電力

【電験三種・電力】電力系統の保護と安定(中性点接地方式・短絡・地絡・系統安定度)

結論:電力系統を「事故から守る仕組み」を3つの柱で理解する

発電所から需要家まで電力を届ける電力系統では、落雷や機器の故障で短絡(ショート)や地絡(漏電)が起きることがあります。これらの事故から系統を守り、安定した電力供給を維持する仕組みが試験で問われます。

🔌 中性点接地方式

変圧器の中性点を
どう接地するかで
事故時の挙動が変わる

⚠️ 短絡と地絡

短絡=線間のショート
地絡=大地への漏電
電流の大きさと保護

⚖️ 系統安定度

発電機が同期
保てるかどうか
定態・過渡・動態の3種

中性点接地方式

中性点接地とは

三相の変圧器にはY結線の中性点(3つの巻線が集まる点)があります。この中性点を大地(アース)にどう接続するかが中性点接地方式です。

接地方式によって、地絡事故が起きたときの地絡電流の大きさ健全相の電圧上昇が大きく変わります。

接地方式の比較

方式 地絡電流 健全相の
電圧上昇
特徴
直接接地 非常に大きい 小さい 187kV以上の超高圧で採用。地絡リレーで即遮断
抵抗接地 適度に制限 やや上昇 22〜154kVの主流。通信線への誘導障害も軽減
消弧リアクトル接地 非常に小さい 大きい(√3倍) アーク地絡を自動消弧。66kV以下の一部で使用
非接地 非常に小さい 大きい(√3倍) 6.6kVの高圧配電線で使用

暗記のポイント:電圧が高いほどしっかり接地」が原則。187kV以上は直接接地、22〜154kVは抵抗接地、6.6kVは非接地。地絡電流が大きいほど健全相の電圧上昇は小さく、トレードオフの関係です。

非接地方式の1線地絡時

非接地方式で1線地絡が発生すると、健全相の対地電圧が√3倍に上昇します。これは頻出の知識です。

非接地方式の1線地絡時

健全相の対地電圧 = √3 × 通常の対地電圧

つまり、6,600V系統(対地電圧 6,600/√3 ≈ 3,810V)で1線地絡が起きると、健全相の対地電圧は6,600V(線間電圧と同じ)まで上昇します。絶縁設計をこの電圧に耐えられるようにしておく必要があります。

短絡と地絡

短絡(ショート)とは

短絡とは、電線どうしが直接つながってしまう事故です。抵抗がほぼゼロになるので、非常に大きな短絡電流が流れます。

種類 内容 発生頻度
三相短絡 3線すべてが短絡。対称故障 最も少ない
二相短絡 2線間の短絡。不平衡故障 少ない
1線地絡 1線が大地と接触。最も身近な事故 最も多い

試験のコツ:「故障の発生頻度が最も高いのは1線地絡」「短絡電流が最も大きいのは三相短絡」。この2つはセットで暗記しましょう。

短絡容量と%インピーダンス

短絡電流の大きさは%インピーダンス(%Z)を使って計算します。

三相短絡電流

Is = In%Z / 100 = 100%Z × In [A]

In:定格電流、%Z:百分率インピーダンス

短絡容量

Ps = 100%Z × Pn [VA]

Pn:基準容量 [VA]

%Zが小さいほど短絡電流・短絡容量は大きくなります。遮断器の容量はこの値で決まります。

【練習問題①】短絡電流の計算

【問題】定格容量 10 MVA、定格電圧 6.6 kV、%インピーダンス 5%の変圧器がある。二次側で三相短絡が発生した場合の短絡電流 [kA] を求めよ。

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定格電流 In = 10 × 106√3 × 6,600 = 10 × 10611,431 ≈ 875 A

短絡電流 Is = (100 / %Z) × In = (100/5) × 875 = 20 × 875

= 17,500 A = 17.5 kA

地絡の保護

地絡事故を検出して回路を遮断するのが地絡保護です。

保護方式 仕組み 使用場所
地絡方向継電器
(DGR)
零相電圧と零相電流の方向で地絡回線を特定 高圧配電線
地絡過電圧継電器
(OVGR)
零相電圧の大きさで地絡を検出 高圧受電設備
漏電遮断器
(ELB)
零相変流器(ZCT)で漏洩電流を検出 低圧回路

系統安定度

安定度の3種類

電力系統の安定度とは、「発電機が同期運転を維持できるかどうか」です。同期を失うことを脱調といい、系統崩壊の原因になります。

種類 内容 変動の大きさ
定態安定度 負荷がゆっくり変化するときに同期を保てるか 小さい
過渡安定度 急な事故(短絡・負荷急変)後に同期に戻れるか 大きい
動態安定度 微小な乱れに対して持続的に振動しないか 微小

試験での頻出:電験三種では定態安定度過渡安定度がよく出ます。定態安定極限電力の計算は前回の記事で学びました。

過渡安定度と高速再閉路

送電線で短絡事故が起きたとき、保護リレーが遮断器をトリップ(遮断)します。多くの事故は一過性(落雷など)なので、短時間で自動的に再び回路を閉じるのが高速再閉路方式です。

高速再閉路によって送電を素早く復旧させることで、発電機が脱調する前に系統を正常に戻し、過渡安定度を向上させます。

安定度を向上させる対策

定態安定度の向上策
• 送電電圧を上げる
• リアクタンスを小さくする
• 直列コンデンサの挿入
• 並行2回線の採用
• 中間に調相設備を設置
過渡安定度の向上策
• 高速度遮断(事故を早く除去)
• 高速再閉路方式
• 中間開閉所の設置
• 発電機の慣性を大きくする
• 速応励磁方式の採用

【練習問題②】安定度向上策

【問題】送電線路の過渡安定度を向上させる方法として、最も効果的なものはどれか。

(1) 送電線の抵抗を下げる
(2) 事故時の高速度遮断
(3) 電線を太くする
(4) 避雷器を増設する
(5) 力率を改善する

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正解:(2) 事故時の高速度遮断

過渡安定度は「事故をいかに早く除去するか」が最も重要です。事故が長引くほど発電機の相差角が開き、脱調のリスクが高まります。高速度遮断器で素早く事故区間を切り離すことが最も効果的です。

保護リレーの種類

主な保護リレー

リレーの種類 保護対象 動作原理
過電流継電器
(OCR)
配電線路 電流が設定値を超えると動作
距離継電器
(DZ)
送電線路 事故点までのインピーダンスを計測して区間判定
差動継電器
(DFR)
変圧器・発電機・母線 入口と出口の電流差で内部故障を検出
比率差動継電器 変圧器 電流差の比率で判定。励磁突入電流での誤動作を防止
不足電圧継電器
(UVR)
母線 電圧が設定値以下になると動作

試験のコツ:送電線→距離継電器」「変圧器→比率差動継電器」「配電線→過電流継電器」の組み合わせを覚えましょう。

保護協調とは

系統の各箇所に設置された保護リレーが、事故に近い側から順番に動作するように時限(タイムラグ)を調整することを保護協調といいます。事故区間だけを切り離し、影響範囲を最小限にするための仕組みです。

理解度チェック

【第1問】

22〜154 kV の送電線路に用いられる中性点接地方式として、最も適切なものはどれか。

(1) 直接接地方式 (2) 抵抗接地方式 (3) 消弧リアクトル接地方式 (4) 非接地方式 (5) 補償接地方式

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正解:(2) 抵抗接地方式

22〜154kVの送電系統では抵抗接地方式が主流です。地絡電流を適度に制限しつつ、地絡検出も可能にする方式です。187kV以上は直接接地、6.6kVの高圧配電は非接地です。

【第2問】

非接地方式の三相回路で1線地絡が発生した場合、健全相の対地電圧はどうなるか。

(1) 変化しない (2) 1/√3 倍になる (3) √2 倍になる (4) √3 倍になる (5) 2 倍になる

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正解:(4) √3 倍になる

非接地系統で1線地絡が起きると、地絡した相の対地電圧は0になり、健全な2相の対地電圧は通常の√3倍(=線間電圧と同じ値)に上昇します。

【第3問】

電力系統の故障のうち、発生頻度が最も高いものはどれか。

(1) 三相短絡 (2) 二相短絡 (3) 二相短絡地絡 (4) 1線地絡 (5) 断線

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正解:(4) 1線地絡

送電線路の故障で最も発生頻度が高いのは1線地絡です。落雷やがいしの絶縁劣化などで起こりやすく、全故障の大半を占めます。

【第4問】

送電線路の保護に用いる保護リレーとして、最も適切なものはどれか。

(1) 比率差動継電器 (2) 過電流継電器 (3) 距離継電器 (4) 不足電圧継電器 (5) 不足周波数継電器

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正解:(3) 距離継電器

送電線路の主保護には距離継電器(DZ)が使われます。事故点までのインピーダンスを測定し、保護区間内外を判別します。(1)の比率差動は変圧器、(2)の過電流は配電線が主な対象です。

まとめ

  • 中性点接地方式:187kV以上は直接接地、22〜154kVは抵抗接地、6.6kVは非接地
  • 非接地1線地絡:健全相の対地電圧が√3倍に上昇する
  • 故障頻度:最も多いのは1線地絡、短絡電流が最大なのは三相短絡
  • 短絡電流Is = (100/%Z) × In で計算
  • 系統安定度:定態・過渡・動態の3種。過渡安定度には高速度遮断が最も効果的
  • 保護リレー:送電線→距離、変圧器→比率差動、配電線→過電流

次の記事では、「電気材料の種類と特性」を学びます。導電材料・絶縁材料・磁性材料の性質を整理しましょう。

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