この記事で分かること
- 実際の冷凍能力と法定冷凍能力の違い
- 冷凍保安規則第5条の4つの算定方法
- 遠心式・吸収式・容積式などの独自計算例
- 算定後に第一種・第二種等を判定する順序
結論:法定冷凍能力は実測kWを3.86で割る値ではない
高圧ガス保安法の「1日の冷凍能力」は、許可・届出などの規制区分に使う法定冷凍能力です。冷凍保安規則第5条の算定基準で求めます。
カタログの冷却能力kWや、日本冷凍トンへ換算した実際の熱量とは同じとは限りません。まず設備方式ごとの法定能力を求め、次に冷媒ガスの法令区分を確認し、最後に50・20・5・3トンの境界へ当てはめます。
公式資料の確認先
- e-Gov:冷凍保安規則(第5条)
- e-Gov:高圧ガス保安法(第5条)
- e-Gov:高圧ガス保安法施行令(第2条・第4条)
- 日本冷凍空調学会:冷凍トン
- 高圧ガス保安協会:冷凍空調装置の施設基準 新旧対照表
法令確認日:2026年7月28日。実際の手続では、設備構成・冷媒と特則を示して所管行政庁へ確認してください。
日本冷凍トン・米国冷凍トン・法定冷凍トンを分ける
| 呼び方 | 基準 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 日本冷凍トン | 1JRT=約3.86kW | 実際の熱量単位 |
| 米国冷凍トン | 1USRT=約3.52kW | 機器能力表示など |
| 法定冷凍能力 | 冷凍則第5条で算定 | 許可・届出等の判定 |
1日本冷凍トンは、0℃の水1,000kgを24時間で0℃の氷にするために取り去る熱量で、約3.86kWです。一方、法定冷凍能力は、圧縮機の押しのけ量や原動機出力などから標準化して求めます。
重要:実冷却能力が38.6kWだから法定10トン、と直接判断してはいけません。設備方式に対応する法定式を使います。
算定は4方式に分かれる
原動機の定格出力÷1.2
発生器の1時間入熱量÷27,800
冷媒係数Q×伝熱面積A
押しのけ量等V÷冷媒係数C
「遠心式」と「それ以外」の2分類だけではありません。現行の第5条は、吸収式と自然環流・自然循環式も別に定めています。
遠心式は原動機の定格出力で算定する
遠心式圧縮機
R=P÷1.2
R:1日の冷凍能力(トン)、P:原動機の定格出力(kW)
原動機の定格出力が90kWなら、R=90÷1.2=75トンです。実際の冷水冷却能力や運転負荷率ではなく、圧縮機を駆動する原動機の定格出力を使います。
吸収式は発生器への1時間入熱量で算定する
吸収式冷凍設備
R=H÷27,800
H:発生器を加熱する1時間の入熱量(kJ/h)
入熱量が278,000kJ/hなら、R=278,000÷27,800=10トンです。吸収式では圧縮機の押しのけ量ではなく、発生器へ加える熱量を基準にします。
自然環流式・自然循環式は伝熱面積で算定する
自然環流式・自然循環式
R=Q×A
Q:冷媒ごとの係数、A:冷媒ガスに接する側の表面積(m²)
冷凍則第5条の表では、例として二酸化炭素Q=1.02、アンモニアQ=0.64、R32はQ=0.63です。二酸化炭素を用い、対象表面積が12m²なら、R=1.02×12=12.24トンです。
係数は改正や対象冷媒に注意します。古い教材の係数を流用せず、現行条文の表を確認してください。
その他の圧縮機はV÷Cで算定する
前三方式以外
R=V÷C
V:標準回転速度での1時間のピストン押しのけ量等(m³/h)、C:冷媒ごとの係数
単純な往復圧縮機ではVに1時間のピストン押しのけ量を使います。ただし、多段圧縮・多元冷凍方式は最終段等の押しのけ量を使う補正式、回転ピストン型は寸法と回転数による専用式があります。スクリュー圧縮機なども、設備資料と第5条の定義に沿ってVを確認します。
独自計算例:R134aの往復圧縮機
V=96m³/h、気筒1個の体積が5,000cm³以下で、現行表のC=14.4とします。
R=96÷14.4=6.67トンです。
旧稿の「R=V×C×D÷1,000」は、現行第5条の基本式ではありません。法定能力は、条文が定めるVをCで割って求めます。
算定後に冷媒区分と境界値を当てはめる
冷凍能力だけでは製造者区分は決まりません。現行の高圧ガス保安法施行令第2条・第4条に沿い、冷媒ガスの区分を先に確認します。
| 冷媒区分 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 第一種ガス | 20以上50未満 | 50以上 |
| アンモニア・所定のフルオロカーボン | 5以上50未満 | 50以上 |
| その他のガス | 3以上20未満 | 20以上 |
第一種ガスは3以上20未満が適用除外です。アンモニア等は3以上5未満が法第13条のその他製造者、その他のガスは3トンから第二種となります。フルオロカーボンという名称だけで区分を決めず、政令が引用する燃焼性基準への該当を確認します。詳しい判定例は「製造の許可・届出と第一種・第二種の区分」で整理しています。
複数設備は「どこまで一設備か」も確認する
同じ事業所に圧縮機が複数あるからといって、常に各銘板の数値を全部足す、または全部別々にするとは限りません。冷媒系統、共通ブライン、ユニットとしての一体性、予備機・切替運転の構成などを確認します。
KHKの施設基準は、共通ブラインを持つ設備や社会通念上ひとつの規格品と考えられる設備など、合算して法定冷凍能力とする考え方を示しています。申請では系統図、機器仕様書、運転条件をそろえ、所管行政庁の判断を受けます。
試験で間違えやすい5つの点
- 実能力kWを3.86で割れば法定能力:設備方式別の第5条で算定します。
- 遠心式以外はすべて同じ:吸収式と自然環流・自然循環式は別式です。
- 遠心式は押しのけ量:原動機の定格出力1.2kWを1トンとします。
- フルオロカーボンは20トンで一律に第一種:冷媒区分と50・20・5の境界を組み合わせます。
- 実際の運転時間で日能力が減る:設備自体が24時間稼働し得る能力を基準にします。
理解度チェック
【問1】原動機の定格出力が72kWの遠心式圧縮機の法定冷凍能力はどれですか。
(1) 30トン
(2) 60トン
(3) 72トン
(4) 86.4トン
(5) 278トン
【問2】発生器への1時間入熱量が139,000kJ/hの吸収式冷凍設備は何トンですか。
(1) 3トン
(2) 5トン
(3) 12トン
(4) 50トン
(5) 116トン
【問3】法定冷凍能力について適切なものはどれですか。
(1) すべて実冷却能力kWを3.86で割る
(2) 遠心式は原動機の実測消費電力を使う
(3) 自然循環式は冷媒係数Qと表面積Aを使う
(4) 吸収式はピストン押しのけ量を使う
(5) 実運転が8時間なら24時間能力の3分の1にする
【問4】第一種ガスを用いる法定35トンの通常設備は、原則どの区分ですか。
(1) 第一種製造者
(2) 第二種製造者
(3) その他製造者
(4) 適用除外
(5) 能力だけで必ず認定指定設備
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まとめ
1日の冷凍能力は、遠心式なら原動機定格出力÷1.2、吸収式なら発生器入熱量÷27,800、自然環流・自然循環式ならQ×A、その他はV÷Cで算定します。実能力kWから直接換算するものではありません。
法定能力を求めた後、冷媒を第一種ガス、アンモニア等、その他のガスへ分類し、50・20・5・3トンの境界へ当てはめます。複数設備は系統と一体性を確認し、実務では所管行政庁へ最終確認しましょう。
最終更新日:2026年7月28日
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