機械

【電験三種・機械】誘導電動機の始動法と速度制御(Y-Δ始動・インバータ・V/f制御)

結論:始動法は「電流を抑える工夫」、速度制御は「インバータ」が主流

誘導電動機は起動時に定格の5〜8倍もの電流が流れます。これを放置すると電圧降下やブレーカートリップの原因に。そこで始動電流を抑える「始動法」が重要です。一方、運転中の速度を自在に変える「速度制御」では、現在インバータ制御が圧倒的主流です。

⚡ 始動法

起動時の大電流を抑える
Y-Δ・始動補償器など

🔄 速度制御

Ns=120f/p を利用
インバータで f を変える

🛑 制動法

回転を止める方法
回生・発電・逆相制動

かご形誘導電動機の始動法

なぜ始動電流が大きいのか

起動時は回転子が停止しているため、すべり s = 1 です。回転子に誘導される起電力が最大となり、定格の5〜8倍の電流が流れます。これは変圧器の二次側を短絡した状態と同じです。

始動法の一覧

始動法 始動電流 始動トルク 特徴
全電圧始動
(直入れ)
定格の5〜8倍 最大 最もシンプル。小容量(5.5kW以下程度)向き
Y-Δ始動 直入れの1/3 直入れの1/3 始動時Y→運転時Δに切替。最もよく使われる減電圧始動
始動補償器
(コンドルファ)
タップ比²に比例 タップ比²に比例 単巻変圧器で電圧を下げて始動。タップで調整可能
リアクトル始動 タップ比に比例 タップ比²に比例 直列リアクトルで電圧降下させて始動
インバータ始動 小さい 調整可能 現在の主流。周波数と電圧を同時に上げて滑らかに始動

Y-Δ始動の仕組み

通常運転時はΔ結線で使う電動機を、始動時だけY結線にします。

Y結線(始動時)
• 各相に線間電圧の 1/√3 がかかる
• 電流 = 直入れの 1/3
• トルク = 直入れの 1/3
• 電圧の2乗でトルクが決まるため
Δ結線(運転時)
• 各相に線間電圧がそのままかかる
• 定格電流・定格トルク
• 加速完了後に切り替える
• 切替時に一瞬電源が切れる

計算のポイント:Y結線時の相電圧は Δ結線時の 1/√3 倍。電流は電圧に比例するので 1/√3 倍。線電流ベースでは (1/√3)² = 1/3 になります。トルクも電圧の2乗に比例するので 1/3 です。

【練習問題①】Y-Δ始動の電流

【問題】定格出力 15 kW の三相誘導電動機を全電圧始動(直入れ)すると始動電流が 300 A であった。Y-Δ始動にした場合、始動電流 [A] はいくらになるか。

解答を見る

Y-Δ始動では始動電流が直入れの 1/3

300 × 1/3 = 100 A

巻線形誘導電動機の始動法

巻線形はスリップリングを通じて二次側に外部抵抗を接続できます。

二次抵抗始動法

二次回路に抵抗を挿入すると:
• 始動電流が抑制される
• 始動トルクが増大する(最大トルクのすべりが s = 1 付近に移動)
• 加速に伴い段階的に抵抗を短絡していく

かご形との違い:かご形は「電圧を下げて電流を抑える」→トルクも下がる。巻線形は「二次抵抗を入れて電流を抑える」→トルクは増える。これが巻線形の大きなメリットです。

速度制御法

誘導電動機の回転速度

N = Ns(1 − s) = (120f/p)(1 − s) から、速度を変える方法は3つあります。

方法 変える量 特徴 対象
周波数制御
(インバータ)
f 現在の主流。広い範囲で滑らかに制御可能。省エネ効果も大きい かご形
極数変換 p 巻線の接続を切り替えて極数を変更。段階的な速度変更のみ かご形
二次抵抗制御 s 外部抵抗ですべりを変化。損失が大きい(効率が悪い) 巻線形
二次励磁制御 s 二次側に交流電力を注入。高効率だが装置が複雑 巻線形

インバータ制御(V/f制御)

インバータは、商用電源の交流を一旦直流に変換し、再び任意の周波数・電圧の交流に変換する装置です。

商用交流
50/60Hz
コンバータ
(AC→DC)
インバータ
(DC→AC)
電動機
任意の速度

V/f 一定制御

Vf = 一定 (電圧/周波数の比を保つ)

周波数 f を変えると同期速度 Ns = 120f/p が変わり、速度が変わります。このときV/f の比を一定に保つことで、磁束を一定にし、トルク特性を維持します。

V/f制御のメリット:速度を下げたとき、必要な分だけ回すので省エネ効果が大きいです。ポンプやファンなど、流量制御にインバータを使うと電力を大幅に削減できます。ビルメンの現場でもインバータ制御は非常に身近です。

【練習問題②】インバータによる速度制御

【問題】4極の三相誘導電動機をインバータで駆動し、周波数を 40 Hz にした。すべり s = 0.05 のとき、回転速度 [min−1] を求めよ。

解答を見る

Ns = 120 × 40 / 4 = 1,200 min−1

N = Ns(1 − s) = 1,200 × (1 − 0.05) = 1,200 × 0.95

= 1,140 min−1

制動法(ブレーキ)

主な制動法

制動法 仕組み 特徴
回生制動 回転速度 > 同期速度にして発電機として動かす 電力を電源に返す。省エネ。エレベータの下降時など
発電制動 電源を切り、固定子巻線に直流を流す 回転エネルギーを熱として消費して停止
逆相制動
(プラッギング)
三相のうち2線を入れ替えて逆回転の力を加える 急停止に有効。大電流が流れるので注意

試験のコツ:「回生制動=電力を返す」「発電制動=直流を流す」「逆相制動=2線入替えて急停止」。回生制動はインバータ制御と組み合わせて使われることが多いです。

理解度チェック

【第1問】

Y-Δ始動法における始動電流と始動トルクは、全電圧始動に比べてそれぞれ何倍になるか。

(1) 電流1/√3、トルク1/√3 (2) 電流1/3、トルク1/3 (3) 電流1/3、トルク1/√3 (4) 電流1/√3、トルク1/3 (5) 電流1/2、トルク1/4

解答を見る

正解:(2) 電流1/3、トルク1/3

Y結線時は各相電圧が1/√3倍になり、線電流は直入れの1/3、トルクは電圧の2乗に比例するので(1/√3)² = 1/3になります。

【第2問】

インバータによるV/f制御で、周波数を50Hzから30Hzに下げた場合、同期速度はどうなるか。ただし極数は4とする。

(1) 600 min−1 (2) 750 min−1 (3) 900 min−1 (4) 1,200 min−1 (5) 1,500 min−1

解答を見る

正解:(3) 900

Ns = 120 × 30 / 4 = 900 min−1。50Hz時の1,500 min−1から60%に低下します。

【第3問】

巻線形誘導電動機の二次抵抗始動法について、正しい記述はどれか。

(1) 始動電流が増大する
(2) 始動トルクが減少する
(3) 始動電流を抑え、始動トルクを増大できる
(4) 始動時の速度が上がる
(5) かご形にも適用できる

解答を見る

正解:(3) 始動電流を抑え、始動トルクを増大できる

二次抵抗を大きくすると最大トルクのすべりが s = 1 付近に移動するため、始動時(s=1)のトルクが増大します。同時に始動電流も抑制されます。これは巻線形だけの特徴です。

【第4問】

誘導電動機の制動法で、回転エネルギーを電源に戻すことができる方法はどれか。

(1) 発電制動 (2) 逆相制動 (3) 機械ブレーキ (4) 回生制動 (5) 単相制動

解答を見る

正解:(4) 回生制動

回生制動は電動機を発電機として動作させ、電力を電源側に返す制動法です。エレベータの下降時やインバータ駆動での減速時に使われ、省エネ効果があります。

まとめ

  • Y-Δ始動:電流も始動トルクも直入れの1/3になる
  • 二次抵抗始動(巻線形):電流を抑え、トルクは増大する
  • インバータ制御(V/f制御):V/f を一定に保ち、周波数で速度を制御。現在の主流
  • 極数変換:段階的な速度変更。かご形向き
  • 回生制動:電力を電源に返す省エネ制動
  • 逆相制動:2線入替えで急停止(大電流注意)

次の記事では、「同期機の原理と特性」を学びます。発電所で活躍する同期発電機の世界に入ります。

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