結論:電磁誘導は「磁気の変化から電気を生み出す」原理
記事3では「電流が磁界をつくる」ことを学びました。今回はその逆――「磁界の変化が電気をつくる」という現象を学びます。これが電磁誘導です。
🔌 ファラデーの法則
磁束の変化から
誘導起電力を求める
💡 レンツの法則
誘導起電力の向きを
決めるルール
🧲 インダクタンス
コイルの電磁エネルギーを
蓄える能力
発電機、変圧器、IH調理器……電磁誘導は私たちの生活を支える技術の根幹です。電験三種でも毎回出題される超重要テーマなので、じっくり理解していきましょう。
電磁誘導とは? ― 磁石を動かすと電気が生まれる
身近な電磁誘導
コイル(巻き線)に磁石を近づけたり遠ざけたりすると、コイルに電圧が発生して電流が流れます。これが電磁誘導です。
発電所の発電機もこの原理で動いています。巨大なコイルのそばで巨大な磁石を回転させることで、大量の電気を生み出しているのです。
かみ砕くと:電磁誘導のキーワードは「変化」です。磁石を置いたままでは何も起きません。磁石を動かす(=磁束が変化する)ことで初めて電気が生まれます。「変化なければ誘導なし」と覚えましょう。
ファラデーの法則 ― 誘導起電力の大きさ
ファラデーの電磁誘導の法則
コイルを貫く磁束が変化すると、その変化を打ち消す方向に起電力(電圧)が発生します。
ファラデーの法則
e = −N ΔΦΔt [V]
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| e | 誘導起電力 [V] |
| N | コイルの巻数 |
| ΔΦ | 磁束の変化量 [Wb] |
| Δt | 変化にかかった時間 [s] |
マイナス符号は「変化を打ち消す方向」に起電力が発生することを表しています(レンツの法則)。試験の計算では大きさだけを求める問題が多いので、マイナスを外して絶対値で計算することがほとんどです。
ポイント:誘導起電力を大きくするには → 「巻数 N を増やす」「磁束の変化 ΔΦ を大きくする」「変化の時間 Δt を短くする」。つまり、たくさん巻いたコイルに、強い磁石を素早く動かすほど大きな電圧が得られます。
レンツの法則 ― 誘導起電力の「向き」
「変化を妨げる方向」に電流が流れる
レンツの法則は、ファラデーの法則のマイナス符号の意味を教えてくれるルールです。
レンツの法則
誘導電流は、それを生じさせた磁束の変化を妨げる方向に流れる。
- 磁束が増加中 → 増加を妨げる(磁束を減らす方向の)電流が流れる
- 磁束が減少中 → 減少を妨げる(磁束を増やす方向の)電流が流れる
かみ砕くと:レンツの法則は「自然は急な変化を嫌う」という原則です。磁束が増えようとすると「増やすな!」と反対方向の電流が流れ、減ろうとすると「減らすな!」と同じ方向の電流が流れます。コイルは変化に対して常にブレーキをかけるのです。
導体が磁界中を運動する場合の起電力
運動起電力
磁界の中で導体が運動すると、導体に起電力が発生します。これも電磁誘導の一種です。
運動起電力
e = Blv sinθ [V]
B は磁束密度 [T]、l は導体の長さ [m]、v は導体の速度 [m/s]、θ は運動方向と磁界のなす角度です。直角に運動する場合は e = Blv となります。
フレミングの右手の法則:運動起電力の方向は右手で求めます。左手が「力」(電動機)、右手が「起電力」(発電機)と覚えましょう。
- 人差し指 → 磁界 B の方向
- 親指 → 導体の運動方向(速度 v)
- 中指 → 誘導起電力 e の方向
自己インダクタンス ― コイル自身の「変化を嫌う」性質
自己インダクタンスとは?
コイルに流れる電流が変化すると、コイル自身の磁束も変化し、コイル自身に誘導起電力が発生します。これを自己誘導と呼び、その度合いを表す定数が自己インダクタンス Lです。
自己インダクタンスの定義
L = NΦI [H](ヘンリー)
NΦ を磁束鎖交数(コイルと鎖交する磁束の総量)と呼びます。コイルの巻数 N と1巻あたりの磁束 Φ の積です。
自己誘導起電力
eL = −L ΔIΔt [V]
電流の変化率(ΔI/Δt)が大きいほど、大きな誘導起電力が発生します。
ソレノイドの自己インダクタンス
L = μ0μr N2Sl [H]
巻数の2乗に比例する点に注意してください。巻数を2倍にすると、インダクタンスは4倍になります。
相互インダクタンス ― 2つのコイルの磁気的カップリング
相互インダクタンスとは?
2つのコイルが近くにあるとき、一方のコイルの電流が変化するともう一方のコイルに起電力が誘導されます。この現象を相互誘導と呼び、その度合いを相互インダクタンス Mで表します。
相互インダクタンス
M = k√(L1L2) [H]
k は結合係数で、0 ≤ k ≤ 1 の範囲です。k = 1 のとき完全結合(磁束がすべて相手に通る)、k = 0 のとき結合なし。変圧器は k ≈ 1 を目指して設計されます。
かみ砕くと:相互インダクタンスは変圧器の動作原理そのものです。1次コイルの電流が変化 → 磁束が変化 → 2次コイルに起電力が誘導される。この流れがわかっていれば、変圧器の問題もスムーズに解けます。
コイルに蓄えられる電磁エネルギー
コンデンサが電界にエネルギーを蓄えるように、コイルは磁界にエネルギーを蓄えます。
コイルの電磁エネルギー
W = 12 LI2 [J]
コンデンサ vs コイルのエネルギー公式
| エネルギーの式 | 蓄える場所 | |
|---|---|---|
| コンデンサ | W = ½CV² | 電界 |
| コイル | W = ½LI² | 磁界 |
C → L、V → I に置き換えた形。対称的な構造です。
試験に出る!典型的な計算パターン
パターン1:ファラデーの法則
例題
100回巻きのコイルを貫く磁束が 0.05 s の間に 0.02 Wb から 0.01 Wb に減少した。誘導起電力の大きさを求めよ。
【解答】
ΔΦ = 0.01 − 0.02 = −0.01 Wb(減少)
|e| = N × |ΔΦ|Δt = 100 × 0.010.05 = 100 × 0.2
|e| = 20 [V]
パターン2:運動起電力
例題
磁束密度 B = 0.4 T の一様な磁界中で、長さ 0.5 m の導体が磁界に直角に 10 m/s の速度で運動している。導体に発生する起電力を求めよ。
【解答】
e = Blv = 0.4 × 0.5 × 10 = 2 [V]
パターン3:コイルのエネルギー
例題
自己インダクタンス L = 0.2 H のコイルに 5 A の電流が流れている。蓄えられている電磁エネルギーを求めよ。
【解答】
W = ½LI² = ½ × 0.2 × 5² = ½ × 0.2 × 25 = 2.5 [J]
まとめ ― 覚えるべき公式と出題のポイント
| 公式名 | 式 | ポイント |
|---|---|---|
| ファラデーの法則 | e = −N(ΔΦ/Δt) | 磁束の変化率が起電力 |
| 運動起電力 | e = Blv sinθ | 右手の法則で方向決定 |
| 自己インダクタンス | L = NΦ/I | コイルの磁束蓄積能力 |
| 自己誘導起電力 | e = −L(ΔI/Δt) | 電流の変化率に比例 |
| ソレノイドのL | L = μN²S/l | 巻数の2乗に比例 |
| 相互インダクタンス | M = k√(L1L2) | k は結合係数(0〜1) |
| 電磁エネルギー | W = ½LI² | コンデンサの W = ½CV² と対 |
学習アドバイス:電磁誘導は「電気 → 磁気」の逆プロセス。記事3で学んだ「電流 → 磁界」と、今回の「磁界の変化 → 起電力」はセットで理解しましょう。左手の法則(電動機)と右手の法則(発電機)の使い分けも、この2つのプロセスの違いがわかっていれば迷いません。
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