同期機の計算は、電流の向きと「何の値か」を決めるところから始まります。相電圧で立てた式に線間電圧を入れたり、電気入力をそのまま軸出力にしたりすると、計算手順が合っていても答えが変わります。
この5問では、フェーザの計算から試験記録の読み分けまで練習します。まず1つ選び、「解答を見る」で計算過程と全選択肢の理由を確認してください。
電験三種「機械」のために作成した独自問題です。5問はそれぞれ別の機械・条件を想定します。式を復習したい場合は、同期機の計算の解説記事を参照してください。
同期機の計算 ミニテスト
第1回・このページ 第2回 第3回
電圧・電流は実効値です。太字の E・V・I は大きさと位相を表す複素数(フェーザ)、|E|などはその大きさを表します。jは虚数単位で、jを掛けると位相が90°進みます。各問とも三相対称の正弦波定常状態とし、非突極機を1相の同期リアクタンスで表します。
第1問|進み電流を供給する発電機の内部起電力
Y結線の同期発電機で、端子線間電圧の大きさは 420√3 V、1相の同期リアクタンスは 7 Ω である。電機子抵抗は無視する。
端子相電圧を位相の基準にすると、発電機から負荷へ流れ出す相電流は I=24+j42 A であった。内部起電力の相電圧としての大きさと、端子から送る三相有効電力の組み合わせはどれか。必要なら √3≒1.732 とする。
- (1)210 V、10.08 kW
- (2)210 V、30.24 kW
- (3)約363.7 V、30.24 kW
- (4)294 V、30.24 kW
- (5)210 V、0 kW
正解:(2)210 V、30.24 kW
まずY結線の線間電圧を√3で割り、基準の相電圧を V=420+j0 V とします。流出電流を正にした発電機では、1相の式は E=V+jXsI です。
jXsI=j7(24+j42)
=−294+j168 V
E=420−294+j168
=126+j168 V
j²=−1なので、電流の虚数成分にjを掛けた結果は負の実数になります。大きさは実部と虚部を二乗して足した平方根です。
|E|=√(1262+1682)
=210 V
端子相電圧と同相の電流は24 Aです。1相の有効電力は 420×24=10080 W、三相では 3×10080=30240 W、したがって30.24 kWとなります。虚数成分の42 Aをそのまま有効電力に足しません。
- (1):起電力は合っていますが、10.08 kWは1相分です。本問は三相分なので3倍します。
- (2):電圧を相の値へ直し、jを含めて計算し、有効電力を三相分にしています。
- (3):210√3≒363.7 V は内部起電力を線間相当へ換算した大きさです。求めるのは1相の値です。
- (4):126+168=294と足した値です。実部と虚部は直角の成分なので、絶対値は単純な和になりません。
- (5):進み電流にも電圧と同相の成分があります。本問では24 Aなので、有効電力は0ではありません。
この条件では電流が端子電圧より進み、内部起電力210 Vが端子相電圧420 Vより小さくなりました。ただし、進み力率なら必ずこの大小関係になるわけではありません。電流の大きさと位相を含めて式を計算する必要があります。
第2問|電動機の電流から軸出力を求める
Y結線の同期電動機で、端子相電圧は V=240+j0 V、内部逆起電力は E=180−j60 V、1相の同期リアクタンスは 3 Ω である。電機子抵抗は無視し、電源から電動機へ流れ込む相電流を I とする。
電機子の三相有効入力のうち、鉄損・機械損などに合計900 Wが使われる。界磁電力は別電源から供給し、この900 Wには含めない。電動機の軸出力と、電機子電流の進み・遅れの組み合わせはどれか。
- (1)14.4 kW、遅れ
- (2)13.5 kW、進み
- (3)4.8 kW、遅れ
- (4)13.5 kW、遅れ
- (5)15.3 kW、遅れ
正解:(4)13.5 kW、遅れ
電動機へ流れ込む向きを正にすると、端子電圧が内部逆起電力とリアクタンスの電圧降下を受け持ちます。したがって V=E+jXsI です。発電機で定めた流出方向の式と混ぜないようにしましょう。
I=(V−E)/(jXs)
=(60+j60)/(j3)
=20−j20 A
1/j=−jを使えば割り算ができます。電流は実軸から−45°の向きなので遅れ、力率は cos45°≒0.707 です。
三相有効入力=3×240×20
=14400 W=14.4 kW
軸出力=14.4−0.9
=13.5 kW
- (1):14.4 kWは電機子の三相有効入力です。軸から取り出せる出力には損失の分だけ届きません。
- (2):出力は合っていますが、電流の虚数成分が−20 Aなので遅れです。+j側へ進んだ電流ではありません。
- (3):240×20=4800 W は1相の有効入力です。三相化と、三相合計900 Wの損失を引く処理が必要です。
- (4):電動機の電圧式で電流を求め、三相入力から指定された損失を引いています。
- (5):損失を足した値です。入力から出力へエネルギーが移る間に失われるので、軸出力では引きます。
抵抗を省く近似を指定されても、鉄損や機械損まで0になるとは限りません。また、ここで求めたのは軸出力です。界磁電源を含む装置全体の効率を求めるなら、別供給の界磁電力も分母の入力に加える必要があります。
第3問|電圧変動率に使える測定記録を選ぶ
ある同期発電機の線間電圧を測った。次の3記録はすべて同じ回転速度で、過渡的な変化が収まった後の値である。
- 記録A:指定された進み力率の定格負荷で、界磁電流6.0 A、端子電圧3750 V。
- 記録B:Aから負荷を外し、界磁電流を6.0 Aのままにした。端子電圧3600 V。
- 記録C:Bの後、無負荷のまま界磁電流を6.3 Aへ調整した。端子電圧3750 V。
記録Aの負荷条件について、同一速度・同一励磁で定義する電圧変動率はいくらか。
- (1)+4.0%
- (2)約−4.17%
- (3)96%
- (4)0%
- (5)−4.0%
正解:(5)−4.0%
比較するのはAとBです。記録Cは電圧を戻せていますが、界磁電流を変えたので、この定義の無負荷電圧には使えません。無負荷電圧をV0、定格負荷時の電圧をVnとすると、
ε=(V0−Vn)/Vn×100
=(3600−3750)/3750
×100=−4.0 %
無負荷の方が150 V低いので、符号は負です。分母は定格負荷時の3750 Vであり、2つの記録とも同じ種類の線間電圧なので、そのまま比を取れます。
- (1):差を3750−3600にすると正になりますが、定義は無負荷から負荷時を引きます。
- (2):差の−150 Vを無負荷の3600 Vで割った結果です。分母の基準が異なります。
- (3):3600/3750×100=96 % は無負荷電圧そのものの比です。電圧変動率では差の比を求めます。
- (4):AとCだけを比較した値です。励磁を調整した記録を混ぜると、励磁を固定したときの変化が分かりません。
- (5):速度と励磁をそろえたA・Bを選び、差を負荷時の値で割っています。
進み電流の電機子反作用によって、同じ励磁でも負荷時の端子電圧が高くなる場合があります。負の値は計算の失敗を意味しません。一方、AVR(自動電圧調整器)で励磁を動かして電圧を保つ動作と、この固定励磁での指標は区別します。
第4問|短絡比を試験値とpu値の両方から確かめる
Y結線の同期発電機の定格は、線間電圧 600√3 V、線電流40 Aである。定格速度で測った無負荷飽和曲線と三相短絡曲線から、次の値を読み取った。
- 無負荷で定格電圧になる界磁電流:3.0 A
- 三相短絡時に定格電機子電流になる界磁電流:5.0 A
短絡曲線は原点を通る直線とみなし、電機子抵抗を無視する。短絡比と、無負荷定格電圧の試験点に対応する飽和同期リアクタンスの百分率値の組み合わせはどれか。定格を基準とし、百分率は小数第1位まででよい。
- (1)0.60、約166.7%
- (2)約1.67、60.0%
- (3)0.60、60.0%
- (4)0.0060、約166.7%
- (5)0.60、約288.7%
正解:(1)0.60、約166.7%
短絡比Ksは、無負荷で定格電圧を作る界磁電流を、短絡時に定格電流を流す界磁電流で割ります。本問では Ks=3.0/5.0=0.60 です。3.0 Aと5.0 Aはどちらも界磁巻線の電流で、定格の電機子電流40 Aとは別の量です。
試験値からリアクタンスまでたどってみましょう。短絡電流は界磁電流に比例するので、界磁3.0 Aでは 40×3.0/5.0=24 A。同じ励磁での無負荷相電圧は600 Vです。
Xs≒600/24=25 Ω
基準Zb=600/40=15 Ω
xs=25/15≒1.667 pu
百分率=100xs≒166.7 %
puは、基準値を1とした比です。この条件での Ks≒1/xs を使っても、1/(25/15)=0.60 と戻れます。百分率の数値を使うなら Ks≒100/(%Xs) です。
- (1):界磁電流比と、定格基準のリアクタンスの逆数が整合しています。
- (2):短絡比の割り算を5.0/3.0に逆転しています。定義どおりなら0.60です。
- (3):短絡比0.60をそのまま百分率にした値です。リアクタンスは短絡比の逆数を取ってから100倍します。
- (4):界磁電流比は無次元の0.60で完結します。そこでさらに100で割る必要はありません。
- (5):リアクタンスを求める分子だけに線間電圧600√3 Vを使い、基準を15 Ωのままにすると、この誤った値になります。1相の電圧・電流で統一します。
ここで使ったのは無負荷飽和曲線の定格電圧に対応する値です。未飽和部分を延長した空隙線から得た値や、短絡直後の過渡・初期過渡リアクタンスを同じものとして代入しません。24 Aも短絡直後の最大瞬時電流ではなく、短絡曲線から読む持続電流の実効値です。
第5問|原動機入力を保ったまま励磁を弱める
大きな系統に並列接続した非突極の同期発電機を考える。端子相電圧の大きさ1500 V、周波数、1相の同期リアクタンス9 Ωは一定とし、電機子抵抗は無視する。
最初は内部相起電力の大きさ1800 V、相差角30°であった。原動機の入力と損失を一定に保ち、励磁を弱めて内部相起電力を1200 Vにした。その後も定格上の制約に収まり、0°<δ<90° の安定な定常運転に落ち着いたとする。
変更後の三相有効出力と相差角の組み合わせはどれか。sin48.6°≒0.75、sin19.5°≒1/3 としてよい。
- (1)300 kW、30°
- (2)450 kW、約19.5°
- (3)450 kW、約48.6°
- (4)600 kW、90°
- (5)450 kW、約131.4°
正解:(3)450 kW、約48.6°
非突極・抵抗無視の基本モデルでは、相電圧の大きさE・Vを使った三相有効出力は P=3EV/Xs×sinδ です。変更前を計算すると、
P=3×1800×1500/9
×sin30°=450000 W
=450 kW
原動機入力と損失が一定で、再び定常状態になったので、有効出力は450 kWを保ちます。励磁で内部起電力を下げても、その比率で有効出力が下がるという条件ではありません。出力式を満たすように相差角が変わります。
変更後のPmax
=3×1200×1500/9
=600000 W=600 kW
sinδ=450/600=0.75
指定された範囲で δ≒48.6° となります。励磁を弱めて出力曲線の山が低くなった分、同じ450 kWを送るには、山の上り側で相差角を大きくする必要があります。
- (1):変更後も相差角を30°に固定した値です。原動機入力と損失を変えない定常運転という条件と合いません。
- (2):sinδ=0.5×1200/1800 と、起電力の比を逆に掛けた値です。同じ出力ならEが減った分、sinδは増えます。
- (3):有効出力を維持し、新しい出力曲線の安定な側で相差角を求めています。
- (4):600 kWは変更後のモデル上の最大値です。原動機からの入力を増やしていないため、その値まで出力が増えるわけではありません。
- (5):sin131.4°≒0.75 も数式上は同じですが、指定した範囲の外です。この基本モデルでは曲線の下り側にあたり、安定な運転点として選びません。
非突極・抵抗無視でE・V・Xsを一定にした定常出力曲線では、90°で最大になります。これは事故後の安定性を角度1つで保証する基準ではありません。事故中の加速や事故を取り除くまでの時間を扱う過渡安定度とは分けて考えます。
大きな系統への並列運転では、励磁変更は主に無効電力の分担に働きます。本問のように有効出力を保つ場合も、電機子電流や力率は変わり得るので、実機の許容範囲を省いてよいわけではありません。
解き直す前に確認する2つの整理表
| 問われる量 |
式へ入れる前の確認 |
| 内部起電力 |
相電圧で立式。jの掛け算と最後の絶対値を分ける。 |
| 軸出力 |
電流の同相成分で三相入力を求め、指定された損失を引く。 |
| 電圧変動率 |
速度・励磁・電圧の種類をそろえ、定格負荷時の値を分母にする。 |
| 短絡比 |
界磁電流どうしの比。puの逆数と、百分率の100を区別する。 |
| 励磁変更後の出力 |
一定に保つのが原動機入力か、相差角かを確認する。 |
| 電流・記号の定め方 |
抵抗を無視した1相の関係 |
| 発電機から流出する I |
E=V+jXsI |
| 電動機へ流入する I |
V=E+jXsI |
| 複素同期インピーダンス |
Zs≒jXs。位相を表すjを残す。 |
| インピーダンスの大きさ |
|Zs|≒Xs。実数の大きさを比較する。 |
第1・2問で間違えたら電流の矢印、第3・4問なら測定条件、第5問なら一定に保った量を書き出してから再計算してみてください。答えの数字だけでなく、式を選んだ理由を説明できるかが確認の目安です。
次の演習と復習先
原理を確認できる技術資料
次の資料で等価回路・試験特性・運転条件を照合しています。数値条件、問題文、選択肢、計算過程はこの演習用に独自に作成しました。
2026年10月16日確認・改訂。公式試験問題の転載ではなく、計算条件を読み分けるための独自の学習問題5問です。
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。