計算を始める前に、電力の位置と電流を測る場所を確かめましょう。「出力」「始動電流」とだけ覚えると、機械損の引き忘れや、線電流と相電流の取り違えにつながります。
この回は、出力からの逆算、2種類のトルク、始動できる条件、抵抗変更後の運転点、インバータの電圧上限を扱います。各問で答えを決めてから「解答を見る」を押すと、全選択肢の理由を確認できます。
5問はそれぞれ別の機器を想定した独自の学習問題です。式の導出を先に読みたい場合は、誘導電動機の特性と計算の解説へ進んでください。
電力の通り道と記号を確認する
基本は平衡三相の定常状態です。Ns は回転磁界の同期速度、N は軸速度で、単位はmin−1(1分間の回転数)。電源周波数 f [Hz] と極数 p から Ns=120f/p、すべりは s=(Ns−N)/Ns です。すべり4%は0.04として代入します。
| 記号 | どこの電力か |
|---|---|
| P1 一次入力 |
電源から固定子へ入る有効電力。 |
| P2 二次入力 |
一次側の損失を引き、回転子へ渡った電力。 |
| Pc2 二次銅損 |
回転子の抵抗で熱になる分。 Pc2=sP2 |
| Pm 機械的発生出力 |
回転の仕事になった分。機械損を引く前。 Pm=(1−s)P2 |
| Po 軸出力 |
機械損を差し引き、負荷へ渡せる動力。 |
電力は三相合計の値です。第1・2問では二次外部抵抗を使わず、回転子鉄損・漂遊負荷損など、指定以外の損失を無視します。第4問の外部抵抗を使う回路では、sP2 は回転子導体と外部抵抗の発熱の合計になります。
第1問|軸出力から、損失を足して戻る
ある誘導電動機の軸出力は8.55 kW、機械損は90 W、すべりは0.04だった。一次銅損と固定子鉄損の合計は0.40 kWとする。
二次入力と二次銅損の組合せとして正しいものはどれか。いずれも単位はkWとし、小数第2位まで示す。
- (1)二次入力8.64、二次銅損0.35
- (2)二次入力9.00、二次銅損0.36
- (3)二次入力8.91、二次銅損0.36
- (4)二次入力9.40、二次銅損0.38
- (5)二次入力216.00、二次銅損8.64
第2問|電磁トルクと軸トルクを分ける
8極・60 Hzの誘導電動機が855 min−1で回転している。機械的発生出力は17.10 kW、軸出力は16.53 kWだった。
電磁トルクと軸トルクの組合せとして最も近いものはどれか。単位はどちらもN·m。π=3.14159としてよい。
- (1)電磁181.4、軸175.4
- (2)電磁184.6、軸191.0
- (3)電磁201.0、軸184.6
- (4)電磁191.0、軸184.6
- (5)電磁0.191、軸0.185
第3問|電流を減らせても、始動できるとは限らない
ある電源電圧でΔ運転できるかご形電動機を考える。停止状態でΔ直入れしたときの線電流は300 A、始動トルクは210 N·mだった。同じ巻線・線間電圧・周波数でY結線に変える。
停止時の負荷抵抗トルクは90 N·mで、回り始めるにはこれを上回る電動機トルクが必要とする。回路定数の変化、電源の電圧降下、投入時の過渡現象は無視する。
Y結線での電源側線電流、始動トルク、回り始められるかの組合せはどれか。
- (1)約173 A、70 N·m、回り始められない
- (2)100 A、約121 N·m、回り始められる
- (3)100 A、210 N·m、回り始められる
- (4)約173 A、約121 N·m、回り始められる
- (5)100 A、70 N·m、回り始められない
第4問|外部抵抗を足した後のすべりを求める
6極・50 Hzの巻線形電動機で、1相当たりの二次巻線抵抗が0.18 Ω、外部抵抗は0だった。ある電磁トルクを生むすべりは0.024で、最大トルクは260 N·m、最大トルク時のすべりは0.16だった。
二次側の各相へ0.27 Ωずつ外部抵抗を直列に追加する。電圧・周波数と他の回路定数を一定とする近似等価回路を用い、磁気飽和・温度変化・表皮効果による定数変化は無視する。
元と同じ電磁トルクとなる小すべり側の点について、追加後のすべり、軸速度、最大トルクの組合せはどれか。速度はmin−1、トルクはN·m。
- (1)すべり0.0096、速度990.4、最大260
- (2)すべり0.036、速度964、最大260
- (3)すべり0.060、速度940、最大260
- (4)すべり0.060、速度940、最大650
- (5)すべり0.024、速度976、最大260
第5問|V/f一定に電圧上限を加える
あるインバータは、基底周波数50 Hzで電動機の基本波線間電圧を400 Vにする。35 HzではV/fを50 Hz時と同じに保ち、50 Hzを超えたら電圧を上限400 Vに固定する設定である。ここでは35 Hzでの電圧降下補償は不要とする。
35 Hzと70 Hzの線間電圧の組合せとして正しいものはどれか。周波数指令70 Hzは許容範囲内とする。
- (1)35 Hzで280 V、70 Hzで400 V
- (2)35 Hzで280 V、70 Hzで560 V
- (3)35 Hzで400 V、70 Hzで400 V
- (4)35 Hzで196 V、70 Hzで400 V
- (5)35 Hzで約571 V、70 Hzで約286 V
解き終えたら、式を選ぶ条件を整理する
| 迷いやすい点 | 計算前の確認 |
|---|---|
| 出力からの逆算 | 軸出力へ機械損を足し、機械的発生出力へ戻してから1−すべりで割る。 |
| トルクの分母 | 二次入力には同期角速度。機械的発生出力・軸出力には軸の角速度を対応させる。 |
| Y-Δの電流 | 同じ線間電圧・停止時で比較。巻線の相電流は1/√3、電源側線電流は1/3。 |
| 比例推移 | 追加分だけでなく二次合成抵抗を使う。同じトルクとなるすべりを同倍率に変える。 |
| V/f制御 | 基本波の電圧を使う。基底周波数、電圧上限、低周波数の補償条件を確認する。 |
第1問を間違えたら電力の位置、第2問なら電力と速度の組合せ、第3問なら線と相、第4問なら合成抵抗、第5問なら適用範囲を確認しましょう。正答数と併せて、自分が取り違えた条件を言葉で説明できるかが復習の目安です。
復習と次の演習
- 親記事:誘導電動機の特性と計算。電力の流れ、トルクの式、最大トルクと比例推移をまとめて復習できます。
- 追加演習:特性と計算ミニテスト第2回、第3回。別の数値や始動法で理解を確認します。
- 前のテーマ:誘導電動機の原理と構造と原理と構造ミニテスト第1回。同期速度・すべり・回転子の違いを復習できます。
- 次のテーマ:誘導電動機の始動法と速度制御と始動法と速度制御ミニテスト第1回。始動補償器や制動方法へ学習を広げます。
解説の確認先
基礎式と適用条件は次の一次資料で確認しています。問題・数値設定・解説は本ページ用に作成し、資料中の設問や図は転載していません。
- 日本電気技術者協会「誘導電動機の入力と出力、各種特性、比例推移、始動後の速度特性」:電力配分、機械損を引く位置、トルクと電力の関係。第1・2問の確認先。
- 同協会「誘導電動機の各種始動法の特徴」:L形等価回路と、始動電流・始動トルクの比較。第3・4問の回路条件の確認先。
- 三菱電機「スターデルタ始動とは何ですか?」:Y結線で始動し、加速後Δ結線へ切り替える方式。第3問の確認先。
- 日本電気技術者協会「誘導電動機の速度—トルク特性の見方」:すべりと抵抗を対応させる比例推移、最大トルクの性質。第4問の確認先。
- 富士電機「V/f制御とは何ですか?」:V/fと磁束、低速域の電圧降下とトルクブースト。第5問の確認先。
- 三菱電機「基底周波数以上の運転について」:基底周波数を超える領域の運転とトルクの制約。第5問の確認先。
2026年10月15日確認・改訂。5問を新作し、全25選択肢の理由を追加しました。公式試験問題ではなく、理解を確かめるための独自教材です。
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