建築物環境衛生管理技術者 空気環境の調整

ダクト・吹出口・送風機の診断|全圧500Pa・回転数80%計算

ダクト系は「必要風量を、必要な圧力で、室内へ不快感なく届けられるか」で読みます。太さだけ、送風機のkWだけ、吹出口の形だけを見ても良否は決まりません。風量、系統抵抗、送風機曲線、室内気流を一続きにします。

この記事では、10,000m³/hを断面積0.50m²へ流した風速を5.56m/s、速度圧を約18.5Paと計算。必要全圧500Pa・総合効率63%から入力を約2.20kWと求め、回転数80%時の相似則と実機診断まで整理します。

資料確認日:2026年8月2日。国土交通省「建築設備設計基準 令和6年版」、ANSI/AMCA 210-25、AMCA Publication 201-23、米国エネルギー省の送風機資料を照合しています。

空気は「風量・圧力・室内分布」の3段階で追う

1. 必要風量
換気負荷・熱負荷から決める
2. 系統抵抗
直管・局部・機器を足す
3. 室内分布
到達・拡散・騒音を確認

国土交通省の建築設備設計基準は、各部のダクト風量を接続する吹出口・吸込口風量の累計とし、直管だけでなく分岐・曲り等の損失を全圧基準で計算する考え方を示しています。吹出口も、風量だけでなく拡散半径や到達距離、室用途、天井高さ、温度分布から選びます。

必要換気量は「換気量の計算と第1〜3種換気」、AHU内部は「空気調和機(AHU)とFCUの構造」で分けて解説しています。

10,000m³/h・0.50m²なら風速5.56m/s

風量Q=10,000m³/h、ダクト断面積A=0.50m²とします。まず時間単位を秒へ直し、Q=10,000÷3,600=2.778m³/sです。

ダクト風速の計算

v=Q÷A=2.778÷0.50=5.56m/s

m³/hのまま面積で割ると、m/hになってしまいます。3,600で割ってm³/sへ直します。

風速を上げれば同じ風量を小さなダクトで運べますが、一般に圧力損失と気流騒音は増えます。低くすればダクトは大きくなり、天井内スペースと材料費が増えます。風速は「速いほど良い」「遅いほど良い」ではなく、用途、騒音、圧力、納まりの折合いです。

静圧・速度圧・全圧を混ぜない

圧力 意味 現場での読み方
静圧Ps 流れ方向によらず壁面へ働く圧力 フィルタ・コイル・ダクト抵抗を押し切る余力
速度圧Pv 空気速度に対応する運動エネルギー Pv=ρv²/2
全圧Pt 静圧と速度圧の和 Pt=Ps+Pv

空気密度ρ=1.2kg/m³、風速v=5.56m/sなら、速度圧Pv=1.2×5.56²÷2=約18.5Paです。ピトー管で全圧と静圧の差を測れば速度圧となり、密度補正を含めて風速へ換算できます。

ただし、吹出口直前の乱れた流れやエルボ直後で1点だけ測って系統風量とはしません。直管長、測定断面、測定点数、器差をそろえ、断面平均風速から風量を求めます。

ダクト抵抗は直管・局部・機器を足す

抵抗 主な箇所 見落としやすい点
直管損失 ダクト長さ・粗さ 実長と相当長を混同しない
局部損失 曲り・分岐・縮小・拡大 急変、近接エルボ、整流不足
機器損失 フィルタ・コイル・熱交換器 汚れた時の抵抗、ダンパ開度
末端損失 吹出口・吸込口・外壁ガラリ 実風量時のカタログ値

たとえば、最遠系統の直管180Pa、曲り・分岐130Pa、フィルタ・コイル150Pa、吹出口等40Paなら、必要全圧は500Paです。各区間の損失は同じ風量ではないため、幹線から末端まで区間ごとの風量と寸法で計算します。

国土交通省の令和6年版基準は、ダクト寸法の選定に「定圧法」を示しています。試験教材では等摩擦損失法等の名称も出ますが、設計法の名称だけで判断せず、採用基準と計算条件を確認してください。旧稿の「高速ダクトなら等速法」という一律な結び付けは行いません。

円形と長方形は同じ条件で比べる

円形ダクトは同じ断面積なら周長が小さく、形状として内圧に耐えやすい利点があります。一方、長方形ダクトは天井ふところ等の制約へ合わせやすい形です。しかし、圧力損失は断面積だけでなく、水力直径、辺長比、粗さ、継手、漏気、風速で変わります。

したがって「スパイラルダクトは長方形より必ず損失が小さい」とは断定しません。同風量・同等の水力条件で直管を比較するのか、エルボや分岐を含む施工系統を比較するのかをそろえます。フレキシブルダクトも、十分に伸ばした直線と、つぶれ・たるみ・急曲りのある施工では抵抗が大きく違います。

吹出口は到達距離・拡散・降下・騒音で選ぶ

形式 気流の特徴 選定時の確認
天井ディフューザー 天井面へ広げやすい 拡散半径、低風量時の降下
スロット・ライン形 細長い開口、方向調整が可能 窓負荷、連続配置、騒音
ノズル形 長い到達距離を得やすい 高天井、首振り、残風速
床吹出・置換形 低速給気で温度成層を利用 床障害物、負荷密度、吸込位置

アネモスタット形は天井ディフューザーの一種として室内空気を誘引し、混合しながら広げます。ただし、形だけで快適性は保証されません。到達距離(throw)は所定の終端風速まで届く距離、拡散は横方向の広がり、降下(drop)は気流が下がる量です。冷たい給気は浮力で下がりやすく、VAVの低風量時は天井面への付着が弱まる場合があります。

コールドドラフト対策も「ライン形を置けば解決」ではありません。窓面温度、外皮性能、吹出温度・風量・方向、人の位置を合わせます。吹出気流が居住域へ強く当たれば、暖房でも不快になります。

送風機は羽根名より性能曲線で選ぶ

形式 構造の要点 選定の焦点
前向き多翼 回転方向へ曲がる多数の羽根 小形・低速域、過負荷特性
後向き・翼形 回転と反対向きの羽根 効率、安定域、汚れ
軸流 軸方向に吸込み・吐出 大風量、据付、失速・騒音
斜流 軸流と遠心の中間的な流れ 圧力、寸法、運転範囲

「シロッコは必ず静か」「ターボは必ず高圧」「軸流はダクトに不向き」とは限りません。必要風量と全圧の運転点、効率、音響、寸法、汚れ、回転数、モーター容量をメーカー曲線で確認します。同じ形式でも羽根形状と選定点で性能は変わります。

運転点は送風機曲線と系統曲線の交点

送風機曲線は、ある回転数での風量と圧力の関係です。系統曲線は、ダクト系がその風量を流すために要求する圧力です。両者の交点が実際の運転点になります。

  • ダンパを絞る:系統抵抗が増え、運転点は低風量側へ移る
  • フィルタが詰まる:同じ回転数なら一般に風量が下がる
  • 回転数を下げる:送風機曲線自体が低風量・低圧側へ移る
  • 入口・出口の乱れ:試験時より性能が落ちるシステム効果が生じ得る

送風機直前のエルボ、偏流、短い吐出直管、急な拡大は、カタログ曲線どおりの入口・出口条件を崩します。AMCAは、試験装置と実据付けの差をシステム効果として扱っています。能力不足時に送風機だけを大型化する前に、接続形状を確認します。

必要全圧500Paなら空気動力は1.39kW

風量10,000m³/h=2.778m³/s、必要全圧500Paとします。空気へ渡す動力はQ×ΔPです。

空気動力と入力の概算

空気動力=2.778×500=1.389kW

入力=1.389÷(送風機効率0.70×電動機等効率0.90)=2.20kW

効率は選定点・モーター・インバータ等で変わるため、実機では仕様値と電力計を確認します。

銘板5.5kWはモーターの定格出力であり、常時5.5kWを消費する意味ではありません。逆に、電流だけから風量を正確に決めることもできません。風量、全圧、回転数、電力を同時に記録します。

回転数80%の相似則はQ80%・圧力64%・動力51.2%

同一送風機、同じ羽根径、同程度の空気密度で相似な運転を仮定すると、回転数Nに対して次が成り立ちます。

風量 Q ∝ N / 圧力 ΔP ∝ N² / 軸動力 P ∝ N³

N₂/N₁=0.80なら、Q₂=0.80Q₁、ΔP₂=0.64ΔP₁、P₂=0.512P₁

全速時10,000m³/h・500Pa・軸動力1.98kWなら、理想相似では8,000m³/h・320Pa・約1.01kWです。ただし、これは実際の電気入力が必ず51.2%になる保証ではありません。外気取入口等の固定抵抗、ダンパ制御、効率変化、モーター・インバータ損失、最低風量制約があるためです。

相似則は「同じ送風機の回転数変更」を読む基準です。異なる形状の送風機を、回転数比だけで直接比較しません。

風量不足は送風機から末端まで順に切り分ける

観測 主な候補 次の確認
全系統で少ない 回転数、ベルト、フィルタ 電源・回転・差圧・ファン曲線
一枝だけ少ない ダンパ、つぶれ、漏気 分岐前後静圧、末端風量
風量はあるが暑い 給気温度、負荷、短絡 吹出温度、室内分布、還気位置
騒音だけ増えた ダンパ絞り、乱流、軸受 静圧、振動、入口・出口状態
末端差が大きい バランス、制御、設計抵抗 各枝風量、VAV指令・実開度

点検は、安全を確保した上で、運転指令→回転数→送風機前後圧力→フィルタ等の差圧→幹線風量→分岐→末端の順に進めます。防火・防煙ダンパは安全設備です。作動確認や復旧は法令、点検要領、管理権原者の手順に従い、風量調整目的で勝手に変更しません。

吹出口測定は補正係数と測定条件を残す

吹出口風量は、フード(キャプチャーフード)、風速計による面平均、ダクト内トラバース等で測れます。器具の抵抗が流れを変えること、旋回流や偏流、開口形状、補正係数で値が変わることを理解します。

測定器名だけでなく、開口寸法、測定点、補正係数、ダンパ・VAV開度、送風機回転数、扉開閉、フィルタ状態を残します。改修前後を違う条件で測ると、省エネ効果や風量改善を比較できません。

理解度チェック

【問1】風量10,000m³/h、ダクト断面積0.50m²です。平均風速として最も近いものはどれですか。

  1. 1.39m/s
  2. 2.78m/s
  3. 5.56m/s
  4. 10.0m/s
  5. 20.0m/s
解答を見る

正解:3
10,000÷3,600÷0.50=5.56m/sです。最初にm³/hをm³/sへ直します。

【問2】風量2.778m³/s、必要全圧500Pa、送風機効率70%、電動機等効率90%です。入力として最も近いものはどれですか。

  1. 0.88kW
  2. 1.39kW
  3. 1.98kW
  4. 2.20kW
  5. 5.00kW
解答を見る

正解:4
2.778×500÷(0.70×0.90)=約2,205W、約2.20kWです。1.39kWは空気動力です。

【問3】同一送風機を相似な条件で回転数80%にしたときの理想関係として正しいものはどれですか。

  1. 風量64%・圧力80%・軸動力51.2%
  2. 風量80%・圧力64%・軸動力51.2%
  3. 風量80%・圧力51.2%・軸動力64%
  4. 風量64%・圧力51.2%・軸動力80%
  5. すべて80%
解答を見る

正解:2
風量は回転数比、圧力は2乗、軸動力は3乗です。実際の電気入力は効率や固定抵抗も確認します。

【問4】一つの分岐だけ風量が少なく、他室は正常です。最初の切り分けとして最も適切なものはどれですか。

  1. 送風機を直ちに大型化する
  2. 全吹出口を閉じる
  3. 該当枝のダンパ、つぶれ、漏気と分岐前後圧力を確認する
  4. モーター定格だけから実風量を決める
  5. 防火ダンパを風量調整用に固定する
解答を見る

正解:3
一枝だけなら、全体能力より分岐以降の抵抗・閉塞・漏気・制御を先に確認します。安全用ダンパを勝手に変更してはいけません。

公式の確認先

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まとめ|末端風量から送風機の運転点までつなぐ

ダクト系は、必要風量、直管・局部・機器の全圧損失、送風機曲線、吹出口の室内分布を一続きで評価します。計算例は風速5.56m/s、速度圧18.5Pa、必要全圧500Pa、入力約2.20kWでした。

回転数80%時の理想相似は風量80%、圧力64%、軸動力51.2%ですが、実機電力は効率と系統条件で変わります。風量不足は送風機をすぐ交換せず、回転数、差圧、幹線、分岐、末端の順に実測して原因を絞ってください。

資料確認日/最終更新日:2026年8月2日

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