結論:静電気とクーロンの法則は理論科目の出発点
電験三種の理論科目でいちばん最初に学ぶべきテーマがこの「静電気」です。クーロンの法則、電界、電位、電気力線――名前だけ見ると難しそうですが、ひとつずつ順番に理解すれば大丈夫。実はどれも「電荷どうしの力関係」を違う角度から見ているだけです。
⚡ クーロンの法則
電荷間に働く力の大きさを
求める公式
🧭 電界・電位
電荷のまわりの空間の状態を
表す量
📐 電気力線
目に見えない電界を
線で見える化する道具
この記事では、試験に出る公式と考え方を計算例つきでていねいに解説します。「なんとなく覚えた」ではなく「なぜそうなるか」がわかれば、本番でひねった問題が出ても対応できます。
静電気ってなに? ― 冬の「バチッ!」の正体
身の回りの静電気現象
冬にドアノブを触って「バチッ!」と感じたことはありませんか? セーターを脱ぐときに髪の毛が逆立ったり、パチパチ音がしたり……。あの正体が静電気です。
物質をこすり合わせると、一方の表面から電子(マイナスの電荷)がもう一方へ移動します。電子を失った側はプラスに、電子を受け取った側はマイナスに帯電する。これが静電気の仕組みです。
かみ砕くと:静電気とは「動かない電気」のこと。電流(流れる電気)と違って、物体の表面にたまったままの状態の電気を静電気と呼びます。電験三種では、この「たまった電荷」にどんな力が働くかを計算します。
電荷の基本ルール
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 同種の電荷 | +と+、−と−は反発(斥力)し合う |
| 異種の電荷 | +と−は引き合う(引力) |
| 電荷の保存 | 電荷は消えも生まれもしない。移動するだけ |
| 電荷の単位 | クーロン [C](1 C = 約6.24 × 1018 個の電子の電荷量) |
試験のポイント:電気素量(電子1個の電荷)は e = 1.602 × 10−19 C です。試験では「電子○個が移動したときの電荷量を求めよ」という形で出題されることがあります。電子の個数 × e で計算するだけです。
クーロンの法則 ― 電荷間の力を計算する
クーロンの法則とは?
フランスの物理学者クーロンが発見した法則で、2つの点電荷の間に働く力(クーロン力)の大きさと方向を求める公式です。
簡単にいうと、こんなイメージです。
- 電荷が大きいほど → 力は強くなる
- 距離が近いほど → 力は強くなる(距離の2乗に反比例)
公式
クーロンの法則(真空中)
F = 14πε0 × Q1 Q2r2 [N]
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| F | 2つの電荷間に働く力(クーロン力) | [N](ニュートン) |
| Q1, Q2 | それぞれの電荷の大きさ | [C](クーロン) |
| r | 2つの電荷間の距離 | [m](メートル) |
| ε0 | 真空の誘電率(定数) | 8.854 × 10−12 [F/m] |
かみ砕くと:クーロンの法則は「万有引力の法則の電気バージョン」と考えるとわかりやすいです。重力は質量が大きいほど・距離が近いほど力が強くなりますよね。電気の場合は「質量」の代わりに「電荷」を使います。ただし重力と違って、同じ符号なら反発するのがポイントです。
k ≈ 9 × 109 を覚えよう
1/(4πε0) の部分はひとつの定数 k としてまとめられます。
k = 14πε0 ≈ 9 × 109 [N·m²/C²]
つまり覚えやすい形で書くと:
F = 9 × 109 × Q1 Q2r2 [N]
誘電体中のクーロンの法則
真空ではなく、ガラスやプラスチックなどの誘電体(絶縁体)の中に電荷を置くと、力は弱くなります。誘電体が電界を弱める性質を持っているためです。
誘電体中のクーロンの法則
F = 14πε0εr × Q1 Q2r2 [N]
εr(イプシロン・アール)は比誘電率と呼ばれ、「真空と比べてどれだけ電界を弱めるか」を表す数値です。
| 材質 | 比誘電率 εr | 特徴 |
|---|---|---|
| 真空 | 1 | 基準 |
| 空気 | ≈ 1 | ほぼ真空と同じ扱い |
| ガラス | 5〜10 | 力が5〜10分の1に弱まる |
| 水 | 約80 | 力が大幅に弱まる |
試験のコツ:「比誘電率が大きい=クーロン力が弱くなる」と覚えましょう。εr は分母に入るので、値が大きいほど力 F は小さくなります。
【計算例】クーロンの法則を使ってみよう
例題
真空中で、Q1 = 2 × 10−6 C と Q2 = 3 × 10−6 C の2つの点電荷が 0.1 m の距離で置かれている。電荷間に働くクーロン力の大きさを求めよ。
【解き方】
① 公式に当てはめる:
F = 9 × 109 × (2 × 10−6) × (3 × 10−6)(0.1)2
② 分子を計算:
9 × 109 × 6 × 10−12 = 54 × 10−3
③ 分母を計算:
(0.1)2 = 0.01 = 10−2
④ 割り算:
F = 54 × 10−310−2 = 5.4 [N]
電界(電場)― 電荷のまわりの「力の場」
電界とは?
電荷のまわりには、他の電荷に力を及ぼす「力の場」が広がっています。この空間を電界(でんかい)または電場(でんば)と呼びます。
目に見えない磁石の力をイメージしてみてください。磁石のまわりに鉄粉を撒くと模様ができますよね? あれと同じように、電荷のまわりにも「力のフィールド」が存在しているのです。
かみ砕くと:電界とは「ここに+1 C の電荷を置いたら、どの方向にどれだけの力を受けるか」を示す量です。電荷が実際に存在しなくても、空間そのものが持っている性質として定義されます。
電界の定義式
電界の定義
E = FQ [V/m] または [N/C]
E は電界の強さ、F は電荷 Q に働く力です。つまり「単位電荷あたりに働く力」が電界です。
点電荷がつくる電界
電荷 Q [C] の点電荷から距離 r [m] 離れた点の電界は次の式で求められます。
E = 14πε0 × Qr2 [V/m]
クーロンの法則と見比べてみてください。F = kQ1Q2/r2 の Q1 部分を取り除いた形になっていますよね。つまり「電界 = クーロン力から相手の電荷を除いたもの」です。
電界の方向
| 電荷の符号 | 電界の方向 |
|---|---|
| +(正電荷) | 電荷から外に向かう方向(放射状に広がる) |
| −(負電荷) | 電荷に向かってくる方向(吸い込まれる) |
覚え方:「+は出す、−は吸う」。正電荷は電界を「出している」、負電荷は電界を「吸い込んでいる」とイメージすると忘れにくくなります。
電界の合成(ベクトルの足し算)
複数の電荷があるとき、ある点の電界は各電荷がつくる電界のベクトル和です。向きと大きさの両方を考えて足し合わせます。
- 同じ方向の場合 → 単純に足す
- 反対方向の場合 → 大きい方から小さい方を引く
- 直角の場合 → 三平方の定理で合成(√(E12 + E22))
試験では「直線上に並んだ2つの電荷の間で電界が0になる点を求めよ」というパターンがよく出ます。2つの電界が打ち消し合う点を方程式で解く問題です。
電位 ― 「電気的な高さ」
電位とは?
電位を理解するには、重力の「高さ」をイメージしてみてください。
- 高い場所にあるボールは、落とすと位置エネルギーが運動エネルギーに変わる
- 電位が高い場所にある電荷は、低い方へ移動するとエネルギーを放出する
つまり電位とは、「電荷1クーロンあたりの位置エネルギー」です。
電位の定義
V = WQ [V](ボルト)
W は仕事(エネルギー)[J]、Q は電荷 [C] です。
点電荷のまわりの電位
V = 14πε0 × Qr [V]
電界の式と比べると、分母が r2 ではなく r だけになっています。
| 量 | 距離との関係 | ベクトル? |
|---|---|---|
| 電界 E | 1/r2 に比例 | ベクトル量(方向あり) |
| 電位 V | 1/r に比例 | スカラー量(大きさだけ) |
試験に超重要:電位はスカラー量(方向がない量)です。複数の電荷による電位を求めるときは、単純に足し算・引き算するだけでOK。電界のようにベクトルの合成は不要なので、計算がラクです。試験では電位の問題が出たらラッキーだと思いましょう!
電位差と電界の関係
一様な電界(どこでも同じ強さ・同じ方向の電界)の中では、次の関係が成り立ちます。
V = E × d [V]
d は電界の方向に沿った距離 [m] です。変形すると E = V/d。つまり電界の単位 [V/m] は「1メートルあたり何ボルトの電位差があるか」を意味しています。
等電位面とは?
電位が同じ点をつないだ面を等電位面と呼びます。地図の等高線をイメージしてください。
- 等電位面と電気力線は常に直角に交わる
- 等電位面に沿って電荷を動かしても仕事はゼロ(高さが変わらないため)
- 点電荷のまわりの等電位面は同心球状
電気力線 ― 目に見えない電界を「線」で表す
電気力線とは?
電界は目に見えません。そこで考え出されたのが電気力線です。電界の方向を線で描くことで、「どこからどこへ、どれくらいの強さの電界があるか」を視覚的に表現します。
電気力線の6つのルール
| # | ルール |
|---|---|
| 1 | 正電荷(+)から出て、負電荷(−)に入る |
| 2 | 電気力線の接線の方向がその点の電界の方向を表す |
| 3 | 電気力線の密度が電界の強さを表す(密なほど電界が強い) |
| 4 | 電気力線は途中で分岐・交差しない |
| 5 | 電気力線は等電位面と直交する |
| 6 | 電気力線は導体の表面に垂直に出入りする |
電気力線の本数
電荷 Q [C] から出る電気力線の総本数 N は次の式で決まります。
電気力線の本数
N = Qε0 [本]
これはガウスの法則と深い関係がありますが、電験三種ではこの公式を使えれば十分です。
電気力線の密度と電界の関係
1 m² あたりの電気力線の本数が、その場所の電界の強さと一致します。
E = NS = Qε0 S [V/m]
S は電気力線が通過する面積 [m²] です。点電荷の場合、距離 r の球の表面積は 4πr2 なので、代入すると E = Q/(4πε0r2) となり、先ほどの電界の公式と一致します。
電界・電位・電気力線の関係まとめ
公式の「つながり」を理解しよう
すべての公式はクーロンの法則が出発点です。
- クーロンの法則 → 電荷を1つ取り除く → 電界の式
- 電界 × 距離 → 電位差(積分すると電位の式)
- 電荷 ÷ ε0 → 電気力線の本数
- 電気力線の密度 → 電界の強さ
バラバラに暗記するのではなく、全部つながっていると理解することが合格への近道です。
試験に出る!典型的な計算パターン
パターン1:クーロン力の計算
例題
真空中で Q1 = 4 × 10−6 C の正電荷と Q2 = −2 × 10−6 C の負電荷が 0.2 m 離れている。電荷間に働く力の大きさと、引力・斥力のどちらかを答えよ。
【解答】
F = 9 × 109 × |4 × 10−6| × |2 × 10−6|(0.2)2 = 9 × 109 × 8 × 10−124 × 10−2
= 9 × 109 × 2 × 10−10 = 1.8 [N]
符号が+と−(異種)なので → 引力
パターン2:電界が0になる点を求める
例題
真空中の直線上に Q1 = +4 μC(A点)と Q2 = +1 μC(B点)が 0.3 m の間隔で置かれている。A−B間で電界が0になる点はA点から何 m の位置か。
【考え方】
A点から x m の位置で、Q1がつくる電界と Q2がつくる電界が等しくなればOK。
k × 4x2 = k × 1(0.3 − x)2
両辺の k を消して整理すると:
4(0.3 − x)2 = x2
2(0.3 − x) = x(両辺の平方根をとる。A−B間なので正の根)
0.6 − 2x = x → 3x = 0.6
x = 0.2 [m](A点から 0.2 m の位置)
解法のコツ:同符号の電荷の場合、電界が0になる点は2つの電荷の間にあります。大きい電荷のほうが電界が強いので、つり合い点は小さい電荷のほうに寄った位置にきます。電荷の比が 4:1 なので、距離の比は 2:1 になると覚えるとスムーズです。
パターン3:複数電荷による電位の計算
例題
真空中で Q1 = +3 μC が原点に、Q2 = −1 μC が x = 0.4 m に置かれている。x = 0.1 m の点の電位を求めよ。
【解答】
電位はスカラー量なので、各電荷の電位を単純に足す:
V1 = 9 × 109 × 3 × 10−60.1 = 2.7 × 105 [V]
V2 = 9 × 109 × −1 × 10−60.3 = −3.0 × 104 [V]
V = V1 + V2 = 2.7 × 105 − 3.0 × 104 = 2.4 × 105 [V]
まとめ ― 覚えるべき公式と出題のポイント
| 公式名 | 式 | 単位 | ポイント |
|---|---|---|---|
| クーロンの法則 | F = kQ1Q2/r² | [N] | 距離の2乗に反比例 |
| 電界の定義 | E = F/Q | [V/m] | ベクトル量(方向あり) |
| 点電荷の電界 | E = kQ/r² | [V/m] | 距離の2乗に反比例 |
| 電位の定義 | V = W/Q | [V] | スカラー量(足し算でOK) |
| 点電荷の電位 | V = kQ/r | [V] | 距離の1乗に反比例 |
| 電気力線の本数 | N = Q/ε0 | [本] | ガウスの法則 |
| 電位と電界 | V = Ed | [V] | 一様電界の場合 |
学習アドバイス:このテーマは理論科目の土台です。ここで出てくる「距離の2乗に反比例」「ベクトルとスカラーの違い」「公式の変形」は、この先のコンデンサ、磁気、交流回路すべてで使います。最初にしっかり身につけておくと、後がグンとラクになりますよ。
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