自動制御の計算は、信号の通り道と時間の変化を分けると解きやすくなります。戻す信号の倍率、偏差が続いた時間、目標が止まるか動き続けるかを、式に代入する前に確認しましょう。
このページは電験三種・機械の学習用に作った独自5問です。第1問は用語、第2〜4問は計算、第5問は入力の違いを考える発展問題です。各問の「解答を見る」から途中式と5つの選択肢の理由を読めます。
公式と記号を先に確認する場合は自動制御の基礎|ブロック線図・伝達関数・PID制御へ。繰り返し練習には自動制御の基礎ミニテスト第2回・第3回を利用してください。
第1問|水位を戻しているのか、時刻だけを見ているのか
水槽の水位を保つため、次の2つの運転方式を比較する。ポンプの回転速度を上げると流入量が増えるものとする。
方式A:水位センサの測定値を設定水位と比較し、水位が低いとポンプの回転速度指令を上げ、高いと下げる。
方式B:水位を測らず、毎時0分から3分間だけ決めた速度でポンプを運転する。
ここではポンプの回転速度指令を操作量とし、水槽からの流出量は利用状況によって変わる。この説明から正しくいえるものを1つ選べ。
- (1)方式Aの制御量は、設定水位という指令値である。
- (2)方式Bも時刻を入力しているので、水位の閉ループ制御である。
- (3)方式Aで測定水位が上がると指令を下げる動作は、正帰還である。
- (4)方式Aでは実際の水位が制御量で、流出量の変化は外乱として働く。
- (5)方式Bでは毎回同じ時間運転するため、流出量が変わっても水位は必ず一定になる。
第2問|並列の減算と、倍率のある負帰還
すべて無次元の静的な信号として、指令R、偏差E、出力Y、帰還信号Bを考える。E=R−B、B=0.20Yとする。
Eを同じ値のまま2経路へ分岐する。上側はゲイン6と4を直列につなぎ、下側はゲイン9を通す。最終出力Yは上側の出力から下側の出力を引いた値である。遅れや出力制限はないものとする。
R=8のとき、YとEの正しい組合せはどれか。
- (1)Y=120、E=8
- (2)Y=30、E=2
- (3)Y=30、E=−22
- (4)Y=−60、E=−4
- (5)Y=6、E=2
第3問|時定数が経過しても、応答は完了しない
基準状態からの温度変化y(t)を出力、電圧変化u(t)を入力とする線形・時不変のモデルがある。初期状態はゼロとし、伝達関数は次式で表す。
G(s)=Y(s)/U(s)=2/(4s+1)
ここでsはラプラス変数で単位は1/s、分母の係数4は4秒、直流ゲイン2の単位は℃/Vとする。時刻0で入力を0から3 Vへ変え、その後は一定に保つ。むだ時間や入力制限はない。
4秒後の温度変化y(4)に最も近いものはどれか。計算ではexp(−1)=0.368を用いてよい。
- (1)1.90℃
- (2)2.00℃
- (3)6.00℃
- (4)2.21℃
- (5)3.79℃
第4問|偏差が負に変わった後も、積分値は残る
PI調節器の動作確認として、偏差e(t)を試験信号で与える。出力uは%で表し、次の式に従う。偏差は目標温度−測定温度の向きとする。
u(t)=20+3e(t)+I(t)
I(t)=5+(3/15)∫0te(τ)dτ
固定の出力分は20%、比例ゲインは3ポイント/℃、積分時間は15秒である。I(t)は積分項の出力寄与で、初期値I(0)=5ポイント。時間は秒、温度差は℃で計算する。偏差の履歴は次のとおり。
0秒以上6秒未満:+2℃
6秒以上10秒まで:−1℃
積分値のリセット、出力の上下限制限、微分動作はない。10秒時点の出力u(10)はどれか。
- (1)23.6%
- (2)18.6%
- (3)32.6%
- (4)25.2%
- (5)17.0%
第5問|PI制御なら、動き続ける目標にも偏差ゼロか
単位負帰還H=1の線形制御系で、制御対象P(s)とPI調節器C(s)を次のように設定する。
P(s)=4/(5s+1)
C(s)=2+3/s
時間は秒、各信号は基準量で割った無次元量とする。対象の時定数は5秒、比例ゲインは2、積分ゲインは毎秒3である。式のsはラプラス変数で、単位は1/s。初期状態はすべてゼロ、外乱・飽和・むだ時間はなく、閉ループは安定とする。
同じ系に、別々の試行で次の目標を与える。
A:時刻0で0から2へ変え、その後は2を保つステップ入力。
B:0から毎秒6ずつ増えるランプ入力r(t)=6t。
偏差e(t)=r(t)−y(t)が十分時間のたった後に近づく値を、A、Bの順に並べたものはどれか。Bの目標は増え続けるが、出力制限のない理想モデルとして考える。
- (1)A:0、B:0
- (2)A:2/9、B:0
- (3)A:0、B:0.5
- (4)A:0.5、B:0
- (5)A:0、B:6
解いた後の整理|信号と時間を取り違えない
| 見直す箇所 | 今回の判断 | 取り違え |
|---|---|---|
| 第1問:ループ | 制御する量が戻るか | 機器名だけで分類 |
| 第2問:合流点 | 直列の積と枝の減算 | 並列を必ず加算 |
| 第2問:偏差 | 指令から帰還信号を引く | 倍率を無視 |
| 第3問:時定数 | 最終変化の約63.2% | 応答完了の時間 |
| 第4問:PI | 現在のPと履歴のI | 符号変更でIを消去 |
第5問は「偏差がゼロになる」という説明の前提を確認する問題です。下の表は、第5問と同じ制御対象、単位負帰還、安定、外乱なし、出力制限なしという条件で比べています。
| 調節器 | 一定目標2 | 毎秒6の目標 |
|---|---|---|
| P:C=2 | 偏差2/9 | 偏差が増え続ける |
| PI:C=2+3/s | 偏差0 | 偏差0.5 |
P制御でランプを与えた場合、低周波の閉ループゲインは8/9なので、出力の増加速度は目標の8/9にとどまり、差が広がります。PIでは増加速度を合わせられますが、この例では0.5の差が必要です。この表を、別の制御対象や別の入力へそのまま当てはめないことが復習の要点です。
間違えた問題から復習する
- 第1〜3問で迷った:自動制御の基礎の解説記事で、各信号の意味と伝達関数の条件を確認する。
- 第4問で迷った:PID制御と流体計算で、比例帯・積分時間と操作量の関係を復習する。
- 第5問で迷った:まずは一定の目標と一定速度で変わる目標を区別し、自動制御の基礎ミニテスト第2回・第3回の基本事項へ戻る。
- 機械科目の前のテーマ:電動力応用/電動力応用ミニテスト第1回。
- 次の学習テーマ:電気事業法の目的と電気工作物。
式と用語の確認資料
問題の数値・場面・選択肢は、この演習のために作成しました。公式過去問の転載ではありません。解説の基本式と用語は、以下の学会・大学・メーカーの資料で確認できます。
- チノー「調節計ガイドライン」:結果を戻す制御ループと、各動作の意味。
- 日本機械学会誌「ラプラス変換と伝達関数」:初期条件をゼロとして入出力関係を表す方法。
- 理化工業「PID制御の仕組み」:P項・I項の計算、積分時間、偏差の符号と蓄積。
- 北海道大学の講義資料(合成伝達関数・定常偏差、PDF):帰還系の関係式、最終値定理の条件、入力別の定常偏差。
- 電気技術者試験センターの公表問題:公式問題でさらに学習する際の確認先。
資料確認・改訂:2026年10月29日。制御する量と入力条件を明示し、途中式と誤答の理由を見直しました。
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