機械

電動力応用|巻上機・エレベータ・ポンプ・送風機の所要出力と比例法則【電験三種・機械】

電動力応用の計算は「負荷が1秒間に必要とする仕事を求め、損失の分だけ効率で割る」の2段階です。

巻上機は質量×重力加速度×速さ、ポンプは水の重さ×全揚程、送風機は風量×圧力。どの式も、単位をそろえ、効率と余裕係数をどこに掛けるかを決めれば、同じ流れで解けます。

電験三種・機械の学習用に、式の成り立ちと使える条件を順に整理します。釣合いおもり付きエレベータの12.1 kW、送風機の12 kW、回転速度を下げたときの比例法則とその条件、加速時間の6.3秒まで進みましょう。本文の計算例・確認問題は独自に構成しています。

1.所要出力は「負荷の仕事率」を効率で割る

モーターで物を動かすときは、まず負荷そのものが1秒間に必要とする仕事(仕事率)を求めます。単位はW(=J/s)です。直線運動なら力と速さ、回転運動ならトルクと角速度の積になります。

直線運動:P=Fv
回転運動:P=ωT

ω=2πn/60

  • F:負荷を動かすのに必要な力[N]、v:速さ[m/s]
  • T:トルク[N·m]、ω:角速度[rad/s]
  • n:1分間の回転速度[min−1]

例えば、トルク100 N·mの負荷を1,440 min−1で回すと、ω=2π×1,440/60
=48π≒150.8 rad/s です。出力は P=150.8×100
≒15,080 W≒15.1 kW。毎分の回転速度を60で割らずに2πを掛けると、60倍大きな値になってしまいます。トルクと出力の関係は日本電気技術者協会「電動機の機械エネルギー」で確認できます。

どこまでの損失を含めた「出力」かを決める

負荷の仕事率が、そのまま電動機の出力になるわけではありません。減速機やロープ、ポンプ内部などで損失が生じるので、電動機はその分を上乗せして出す必要があります。

呼び方 意味 求め方
負荷動力 負荷が実際に受け取る仕事率 mgv、ρgQH、Qp など
電動機出力
(軸出力)
電動機の軸から出す動力 負荷動力÷機械側の効率
(指定があれば余裕係数を掛ける)
電動機入力 電源から受け取る電力 電動機出力÷電動機効率

効率は1より小さいので、損失を補う向きでは効率で割ります。「所要動力」「所要出力」「所要電力」という言葉は、資料によって指す段階が違うことがあります。問われているのが電動機の出力か入力か、与えられた効率がどの段階のものかを先に読み取りましょう。電動機自体の損失と効率は誘導電動機の特性と計算で扱っています。

2.巻上機とエレベータ|釣合いおもりとの差を持ち上げる

質量 m[kg]の荷を、一定の速さ v[m/s]で真上へ巻き上げるとします。速さが一定なら加速度は0なので、必要な力は荷にはたらく重力と同じ mg[N]です。ロープの質量や摩擦などの損失は、ここでは効率ηに含めて扱います。

巻上機の電動機出力
P=mgv/η[W]

g は重力加速度で、多くの問題では9.8 m/s2を使います。質量がt(トン)なら1,000倍してkgに、速さがm/minなら60で割ってm/sにそろえます。荷の重さがNやkNで与えられた場合は、すでに重力を掛けた値なので、さらに9.8を掛けません。

練習問題①|1,000 kgを2 m/sで巻き上げる

釣合いおもりのない巻上機で、質量1,000 kgの荷を一定速度2 m/sで巻き上げます。巻上機の効率は80%とし、ロープの質量と加速中の力は考えません。電動機の出力[kW]を求めてください。

エレベータは「かご+積載−釣合いおもり」

ロープ式エレベータでは、ロープの片側にかご、反対側に釣合いおもりを吊り下げます。おもりがかご側の重さの多くを打ち消すので、電動機が持ち上げるのは両側の質量の差だけです。

P=(m1+m2−m0)
×gv/η[W]

m1 はかごの質量、m2 は積載質量、m0 は釣合いおもりの質量です。おもりの質量は設計で決まり、問題では「かごの質量に定格積載質量の◯%を加えた値」のように条件として与えられます。割合を一律に覚えるのではなく、設問の値を使いましょう。巻上機・エレベータ・ポンプ・送風機の式の組み立ては日本電気技術者協会「機械装置駆動用電動機の所要出力の算出方法」で確認できます。

計算例|おもりを入れると51.5 kWが12.1 kWに

かごの質量1,200 kg、定格積載質量900 kgとし、釣合いおもりは「かごの質量に定格積載質量の45%を加えた値」とします。定格積載で、速さ105 m/minで上昇させます。機械側の効率は0.70です。

  1. おもり:1,200+0.45×900
    =1,605 kg
  2. 質量の差:1,200+900−1,605
    =495 kg
  3. 速さ:105/60=1.75 m/s
  4. 出力:P=495×9.8×1.75/0.70
    ≒12,128 W≒12.1 kW

おもりを忘れて2,100 kgで計算すると 2,100×9.8×1.75/0.70
=51,450 W、約51.5 kWとなり、4倍以上の過大な値になります。

運転 重い側と質量差 電動機のはたらき
定格積載で上昇 かご側が495 kg重い 差を持ち上げる(力行)
定格積載で下降 かご側が495 kg重い 重い側が下がる速さを抑える(制動)
空のかごで上昇 おもり側が405 kg重い 重い側が下がる速さを抑える(制動)
空のかごで下降 おもり側が405 kg重い おもりを持ち上げる(力行)

重い側が下がる運転では、電動機は動力を出すのではなく、ブレーキのように働きます。このとき位置エネルギーを電力に変えて利用する方式を回生といいます(回生に対応した駆動装置の場合)。問題文がどの運転状態を指しているかを確認し、重い側を図に描いてから差を求めると間違えません。実際の昇降機では、起動・停止時の加速、ロープの質量、摩擦なども電動機の容量に影響します。

3.ポンプ|水の重さ×全揚程×流量

流量 Q[m3/s]は1秒間に送り出す水の体積です。密度ρ[kg/m3]を掛ければ、1秒間に送り出す水の質量 ρQ[kg/s]になります。この水を全揚程 H[m]の高さまで上げるので、巻上機の mgv と同じ考え方で、水が受け取る仕事率は ρQ×g×H[W]です。

水が受け取る動力[W]:ρQgH

水ならρは1,000。kWにするため1,000で割ると
9.8QH[kW]

電動機出力:P=K×9.8QH/η[kW]

水の密度1,000 kg/m3と、WをkWにする1/1,000が打ち消し合うので、kWの式には9.8だけが残ります。この9.8は重力加速度の数値ですが、密度1,000 kg/m3の水であることと、答えをkWで出すことが前提です。密度が違う液体なら、1,000をその密度に置き換えて計算します。

水力発電の出力も同じ 9.8QH から出発しますが、水車・発電機は水の動力の一部しか電気にできないので効率を掛けます。ポンプは損失を補う側なので効率で割ります。向きの違いは水力発電の仕組みと計算と見比べると確認できます。

  • η:ポンプ効率。設問によっては、ポンプと伝動装置などを合わせた効率です。
  • K:余裕係数。設計上の余裕で、資料では1.1〜1.2程度の例が示されています。設問で与えられたときに掛けます。

全揚程と単位をそろえる

全揚程は、実際に水を持ち上げる高さ(実揚程)に、配管や弁などで失う分を水の高さに換算した損失水頭を加えたものです。損失を全揚程に含めた場合は、同じ損失を効率でもう一度差し引かないようにします。全揚程と動力の関係は環境省の対策資料「空気調和用搬送動力低減設備の導入」(PDF)にも示されています。

流量の単位 式に入れる前 kWの式
m3/s そのまま 9.8QH/η
m3/min 60で割る QH/(6.12η)
m3/h 3,600で割る QH/(367η)

60/9.8≒6.12、3,600/9.8≒367 です。分母の6.12や367は丸めた値なので、覚えるより「流量を秒当たりにそろえて9.8を掛ける」と導けるようにしておくと安全です。

練習問題②|0.05 m³/sを全揚程30 mで送る

流量0.05 m3/s、全揚程30 m、ポンプ効率70%で水を送ります。余裕係数は考えません。電動機の出力[kW]を求めてください。

4.送風機|風量×圧力

送風機は、空気を送り出すために圧力を高めます。風量 Q[m3/s]と、送風機が与える圧力 p[Pa]の積が空気の動力です。p には、設問で与えられる全圧(風圧)を使います。

P=KQp/η[W]

単位を追うと、Pa=N/m2 なので m3/s×N/m2
=N·m/s=W です。ポンプも、全揚程を圧力に直した p=ρgH を使えば、同じ「流量×圧力」の形になります。例えば水の30 mは 1,000×9.8×30
=294,000 Pa=294 kPa です。

この式は、圧力の上昇が小さく、空気が圧縮されることを無視できる送風機の計算です。圧力を大きく上げる圧縮機では、空気の圧縮を考えた別の扱いが必要になります。

計算例|360 m³/min・1.2 kPaなら12 kW

風量360 m3/min、送風機の全圧1.2 kPa、送風機効率0.60とします。余裕係数は、まず1として計算します。

  1. 風量:360/60=6 m3/s
  2. 圧力:1.2 kPa=1,200 Pa
  3. 空気の動力:6×1,200=7,200 W
  4. 電動機出力:7,200/0.60
    =12,000 W=12.0 kW

余裕係数1.15が与えられれば 12.0×1.15=13.8 kW です。kPaのまま 6×1.2=7.2 と計算した場合、結果の単位はkWになります。WとkWを取り違えると1,000倍ずれるので、途中で単位を書き添えましょう。

5.回転速度の比例法則|どんな条件で使えるか

遠心ポンプや送風機の回転速度 n を変えたとき、条件がそろえば流量・揚程(圧力)・軸動力は次のように変わります。これを比例法則(相似則)と呼びます。

量 回転速度との関係 0.8倍にしたとき
流量 Q Q∝n 0.8倍
揚程 H
(圧力 p)
H∝n2 0.64倍
軸動力 P P∝n3 0.512倍
トルク T T∝n2 0.64倍

軸動力は流量×揚程に比例するので n×n2=n3。トルクは T=P/ω なので n3/n=n2 です。いずれも、効率が変わらないとみなした関係です。

3乗で減るのは、抵抗が流量の2乗だけのとき

比例法則は、同じポンプ(羽根車の形と大きさが同じ)で同じ流体を送り、効率がほぼ同じ「相似な運転点」どうしを比べる関係です。実際の運転点は、ポンプの性能曲線と配管の抵抗曲線が交わる点で決まります。

  • 実揚程がない循環系(空調の冷温水を循環させる密閉配管など):抵抗が流量の2乗に比例するので、回転速度を下げても運転点が相似のまま移り、3乗に近い省エネが期待できます。
  • 実揚程が大きい系(高い位置へ揚水するなど):流量を減らしても、持ち上げる高さは減りません。回転速度を下げすぎると必要な高さまで送れなくなり、動力の減り方も3乗より小さくなります。

バルブで流量を絞る方法は、抵抗を増やして運転点を動かすだけなので、ポンプの揚程は高いまま、弁で失うエネルギーが残ります。回転速度を下げる方法は、ポンプの性能曲線そのものを下げるので、同じ流量でも必要な動力が小さくなります。ただし、電動機やインバータの効率も負荷によって変わるため、電源から受け取る電力が正確に3乗で減るわけではありません。

具体例は日本電気技術者協会「ポンプ・ファンの回転数制御による省エネの実際」と、J-Net21「実揚程の大きなポンプにインバータを取り付けても省エネ効果が少ないのはなぜ?」で確認できます。インバータによる周波数制御の仕組みは誘導電動機の始動法と速度制御で扱っています。

練習問題③|回転速度を80%にしたら

実揚程のない循環系で、同じポンプの回転速度を80%に下げます。効率の変化は無視します。軸動力は元の何%になりますか。

6.負荷のトルク特性と加速|電動機を選ぶ前に

同じ「速度を下げる」でも、負荷の種類によって、必要なトルクと出力の変わり方が違います。P=ωT を使うと、次の3つの型に整理できます。

負荷の型 トルクと出力 主な例
定トルク負荷 T はほぼ一定
P∝n
エレベータ、巻上機、コンベア
2乗低減トルク負荷 T∝n2
P∝n3
ポンプ、送風機
定出力負荷 T∝1/n
P はほぼ一定
巻取機

巻上機では、持ち上げる力 mg が速さによらないので、トルクが一定になり、出力は速さに比例します。巻取機では、材料の張力と送り速さ(線速度)を一定に保つと、巻いた径が大きくなるほど回転速度が下がり、その分トルクが大きくなります。3つの分類とエレベータ・巻上機・ポンプ・送風機・巻取機の例は日本電気技術者協会「電気鉄道、機械装置のトルク・速度特性と制御」、コンベアが回転速度によらずほぼ一定のトルクを必要とすることは同「誘導電動機の速度—トルク特性の見方」で確認できます。

加速には「電動機トルク−負荷トルク」が必要

一定速度で回し続けるだけなら、電動機トルク TM と負荷トルク TL がつり合えば十分です。速度を上げるには、その差が加速トルクとして必要になります。

J×Δω/Δt
=TM−TL

J は、電動機軸に換算した回転部分全体の慣性モーメント[kg·m2]です。古い資料や銘板で使われるはずみ車効果GD2とは、J=GD2/4 の関係があります(どちらもkg·m2の数値で表す場合)。加速トルクの考え方は日本電気技術者協会「三相誘導電動機の保護システム」で、GD2との関係は第1節で紹介した「電動機の機械エネルギー」で確認できます。

計算例|1,800 min⁻¹まで約6.3秒

電動機軸換算の慣性モーメントが1.6 kg·m2の機械を、停止から1,800 min−1まで加速します。加速中の平均の加速トルク Ta を48 N·mとします。

  1. 到達角速度:ω=2π×1,800/60
    =60π≒188.5 rad/s
  2. 加速時間:t=Jω/Ta
    =1.6×188.5/48≒6.3 s
  3. 蓄えられる回転エネルギー:Jω2/2
    =1.6×188.52/2≒28.4 kJ

同じ加速トルクなら、慣性が2倍になれば加速時間も2倍です。始動に時間がかかる大きな慣性の負荷では、電動機の発熱や保護装置の設定にも影響します。

また、電動機トルクと負荷トルクの交点が運転点です。交点より速度が少し上がると負荷トルクが上回り、少し下がると電動機トルクが上回るなら、速度がずれても元へ戻るので安定に運転できます。

7.理解度チェック|単位と条件まで確認

正解だけでなく、どこを読み違えると他の選択肢になるかも確認してください。重力加速度は9.8 m/s2とします。

確認問題1|釣合いおもり付きエレベータ

ロープ式エレベータで、かごの質量800 kg、定格積載質量1,000 kg、釣合いおもりの質量1,300 kgです。定格積載で一定速度1.5 m/sで上昇させるとき、巻上機を含む機械側の効率を0.75とすると、電動機の出力に最も近いものはどれですか。ロープの質量と加速は考えません。

  1. (1)5.5 kW
  2. (2)7.4 kW
  3. (3)9.8 kW
  4. (4)19.6 kW
  5. (5)35.3 kW

確認問題2|流量がm³/minのポンプ

流量1.5 m3/min、損失水頭を含む全揚程24 mで水を送ります。ポンプ効率0.80、余裕係数1.1、水の密度は1,000 kg/m3とします。電動機の出力に最も近いものはどれですか。

  1. (1)5.2 kW
  2. (2)6.5 kW
  3. (3)7.4 kW
  4. (4)8.1 kW
  5. (5)485 kW

確認問題3|比例法則を使える条件

同じ遠心ポンプで同じ水を送る循環系です。実揚程はなく、管路の抵抗は流量の2乗に比例します。効率の変化は無視します。回転速度を元の85%にしたとき、軸動力は元のおよそ何%になりますか。

  1. (1)85.0%
  2. (2)72.3%
  3. (3)61.4%
  4. (4)52.2%
  5. (5)38.6%

確認問題4|負荷の型と機械の組合せ

負荷の速度–トルク特性と機械の組合せとして、最も適切なものはどれですか。

  1. (1)ポンプ・送風機:トルクが回転速度によらず、ほぼ一定である。
  2. (2)エレベータ・巻上機:トルクが回転速度の2乗に比例する。
  3. (3)巻取機(張力と線速度が一定):出力がほぼ一定で、トルクは回転速度に反比例する。
  4. (4)ベルトコンベア(搬送する荷が一定):出力が回転速度によらず一定である。
  5. (5)送風機:出力が回転速度に比例する。

8.次の学習と公式資料

電動力応用は、負荷の仕事率(mgv、ρgQH、Qp、ωT)を求め、単位をそろえ、効率で割り、指定があれば余裕係数を掛ける流れです。比例法則は条件つきの関係なので、実揚程や効率の変化がある場合は、3乗則をそのまま当てはめないようにしましょう。

試験の原問題と公表解答は電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の問題と解答」で確認できます。本文は各節の公的資料・技術解説を確認して独自に説明したもので、資料の文章・図表や過去問を転載していません。

2026年10月28日確認・改訂。所要出力の式と単位、釣合いおもり、全揚程、比例法則の適用条件、負荷特性と加速トルクを確認しました。運営者は資格を独学中の個人です。

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