の差で IL=√3IP。30°の進み・遅れは相順と向きの約束で決まる。
  • 平衡負荷は ZY=ZΔ/3 でYにそろえ、1相分で解いて3相に戻す。等価変換と、同じ素子のつなぎ替え(電流も電力も3倍)を混同しない。
  • P=√3VLIL cosφ は平衡のときの式で、φ は相電圧と相電流の角度。平衡三相の瞬時電力は一定。
  • 三相3線式は電力計2台の指示の符号つきの和で電力が測れ、負荷が不平衡でもよい。力率が0.5を下回ると一方が負になる。
  • 不平衡の中性線電流はフェーザの和。中性線が切れると軽い相の電圧が上がる。第3調波は中性線で足し合わされる。

演習と、前後のテーマ

数値と出典は2026年9月29日に確かめました。中性線と他の1線とにつなぐ電気設備の電圧の扱いは、電気設備技術基準の省令の第2条第2項(e-Gov法令検索で公開されている条文)に沿って書いています。理論科目の範囲と解答方式の出どころは、電験三種を実施している電気技術者試験センターの案内です。計算例と確認問題の電圧・電流・インピーダンス・電力計の指示は、手順を追いやすいように当サイトが決めた値で、実在の設備や製品のものではありません。実際の回路の電圧や相順、中性線の扱いは、設備の図面・銘板と、電気主任技術者などの管理者の指示で確かめてください。

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