ねずみ、昆虫等の防除 建築物環境衛生管理技術者

【ビル管理士・ねずみ昆虫】IPMと防除計画・調査法(総合的有害生物管理・ゴキブリ指数・防虫防鼠構造・調査法)

結論:IPMは「薬剤に頼りすぎず、総合的に害虫を管理する考え方」

結論から言います。IPM(Integrated Pest Management=総合的有害生物管理)とは、薬剤だけに頼らず、環境整備・物理的防除・化学的防除を組み合わせて、害虫の発生を許容水準以下に抑える管理手法です。

かつてのビル管理では「害虫が出たら殺虫剤をまく」が主流でした。しかし、薬剤の使いすぎは入居者の健康リスクや環境汚染、害虫の薬剤抵抗性の発達といった問題を引き起こします。

IPMでは、まず「害虫が発生しにくい環境を作る」ことを最優先にします。それでも発生した場合に、最小限の薬剤で対処する──これが現代のビル管理における害虫防除の基本方針です。

ビル管理士試験では、IPMの基本概念防除計画の立て方生息調査(モニタリング)の方法防虫防鼠構造が頻出です。

IPMの基本概念(★超頻出★)

IPMの定義

建築物衛生法に基づく「建築物環境衛生管理基準」では、ねずみ等の防除についてIPMの考え方に基づく防除体系が採用されています。

IPMの考え方を一言で表すと、「まず調査、次に環境整備、最後に薬剤」です。

IPMの3つの柱

① 発生予防

環境整備で害虫が発生しにくい環境を作る

② 調査(モニタリング)

定期的に生息状況を調べ、被害の程度を把握する

③ 防除措置

許容水準を超えた場合に適切な方法で防除

管理基準の頻度

項目 頻度
生息調査 6ヶ月以内ごとに1回
防除措置 調査の結果、必要と認められた場合に実施

ポイントは、防除措置は「必要な場合のみ」実施するという点です。かつては「定期的に薬剤散布」が当たり前でしたが、IPMでは調査の結果を見て判断します。害虫がほとんどいないのに薬剤を散布する必要はない──これがIPMの合理的な考え方です。

試験のポイント:「生息調査は6ヶ月以内ごとに1回」「防除措置は調査結果に基づき必要な場合に実施」が超頻出です。「定期的に薬剤散布する」は旧来の方式でありIPMの考え方ではありません。

防除計画の立て方

IPMに基づく防除計画は、以下のステップで進めます。

  1. 事前調査(初回調査):建物の構造・用途・周辺環境を把握し、害虫の侵入経路や発生源を特定
  2. 目標設定:許容水準(管理基準値)を設定。ゼロにすることは非現実的なので、「このレベル以下に抑える」という目標を立てる
  3. 防除方法の選定:環境的防除→物理的防除→化学的防除の優先順位で方法を選ぶ
  4. 実施:計画に基づき防除を実行
  5. 効果判定:防除後に再調査し、目標を達成できたか評価
  6. 計画の見直し:効果が不十分なら方法を修正

防除方法の優先順位

優先順位 方法 具体例
1. 環境的防除 害虫が住みにくい環境を作る 整理整頓、食べ残しの除去、水たまりの排除
2. 物理的防除 薬剤を使わずに捕獲・遮断 粘着トラップ、防虫網、隙間の閉塞
3. 化学的防除 殺虫剤・殺鼠剤の使用 ベイト剤設置、残効性処理、ULV散布

現場ではこの優先順位がとても重要です。たとえば、厨房でゴキブリが発生した場合、まず考えるべきは「食べ残しやゴミが適切に処理されているか」(環境的防除)です。厨房が不衛生な状態のまま殺虫剤だけ散布しても、また別のゴキブリが集まってきます。

生息調査(モニタリング)の方法(★頻出★)

ゴキブリの調査

調査方法 内容
粘着トラップ法 粘着シート(ゴキブリホイホイ型)を設置し、捕獲数をカウント。最も一般的な調査法
目視調査 生息の痕跡(死骸、フン、卵鞘)を目視で確認

ゴキブリ指数(★超頻出★)

粘着トラップで捕獲したゴキブリの数を数値化したものがゴキブリ指数です。

計算式 意味
ゴキブリ指数 = 捕獲数 ÷ トラップ数 トラップ1個あたりの平均捕獲数

たとえば、厨房に粘着トラップを10個設置し、1週間後に回収したところ合計30匹のゴキブリが捕獲されたとします。このときのゴキブリ指数は30÷10=3.0です。この数値が管理基準値を超えていれば、防除措置が必要と判断します。

ネズミの調査

調査方法 内容
ラットサイン調査 ネズミの通り道の痕跡(足跡・糞・体脂の汚れ・かじり跡)を目視確認
粘着トラップ法 大型の粘着シートを通路に設置して捕獲数をカウント

ラットサインは、ネズミが通った跡のことです。ネズミは決まった通路を繰り返し使う習性があるため、壁際や配管に沿って体脂で黒く汚れた跡(こすり跡)が見られます。ビルの管理者はこのラットサインを見つけることで、ネズミの存在と侵入経路を推定できます。

防虫防鼠構造(★頻出★)

害虫やネズミの侵入を物理的に防ぐ建物の構造的対策を「防虫防鼠構造」と呼びます。これはIPMの「環境的防除」の核心です。

対策箇所 内容
配管貫通部 壁・床を貫通する配管の隙間をモルタルや金属板で閉塞
出入口 自動ドア・エアカーテン・防虫ブラシの設置
換気口・排気口 金網やメッシュフィルターの取り付け
排水口 排水トラップの封水を維持(封水切れ=害虫の侵入経路に)
照明 誘虫性の低い照明(LED・ナトリウムランプ)を使用

夜にコンビニの入口に虫が集まっているのを見たことがありませんか?蛍光灯は紫外線を出すため虫が寄ってきます。一方、LED照明は紫外線をほとんど出さないため、虫を寄せにくい特徴があります。ビルの外部照明をLEDに切り替えることは、優れた防虫対策の一つです。

試験のポイント:「防虫防鼠構造」の具体例(配管貫通部の閉塞・排水トラップの封水維持・LED照明の防虫効果)は頻出です。

理解度チェック

【第1問】IPMの基本概念

IPM(総合的有害生物管理)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) IPMでは、まず環境整備による発生予防を優先する。
(2) 生息調査は6ヶ月以内ごとに1回実施する。
(3) 防除措置は調査の結果、必要と認められた場合に実施する。
(4) IPMでは定期的に薬剤を散布することが基本方針である。
(5) IPMでは環境的防除→物理的防除→化学的防除の優先順位で行う。

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正解:(4)
IPMの基本方針は「薬剤に頼りすぎない」ことです。定期的な薬剤散布は旧来の方式であり、IPMでは調査結果に基づき必要な場合にのみ薬剤を使用します。薬剤よりも環境整備や物理的防除を優先するのがIPMの考え方です。

【第2問】ゴキブリ指数

ゴキブリの生息調査に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) ゴキブリ指数は「捕獲数 × トラップ数」で算出する。
(2) ゴキブリ指数は「捕獲数 ÷ トラップ数」で算出する。
(3) 粘着トラップは設置後24時間で回収する。
(4) 目視調査よりも粘着トラップの方が信頼性が低い。
(5) ゴキブリ指数が高いほど生息密度が低い。

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正解:(2)
ゴキブリ指数は「捕獲数÷トラップ数」で算出します。トラップ1個あたりの平均捕獲数を表す指標です。(1)は計算方法が違います。(5)は逆で、指数が高いほど生息密度が高いことを示します。

【第3問】防虫防鼠構造

防虫防鼠構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 配管の壁貫通部の隙間をモルタルで閉塞する。
(2) 換気口に金網を取り付ける。
(3) 排水トラップの封水を維持する。
(4) 外部照明に紫外線を多く出す蛍光灯を使用する。
(5) 出入口にエアカーテンを設置する。

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正解:(4)
蛍光灯は紫外線を出すため虫を誘引します。防虫対策としては、紫外線をほとんど出さないLED照明やナトリウムランプの使用が推奨されます。「蛍光灯を使用する」は防虫防鼠構造の観点から不適当です。

【第4問】ネズミの調査

ネズミの生息調査に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) ラットサインとは殺鼠剤の設置場所を示すマークである。
(2) ネズミは毎回異なる経路を通るため、通り道の特定は困難である。
(3) ラットサインには足跡・糞・こすり跡・かじり跡などがある。
(4) ネズミの調査には粘着トラップは使用しない。
(5) ラットサインが見つからなければ、ネズミは確実にいない。

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正解:(3)
ラットサインとはネズミが通った痕跡のことで、足跡・糞・体脂によるこすり跡・かじり跡などがあります。(1)は誤りでラットサインは殺鼠剤の設置場所ではありません。(2)は誤りで、ネズミは決まった通路を繰り返し使う習性があります。(4)は誤りで、ネズミの調査にも粘着トラップを使用します。

まとめ

この記事では、IPMと防除計画・調査法について解説しました。最後に重要ポイントを振り返りましょう。

テーマ 暗記ポイント
IPMの基本 薬剤に頼らず環境整備を最優先
生息調査の頻度 6ヶ月以内ごとに1回
ゴキブリ指数 捕獲数 ÷ トラップ数
ラットサイン ネズミの通り道の痕跡(足跡・糞・こすり跡・かじり跡)
防虫照明 LED照明は紫外線が少なく虫を誘引しにくい

IPMはビル管理士試験の「ねずみ・昆虫等の防除」分野の総まとめ的なテーマです。IPMの考え方を軸に、調査法・防除法・安全管理を体系的に理解しておきましょう。

殺虫剤・殺鼠剤の詳細は殺虫剤・殺鼠剤の分類と安全管理を、各害虫の生態はねずみの生態と防除法ゴキブリ・ダニの生態と防除法蚊・ハエ・その他の害虫と媒介疾病をあわせて確認してください。

ビル管理士試験の科目別ロードマップで、効率よく学習を進めましょう。

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