建築物の環境衛生 建築物環境衛生管理技術者

室内空気汚染の見分け方|CO₂・CO・粉じん・酸欠の初動

室内空気の異常は、測定値ごとに意味と初動が違います。CO₂が高いなら在室人数と外気導入を確認し、COが出たなら燃焼・排気系の緊急異常として退避を含めて対応します。粉じんが高いなら外気、室内発生源、フィルタバイパスを切り分けます。

CO₂計一つでCO、PM2.5、VOC、カビまで安全と判定することはできません。「発生源→空気の経路→在室者」の順で、同じ時刻の室内値・外気値・設備状態を結びつけましょう。

確認日:2026年8月1日。厚生労働省の建築物環境衛生管理基準、健康増進法の受動喫煙対策、酸素欠乏症等防止規則、環境省のPM2.5資料を照合しています。

まず測定項目の役割を分ける

項目 主に分かること 分からないこと
CO₂ 人の在室に対する外気導入の目安 CO・粒子・VOCの個別濃度
CO 不完全燃焼・排気流入の疑い 換気量全体の良否
浮遊粉じん 約10μm以下の粒子の質量濃度 粒子の成分・毒性
酸素 酸素欠乏の有無 CO・硫化水素等の有無

空気清浄フィルタも万能ではありません。一般の粒子フィルタは粉じん・花粉等を対象にしますが、CO₂やCOの濃度を下げる外気導入の代わりにはなりません。汚染物質の性状と除去機構を組み合わせます。

管理基準値は「測定条件」と一組で読む

項目 現行基準 判定上の注意
浮遊粉じん 0.15mg/m3以下 1日の使用時間中の平均
CO 6ppm以下 10ppmは2022年3月までの旧値
CO₂ 1,000ppm以下 健康障害の発症線とは異なる

この3項目は、特定建築物の通常の使用時間中に測定した1日の平均値で基準と比較します。センサーの瞬間値が一度基準を越えただけで法令不適合を確定するものではなく、逆に平均値が基準内でも急性事故の警報を無視してはいけません。

温度、湿度、気流、ホルムアルデヒドを含む全7項目と測定位置・頻度は「建築物環境衛生管理基準」でまとめています。

CO₂は在室者と外気導入の釣り合いを見る

人の呼気が主な室内発生源であれば、CO₂は在室者に対する外気導入の足りなさを見つける手がかりになります。ただし、CO₂の値だけから粉じん、感染性エアロゾル、VOC、カビ胞子の濃度は求められません。それぞれに独自の発生源と除去経路があるからです。

  1. 測定の信頼性:センサーの校正状態、測定位置、測定時刻を確認する
  2. 同時刻の差:室内CO₂と外気CO₂を同じ方式で測る
  3. 負荷:在室者数、会議時間、扉の開閉、運用スケジュールを記録する
  4. 外気系:外気ダンパ、変風量(VAV)制御、ファン、フィルタ差圧、給排気バランスを見る
  5. 再測定:是正後に同じ位置・負荷条件で変化を確認する

外気CO₂は地域、時刻、交通、排気等の影響を受けます。「常に400ppm」と固定せず、建物の実測値と室内外差を記録します。

COは換気指標ではなく燃焼事故のサイン

COは無色・無臭で、燃料の不完全燃焼や排気の流入で発生します。業務用厨房、湯沸器、ボイラー、暖房器具、エンジン式機器に加え、排気口と外気取入口の短絡も点検対象です。

COはヘモグロビンと結合し、酸素運搬を妨げます。頭痛、めまい、吐き気、意識障害などが現れ得ますが、臭いでは気づけません。警報や体調不良があるときは、安全な場所へ退避し、消防・ガス事業者・施設の緊急手順へ接続します。空気を測り直すために無防備で再入室してはいけません。

予防は、給気と排気の両方を運転すること、燃焼機器の始業・終業点検、異常時の使用中止、CO警報器の作動確認を一続きにします。

浮遊粉じんとPM2.5の数値は直接比較しない

指標 対象・基準 主な用途
建築物の浮遊粉じん おおむね10μm以下・0.15mg/m3以下 特定建築物の室内管理
PM2.5 2.5μm分粒・年15μg/m3かつ日35μg/m3以下 一般環境大気の環境基準

0.15mg/m3は単位だけ変換すると150μg/m3です。しかし、これをPM2.5の35μg/m3と比べて「室内の方が4倍安全」といった判断はできません。粒径の切り分け、測定方法、平均化時間、法的目的が異なるからです。

浮遊粉じんが高いときは、室内外を同時に比較します。屋外工事、イベント、交通などと同時に上がるなら外気経路、室内だけなら清掃、複合機、作業、フィルタの取付不良・破損を調べます。差圧が高い場合の目詰まりと、差圧が不自然に低い場合のバイパス・欠落を分けて見ます。

受動喫煙対策は空気清浄機だけでは完結しない

改正健康増進法により、学校・病院・行政機関庁舎等の第一種施設は原則敷地内禁煙、事務所・商業施設等の第二種施設は原則屋内禁煙です。例外的に設ける喫煙専用室には、次の流出防止基準があります。

  • 出入口で室外から室内へ向かう気流が0.2m/s以上
  • 煙が漏れないよう壁・天井等で区画
  • 喫煙専用室内の空気を屋外へ排気

空気清浄機で一部の粒子を捕集しても、発生源の分離、煙の流出防止、屋外排気の代替にはなりません。管理時は、扉の運用、開口面風速、給気路、排気ファン、排気先、標識を一組で確認します。20歳未満の人は客だけでなく従業員も喫煙エリアへ立ち入れません。

アレルゲンは「湿度だけ」では減らない

建物内のじん埃には、ダニの死骸・ふん、真菌の胞子、花粉、動物の毛やフケ、ゴキブリ由来成分等が含まれることがあります。相対湿度40~70%の管理基準内でも、既に蓄積したアレルゲンが消えるわけではありません。

  1. 漏水、結露、湿った保温材、ドレンパンを目視する
  2. 症状が出る時間・場所・空調運転・清掃時刻を突き合わせる
  3. 湿気源の是正、清掃、フィルタ保守、室内発生源の除去を組み合わせる
  4. 健康症状の診断は医療者に委ね、設備側は事実と測定条件を提供する

化学物質や建物内での体調不良は「化学物質とシックビル症候群」、レジオネラや真菌などの微生物は「感染症と微生物」で分けて確認します。

地下ピットの酸欠は室内CO₂管理と別制度

酸素欠乏症等防止規則は、空気中の酸素濃度が18%未満の状態を酸素欠乏と定義しています。酸素欠乏危険作業では、原則としてその日の作業開始前に濃度を測定し、日時、方法、箇所、条件、結果、測定者、措置概要を3年間保存します。

作業場所は酸素濃度18%以上に保つよう換気します。第二種酸素欠乏危険作業では、酸素に加えて硫化水素10ppm以下も確認します。測定は特別教育、作業主任者、換気、空気呼吸器、監視・避難という作業計画の一部です。警報中のピットに助けに入ると二次災害になるため、無理に入らず消防へ通報します。

異常値を5つのパターンで切り分ける

状態 有力な仮説 最初の確認
CO₂だけ上昇 人数に対する外気不足 在室・ダンパ・ファン
CO上昇 不完全燃焼・排気流入 退避・緊急連絡・燃焼停止
室内外で粉じん上昇 外気側の粒子イベント 外気取入位置・ろ材・バイパス
室内だけ粉じん上昇 清掃・工事・室内発生源 時刻・場所・作業履歴
3項目は正常だが訴え VOC・アレルゲン・微生物等 症状マップ・湿気源・改修履歴

原因を一つに決め打ちせず、測定器のゼロ・校正、位置、人数、外気、設備、作業履歴を同じ時間軸で比べます。急性の体調不良や警報がある場合は調査より退避・救護を優先します。

理解度チェック

【問1】会議中にCO₂が1,200ppmへ上がりましたが、COと粉じんは平時値です。最初の切り分けとして最も適切なものはどれですか。

  1. CO中毒と確定する
  2. 全フィルタを高性能品へ替える
  3. 在室人数と外気ダンパ・ファンを確認する
  4. カビが原因と確定する
  5. 外気CO₂を測らず室内値だけ保存する
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正解:3
人の在室に対する外気導入不足をまず疑います。同時刻の室内外値と設備状態を記録し、是正後に同条件で再測定します。

【問2】建築物の浮遊粉じん0.15mg/m3とPM2.5の日平均35μg/m3を直接比較できない主な理由はどれですか。

  1. mgとμgは変換できないから
  2. 粒径、測定方法、平均時間、目的が異なるから
  3. PM2.5は気体だから
  4. 浮遊粉じんは屋外でしか測れないから
  5. 数値が小さすぎるから
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正解:2
0.15mg/m³は150μg/m³へ換算できますが、対象粒径と測定条件が違います。単位をそろえただけで許容度を比較してはいけません。

【問3】喫煙専用室の煙流出防止策として適切な組合せはどれですか。

  1. 室内向き0.2m/s以上・区画・屋外排気
  2. 室外向き0.2m/s以上・扇風機だけ
  3. 空気清浄機だけ
  4. CO₂が1,000ppm以下なら区画不要
  5. 20歳未満の従業員は清掃目的なら入室可
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正解:1
出入口で室外から室内へ向かう0.2m/s以上の気流、壁・天井等の区画、屋外排気を組み合わせます。

【問4】地下ピットの酸素濃度警報が作動し、中の作業者が倒れているのを見つけました。適切な対応はどれですか。

  1. すぐ一人で入って救出する
  2. 口元をタオルで覆って入る
  3. 酸素濃度が18%以上に戻るまで誰にも連絡しない
  4. 無防備で入らず消防へ通報し、計画された救出体制による
  5. 家庭用扇風機を手に持って入る
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正解:4
防護なしでの救出は二次災害を招きます。消防へ通報し、給気式の呼吸用保護具、監視、救出器具等を含む計画された体制で対応します。

公式の確認先

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まとめ|一つの数値で空気全体を判定しない

CO₂は人と外気導入、COは燃焼・排気異常、浮遊粉じんは粒子状物質、酸素濃度は酸素欠乏の指標です。測定値の目的を分けると、不要なフィルタ交換や、危険な「換気しながら様子見」を避けられます。

記録には数値だけでなく、測定位置・時刻、室内外、在室、作業、空調運転、是正、再測定を残します。体調不良や警報があるときは、原因調査よりも人の退避と救護を先にします。

制度・資料確認日/最終更新日:2026年8月1日

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