結論:磁気と電磁力は「電気と力学の架け橋」
静電気・コンデンサと来て、ここからは「磁気」の世界に入ります。磁石のN極・S極は誰でも知っていますが、電験三種ではこの磁気を数式で扱い、計算で答えを出す力が求められます。
🧲 磁束と磁束密度
磁界の「量」と「強さ」を
表す2つの量
🔄 磁気回路
電気回路と同じ考え方で
磁気を解析する方法
💪 電磁力
電流と磁界から
力が生まれる仕組み
磁気の分野は、電気の分野とよく似た構造を持っています。クーロンの法則 → 電界 → 電位という流れが、磁気では 磁荷 → 磁界 → 磁位 に対応します。この「対応関係」を意識しながら学ぶと、効率よく理解できます。
磁気の基本 ― 磁石の性質を数値で表す
磁極と磁荷
磁石にはN極(北極)とS極(南極)があります。電気の+と−に相当するのが、磁気の N と S です。
| 電気 | 磁気 | 説明 |
|---|---|---|
| 正電荷(+) | N極 | 力線が「出る」側 |
| 負電荷(−) | S極 | 力線が「入る」側 |
| 電荷 [C] | 磁荷 [Wb] | 力の源となる量 |
磁気に関するクーロンの法則
電荷と同じように、2つの磁極(磁荷)の間にも引力・斥力が働きます。
磁気のクーロンの法則
F = 14πμ0 × m1 m2r2 [N]
電気のクーロンの法則とまったく同じ形です。ε0(誘電率)が μ0(透磁率)に、Q(電荷)が m(磁荷)に置き換わっただけ。
| 記号 | 意味 | 値・単位 |
|---|---|---|
| μ0 | 真空の透磁率 | 4π × 10−7 [H/m] |
| m1, m2 | 磁極の強さ(磁荷) | [Wb](ウェーバ) |
磁界・磁束密度・磁束 ― 3つの量を区別しよう
磁界 H
電界 E に対応するのが磁界 Hです。「+1 Wb の磁荷を置いたとき、受ける力」が磁界の定義です。
磁界の定義
H = Fm [A/m]
磁束密度 B
磁界 H と透磁率 μ の積が磁束密度 Bです。材料の磁気的な性質を加味した「実効的な磁界の強さ」と言えます。
磁束密度
B = μ0μrH [T](テスラ)
μr は比透磁率で、誘電体の比誘電率 εr に対応する量です。鉄のような磁性体は μr が数百〜数千と非常に大きくなります。
磁束 Φ
磁束密度 B と面積 S の積が磁束 Φ(ファイ)です。「ある面を通過する磁力線の総量」と考えてください。
Φ = B × S [Wb](ウェーバ)
電気と磁気の対応表
電気と磁気の対応関係(超重要!)
| 電気 | 磁気 | 関係 |
|---|---|---|
| 電荷 Q [C] | 磁荷 m [Wb] | 力の源 |
| 電界 E [V/m] | 磁界 H [A/m] | 空間の状態(原因) |
| 電束密度 D [C/m²] | 磁束密度 B [T] | 材料特性を加味(結果) |
| 誘電率 ε | 透磁率 μ | 材料の特性定数 |
アンペアの周回積分の法則 ― 電流がつくる磁界
直線電流がつくる磁界
電線に電流を流すと、そのまわりに同心円状の磁界が発生します。これがアンペアの法則です。
直線電流による磁界
H = I2πr [A/m]
I は電流 [A]、r は電線からの距離 [m] です。
右ねじの法則:磁界の方向は右ねじを回す方向です。右手の親指を電流の方向に向けると、残りの指が巻く方向が磁界の方向になります。
円形コイルの中心の磁界
H = NI2r [A/m]
N は巻数、r はコイルの半径 [m] です。
ソレノイド(長いコイル)内部の磁界
H = NIl [A/m]
l はソレノイドの長さ [m] です。ソレノイド内部の磁界は一様(均一)であるのが特徴です。
| 形状 | 磁界の式 | 分母に注目 |
|---|---|---|
| 直線電流 | H = I/(2πr) | 2πr(πあり) |
| 円形コイル中心 | H = NI/(2r) | 2r(πなし) |
| ソレノイド内部 | H = NI/l | l(長さ) |
覚え方:直線電流の分母は「2πr」ですが、円形コイルは「2r」で π がつきません。「直線には π、円形には π がない」という逆転現象を意識して覚えましょう。ソレノイドは単純に長さ l で割るだけです。
電磁力 ― 電流と磁界から力が生まれる
フレミングの左手の法則
磁界の中に電流が流れている導体を置くと、導体に力(電磁力)が働きます。この力の方向はフレミングの左手の法則で求められます。
- 人差し指 → 磁界(磁束密度 B)の方向
- 中指 → 電流 I の方向
- 親指 → 力 F の方向
かみ砕くと:左手の3本指をお互いに直角に立てて、人差し指を磁界、中指を電流の方向に合わせると、親指が力の方向を教えてくれます。モーターが回る原理はまさにこの電磁力です。
電磁力の大きさ
電磁力(ローレンツ力)
F = BIl sinθ [N]
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| B | 磁束密度 [T] |
| I | 電流 [A] |
| l | 磁界中の導体の長さ [m] |
| θ | 電流と磁界のなす角度 |
電流と磁界が直角(θ = 90°)のとき、sin90° = 1 なので F = BIl となり最大になります。試験では直角の場合がほとんどです。
平行導体間に働く力
2本の平行な導体にそれぞれ電流を流すと、導体間に力が働きます。
平行導体間の力(単位長さあたり)
F = μ0 I1 I22πd [N/m]
| 電流の方向 | 力の種類 |
|---|---|
| 同方向 | 引力(引き合う) |
| 逆方向 | 斥力(反発する) |
注意:電荷(クーロンの法則)では「同種 = 反発」でしたが、平行電流では「同方向 = 引力」です。逆の関係なので混同しないようにしましょう。
磁気回路 ― 電気回路と同じ考え方で解く
磁気回路のオームの法則
磁気回路は電気回路とまったく同じ構造で解けます。対応関係を覚えれば、電気回路の知識がそのまま使えます。
磁気回路のオームの法則
Φ = NIRm [Wb]
| 電気回路 | 磁気回路 | 役割 |
|---|---|---|
| 電流 I [A] | 磁束 Φ [Wb] | 流れるもの |
| 起電力 V [V] | 起磁力 NI [A] | 流す力 |
| 抵抗 R [Ω] | 磁気抵抗 Rm [A/Wb] | 流れにくさ |
磁気抵抗の計算
Rm = lμ0μrS [A/Wb]
電気抵抗 R = ρl/(S) と同じ形です。長さ l が長いほど磁気抵抗は大きく、断面積 S と透磁率 μ が大きいほど小さくなります。
試験に出る!典型的な計算パターン
パターン1:直線電流のまわりの磁界
例題
10 A の電流が流れている直線導体から 0.05 m 離れた点の磁界の強さを求めよ。
【解答】
H = I2πr = 102π × 0.05 = 100.1π
H ≈ 100π ≈ 31.8 [A/m]
パターン2:電磁力の計算
例題
磁束密度 B = 0.5 T の一様な磁界中に、長さ 0.2 m の導体が磁界と直角に置かれている。5 A の電流を流したとき、導体に働く力を求めよ。
【解答】
磁界と直角なので sin90° = 1
F = BIl = 0.5 × 5 × 0.2 = 0.5 [N]
まとめ ― 覚えるべき公式と出題のポイント
| 公式名 | 式 | ポイント |
|---|---|---|
| 磁束密度 | B = μH | D = εE の磁気版 |
| 磁束 | Φ = BS | 面積を通る磁力線の量 |
| 直線電流 | H = I/(2πr) | 分母に π あり |
| 円形コイル | H = NI/(2r) | 分母に π なし |
| ソレノイド | H = NI/l | 内部は一様磁界 |
| 電磁力 | F = BIl sinθ | 直角なら F = BIl |
| 磁気回路 | Φ = NI/Rm | 電気のオームの法則と同じ |
学習アドバイス:磁気の公式は多く見えますが、電気との対応表を頭に入れておけば半分は自動的に覚えられます。「電荷→磁荷」「誘電率→透磁率」「電界→磁界」の置き換えパターンを体に染み込ませましょう。残りはフレミングの左手と3パターンの磁界の式を覚えれば、試験範囲はほぼカバーできます。
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