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照明と電熱|照度・光束法・ジュール熱の公式と計算【電験三種】

照明は「どこに、どの向きで光が届くか」、電熱は「入力した電気のうち、どれだけが対象を温めるか」を決めると計算できます。

点光源の照度は距離と入射角、部屋全体の平均照度は光束・照明率・保守率で求めます。加熱時間は、必要な熱量を対象に伝わる有効な電力で割って求めます。

電験三種・機械の学習用に、単位、式の成り立ち、計算条件を順に整理します。照度100 lxの基本問題から、斜め方向の18 lx、光束法の必要16台、効率を考慮した加熱35分へ進みましょう。本文の計算例・確認問題は独自に構成しています。

1.光束・光度・照度・輝度は、見る場所が違う

天井の照明器具と机を思い浮かべてください。器具が出す光、机へ向かう光、机に届く光、目から見た器具や机の光を、それぞれ別の量で表します。

量・記号 単位 何を表すか
光束 F
(Φとも書く)
lm
ルーメン
人の目の感度を考慮した光の量
光度 I cd
カンデラ
ある方向の、単位立体角当たりの光束
照度 E lx
ルクス
照らされる面の、単位面積当たりの入射光束
輝度 L cd/m2 ある方向の光度を、その方向への投影面積で割った量

光束はエネルギーの単位Jや放射のパワーWと同じではありません。人の目は波長によって感度が違うため、放射のW数が同じでも光束lmが同じになるとは限りません。

1 lx=1 lm/m2です。ある面に入った光束を面積で割ると、その面の平均照度になります。ただし器具の全光束をそのまま机の面積で割れるのは、全光束がその面へ届く場合だけです。

光度で使う立体角は、空間での広がりを表す角度で、単位はsr(ステラジアン)です。全方向に同じ光度を持つ理想的な光源なら、球全体の立体角4π srから F=4πI となります。方向ごとに光度が変わる実際の器具へ、一方向の光度だけを使って当てはめてはいけません。

輝度は見る方向を含む量です。まぶしさは輝度だけで決まらず、光源の見かけの大きさ、視野内の位置、周囲の明るさなどにも左右されます。照度lxをそのまま輝度cd/m2へ読み替えることはできません。用語は照明学会「基礎事項解説」とPanasonic「照明の単位と数表」で確認できます。

2.点光源の照度|距離と入射角を決める

光源の大きさを距離に比べて十分小さいとみなせる点光源を考えます。ここでは、その光源から直接届く光だけを扱い、壁・天井の反射、他の光源、途中の吸収や遮りを無視します。

面上の1点の照度
E=Icosθ/r2

  • I:その点へ向かう方向の光度[cd]。電流の記号と同じですが、この節では光度です。
  • r:光源から、その点までの直線距離[m]。
  • θ:面に垂直な線(法線)と、光源へ向かう線との角度。面そのものとの角度ではありません。

同じ立体角に出た光は、距離が大きいほど広い面へ分かれます。面積が距離の2乗に比例するため、照度には 1/r2 が現れます。また、光が斜めに当たると受ける面の広がりが増えるため、さらにcosθを掛けます。

したがって距離を2倍にすると照度が1/4になるのは、同じ光度・同じ入射角などの条件を保つ場合です。天井の器具を固定したまま机上の測定点を横へ動かすと、距離と角度の両方が変わり、方向別の光度も変わることがあります。

高さから水平面照度を求める

光源から水平な作業面までの高さを h とします。θを鉛直下向きから測ると h=rcosθ なので、r=h/cosθ を代入できます。

Eh=Icosθ/r2
=Icos3θ/h2

ここでの高さは、床ではなく照度を求める作業面から光源までです。cosの3乗は別の法則ではなく、距離の式に含まれるcosの2乗と、斜め入射のcosを合わせたものです。複数の点光源があれば、各光源について距離・角度・光度を調べ、その点の照度を足し合わせます。

練習問題①|高さ3 m、真下の照度

真下方向の光度が900 cdの点光源を、水平な作業面から3 m上に置きます。反射光は無視し、真下の照度を求めてください。

斜め方向の例|高さ3 m、横4 mなら18 lx

別の点光源から作業面上の点Pへ向かう光度を750 cdとします。高さは3 m、光源の真下からPまでの水平距離は4 mです。反射光は無視します。

  1. 直線距離は r=√(32+42)=5 m。
  2. 入射角の余弦は cosθ=h/r=3/5=0.6。
  3. 照度は Eh=750×0.6/52
    =450/25=18 lx。

高さを使う式でも 750×0.63/32=18 lx です。直線距離5 mにcosの3乗を組み合わせると、角度を二重に補正して誤ります。

また「真下が必ず最も明るい」と言えるのは、この理想条件で下方の各方向に同じ光度を持つ場合です。実際の器具では配光を確認します。直接照度の式と配光の扱いはPanasonic「直接照度の計算法」を参照できます。

3.光束法|平均照度から必要な器具数へ

部屋全体の照明では、1点の照度とは別に維持平均照度を概算します。これは、使用に伴う光束低下などを見込んで確保する平均照度です。

平均照度:E=NFUM/A

必要数の計算:N=EA/(FUM)

A は対象面積[m2]、F は1台当たりの光束[lm]、N は器具台数です。全体の光束 NF に照明率 U と保守率 M を掛け、対象面積で割っています。

係数 役割 決める条件
照明率 U 基準にした光束のうち、反射光も含め作業面へ届く割合 器具の配光、室の形、高さ、各面の反射率
保守率 M 初期照度に対して、保守時期までに維持する照度の割合 光源の光束低下、汚れ、清掃・交換計画

光束の基準をそろえることが大切です。ランプ1個の光束で計算する資料では、N はランプ個数です。1台に2灯あるなら、ランプ個数と器具台数は違います。器具1台の光束を使う場合は、その基準に対応した照明率を組み合わせます。ランプ光束用の係数と器具光束を無条件に混ぜないでください。

保守率は「どの部屋でも0.6~0.8」と固定する数値ではありません。設問では指定値、実際の設計では器具資料と保守計画に基づく値を使います。例えば M=0.75は、想定した保守時期の照度を初期の75%と見込むという意味です。式の計数基準はPanasonic「明るさ確保のための設計手法」、係数の考え方は「平均照度の計算法」に整理されています。

計算例|15台では不足し、16台が必要

面積72 m2の室で、目標の維持平均照度を400 lxとします。器具1台の光束は4,200 lm、それに対応する照明率は0.60、保守率は0.75です。これらは練習用の設定値で、特定用途の法令値や推奨照度ではありません。

  1. 必要な光束に対応する量:400×72=28,800 lm。
  2. 1台が維持照度に寄与する光束:4,200×0.60×0.75=1,890 lm。
  3. 台数:N=28,800/1,890
    ≒15.24。必要数なので切り上げて16台。
台数 維持平均照度 400 lxとの比較
15台 15×1,890/72
=393.75 lx
下回る
16台 16×1,890/72
=420 lx
上回る

ただし、平均420 lxでもすべての机が420 lxになるわけではありません。器具の配置や棚の影で分布が変わります。光束法の台数を出した後に、個々の位置の照度も確認します。現場の測定・照度分布の診断は照度計算と照明診断で扱っています。

4.光源・器具の効率|lm/Wと色温度を混同しない

照明の省エネを比べるときは、全光束を消費電力で割った効率[lm/W]を使います。光源単体の光源効率か、電源装置を含めた器具全体の効率かをそろえて比較します。ここで分母にするのは消費電力であり、放射のパワーではありません。また、単位がlm/Wなので、熱効率のような無次元の百分率ではありません。

例えば光束1,500 lm、器具全体の入力12 Wという仮定なら 1,500/12=125 lm/W です。同じ1,500 lmを100 Wで出す別の仮定では15 lm/Wです。これは計算例であり、LEDと白熱電球の性能比を一律に決める数値ではありません。

色温度[K]は光の色味を示す量で、照度の単位lxとは別です。光度と配光、距離、入射角を一定にした照度計算に、色温度だけを追加で掛けることはしません。ただし、色温度の異なる製品へ交換すれば光束や配光も変わる可能性があるため、交換前後の照度まで同じとは限りません。

同じ光束でも光の広がり方が違えば机上照度は変わります。省エネはlm/Wだけで完結せず、目的の面で必要な照度を確保できるかも併せて判断します。ランプの効率と、安定器の消費電力を含める効率の違いは日本電気技術者協会「照明用光源の種類と点灯回路」で確認できます。

5.ジュール熱と加熱時間|電力・熱量・効率をつなぐ

抵抗で発生する熱と、対象に伝わる熱を分ける

電力 P[W]は1秒当たりのエネルギーです。一定の電力で t[s]通電したとき、抵抗で発生するジュール熱 Qe[J]は次のようになります。

Qe=Pt
=I2Rt
=(V2/R)t

この節の I は電流[A]、R は抵抗[Ω]、V は抵抗両端の電圧[V]です。一定抵抗の直流回路を基本に考え、交流の抵抗負荷では実効値を使います。電流・抵抗が時間変化する場合は、瞬時電力を時間にわたって積み上げます。

抵抗を大きくしたときの発熱は、何を一定にするかで違います。電流一定なら P=I2R から増え、電圧一定なら P=V2/R から減ります。電力と電力量の基礎は直流回路の基礎で復習できます。

発熱したエネルギーがすべて水などの加熱対象へ移るとは限りません。周囲へ逃げる熱や容器を温める分があるため、対象に有効に使われる割合を熱効率ηで表し、Q=ηPt とします。ここで Q は対象の昇温に使われた熱量です。ηは0.80のように小数で代入します。

比熱と温度差から必要熱量を求める

比熱 c は、単位質量の温度を1 K上げるのに必要な熱量です。質量 m[kg]、温度上昇ΔT[K]、一定とみなした比熱 c[J/(kg·K)]を用いると、次の熱量が必要です。

Q=mcΔT

ηPt=mcΔT
t=mcΔT/(ηP)

温度差は、例えば20℃から80℃なら60 Kです。摂氏と絶対温度ではゼロ点が違いますが、温度差の数値は同じなので273.15を加える必要はありません。

この式は、沸騰・融解などの相変化がなく、比熱を一定とみなせる計算です。相変化がある場合は潜熱も必要です。容器の熱容量を別に計算する設問ならその分を足し、熱効率に含めた損失をさらに二重に差し引かないよう、効率の定義を確認します。比熱容量の定義は産総研「比熱容量とは?」で確認できます。

練習問題②|3 kWで20 kgの水を20℃から80℃へ

入力電力3 kWの抵抗式ヒーターで、20 kgの水を20℃から80℃に温めます。水の比熱は4.2 kJ/(kg·K)、熱効率は100%とし、容器の熱容量、蒸発、周囲への熱損失は無視します。所要時間を分で求めてください。

同じ条件で熱効率だけを80%とすると、水に使われる電力は 0.80×3=2.4 kW。したがって t=5,040/2.4=2,100 s、つまり35分です。効率が下がると必要時間は長くなります。28分に0.80を掛けて短くしてしまわないようにしましょう。

単位換算|kWとkWhは別の量

換算 意味 計算の注意
1 W=1 J/s 電力と熱量の速さ Wと秒なら結果はJ
1 kW=1 kJ/s 両方に1,000を含む kWと秒なら結果はkJ
1 kWh=3,600 kJ 1 kWを1時間使うエネルギー 時間単位hは3,600 s
1 cal≒4.2 J カロリーの概算換算 精密な値は定義・設問に従う

1 kWh=1,000 W×3,600 s
=3,600,000 J=3,600 kJ です。kWhは電力そのものではなく、電力と時間の積です。

calには複数の定義があり、熱化学カロリーは4.184 J、国際蒸気表カロリーは4.1868 Jです。「1 cal=4.186 J」をすべての定義で厳密な等号とはしません。試験では指定された換算値を使い、約4.2 Jという概算と区別します。換算表はNIST「SI単位への換算係数」(英語)で確認できます。

加熱方式の違いも押さえる

抵抗加熱は、電流が流れる抵抗のジュール熱を利用します。誘導加熱は、交流磁界によって導電性の被加熱物に電流を誘導して発熱させます。誘電加熱は、交番電界による誘電体の損失を利用します。「誘導」と「誘電」を、名前が似ているだけで同じ仕組みとしないようにしましょう。詳しい比較は日本電気技術者協会「誘導加熱と誘電加熱の得失」にあります。

6.理解度チェック|式を選ぶ条件も答える

正解だけでなく、単位・距離・角度・効率のどこを読み違えると他の答えになるかも確認してください。

確認問題1|400 cd、距離2 mの照度

測定点方向の光度400 cdの点光源から2 m離れた面へ、光が垂直に当たっています。反射光などを無視した照度はいくらですか。

  1. (1)50 lx
  2. (2)100 lx
  3. (3)200 lx
  4. (4)400 lx
  5. (5)800 lx

確認問題2|10 kgの水を10 K温める時間

入力2 kWの抵抗式ヒーターで10 kgの水の温度を10 K上げます。比熱は4.2 kJ/(kg·K)、熱効率100%、容器の熱容量と熱損失は無視します。所要時間はいくらですか。

  1. (1)21 s
  2. (2)42 s
  3. (3)84 s
  4. (4)210 s
  5. (5)420 s

確認問題3|逆二乗則を使える比較

点光源から同じ方向に測定点を動かし、測定面の入射角を一定に保ちます。その方向の光度は一定で、反射光や遮りを無視します。このとき照度と光源からの距離の関係はどれですか。

  1. (1)距離に反比例する。
  2. (2)距離の2乗に反比例する。
  3. (3)距離の3乗に反比例する。
  4. (4)距離に比例する。
  5. (5)距離によらず一定である。

確認問題4|保守率を掛ける理由

光束法で用いる保守率 M の説明として、最も適切なものはどれですか。

  1. (1)色温度の数値を、照度へ換算する係数である。
  2. (2)光源の光束低下や器具・室内面の汚れなどを、保守計画に応じて見込む係数である。
  3. (3)電源の力率を、そのまま代入する係数である。
  4. (4)光束を消費電力で割った値で、単位はlm/Wである。
  5. (5)器具や清掃条件に関係なく、設計者が任意に決める余裕率である。

7.次の学習と公式資料

照度を求めるときは「1点か平均か」を先に決めます。点光源なら方向別の光度・距離・入射角、光束法なら光束の基準・照明率・保守率をそろえます。加熱は温度差から熱量を求め、効率を含めた有効電力で割れば、単位を追いながら時間まで計算できます。

試験の原問題と公表解答は電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の問題と解答」で確認できます。本文は各節の一次資料を確認して独自に説明したもので、資料の文章・図表や過去問を転載していません。

2026年10月26日確認・改訂。測光量、点光源の条件、光束法の係数、熱量と単位換算を確認しました。運営者は資格を独学中の個人です。

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