保安体制は「設備を安全な状態に保つ」「保安のルールを定める」「保安を監督する人を決める」の3つで考えます。
ただし、小規模事業用には保安規程と主任技術者の義務がなく、一定の自家用設備では外部委託承認の制度が使えます。まず設備の区分を確かめ、その区分に合う義務と手続きを選びましょう。
この記事では、保安規程を誰が定め、いつ届け出るのか、主任技術者が何を監督するのか、工事計画の「30日」がいつから始まるのかを整理します。対象は主にビル・工場の自家用電気工作物です。法令は2026年11月3日時点の現行版を確認しています。
1.設置者の義務|設備・ルール・監督体制を分ける
設置者は、電気工作物を設置して管理する立場の人や法人です。点検を委託しても、設置者としての義務がすべて委託先へ移るわけではありません。
| 義務 | 何をするか・主な根拠 |
|---|---|
| 技術基準への適合維持 | 事業用電気工作物を技術基準に合う状態に保つ。小規模事業用も対象(法第39条)。 |
| 保安規程の制定・届出・遵守 | 工事・維持・運用の保安のルールを定め、届け出て守る。小規模事業用は除く(法第42条)。 |
| 主任技術者による保安の監督 | 原則として免状の交付を受けた者から選任する。小規模事業用は除外され、一定の自家用には許可選任や外部委託承認の制度がある(法第43条・施行規則第52条)。 |
第42条は冒頭で小規模事業用を除き、その除外を同じ款の第43条にも引き継ぎます。「事業用ならすべて保安規程と主任技術者が必要」と覚えると、小規模事業用を誤判定します。
例えば、法令の条件を満たす太陽電池の小規模事業用設備には、この2つの義務はありません。一方、技術基準への適合維持や基礎情報の届出など、別の義務があります。一般用・小規模事業用・自家用の分け方は、前テーマの電気事業法の目的と電気工作物で確認できます。
2.保安規程|設置者が定め、届け出て、守る
保安規程は、設備の工事・維持・運用を安全に行うためのルールです。法第42条第1項では、保安を一体的に確保する必要のある組織ごとに、設置者が定めるとしています。
作成義務は設置者にありますが、設置者だけで技術的な内容まで決めるという意味ではありません。主任技術者や、外部委託承認を受けている場合の委託先とともに、実際の設備と管理体制に合う内容を検討します。
届出の時期と、変更した後の扱い
| 場面 | 法第42条の扱い |
|---|---|
| 初めて定める | 原則は設備の使用開始前に届出。第51条第1項又は第52条第1項の自主検査を伴うものは、その工事の開始前(第1項)。 |
| 規程を変更する | 変更した事項を遅滞なく届出(第2項)。 |
| 保安上の改善が必要になる | 主務大臣が規程の変更を命じることができる(第3項)。 |
| 設備を運用する | 設置者と従業者が保安規程を守る(第4項)。 |
保安規程は「認可」ではなく「届出」です。ただし、提出さえすれば内容を問われないという意味ではありません。保安の確保に必要なら、変更命令の対象になります。
法第42条の届出先の文言は主務大臣です。ここで扱う通常のビルの自家用電気工作物では経済産業省の所管となり、権限の委任により、所在地を管轄する産業保安監督部などが窓口になります。問題文で条文上の届出先を聞くのか、実際の提出窓口を聞くのかを区別してください。
保安規程には何を書くのか
一般的なビル・工場の自家用設備では、施行規則第50条第3項の事項が中心です。次の表は、条文の事項を学習用にまとめ、実務で考える内容を添えたものです。
| 定める事項 | 内容の例 |
|---|---|
| 職務と組織 | 誰が管理し、誰が判断し、異常を誰に伝えるか。 |
| 保安教育 | 作業者に何を、いつ、どのように教育するか。 |
| 巡視・点検・検査 | 確認する項目、方法、実施の時期。 |
| 運転・操作 | 通常時の操作や、停電・復電時の確認手順。 |
| 長期停止中の保全 | 発電所・蓄電所を相当期間停止する場合の設備の保ち方。 |
| 災害など非常時の措置 | 安全確保、連絡、被害拡大防止のための対応。 |
| 保安の記録 | 工事、点検、異常対応などの記録の扱い。 |
| 法定自主検査・使用前自己確認 | 対象設備での実施体制と記録の保存。 |
| その他必要な事項 | その設備の保安を確保するために必要な事項。 |
保安規程の記載事項は、電気事業用か、それ以外かなどで異なります。この表だけで、すべての発電所や特別な法令が適用される設備の規程を作れるわけではありません。施行規則第50条で該当する区分と記載事項を、実際の届出では管轄の産業保安監督部などで様式を確認しましょう。
3.主任技術者|工事・維持・運用の保安を監督する
法第43条第1項の原則は、設置者が、主任技術者免状の交付を受けた者から主任技術者を選任することです。電気主任技術者の役割は、工事・維持・運用に関する保安の監督です。設備のすべての作業を本人が行うという意味ではありません。
同条第4項は主任技術者に職務の誠実な遂行を求め、第5項は工事・維持・運用に従事する者に、保安のための指示に従うことを求めています。設置者と従業者には、保安規程を守る義務もあります。
通常の選任・解任は遅滞なく届け出ます(第43条第3項)。一方、免状を持たない者を選任する許可選任は、第2項の許可を受ける制度です。第3項では、許可を受けて選任した場合を、通常の選任届出から除いています。
免状による監督範囲|「未満」と発電所・蓄電所の除外
施行規則第56条の範囲を、電気主任技術者について整理します。ダム水路主任技術者やボイラー・タービン主任技術者が扱う非電気的設備の範囲は別です。
| 免状 | 電気的設備の監督範囲の要点 |
|---|---|
| 第一種 | 事業用電気工作物。電圧による制限なし。 |
| 第二種 | 電圧170,000V未満の事業用電気工作物。 |
| 第三種 | 電圧50,000V未満の事業用電気工作物。ただし出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所を除く。 |
第三種は50kV未満であり、50kV以下ではありません。50kVちょうどは範囲外です。また、電圧の条件を満たしていても、発電所又は蓄電所の出力が5,000kW以上なら範囲外です。電圧と出力を別々に判定しましょう。
4.外部委託承認|委託契約だけでは選任不要にならない
一定の自家用電気工作物では、要件を満たす電気管理技術者又は電気保安法人と保安管理業務の委託契約を結び、保安上支障がないとして承認を受けることで、電気主任技術者を選任しないことができます(施行規則第52条第2項)。委託先の要件は第52条の2に定められています。
次の表は第52条第2項各号の設備側の条件です。発電所・蓄電所では出力だけでなく連系等の電圧も確認します。併設設備がある場合は、それぞれの種類と規模を確認する必要があります。
| 設備 | 設備側の条件 |
|---|---|
| 太陽電池発電所・蓄電所 | 出力5,000kW未満、電圧7,000V以下で連系等をするもの。 |
| 水力・火力・風力発電所 | 出力2,000kW未満、電圧7,000V以下で連系等をするもの。 |
| 上記以外の発電所 | 出力1,000kW未満、電圧7,000V以下で連系等をするもの。 |
| 需要設備 | 電圧7,000V以下で受電するもの。 |
| 配電線路 | 電圧600V以下のもの。 |
例えば発電設備のない6,600V受電のビルは、需要設備の電圧条件に入ります。ただし、契約と承認まで必要です。「6,600Vだから自動的に主任技術者が不要」とは言えません。また、すべての発電所の出力条件が2,000kW未満というわけでもありません。
承認を受けても、技術基準への適合維持と保安規程の制定・届出・遵守は残ります。許可選任は「主任技術者を選任する制度」、外部委託承認は「所定の条件で選任しないことができる制度」と分けてください。承認の条件は施行規則第52条・第52条の2で確認できます。
練習|3つの設備で、必要な体制を考える
次の設備について、保安規程と電気主任技術者の扱いを考えてみましょう。A・Cは一般的なビルの自家用需要設備で、発電設備はなく、ほかの選任免除の制度も使っていないものとします。
- A:6,600V受電。要件を満たす相手と委託契約を結んだが、外部委託承認はまだ受けていない。
- B:低圧連系の太陽電池36kW。構内・接続・併設などの条件を満たし、小規模事業用に該当する。
- C:22,000V受電。第三種電気主任技術者免状の交付を受けた人がいる。
5.工事計画の届出|対象工事と受理日を確認する
法第48条の工事計画の届出は、省令で定めた設置・変更の工事が対象です。事業用電気工作物の工事すべてに必要な手続きではありません。対象は施行規則第65条と別表第2・別表第4などで、設備と工事の種類ごとに確認します。
第48条第2項では、届出が受理された日から30日を経過した後でなければ、その工事を開始できないとしています。起点は書類の作成日や発送日ではありません。
- 原則:受理日から30日を経過した後に着工。
- 短縮:計画が法定の要件に適合すると認められる場合、主務大臣が期間を短縮できる(第3項)。
- 延長:法定の理由がある場合は期間を延長でき、届出者に期間と理由が通知される(第5項)。
そのため「届出を出せば必ず30日後に着工できる」「希望すれば自動的に短縮される」とも言えません。変更計画の届出も、軽微な変更を除いて必要です。具体的な対象と書類は、施行規則第65条・第66条と別表で確認してください。
保安規程の初回届出は原則として使用開始前、工事計画の着工制限は受理日から30日です。さらに、前述の自主検査を伴う設備の保安規程は工事開始前です。何の手続きの時期かを先に見分けましょう。
6.確認問題|理由まで確かめる4問
各問で正しいものを1つ選び、解答を開いてください。問題は学習用に独自に構成したもので、公式過去問の転載ではありません。
第1問|保安規程の義務
一般的なビルの自家用電気工作物(小規模事業用を除く)の保安規程について、正しい説明はどれですか。
- (1)主任技術者だけが規程を定める義務を負う。
- (2)規程を変更しても、初回に届け出ていれば届出は不要である。
- (3)設置者が規程を定めて届け出、設置者と従業者が守る。
- (4)外部委託承認を受ければ、保安規程も不要になる。
- (5)小規模事業用にも、同じ保安規程の義務がある。
第2問|第三種免状の範囲
第三種電気主任技術者免状による、電気的設備の保安の監督範囲の説明として、正しいものはどれですか。
- (1)電圧7,000V以下の需要設備に限る。
- (2)電圧50,000V以下で、出力による制限はない。
- (3)電圧50,000V未満で、出力5,000kW以上の発電所だけを除く。蓄電所は除外しない。
- (4)電圧50,000V未満で、出力5,000kW以上の発電所又は蓄電所を除く。
- (5)電圧170,000V未満である。
第3問|工事計画の30日
法第48条第1項の届出対象工事で、期間の短縮も延長もない場合、着工制限の説明として正しいものはどれですか。
- (1)届出書を作成してから30日を経過すれば着工できる。
- (2)届出書を発送してから30日を経過すれば着工できる。
- (3)届出が受理されれば、その日から着工できる。
- (4)受理日から7日を経過した後に着工できる。
- (5)受理日から30日を経過した後でなければ着工できない。
第4問|主任技術者と従事者の役割
法第43条に定める主任技術者と従事者の関係について、正しい説明はどれですか。
- (1)従事者は、主任技術者が保安のためにする指示に従う。
- (2)主任技術者は、電気料金を決めるために選任される。
- (3)主任技術者を選任すれば、設置者の技術基準適合維持義務はなくなる。
- (4)通常の選任では、免状を持たない人でも届出だけで選任できる。
- (5)主任技術者本人が、設備のすべての工事作業を行わなければならない。
7.次の学習と公式確認先
保安体制は、設備を技術基準に保つ義務を土台に、保安規程と監督体制を整えるものです。小規模事業用の除外、外部委託の承認、工事計画の対象と受理日を、それぞれの条文で確認しましょう。
- 事業用電気工作物の保安体制 ミニテスト第1回:このテーマの演習。
- 同ミニテスト第2回・第3回:追加の演習。
- 前テーマ:電気事業法の目的と電気工作物:設備の区分から復習。
- 次テーマ:電気主任技術者の選任と職務:選任・許可・届出などを詳しく学習。
条文や手続きは改正されることがあります。試験では適用する法令の時点を、実際の申請では設備の所在地と条件に合う案内を確認してください。
- e-Gov法令検索「電気事業法」:第39条、第42条、第43条、第48条など。
- e-Gov法令検索「電気事業法施行規則」:第50条、第52条、第52条の2、第56条、第65条と別表など。
- 電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の問題と解答」
2026年11月3日確認・改訂。電気事業法は2026年8月3日施行、施行規則は2026年4月1日施行の現行版を確認し、説明・表・問題を独自に構成しました。運営者は資格を独学中の個人です。実際の設備の手続きは、管轄の産業保安監督部などに確認してください。
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