ボイラーの取扱い ミニテスト

付着量・孔食・アルカリ腐食を運転データから判定する問題5問【第1回】

この5問で身につくこと

  • 燃料使用量と管壁温度の変化からスケール障害を疑う
  • 残留硬度・補給水量・日数から持込み量を計算する
  • 穴の形と溶存酸素から孔食を切り分ける
  • 復水のpH・鉄から炭酸腐食を見つける
  • 苛性脆化の割れとアルカリ腐食の減肉を区別する

結論:スケールと腐食は、外観だけでは確定できません。水側か煙側か、硬い付着か泥状沈殿か、点状の穴か広い減肉か、直前にどの測定値が変わったかを重ねて原因を絞ります。

スケールは水側伝熱面に熱抵抗を作り、金属温度を上げます。腐食は肉厚を奪いますが、堆積物の下で薬品が濃縮して局部腐食が進む場合もあります。全体像は「スケールと腐食(孔食・苛性脆化・低温腐食)」で復習できます。

外観・発生場所・運転データを一組で見る

観察結果 主な候補 照合する値
硬く固着 スケール 硬度、管壁温度
泥状・軟質 スラッジ 薬注、吹出し
小さく深い穴 孔食 O₂、停止履歴
溝・減肉・割れ 局部腐食、応力損傷 pH、薬剤、位置、応力

スケールの熱伝導率は炭素鋼より低いため、同じ蒸発量を保とうとすると火側の金属温度が上がります。燃料使用量の増加と管壁温度上昇が同時に現れたら、燃焼側汚れだけでなく、水側付着も候補にします。

硬度漏れは小さくても積算する

硬度の持込み量

持込み量(mg) = 残留硬度(mg/L)× 補給水量(L/日)× 日数

付着量の仮定値 = 持込み量 × 付着率

持込み量はCaCO₃換算の硬度量で、全量がそのままスケールになるわけではありません。実際の付着は水質、熱負荷、濃縮、薬品、吹出しで変わるため、問題で付着率が与えられた場合だけ掛け合わせます。

腐食は形と発生系統で切り分ける

酸素孔食

O₂と局部電池。小さく深い点状腐食。

炭酸腐食

CO₂が復水に溶け、戻り配管を減肉。

アルカリ腐食

濃縮NaOHが保護皮膜を溶かし局部減肉。

苛性脆化も局部的なアルカリ濃縮が関係しますが、引張応力下で結晶粒界に沿う割れが識別点です。アルカリ腐食は、熱負荷の高い管壁とスケールの間などでNaOHが濃縮し、局部減肉を起こします。

公式資料の確認先

公式情報確認日:2026年7月31日。実機の付着・腐食は運転を継続して自己判断せず、冷却・隔離後に製造者、検査担当者、水処理会社の手順で分析・肉厚測定・補修判断を行います。問題文・数値・損傷状況は独自作成です。

スケール・腐食の原因と防止策 ミニテスト

第1回 第2回 第3回

第1問:燃料使用量と管壁温度から付着を疑う

【問1】蒸発量は同じですが、燃料使用量が8%増え、火炎に近い水管の金属温度も平常より40℃上がりました。開放可能な時期に確認すると、水側に硬い付着物があります。最も適切な判断はどれですか。

(1) 泥状なので必ずスラッジである
(2) スケールが熱抵抗となった可能性を考え、手順に従って負荷を安全側へ移し、付着物・水質・肉厚を確認する
(3) 燃料をさらに増やせば管壁温度は下がる
(4) 伝熱が良くなった正常な変化である
(5) 水側付着と金属温度は関係しない

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正解:(2)
硬く固着したスケールは水への伝熱を妨げます。同じ蒸発量を維持するため燃料が増え、金属温度が上がれば強度低下や膨出へ進むおそれがあります。

第2問:硬度持込み量と付着量を計算する

【問2】残留硬度3mgCaCO₃/Lの補給水を1日9m³、20日使用しました。持ち込まれた硬度の35%が付着したと仮定すると、付着量はどれですか。

(1) 18.9g
(2) 54g
(3) 189g
(4) 540g
(5) 1,890g

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正解:(3)
持込み量は3mg/L×9,000L/日×20日=540,000mg=540gです。仮定した付着率35%を掛け、540×0.35=189gとなります。

第3問:深い点状腐食の原因を切り分ける

【問3】給水配管に直径は小さいものの深い穴が点在しています。脱気器出口の溶存酸素は平常より高く、出口硬度と缶水pHは基準内です。最も疑うべき現象はどれですか。

(1) 酸素による孔食であり、脱気・脱酸素・空気漏入を確認する
(2) 硬度だけが原因の均一なスケール付着である
(3) 煙道側の低温腐食である
(4) 蒸気中の水滴によるキャリオーバである
(5) 異常ではなく、深い穴は全て製造時の模様である

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正解:(1)
孔食は表面の穴が小さくても深く進みます。溶存酸素高値と位置が一致するため、脱気条件、脱酸素剤の残留、停止中の空気流入まで追います。

第4問:復水配管の減肉原因を診断する

【問4】ボイラー水のpHと硬度は基準内ですが、復水配管のpHが平常より低下し、復水中の鉄濃度が上昇しています。広い範囲で減肉も確認されました。最も適切な判断はどれですか。

(1) 復水中へ移行したCO₂が炭酸を作る腐食を疑い、脱気・復水水質・処理条件を確認する
(2) 硬度が正常なので腐食は起こらない
(3) 炉内のすすだけが原因である
(4) 復水配管へ食塩水を注入する
(5) 鉄濃度上昇は肉厚が増えた証拠である

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正解:(1)
CO₂は蒸気と移動して復水へ溶け、炭酸を作ります。復水pHの低下と鉄増加は、戻り配管の炭酸腐食を調べる手掛かりです。

第5問:アルカリ腐食と苛性脆化を区別する

【問5】熱負荷の高い水管で、スケール下の水酸化ナトリウム濃度が局部的に高くなり、保護皮膜の溶解と溝状の減肉が見つかりました。結晶粒界に沿う割れはありません。最も適切な名称はどれですか。

(1) 苛性脆化
(2) アルカリ腐食
(3) 酸素孔食
(4) 異種金属接触腐食
(5) 低温腐食

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正解:(2)
高熱負荷部のスケール下でNaOHが濃縮し、保護皮膜を溶かして局部減肉を生じるのはアルカリ腐食です。苛性脆化は引張応力下の粒界割れで区別します。

採点結果と誤答別の復習先

正解数 次の行動
5問 第2回へ進み、付着物と腐食形態を追加確認
3〜4問 外観・場所・測定値の3点を再確認
0〜2問 スケールと5種類の腐食の違いから復習
  • 問1・2を誤答:スケールの熱抵抗と硬度の積算量を確認する
  • 問3・4を誤答:O₂は点食、CO₂は復水減肉の手掛かりと整理する
  • 問5を誤答:粒界割れと局部減肉を分けて覚える

次の練習と学習ルート

まとめ

スケールは熱を通しにくいため、燃料使用量と管壁温度の上昇を招きます。残留硬度が小さくても、補給水量と日数を掛ければ持込み量は無視できません。

腐食は形と発生場所が重要です。深い点状穴は酸素孔食、復水pH低下と鉄増加は炭酸腐食、スケール下のNaOH濃縮による減肉はアルカリ腐食を疑い、分析と肉厚測定で確かめます。

最終更新日:2026年7月31日

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