結論:配電は「送電した電力を需要家に届ける最後の仕組み」
発電所から高圧で送られてきた電力は、変電所で降圧されてから各家庭や工場に届けられます。この「変電所→需要家」の区間が配電です。送電と同じく電圧降下や電力損失の計算が出題されますが、配電方式の違いが加わるのがポイントです。
🏗️ 配電方式
単相2線・単相3線
三相3線・三相4線
⚡ 電圧降下計算
方式ごとに
係数が変わる
💡 力率改善
進相コンデンサで
損失と電圧降下を低減
配電方式の種類と特徴
主な配電方式
| 方式 | 電圧 | 用途・特徴 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 100 V | 最もシンプル。小規模な住宅用。電線2本 |
| 単相3線式 | 100/200 V | 現在の住宅の主流。中性線+外線2本で100Vと200Vの両方が使える |
| 三相3線式 | 6,600 V 200 V |
動力用の主流。ビル・工場のモーター等。高圧配電は6,600V |
| 三相4線式 | 415/240 V | 大規模ビルなど。単相・三相の両方の負荷に対応可能 |
試験のコツ:「単相3線式」と「三相3線式」の違いを明確に区別しましょう。名前が似ていますが、仕組みも計算式もまったく別物です。
単相3線式のメリット
単相3線式は、同じ電力を送るのに銅の量が少なくて済むという大きなメリットがあります。
| 比較項目 | 単相2線式 100V |
単相3線式 100/200V |
|---|---|---|
| 電線本数 | 2本 | 3本 |
| 200V機器 | 使えない | 使える |
| 銅量(同じ電力比) | 100% | 37.5% |
| 電力損失 | 大きい | 小さい |
200Vの機器(エアコン・IHヒーター等)が使えるうえに銅の量も少なくて済むため、現在の住宅はほぼすべて単相3線式です。
配電線路の電圧降下計算
方式ごとの電圧降下公式
電圧降下の基本的な考え方は送電と同じですが、配電方式によって係数が変わります。
各方式の電圧降下
単相2線式:v = 2I(Rcosθ + Xsinθ)
単相3線式:v = I(Rcosθ + Xsinθ)
三相3線式:v = √3I(Rcosθ + Xsinθ)
| 方式 | 係数 | 覚え方 |
|---|---|---|
| 単相2線式 | 2 | 往復2本分の降下 |
| 単相3線式 | 1 | 中性線のおかげで片道分 |
| 三相3線式 | √3 | 三相特有の√3 |
暗記のコツ:「単2は2、単3は1、三3は√3」。係数だけ覚えれば、あとの構造 I(Rcosθ + Xsinθ) は全方式共通です。
抵抗だけの場合(リアクタンス無視)
低圧配電線(短い距離)では、リアクタンスが小さいため無視して R だけで計算する問題も多く出ます。
単相2線式(Rのみ):v = 2IR
単相3線式(Rのみ):v = IR
三相3線式(Rのみ):v = √3IRcosθ
【練習問題①】単相2線式の電圧降下
【問題】単相2線式の配電線路。1線あたりの抵抗 R = 0.3 Ω、リアクタンスは無視できる。負荷電流 I = 50 A のとき、電圧降下 [V] を求めよ。
【練習問題②】三相3線式の電圧降下
【問題】三相3線式配電線路。1線あたり R = 0.5 Ω、X = 0.4 Ω。負荷電流 I = 80 A、力率 cosθ = 0.8(遅れ)のとき、電圧降下 [V] を求めよ。
配電線路の電力損失
方式ごとの電力損失
各方式の電力損失
単相2線式:Ploss = 2I²R
単相3線式:Ploss = 2I²R(平衡時)
三相3線式:Ploss = 3I²R
注意:単相3線式の損失が 2I²R なのは、平衡時に中性線に電流が流れないため、外線2本分だけの損失になるからです。不平衡時は中性線にも電流が流れ、損失が増えます。
銅量比の計算(頻出!)
「同じ電力・同じ距離・同じ電力損失」という条件で、各方式に必要な銅の量(電線の重さ)を比較する問題は非常によく出ます。
| 方式 | 電線本数 | 銅量比 |
|---|---|---|
| 単相2線式 100V | 2本 | 1(基準) |
| 単相3線式 200V | 3本 | 3/8 = 0.375 |
| 三相3線式 200V | 3本 | 3/8 = 0.375 |
単相2線式100Vを基準にすると、単相3線式200Vや三相3線式200Vは約37.5%の銅量で同じ電力を送れます。コスト面で圧倒的に有利です。
【練習問題③】銅量比
【問題】同じ電力を同じ距離、同じ電力損失率で送電する場合、単相2線式に対する三相3線式の電線の銅量の比を求めよ。ただし、線間電圧は同じとする。
力率改善の計算
力率改善とは
工場やビルでは、モーターなどの誘導性負荷が多いため力率が低い(遅れ力率)ことが一般的です。力率が低いと、同じ有効電力を得るのに大きな電流が必要になり、損失も電圧降下も大きくなります。
そこで、進相コンデンサを並列接続して力率を改善します。
必要なコンデンサ容量の計算
進相コンデンサの必要容量
Qc = P (tanθ1 − tanθ2) [var]
P:有効電力、θ1:改善前の力率角、θ2:改善後の力率角
手順:
- 改善前の力率 cosθ1 から tanθ1 を求める
- 改善後の力率 cosθ2 から tanθ2 を求める
- P(tanθ1 − tanθ2) でコンデンサ容量を計算
よく使う値:cosθ = 0.6 → tanθ = 4/3 ≈ 1.333、cosθ = 0.8 → tanθ = 3/4 = 0.75、cosθ = 1.0 → tanθ = 0。これらは暗記しておくと計算が速くなります。
【練習問題④】力率改善
【問題】有効電力 P = 600 kW、力率 cosθ1 = 0.6(遅れ)の負荷がある。力率を cosθ2 = 1.0 に改善するために必要なコンデンサ容量 [kvar] を求めよ。
【練習問題⑤】力率改善の効果
【問題】有効電力 P = 100 kW、力率 0.8(遅れ)の負荷がある。力率を 0.8 から 1.0 に改善すると、線路電流は何%減少するか。
配電方式の比較(電圧降下・損失・銅量の整理)
| 項目 | 単相2線式 | 単相3線式 | 三相3線式 |
|---|---|---|---|
| 電圧降下 | 2IR | IR | √3 IR cosθ |
| 電力損失 | 2I²R | 2I²R | 3I²R |
| 銅量比 (同一V) |
1 | — | 3/4 |
| 主な用途 | 旧住宅 | 現在の住宅 | 工場・ビル |
理解度チェック
ここまでの内容を試験形式で確認しましょう。
【第1問】
単相2線式配電線路で、1線あたりの抵抗が 0.2 Ω、負荷電流が 40 A のとき、電圧降下 [V] はいくらか。ただしリアクタンスは無視する。
(1) 4 (2) 8 (3) 16 (4) 24 (5) 32
【第2問】
同じ電力を同じ距離・同じ電力損失率・同じ線間電圧で送る場合、三相3線式の銅量は単相2線式の何倍か。
(1) 3/8 (2) 1/2 (3) 3/4 (4) 1 (5) 3/2
【第3問】
有効電力 300 kW、力率 0.6(遅れ)の負荷の力率を 0.8(遅れ)に改善するために必要なコンデンサ容量 [kvar] に最も近いものはどれか。
(1) 100 (2) 125 (3) 150 (4) 175 (5) 200
【第4問】
単相3線式が単相2線式に比べて優れている点として、適切でないものはどれか。
(1) 同じ電力を少ない銅量で送電できる
(2) 100V と 200V の両方の電圧が取り出せる
(3) 電力損失が小さい
(4) 中性線が断線しても安全に使用できる
(5) 電圧降下が小さい
まとめ
- 配電方式:単相2線式・単相3線式・三相3線式・三相4線式。住宅は単相3線式、工場は三相3線式が主流
- 電圧降下の係数:単2は「2」、単3は「1」、三3は「√3」
- 銅量比:同じ線間電圧なら三相3線式は単相2線式の3/4
- 力率改善:Qc = P(tanθ1 − tanθ2) で必要なコンデンサ容量を計算
- 単相3線式の弱点:中性線断線で過電圧が生じる危険がある
次の記事では、「電力系統の保護と安定」を学びます。送電・配電で送り届けた電力を守る仕組みです。
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