結論:送電の電気計算は「4つの公式」で得点できる
送電線路の計算問題は、電験三種の電力科目でほぼ毎回出題される超重要テーマです。一見むずかしそうですが、実は4つの公式さえ押さえれば確実に点が取れます。
⚡ 電圧降下
送電線のR・Xで
電圧が下がる量を計算
🔥 送電損失
I²R で失われる
電力を計算
📊 送電効率
発電所から何%の電力が
届いたかを計算
🎯 安定度
送電線が送れる電力の限界
を計算
試験対策のコツ:この4つは独立したテーマなので、1つずつ公式を覚えれば着実に解けます。特に電圧降下と送電損失は出題頻度が高いので、計算練習を重ねましょう。
電圧降下の計算
なぜ電圧が下がるのか?
送電線は完全な導体ではなく、抵抗 R とリアクタンス X を持っています。ここに電流が流れると、送電線自体が電圧を「食って」しまうのです。これが電圧降下です。
水道管でたとえると、管が長くて細い(抵抗が大きい)ほど、蛇口の出口(受電端)の水圧(電圧)は下がりますよね。送電線もまったく同じ理屈です。
三相3線式の電圧降下(近似式)
電験三種では、三相3線式の近似式が出題の中心です。
三相3線式の電圧降下
v = √3 I (R cosθ + X sinθ) [V]
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| v | 線間電圧の降下量 | V |
| I | 線電流 | A |
| R | 1線あたりの抵抗 | Ω |
| X | 1線あたりのリアクタンス | Ω |
| cosθ | 負荷の力率 | - |
ポイント:「cosθにはRを、sinθにはXを」がペアです。混同しやすいので「RにはReal(実数)の cos」「XにはクロスのX で sin」と覚えると間違えません。
電圧降下率
電圧降下率は、受電端電圧に対する降下の割合です。
電圧降下率
ε = vVr × 100 [%]
Vr:受電端電圧 [V]
送電端電圧 Vs と受電端電圧 Vr がわかっている場合は、v = Vs − Vr で電圧降下を求められます。
【練習問題①】電圧降下の計算
【問題】三相3線式の送電線路がある。1線あたりの抵抗 R = 5 Ω、リアクタンス X = 8 Ω、線電流 I = 100 A、負荷力率 cosθ = 0.8(遅れ)のとき、電圧降下 v [V] を求めよ。
【練習問題②】電圧降下率の計算
【問題】受電端電圧 Vr = 66 kV の送電線路で、電圧降下が 1,320 V であった。電圧降下率 ε [%] を求めよ。
送電損失の計算
送電損失とは
送電線に電流が流れると、抵抗によって熱として電力が失われます。これが送電損失(電力損失)です。三相3線式では3本の電線それぞれで I²R の損失が生じるので、合計は次のとおりです。
三相送電損失
Ploss = 3I²R [W]
送電電力で表した送電損失(超重要!)
三相電力 P = √3 VI cosθ から電流を逆算すると、送電損失を電圧と電力で表す式が得られます。これが試験では非常によく出ます。
送電損失(変形式)
Ploss = P²RV²cos²θ [W]
この式からわかる重要な3つのこと:
なぜ高圧で送電するのか?同じ電力を送る場合、電圧を高くすると電流が小さくなり、I²R の損失が大幅に減ります。日本の基幹送電線が500 kVもの高電圧を使うのはこのためです。
【練習問題③】送電損失の計算
【問題】三相3線式送電線路。線電流 I = 200 A、1線あたりの抵抗 R = 3 Ω のとき、送電損失 [kW] を求めよ。
【練習問題④】電圧と送電損失の関係
【問題】ある送電線路の送電電圧を 66 kV から 154 kV に昇圧した。送電電力と力率が同じとき、送電損失は何倍になるか。
送電効率
送電効率とは、「発電所が送り出した電力のうち、何%が受電端に届いたか」を表す指標です。
送電効率
η = PrPr + Ploss × 100 [%]
Pr:受電端電力 [W]、Ploss:送電損失 [W]
分母の Pr + Ploss は送電端電力 Ps のことです。つまり「受電端電力 ÷ 送電端電力」を百分率にしたものが送電効率です。
【練習問題⑤】送電効率の計算
【問題】受電端電力 Pr = 4,800 kW、送電損失 Ploss = 200 kW のとき、送電効率 η [%] を求めよ。
送電線路の安定度
定態安定極限電力とは
送電線路には、送れる電力の上限が存在します。これを超えると発電機が同期を失い、系統が不安定になります(脱調)。この上限を定態安定極限電力といいます。
送電電力
P = Vs VrX sinδ [W]
Vs:送電端電圧、Vr:受電端電圧、X:線路リアクタンス、δ:相差角
sinδ の最大値は 1(δ = 90°)なので、送れる電力の限界は次のようになります。
定態安定極限電力
Pmax = Vs VrX [W]
安定度を上げる方法
定態安定極限電力 Pmax = VsVr / X を大きくするには、分子を大きくするか分母を小さくすればよいとわかります。
| 方法 | 具体策 | 公式での効果 |
|---|---|---|
| 送電電圧を上げる | 電圧階級の格上げ | Vs ↑ |
| リアクタンスを減らす | 並行2回線にする / 直列コンデンサ | X ↓ |
| 中間に調相設備 | 同期調相機・SVCの設置 | Vr 維持 |
注意:「抵抗 R を下げる」は送電損失の低減には有効ですが、定態安定極限電力の公式に R は含まれていないため、安定度の向上には直接つながりません。ひっかけ問題として出ることがあります。
【練習問題⑥】定態安定極限電力
【問題】送電端電圧 Vs = 受電端電圧 Vr = 100 kV、線路のリアクタンス X = 50 Ω のとき、定態安定極限電力 [MW] を求めよ。
公式クイックリファレンス
| 項目 | 公式 |
|---|---|
| 電圧降下 (三相3線式) |
v = √3 I(R cosθ + X sinθ) |
| 電圧降下率 | ε = (v / Vr) × 100 [%] |
| 送電損失 | Ploss = 3I²R = P²R / (V²cos²θ) |
| 送電効率 | η = Pr / (Pr + Ploss) × 100 [%] |
| 定態安定 極限電力 |
Pmax = VsVr / X |
理解度チェック
ここまでの内容を試験形式で確認しましょう。
【第1問】
三相3線式送電線路で、1線あたりの抵抗 R = 4 Ω、リアクタンス X = 3 Ω、線電流 I = 150 A、力率 cosθ = 0.6(遅れ)のとき、電圧降下 v [V] に最も近いものはどれか。
(1) 624 (2) 720 (3) 1,080 (4) 1,247 (5) 2,160
【第2問】
三相3線式送電線路の送電損失を 1/4 に減らすには、送電電圧を何倍にすればよいか。ただし、送電電力と力率は一定とする。
(1) √2 倍 (2) 2 倍 (3) 2√2 倍 (4) 4 倍 (5) 1/2 倍
【第3問】
受電端電力 4,800 kW、送電損失 200 kW の送電線路がある。送電効率 [%] に最も近いものはどれか。
(1) 92.0 (2) 94.0 (3) 96.0 (4) 98.0 (5) 99.0
【第4問】
定態安定極限電力を大きくする方法として、適切でないものはどれか。
(1) 送電電圧を高くする
(2) 送電線路を並行2回線にする
(3) 中間に同期調相機を設置する
(4) 直列コンデンサを挿入する
(5) 送電線の抵抗を小さくする
まとめ
- 電圧降下:v = √3 I(R cosθ + X sinθ)。R に cos、X に sin を掛ける
- 送電損失:Ploss = 3I²R。電圧を上げると V² に反比例して減少する
- 送電効率:η = Pr / (Pr + Ploss) × 100。受電端電力と損失から計算
- 定態安定極限電力:Pmax = VsVr / X。R は関係しないので注意
- 送電損失を減らす方法は「電圧を上げる・力率を改善する・抵抗を下げる」の3つ
次の記事では、受電端側の「配電方式と配電計算」を学びます。送電で学んだ電圧降下や損失の考え方がそのまま活きるので、セットで押さえましょう。
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