同期機の計算は「1相分の電圧を、位相も含めて足す」ことから始めます。その電流から三相電力を求め、無負荷時との電圧差や短絡比へ進みましょう。
代入前に確認するのは、電流の向き、相電圧か線間電圧か、抵抗を無視できるかの3点です。公式の見た目が同じでも、この条件が違うと答えが変わります。
同期機の原理と特性を学んだ人向けに、巻線界磁式の三相同期機を計算で扱います。基本は三相対称・正弦波の定常状態、回転子は非突極形(円筒形)とします。式の意味を確認したら、同期機の計算ミニテスト第1回へ進めます。以下の例題・表・確認問題は学習用の独自構成です。
1.記号と単位|まず1相の値にそろえる
フェーザは、正弦波の大きさと位相を複素数で表したものです。ここでは V̇・Ė・İ のように点を付けた記号をフェーザ、点のない V・E・I を実効値の大きさとします。j は j2=−1 となる虚数単位です。
| 記号 | 意味 | 単位・範囲 |
|---|---|---|
| V、E | 端子電圧、内部起電力 | 1相分の実効値 [V] |
| I | 電機子の相電流 | 実効値 [A] |
| ra、Xs | 電機子抵抗、同期リアクタンス | 1相分 [Ω] |
| δ、φ | 相差角、力率角 | 異なる2つの角度 |
発電機では δ を、内部起電力 Ė が端子電圧 V̇ より進む角度とします。φ は端子電圧と電流の位相差です。δ と φ は同じ角度ではありません。力率は cosφ です。
| 結線 | 線間電圧 VL | 線電流 IL |
|---|---|---|
| Y結線 | VL=√3V | IL=I |
| Δ結線 | VL=V | IL=√3I |
表は大きさの関係です。フェーザでは対応する線間電圧と相電圧などに30°の位相差もあります。Δ結線の1巻線のインピーダンスと、Y換算した1相分のインピーダンスを混ぜないようにしましょう。
フェーザの基礎は交流回路の基礎、三相電力は交流電力と力率改善で復習できます。
2.同期インピーダンス|jを消してよいのは「大きさ」の式
同期リアクタンスは、巻線の漏れ磁束の影響と、電機子電流が磁界を変える電機子反作用をまとめた等価的な値です。抵抗と合わせると、複素同期インピーダンスは次の形です。
Zs=ra+jXs [Ω]
大きさ:|Zs|=√(ra2+Xs2)
ra が Xs より十分小さく、問題で抵抗を無視する場合は、複素数としては Zs≒jXs、大きさとしては |Zs|≒Xsです。j を掛けるとフェーザが90°進むため、回路方程式から j を外すことはできません。
例えば ra=0.3 Ω、Xs=4 Ω なら、複素数は 0.3+j4 Ω、大きさは √(0.32+42)≒4.011 Ω。大きさは4 Ωに近くても、抵抗0.3 Ωが実際に0になったわけではありません。銅損を問うときは 3I2ra に抵抗を使います。
発電機と電動機は、電流を取る向きを決める
発電機:電流を機外へ送り出す向き
Ė=V̇+(ra+jXs)İ
電動機:電流を機内へ受け取る向き
V̇=Ė+(ra+jXs)İ
抵抗を無視する発電機なら Ė=V̇+jXsİ、電動機なら Ė=V̇−jXsİ です。電流の向きを逆にすれば電流の符号も逆になります。機種名と符号だけを組で暗記せず、等価回路で向きを確認します。
等価回路と反作用の説明は日本電気技術者協会「同期機の電機子反作用」、電動機側の電流方向は同協会「直流電動機、同期電動機、同期調相機」で確認できます。
3.ベクトル図の読み方|遅れと進みで電圧降下の向きが変わる
抵抗を無視し、端子の相電圧を V̇=250+j0 V、同期リアクタンスを5 Ωとする発電機を考えます。電圧を右向きの基準に取り、電流の同相成分を24 A、直交成分を18 Aとします。
ベクトル図は、① V̇ を右へ描く、② İ を力率角だけ遅れ側または進み側へ描く、③ İ を90°進めて長さを Xs 倍する、④ ③の矢印をV̇の先につなぐ、の順です。始点から最後の矢印の先までが Ė です。以下はその横・縦の成分を数値で追います。
遅れ電流:İ=24−j18 A
j5×(24−j18)
=90+j120 V
Ė=250+90+j120
=340+j120 V
E=√(3402+1202)
≒360.6 V
電流は √(242+182)=30 A、力率は 24/30=0.80 遅れです。XsI=150 V は90°回転させた電圧降下の長さなので、250+150=400 V と単純には足せません。
進み電流:İ=24+j18 A
j5×(24+j18)
=−90+j120 V
Ė=160+j120 V
E=√(1602+1202)
=200 V
電流は同じ30 A、力率は0.80進みですが、今度は内部起電力200 Vが端子相電圧250 Vより小さくなります。発電機だから常に E>V とは限りません。この2例では端子電圧と電流の大きさをそろえていますが、必要な内部起電力、したがって励磁の条件は異なります。
どちらも三相有効出力は 3×250×24=18000 W、つまり18 kWです。位相差を扱う式から、実際に電力を運ぶ同相電流成分を取り出せたことが確認できます。
4.相差角と出力|1相の式を三相へ広げる
発電機の内部起電力を Ė=E(cosδ+jsinδ) と置き、İ=(Ė−V̇)/(jXs) を整理すると、電圧と同相の電流成分は Esinδ/Xs です。1相の有効電力は、この成分と相電圧 V の積になります。
1相:P1=(EV/Xs)sinδ [W]
三相:P3=(3EV/Xs)sinδ [W]
照合用:P3=3VIcosφ
=√3VLILcosφ
ここで E と V は相電圧、Xs は同じ1相のリアクタンスです。Y結線またはY換算の回路で、E と V を両方とも線間電圧の大きさに変換すると、三相の式は P3=(ELVL/Xs)sinδ になります。√3が2つ掛かって3になるため、さらに3倍する必要はありません。
これらは非突極・抵抗無視の定常モデルです。突極機では直軸と横軸のリアクタンス差による項が加わります。また、発電機の軸入力や電動機の軸出力を求めるときは、指定された鉄損・機械損なども含めて収支を取ります。
練習例1|1相1000 kWなら、三相はいくら?
相起電力5000 V、端子相電圧4000 V、1相の同期リアクタンス10 Ω、相差角30°とします。非突極・抵抗無視の三相発電機の有効出力を求めてください。
90°は定常モデルの山の頂点
E・V・Xs を固定すると、sinδ が最大の90°で出力の計算値は最大です。0°<δ<90° では、δが少し増えたとき電気出力も増えるため、一定の原動機入力に対して回転子の加速を抑える方向に働きます。
90°では曲線の傾きが0になり、90°を超えた側では傾きが負になります。これは基本モデルの定態安定限界の説明です。最大値をそのまま常用できる定格出力や、安全な運転上限とは考えません。
事故や急な負荷変動後に同期を保てるかは、回転子の慣性、事故が続く時間、事故除去後の回路、制御などにも依存します。「瞬間的に90°を超えたら必ず脱調」「90°未満なら必ず安定」とは判定できません。電気学会「過渡安定度」と電力系統の保護と安定で、この違いを確認できます。
励磁を強める操作と、有効出力を増やす操作を分ける
電圧・周波数がほぼ固定された大きな系統へ並列接続した発電機では、定常有効出力は主に原動機からの入力で決まります。入力と損失を一定とみなしたまま励磁を強めると、内部起電力 E が増しても、δが小さくなることで同じ有効出力に落ち着きます。主に変わるのは無効電力の分担です。
例えば前の3 MWのまま、相起電力だけを5000 Vから6000 Vに変えたとします。sinδ=0.5×5000/6000
=5/12 なので、安定側の相差角は約24.6°です。「E を増やすと式の計算値が増す」は、δも同じに固定した比較です。
Xs は運転中に自由につまみで変える量でもありません。機械の設計比較と、接続後の操作を分けて読みましょう。並列運転の基本は日本電気技術者協会「直流発電機、同期発電機」で確認できます。
5.電圧変動率|回転速度と励磁を同じにして比べる
定格速度で、指定された負荷電流・力率のもとで端子電圧を定格値にした状態を出発点とします。その回転速度と界磁電流を変えずに負荷を取り除いたときの端子電圧が、比較する無負荷電圧です。
ε=(V0−Vn)/Vn×100 [%]
- V0:同一速度・同一励磁での無負荷端子電圧
- Vn:指定負荷時の定格端子電圧
- 両方とも線間電圧、または両方とも相電圧にそろえる
自動電圧調整器で励磁を変えて、負荷時も無負荷時も同じ電圧に保った値を代入すると、この条件の電圧変動率にはなりません。
教科書では無負荷電圧を E0 と書くこともあります。一定リアクタンスの簡易モデルなら、負荷時のフェーザから求めた内部起電力の大きさを、同じ励磁での無負荷電圧として使えます。ただし、負荷中に実測した端子電圧そのものではありません。飽和の扱いが指定される場合は、試験曲線や指定された算定法に従います。
練習例2|線間電圧6930 Vと6600 V
同一速度・同一励磁で無負荷の線間電圧が6930 V、指定力率・定格負荷時が6600 Vでした。電圧変動率を求めてください。
進み力率の負荷では、負荷時より無負荷時の電圧が低くなり、電圧変動率が負になる場合もあります。例えば同一条件の無負荷線間電圧456 V、負荷時480 Vなら、(456−480)/480×100=−5 %。進み負荷なら必ず負になるわけではなく、フェーザの関係から判断します。
6.短絡比|界磁電流の比からpu値へつなぐ
短絡比 Ks は、定格速度で測った2つの特性から求める無次元の値です。比較するのは電機子電流どうしではなく、まず界磁電流どうしです。
| 特性 | 読み取る条件 | 界磁電流 |
|---|---|---|
| 無負荷飽和曲線 | 定格端子電圧を発生 | If0 |
| 三相短絡曲線 | 定格電機子電流が流れる | Ifsc |
Ks=If0/Ifsc
無負荷では鉄心の飽和により、界磁電流を増やしても電圧の増え方が緩やかになります。一方、三相短絡時は電機子反作用で主磁束が弱まり、通常の測定範囲では短絡電流が界磁電流にほぼ比例します。
その直線性を使うと、界磁電流 If0 での持続短絡電流は、定格電流 In の Ks 倍です。これは短絡直後の突入的な電流ではありません。資料は協会講座の「特性曲線」「短絡比と同期インピーダンス」を参照できます。
百分率の125と、pu値の1.25を分ける
1相の定格電圧を Vn、定格電流を In として、基準インピーダンスを Zb=Vn/In [Ω] とします。pu(単位法)は基準値を1とした比です。同期リアクタンスのpu値を xs=Xs/Zb、百分率の数値を %Xs=100xs と書きます。
抵抗を無視する場合:
Ks≒1/xs
≒100/(%Xs)
この逆数関係で使うのは、同じ定格ベース、無負荷定格電圧の試験点に対応する飽和値です。空隙線(無負荷曲線の未飽和部分を延長した直線)から求めた不飽和リアクタンスや、短絡直後の過渡・初期過渡リアクタンスを代入しません。抵抗を考慮すると、まず同期インピーダンスの大きさとの関係になります。
計算例|界磁電流4 Aと5 Aから求める
Y結線の発電機で、定格の相電圧240 Vを無負荷で発生させる界磁電流が4 A、定格相電流20 Aを三相短絡時に流す界磁電流が5 Aとします。短絡曲線は原点を通る直線、電機子抵抗は無視します。
- 短絡比:Ks=4/5=0.80
- 界磁4 Aの短絡電流:20×4/5=16 A
- 同期リアクタンス:Xs=240/16=15 Ω
- 基準値:Zb=240/20=12 Ω
- pu値:xs=15/12=1.25、百分率は125%
1/1.25=0.80、100/125=0.80 と、最初の短絡比へ戻れます。1/125=0.008 ではありません。なお、界磁4 Aと電機子16 Aは別の巻線を流れる電流です。
同等の定格・設計条件で短絡比が大きい機械は、pu同期リアクタンスが小さく、基本モデルの最大送出電力を大きくしやすい傾向があります。同じ負荷・力率での電圧変化も抑えやすい反面、一般には機械寸法や費用が増える方向です。飽和、励磁制御、冷却などにも左右されるため、短絡比だけで実機の安定性や価格を確定することはできません。
7.確認問題4問|式を選ぶ前に条件を読む
確認問題1|複素数と大きさの区別
1相の電機子抵抗0.2 Ω、同期リアクタンス6 Ωについて、抵抗を無視した近似として正しいものはどれでしょうか。
- (1)複素インピーダンスは6 Ω、大きさはj6 Ω。
- (2)複素インピーダンスはj6 Ω、大きさは6 Ω。
- (3)複素インピーダンスは0 Ω、大きさも0 Ω。
- (4)抵抗が小さいので、銅損を計算するときも必ず0にする。
- (5)jは電流の単位なので、省略しても位相は変わらない。
確認問題2|相電圧で計算した三相出力
非突極・抵抗無視の三相発電機で、相起電力900 V、端子相電圧600 V、1相の同期リアクタンス9 Ω、相差角30°とします。三相有効出力はいくらでしょうか。
- (1)10 kW
- (2)30 kW
- (3)60 kW
- (4)90 kW
- (5)180 kW
確認問題3|負の電圧変動率を読む
同一速度・同一励磁で、指定負荷時の定格線間電圧が500 V、無負荷時が475 Vでした。電圧変動率はいくらでしょうか。
- (1)−5.0%
- (2)+5.0%
- (3)約−5.26%
- (4)0%
- (5)95%
確認問題4|励磁を変えた後の有効電力
大きな系統へ並列接続した発電機で、原動機入力と損失を一定とみなします。励磁を強めた後も安定な定常運転が成立するとき、適切な説明はどれでしょうか。
- (1)相差角は固定なので、有効出力は内部起電力に比例して増える。
- (2)有効出力は主に原動機入力との収支で決まり、相差角や無効電力分担が変わる。
- (3)電源周波数が一定でも、定常同期速度が上がる。
- (4)相差角が90°未満なら、どのような事故後も脱調しない。
- (5)同期リアクタンスを変える代わりに、電機子抵抗を増やせば損失を抑えられる。
8.復習と次の学習
フェーザ式では電流の向きと j を残し、電力計算では相電圧と三相の3倍を確認します。電圧変動率は同一速度・同一励磁、短絡比は界磁電流の比が出発点です。「最大出力の公式」と「実機をどう操作するか」も分けて考えましょう。
- 同期機の計算ミニテスト第1回:基本式を選ぶ演習へ。
- 同ミニテスト第2回・第3回:追加の計算練習へ。
- 前テーマ:同期機の原理と特性:励磁と回転の関係を復習。
- 次テーマ:パワーエレクトロニクス:整流・インバータなどの電力変換へ。
公式問題は電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の問題と解答」で確認できます。本文の解説・表・問題は独自に作成し、資料の文章や図表、過去問を転載していません。
2026年10月15日確認・改訂。同期インピーダンスの表記、相電圧と三相電力、電圧変動率と短絡比の条件を一次資料と照合し、数値を検算しました。運営者は資格を独学中の個人です。
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