結論:三相交流は「3つの単相を組み合わせた効率的な送電方式」
ここまで学んできた交流は単相交流(1組の電圧・電流)でした。しかし実際の電力系統では三相交流が使われています。ビルメンの現場でも、動力盤やモーターは三相交流で動いています。
Y結線(スター)
線間電圧 = 相電圧 × √3
Δ結線(デルタ)
線電流 = 相電流 × √3
💡 三相電力
P = √3 VIcosφ
Y・Δ 共通の式
三相交流は電験三種・理論科目の最難関テーマのひとつですが、結線の違いによる電圧・電流の関係を整理すれば、確実に解ける問題です。
三相交流とは? ― なぜ「3つ」なのか
三相交流の仕組み
三相交流は、120°ずつ位相がずれた3つの単相交流を組み合わせたものです。
- a相:va = Vm sin(ωt)
- b相:vb = Vm sin(ωt − 120°)
- c相:vc = Vm sin(ωt − 240°)
3つの電圧を足すと常にゼロになるのが最大の特徴です。
なぜ三相が使われるのか?
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 送電効率が良い | 同じ電力を送るのに電線が少なくて済む(単相は2本、三相は3本で3倍の電力) |
| 回転磁界 | 三相電流をコイルに流すと自動で回転磁界ができ、モーターが簡単に回る |
| 瞬時電力が一定 | 単相では電力が脈動するが、三相は常に一定で振動が少ない |
実務メモ:ビルの受変電設備では6,600Vの三相交流を受電し、変圧器で200V/100Vに降圧します。動力(エアコン、エレベーター、ポンプ)は三相200V、照明やコンセントは単相100V/200Vで使い分けています。
Y結線(スター結線)
Y結線の構造
3つの負荷(またはコイル)を星形に接続する方式です。共通の接続点を中性点と呼びます。
Y結線の電圧・電流の関係
Y結線の公式
線間電圧:VL = √3 × VP
線電流:IL = IP
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 相電圧 VP | 各相の負荷にかかる電圧(中性点〜端子間) |
| 線間電圧 VL | 端子間の電圧(実際に測定する電圧) |
| 相電流 IP | 各相の負荷に流れる電流 |
| 線電流 IL | 電線に流れる電流 |
覚え方:Y結線は「電圧が√3倍、電流はそのまま」。Yの字の形を思い浮かべてください。真ん中(中性点)から3方向に分かれるので、電流は同じまま3本の線に流れます。
Δ結線(デルタ結線)
Δ結線の構造
3つの負荷を三角形(Δ)に接続する方式です。中性点はありません。
Δ結線の電圧・電流の関係
Δ結線の公式
線間電圧:VL = VP
線電流:IL = √3 × IP
覚え方:Δ結線は「電圧はそのまま、電流が√3倍」。Y結線とは逆です。覚え方は「Y = 電圧に√3、Δ = 電流に√3」。√3がつく場所がYとΔで入れ替わるのがポイントです。
Y結線とΔ結線の比較
Y結線 vs Δ結線(超重要!)
| Y結線(スター) | Δ結線(デルタ) | |
|---|---|---|
| 線間電圧 | √3 × 相電圧 | = 相電圧 |
| 線電流 | = 相電流 | √3 × 相電流 |
| √3がつく量 | 電圧 | 電流 |
| 中性点 | あり | なし |
三相電力 ― Y・Δ 共通の公式
三相電力(Y・Δ 共通)
P = √3 VLIL cosφ [W]
(= 3 VPIP cosφ でも同じ結果)
この式はY結線でもΔ結線でも共通で使えます。線間電圧 VL と線電流 IL を代入するだけです。
なぜ√3が出てくるのか:三相電力は「1相分の電力 × 3」です。1相の電力は VPIPcosφ なので、3倍すると 3VPIPcosφ。Y結線で VL = √3VP を代入すると、分母の√3 と 3 が整理されて √3VLILcosφ になります。
Y-Δ 変換
回路の解析上、Y結線をΔ結線に(またはその逆に)変換したい場合があります。平衡三相(3つのインピーダンスが等しい)の場合:
Y → Δ:ZΔ = 3ZY
Δ → Y:ZY = ZΔ3
ΔのインピーダンスはYの3倍。この関係を覚えておけば変換は一瞬です。
試験に出る!典型的な計算パターン
パターン1:Y結線の電流計算
例題
三相200V(線間電圧)のY結線回路で、各相のインピーダンスが Z = 10 Ω のとき、線電流を求めよ。
【解答】
Y結線なので、相電圧を求める:
VP = VL/√3 = 200/√3 ≈ 115.5 V
相電流(=線電流):
IL = IP = VP/Z = 115.5/10 ≈ 11.5 A
パターン2:三相電力の計算
例題
三相200V、線電流 30 A、力率 0.8 の負荷がある。三相電力(消費電力)を求めよ。
【解答】
P = √3 × 200 × 30 × 0.8 = 1.732 × 200 × 30 × 0.8 ≈ 8,314 W ≈ 8.3 kW
パターン3:Y-Δ 変換
例題
三相200V に ZY = 10 Ω のY結線負荷が接続されている。これをΔ結線に変換したときのインピーダンスと線電流を求めよ。
【解答】
ZΔ = 3ZY = 3 × 10 = 30 Ω
Δ結線なので相電圧 = 線間電圧 = 200 V
相電流:IP = 200/30 ≈ 6.67 A
線電流:IL = √3 × IP = √3 × 6.67 ≈ 11.5 A(Y結線のときと同じ!)
重要な気づき:Y結線とΔ結線は変換しても線電流と消費電力は変わりません。見た目の接続方法が違うだけで、外部から見た振る舞いは同じです。これを理解しておくと、問題の検算にも使えます。
まとめ ― 覚えるべき公式と出題のポイント
| 公式名 | 式 | ポイント |
|---|---|---|
| Y結線の電圧 | VL = √3 VP | 電圧に√3がつく |
| Y結線の電流 | IL = IP | 電流はそのまま |
| Δ結線の電圧 | VL = VP | 電圧はそのまま |
| Δ結線の電流 | IL = √3 IP | 電流に√3がつく |
| 三相電力 | P = √3 VLILcosφ | Y・Δ 共通 |
| Y-Δ 変換 | ZΔ = 3ZY | ΔはYの3倍 |
学習アドバイス:三相交流の問題は「結線の種類を見極める → 相電圧・相電流を求める → 三相電力を計算」という3ステップで解けます。√3がどこにつくかだけ間違えなければ正解にたどり着けるので、Y結線とΔ結線の表を完璧に覚えましょう。ビルメンの現場では三相200V回路を日常的に扱うので、試験の知識がそのまま実務力になります。
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