建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

【ビル管理士・空気環境】ダクト・吹出口・送風機(アネモスタット・シロッコファン・送風機の法則)

結論:ダクト・吹出口・送風機は空調の「血管と心臓」

AHUで処理された空気は、ダクト(空気の通り道)を通って各部屋に運ばれ、吹出口から室内に送り出されます。この空気の流れを作り出すのが送風機(ファン)です。

人間の体に例えると、ダクトは血管、送風機は心臓、吹出口は毛細血管の末端。どれが詰まっても空調は機能しません。試験ではダクト設計の基本・吹出口の種類・送風機の特性がバランスよく出題されます。

空気搬送システムの全体フロー
AHU
空調機
ダクト
空気の道
吹出口
給気
室内
吸込口
還気
AHU
へ戻る

AHUで処理した空気はダクトで各室に送られ、吹出口から室内へ。使用済みの空気は吸込口からAHUに戻る循環です。

空気調和機(AHU)で処理された空気は、ダクトという「空気の道」を通って各室の吹出口まで届けられます。ダクトの種類・材質・設計法を見ていきましょう。

ダクトの種類と材質

種類 特徴
亜鉛鉄板ダクト 最も一般的。矩形(四角)が多い。コストが安い
スパイラルダクト 円形の螺旋巻きダクト。漏気が少なく強度が高い。丸い断面
グラスウールダクト 断熱性・吸音性に優れる。低速ダクトに使用。軽量
フレキシブルダクト 自在に曲がる蛇腹状ダクト。接続部に使用。圧力損失が大きい

試験のポイント:スパイラルダクトは円形断面のため、同じ断面積の矩形ダクトより摩擦による圧力損失が小さく漏気(空気漏れ)も少ないのがメリットです。ただし円形なので天井裏のスペースが必要になる場合があります。

ダクトの設計方法

設計法 特徴
等摩擦損失法 ダクト全長にわたって単位長さあたりの摩擦損失を一定にする方法
低速ダクトに最も一般的。簡便
等速法 ダクト内の風速を一定に保つ方法
高速ダクトに採用。騒音制御がしやすい
静圧再取得法 分岐点ごとに静圧を回復させる方法
各吹出口からの風量を均一にしやすい

現場イメージ:ビルの天井を点検口から覗くと、銀色の矩形ダクトが縦横に走っています。太いメインダクトから枝分かれした細いダクトが各吹出口につながっています。ダクトの接続部にはシリコンテープやメカニカルジョイントが使われており、ここからの漏気がないか定期的にチェックするのがビル管理士の仕事です。

吹出口の種類と特徴(★頻出★)

吹出口は、ダクトから送られた空気を室内に効果的に分配する装置です。形状によって気流パターンが異なります。

種類 特徴と用途
アネモスタット型(天井面) 天井面に沿って放射状に空気が広がる。最も一般的なオフィス用吹出口。誘引比が大きい
パン型(天井面) 天井面に沿って空気が広がる。アネモよりシンプルな構造
ライン型(線状) 窓際のペリメータに設置して上昇気流を作る。コールドドラフト防止に効果的
ノズル型 到達距離が長い。天井の高い空間(体育館・工場)に使用
床置き型(置換換気用) 床面から低速で給気。置換換気方式に使用

誘引比とは?

吹出口から出た空気が周囲の室内空気を巻き込む比率です。誘引比が大きい=周囲の空気をたくさん巻き込む=温度ムラが少なくなる。アネモスタット型は誘引比が大きく、室内を均一な温度に保ちやすいため、オフィスで最も多く使われています。

ひっかけ注意:「コールドドラフト」とは、冬場に冷たい窓ガラスで冷やされた空気が下降気流となって足元に流れる不快な現象です。これを防ぐために、窓際にライン型吹出口を設置して暖かい空気の上昇気流を作ります。「コールドドラフト対策にアネモスタットが最適」は誤りです。

送風機(ファン)の種類と特性

種類 特徴
遠心式(シロッコファン) 多翼の前向き羽根。低速・大風量。空調用AHU内に最も多い
効率はやや低いが静か
遠心式(ターボファン) 後向き羽根。効率が高い。高圧力が得られる
騒音はシロッコより大きい
軸流式 プロペラ型。大風量・低圧力。換気扇や冷却塔に使用
ダクト系には不向き
斜流式 軸流と遠心の中間的な特性。コンパクト

送風機の法則(相似則)

送風機の回転数を変えたとき、以下の関係が成り立ちます(試験頻出)。
風量:回転数に比例
静圧:回転数の2乗に比例
軸動力:回転数の3乗に比例

超頻出ポイント:「軸動力は回転数の3乗に比例」が最重要です。つまり、回転数を半分にすると消費電力は1/8(= 0.53になります。VAV方式で送風量を減らすと大幅に省エネになる理由がまさにこれです。

数字で実感:インバータ制御で送風機の回転数を80%に下げると、軸動力は0.83 = 0.512(約51%)まで減少します。つまり送風量を20%減らすだけで、消費電力はほぼ半減するということです。VAV方式やインバータ制御が省エネに直結する理由がここにあります。

吸込口とリターン

吹出口と対になるのが吸込口(リターングリル)です。室内の空気を吸い込んでAHUに戻す役割を持ちます。

現場イメージ:オフィスの天井を見ると、四角い格子状の金属カバーがあります。吹出口と吸込口は見た目が似ていますが、手をかざして空気の流れを確認すれば区別できます。空気が出てくるのが吹出口、吸い込まれるのが吸込口です。吸込口にホコリが溜まると空気の流れが悪くなるため、定期清掃が必要です。

理解度チェック

【問題1】吹出口に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)アネモスタット型は到達距離が長く、体育館に適している
(2)ノズル型は天井の高い空間に適している
(3)ライン型はオフィスの中央天井に設置する
(4)アネモスタット型はコールドドラフト対策に最適である
(5)床置き型吹出口は高速で給気する方式である

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正解:(2)
ノズル型は到達距離が長く、天井の高い体育館や工場に適しています。アネモスタット型は天井面に放射状に空気を広げるオフィス向きで、到達距離は短いです。ライン型は窓際(ペリメータ)に設置してコールドドラフト対策に使います。床置き型は低速で給気する置換換気用です。

【問題2】送風機の法則に関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)風量は回転数の2乗に比例する
(2)静圧は回転数に比例する
(3)軸動力は回転数の3乗に比例する
(4)回転数を半分にすると軸動力は半分になる
(5)風量は回転数の3乗に比例する

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正解:(3)
送風機の法則(相似則):風量は回転数に比例静圧は回転数の2乗に比例軸動力は回転数の3乗に比例。回転数を半分にすると軸動力は1/8(0.53 = 0.125)になります。

【問題3】ダクトに関する記述のうち、正しいものはどれか。

(1)スパイラルダクトは矩形断面のダクトである
(2)フレキシブルダクトは圧力損失が小さい
(3)低速ダクトの設計には等摩擦損失法が一般的に用いられる
(4)亜鉛鉄板ダクトは漏気が少ない円形ダクトである
(5)グラスウールダクトは高速ダクトに適している

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正解:(3)
低速ダクトの設計には等摩擦損失法が最も一般的に用いられます。スパイラルダクトは円形断面です。フレキシブルダクトは蛇腹構造のため圧力損失が大きいです。亜鉛鉄板ダクトは一般的に矩形で使われます。グラスウールダクトは低速ダクトに使用されます。

ビル管理の現場でのダクト・送風機管理

日常点検のチェックポイント:

  • ダクトの漏気 ― 接続部やフレキシブルダクトの劣化で空気が漏れると、計画通りの風量が届かない。天井裏の点検口から定期的に確認
  • 吹出口のルーバー ― 角度がずれると温度ムラの原因に。テナントが勝手に調整していることもあるので定期チェック
  • 送風機のVベルト ― ベルトの張りが緩むと回転数低下→風量不足に。月1回程度の確認が望ましい
  • ダンパーの位置 ― 防火ダンパーは火災時に閉じるが、誤作動で閉じたまま放置されていると該当エリアの換気が止まる

ダクトで送られた空気は配管・弁・ポンプで供給される冷温水と合わせて、ビルの空調システムを構成しています。換気の基礎で学んだ換気量を確保するためにも、ダクト系統の適切な管理は欠かせません。

まとめ ― 試験で狙われるポイント

この記事の重要ポイント

  • スパイラルダクト=円形で漏気が少ない。亜鉛鉄板ダクト=矩形が一般的
  • 低速ダクト設計=等摩擦損失法、高速=等速法
  • アネモスタット=天井放射状(オフィス)、ノズル=長到達距離(体育館)、ライン=コールドドラフト防止(窓際)
  • シロッコファン=多翼・前向き・静か(AHU内)、ターボファン=後向き・高効率
  • 送風機の法則:風量∝n、静圧∝n2軸動力∝n3(最重要)

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