結論:誘導電動機は「世界で最も使われているモーター」
誘導電動機(インダクションモーター)は、工場のポンプ、ビルのエレベータ、家庭のエアコンまで、あらゆる場所で使われている最もポピュラーな交流モーターです。電験三種の機械科目では3テーマにわたって出題される最重要分野です。
🌀 回転磁界
三相交流が作る
回転する磁界が
モーターを回す源
🔄 すべり
回転磁界に少し遅れて
回転子が回る
この差が「すべり」
🏗️ 構造
かご形が主流
巻線形は速度制御用
整流子・ブラシ不要!
回転磁界の原理
三相交流が磁界を回す
三相交流を120°ずつずらして配置したコイルに流すと、コイルの合成磁界が一定の速度で回転します。これが回転磁界で、誘導電動機の動力源です。
回転磁界の速度を同期速度(Ns)といいます。
同期速度
Ns = 120fp [min−1]
f:電源周波数 [Hz]、p:極数
| 極数 p | 50 Hz | 60 Hz |
|---|---|---|
| 2極 | 3,000 | 3,600 |
| 4極 | 1,500 | 1,800 |
| 6極 | 1,000 | 1,200 |
| 8極 | 750 | 900 |
試験のコツ:「50Hz/4極 = 1,500 min−1」と「60Hz/4極 = 1,800 min−1」は暗記しておくと計算が速くなります。
回転方向の逆転
三相誘導電動機の回転方向を逆にするには、三相の任意の2線を入れ替えるだけでOKです。これにより回転磁界の回転方向が逆になります。
すべり
すべりとは
誘導電動機の回転子は、回転磁界とまったく同じ速度では回れません。もし同じ速度で回ると、回転子の導体を貫く磁束が変化しなくなり、誘導電流(トルク)がゼロになってしまうからです。
回転磁界の速度(同期速度 Ns)と回転子の速度(N)の差を、同期速度に対する割合で表したのがすべり(slip)です。
すべり
s = Ns − NNs (0 < s < 1)
すべりから回転速度を逆算できます。
N = Ns(1 − s) = 120fp(1 − s) [min−1]
| 状態 | すべり s | 意味 |
|---|---|---|
| 同期速度で回転 | s = 0 | トルクゼロ(理論上の状態。実際にはありえない) |
| 定格運転時 | s = 0.02〜0.05 | 通常運転の範囲。2〜5%程度 |
| 起動時 | s = 1 | 回転子が停止している状態(N = 0) |
【練習問題①】同期速度とすべり
【問題】4極の三相誘導電動機を 50 Hz の電源で運転したところ、回転速度が 1,440 min−1 であった。すべり s を求めよ。
【練習問題②】回転速度の計算
【問題】6極の三相誘導電動機。電源周波数 60 Hz、すべり s = 0.05 のとき、回転速度 [min−1] を求めよ。
誘導電動機の構造
固定子(ステータ)
固定子は直流機と同様にけい素鋼板の積層鉄心と巻線で構成されます。三相巻線を120°ずらして配置し、回転磁界を作ります。
回転子(ロータ)の種類
| 種類 | 構造 | 特徴 |
|---|---|---|
| かご形 | 導体棒を短絡環でつないだ「かご」状。ブラシ・スリップリング不要 | 最も広く使用。構造が簡単で丈夫。メンテ容易。起動トルクがやや小さい |
| 巻線形 | 三相巻線を持ち、スリップリングとブラシで外部抵抗に接続 | 外部抵抗で起動トルクの調整・速度制御が可能。大容量の用途 |
試験のコツ:「誘導電動機=かご形」が大多数。直流機には整流子とブラシが必要でしたが、かご形誘導電動機にはどちらも不要。これが誘導電動機が広く普及した最大の理由です。
かご形の特殊構造
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 深溝かご形 | 導体棒を深い溝に入れる。起動時は表皮効果で抵抗↑→起動トルク改善 |
| 二重かご形 | 外側(高抵抗)と内側(低抵抗)の二重構造。起動トルクが大きく、運転時効率も良い |
誘導電動機の動作原理
なぜ回転するのか
- 固定子巻線に三相交流を流す → 回転磁界が生まれる
- 回転磁界が回転子の導体を切る → 誘導電流が流れる(ファラデーの法則)
- 磁界中の電流に力が働く → トルクが発生(フレミングの左手の法則)
- 回転子が回転磁界を追いかけて回転する
イメージ:電子レンジの中の回転皿のように、見えない回転磁界が「引っ張って」回転子を回します。ただし完全に追いつく(s=0)ことは原理的にありえません。
変圧器との類似性
誘導電動機は「回転する変圧器」とも呼ばれます。
| 対応 | 変圧器 | 誘導電動機 |
|---|---|---|
| 電力の入口 | 一次巻線 | 固定子巻線 |
| 電力の出口 | 二次巻線 | 回転子巻線 |
| 磁束の通り道 | 鉄心 | エアギャップ(空隙) |
二次側の周波数と誘導起電力
回転子が回ると、回転子から見た磁束の変化周波数が変わります。
二次周波数
f2 = sf [Hz]
停止時(s=1):f2 = f(電源周波数と同じ)
定格運転時(s≈0.04):f2 ≈ 2 Hz(非常に低い)
理解度チェック
【第1問】
4極の三相誘導電動機を 60 Hz で運転した場合の同期速度 [min−1] はいくらか。
(1) 900 (2) 1,200 (3) 1,500 (4) 1,800 (5) 3,600
【第2問】
三相誘導電動機の回転方向を逆にする方法として、正しいものはどれか。
(1) 電源電圧を上げる
(2) 三相のうち任意の2線を入れ替える
(3) 電源周波数を変える
(4) 負荷を増やす
(5) 三相のうち1線を外す
【第3問】
三相誘導電動機の同期速度 1,500 min−1、すべり 0.04 のとき、回転速度 [min−1] はいくらか。
(1) 1,380 (2) 1,410 (3) 1,440 (4) 1,460 (5) 1,500
【第4問】
かご形誘導電動機の特徴として、正しいものはどれか。
(1) 整流子とブラシが必要
(2) 外部から二次抵抗を制御できる
(3) 構造が簡単で堅牢、保守が容易
(4) 起動トルクが巻線形より大きい
(5) スリップリングを持つ
まとめ
- 回転磁界:三相交流が作る回転する磁界。同期速度 Ns = 120f/p
- すべり:s = (Ns − N) / Ns。定格時は2〜5%程度
- 回転速度:N = Ns(1 − s)。必ず同期速度より少し遅い
- かご形:最も普及。構造が簡単で堅牢。ブラシ・整流子不要
- 巻線形:外部抵抗で速度制御可能。スリップリングを持つ
- 逆転:三相のうち任意の2線を入れ替えるだけ
- 二次周波数:f2 = sf(すべりに比例して低くなる)
次の記事では、「誘導電動機の特性と計算」を学びます。トルク特性、等価回路、効率の計算に進みましょう。
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