結論:誘導電動機の計算は「電力の流れ」を追えば解ける
前回は誘導電動機の原理と構造を学びました。今回は、トルク特性、等価回路、電力の流れ(入力→損失→出力)を使った計算を学びます。電験三種の機械科目で最も出題頻度が高い計算テーマです。
📊 トルク特性
すべりとトルクの関係
比例推移が計算の鍵
⚡ 電力の流れ
入力→一次損失→
二次入力→二次銅損→出力
⚖️ 効率計算
二次入力 : 二次銅損 : 出力
= 1 : s : (1−s)
トルク特性
すべり-トルク曲線
誘導電動機のトルクはすべり s によって大きく変化します。
| 領域 | すべり | トルクの動き |
|---|---|---|
| 起動時 | s = 1 | 起動トルクが発生(定格の1.5〜2倍程度) |
| 最大トルク | s = sm | 最大トルク(停動トルク)に達する |
| 安定運転領域 | 0 < s < sm | すべりが小さい領域。T ∝ s(ほぼ比例)で安定 |
試験のコツ:安定運転領域(s が小さい範囲)では T ∝ s(トルクはすべりに比例)。この「比例推移」の性質を使って計算問題を解きます。
最大トルクの特徴
超重要:「最大トルクの大きさは二次抵抗に無関係」「最大トルクのすべりは二次抵抗に比例」。この2つはセットで問われます。二次抵抗を変えても最大トルクの値は変わりませんが、最大トルクが出るタイミング(すべり)が変わるのです。
電力の流れ(超重要!)
入力から出力までの流れ
二次入力・二次銅損・機械出力の比(最重要公式!)
電力のすべり比
P2 : Pc2 : Pm = 1 : s : (1 − s)
つまり:
- 二次銅損 Pc2 = sP2
- 機械出力 Pm = (1 − s)P2
覚え方:「二次入力を1とすると、sだけ銅損で消え、1−sが機械出力になる」。s = 0.04(4%)なら、二次入力の96%が機械出力。残り4%が銅損。この比率は非常に多くの計算問題に使います。
【練習問題①】電力の配分
【問題】三相誘導電動機の二次入力(同期ワット)が 20 kW、すべり s = 0.05 のとき、二次銅損と機械出力をそれぞれ求めよ。
【練習問題②】すべりから効率を考える
【問題】三相誘導電動機の二次銅損が 600 W、すべり s = 0.03 のとき、二次入力 [kW] と機械出力 [kW] を求めよ。
トルクの計算
トルクと電力の関係
トルク
T = P2ωs = P22πNs/60 [N·m]
P2:二次入力(同期ワット)、ωs:同期角速度
注意:トルクは同期速度で割ります(回転速度ではない!)。これは二次入力が「同期ワット」とも呼ばれる理由です。
【練習問題③】トルクの計算
【問題】4極、50 Hz の三相誘導電動機。二次入力 P2 = 15 kW のとき、トルク [N·m] を求めよ。
始動法
かご形誘導電動機の始動法
| 始動法 | 内容 | 始動電流 |
|---|---|---|
| 全電圧始動 (直入れ) |
定格電圧をそのまま印加。小容量向き | 定格の5〜8倍 |
| Y-Δ始動 | 始動時Y結線→加速後Δ結線に切替。電流が1/3に | 直入れの1/3 |
| 始動補償器 | 単巻変圧器で電圧を下げて始動。タップで調整可能 | タップ比の2乗 |
| インバータ始動 | 現在の主流。周波数と電圧を徐々に上げる。滑らかな始動 | 小さい |
試験のコツ:「Y-Δ始動で電流1/3、トルクも1/3」。電圧が 1/√3 になるので、電流は 1/√3、トルクは電圧の2乗に比例するため (1/√3)² = 1/3 です。
速度制御法
| 方法 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| インバータ制御 (V/f制御) |
最も主流。周波数と電圧を同時に変えて速度制御。Ns = 120f/p なので f を変えると速度が変わる | かご形 |
| 極数変換 | 巻線の接続を変えて極数を切り替え。段階的な速度変更 | かご形 |
| 二次抵抗制御 | 外部抵抗をスリップリング経由で挿入。損失が大きい | 巻線形 |
理解度チェック
【第1問】
三相誘導電動機の二次入力 25 kW、すべり 0.04 のとき、二次銅損 [kW] はいくらか。
(1) 0.5 (2) 1.0 (3) 1.5 (4) 2.0 (5) 2.5
【第2問】
Y-Δ始動法で始動した場合、全電圧始動(直入れ)に比べて始動トルクは何倍になるか。
(1) 1/√3 (2) 1/3 (3) 1/2 (4) √3 (5) 3
【第3問】
三相誘導電動機の最大トルクに関する記述として、正しいものはどれか。
(1) 二次抵抗に比例する
(2) 電源電圧に比例する
(3) 電源電圧の2乗に比例する
(4) すべりに比例する
(5) 極数に比例する
【第4問】
三相誘導電動機の機械出力 19 kW、すべり 0.05 のとき、二次銅損 [kW] はいくらか。
(1) 0.5 (2) 0.95 (3) 1.0 (4) 1.5 (5) 2.0
まとめ
- 電力の比:二次入力 : 二次銅損 : 機械出力 = 1 : s : (1−s)
- トルク:T = P2 / ωs(二次入力 ÷ 同期角速度)
- 最大トルク:電圧の2乗に比例、二次抵抗に無関係
- 比例推移:安定運転領域では T ∝ s
- Y-Δ始動:電流 1/3、トルク 1/3
- 速度制御:インバータ(V/f制御)が現在の主流
これで機械科目の誘導電動機3テーマのうち2つが完了です。次回以降で「始動法と速度制御」をさらに深堀りしていきます。
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。