直流回路の基礎で扱ったのは、抵抗を直列・並列の順にまとめていけば1本の抵抗になる回路でした。ところが、電源が別々の枝に1つずつ入っている回路や、4つの抵抗をひし形に組み、左右の頂点をもう1本の抵抗でつないだ回路は、どこから合成を始めても1本にまとまりません。この記事では、そういう回路を解くための道具を順に紹介します。道具ごとに「使ってよい条件」と「何を求めるのが得意か」が違うので、公式そのものより、そちらに紙面を割きました。計算例は、同じ回路を別の道具で解き直して答えが一致するかを確かめる形にしてあります。
この記事で押さえること
- KCLは「節点に電荷がたまらない」、KVLは「電位は場所ごとに1つの値に決まる」を式にしたもの。回路図の上ではいつでも使えるが、符号の約束を先に決めないと式が合わない。
- 枝電流を未知数にするとき、独立な式はKCLが(節点数−1)本、KVLが残りの本数。それ以上立てても情報は増えない。
- 節点電圧法にすると未知数は(節点数−1)個に減る。節点が2つだけならミルマンの定理になる。
- 重ね合わせの理が使えるのは線形回路だけ。足せるのは電流と電圧で、電力は足せない。
- テブナン等価回路で元の回路と一致するのは端子から見た電圧と電流の関係だけ。中で消費される電力までは一致しない。
- ブリッジの平衡条件は抵抗の位置で決まる。平衡しているときに限り、中央の枝は外しても短絡してもよい。
- 最大電力の条件 RL=Rth は、電源側が決まっていて、負荷のほうを選べるときの話。そのときの効率は50%。
電気技術者試験センターの試験概要は、理論科目で問う内容を「電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測」と書いており、解答はどの科目も五肢択一です。どの単元から何問出るかまでは示されていません。ただ、ここで扱う道具は、交流回路・三相回路・過渡現象・電気計測の問題を解くときにも途中で使います。1つの単元というより、理論科目全体の計算の土台と考えておくのが実態に近いはずです。
直並列にまとまらない回路と、道具の選び方
先に言葉をそろえておきます。この記事では次の意味で使います。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 節点 | 3本以上の枝が集まる点。導線でつながっている点どうしは、まとめて1つの節点と数える |
| 枝 | 2つの節点を結ぶ道すじ。途中で分かれないので、枝の中はどこでも同じ電流が流れる |
| 閉路 | 枝をたどって出発点に戻る道すじ。途中で同じ節点を2度通らないもの |
回路の形と、何を知りたいかで、最初に試す道具が決まります。
| 回路の特徴・知りたいもの | まず試す道具 |
|---|---|
| 電源が1つで、直列・並列の順にまとめられる | 合成抵抗と分圧・分流 |
| 電源が別々の枝にあり、すべての枝電流を知りたい | 枝電流法(KCL+KVL)か節点電圧法 |
| 2つの節点のあいだに「電源+抵抗」の枝が何本も並ぶ | ミルマンの定理 |
| 電源ごとの影響を分けて見たい。1つの電源だけ変えたらどうなるか | 重ね合わせの理 |
| 1本の枝の電流だけ知りたい。その枝の抵抗を取り替えて何通りも計算したい | テブナンの定理 |
| ひし形の4抵抗と、左右をつなぐ中央の枝 | まず平衡を確かめる。平衡していなければテブナンかΔ-Y変換 |
| 負荷をいくつにすれば受け取る電力が最大か | テブナン等価回路にしてから最大電力の条件 |
どの道具も、正しく使えば同じ答えになります。1つの方法で出した答えを、別の方法で確かめられる。これがこの単元のいちばん大きな強みです。なお、この記事の計算はすべて、1227で書いた理想化(導線の抵抗は0、理想電源、定常状態、抵抗値は一定)の上に立っています。とくに「抵抗値は一定」は、あとで出てくる重ね合わせの理とテブナンの定理が成り立つための条件そのものです。
キルヒホッフの電流則(KCL)
キルヒホッフの電流則(第1法則)
節点に流れ込む電流の和
=節点から流れ出す電流の和
流れ込む向きを+、流れ出す向きを−と決めれば「電流の代数和=0」と同じこと。
根拠は電荷の保存です。回路図の節点は大きさのない接続点なので、電荷をためておく場所がありません。入ってきた電荷は、同じだけ出ていくしかない。直流の定常状態に限らず、交流でも瞬時値で成り立ちます。コンデンサに電荷がたまるのは、その枝の途中にある部品の中の話で、極板へ向かう電流は枝の電流として数えるので、節点の式は崩れません。
節点だけでなく、囲んだ範囲にも使える
KCLは1点だけでなく、回路の一部を閉じた線でぐるりと囲んだ範囲にも使えます。囲みの中に電荷がたまらない限り、囲みの線を横切って入る電流の和と、出ていく電流の和は等しい。ここから、2つの回路が1本の線だけでつながっているなら、その線には電流が流れない、ということも言えます。行きの道があっても、帰りの道がなければ電流は流れません。この考え方は、あとで出てくる漏れ電流の測定にそのまま使われています。
キルヒホッフの電圧則(KVL)
キルヒホッフの電圧則(第2法則)
閉路を決めた向きに一周するとき
電位の上昇の和=電位の降下の和
上昇を+、降下を−と決めれば「電圧の代数和=0」と同じこと。
根拠は、電位が場所ごとに1つの値に決まることです。山道をどう歩いても、出発点に戻ってくれば、登った高さと下った高さは等しくなります。回路のどの閉路を、どちら回りにたどっても同じです。
成り立たなくなる場面。閉路の内側を、時間とともに変化する磁束が貫いていると、電位を場所ごとに1つに決められなくなります(電磁誘導)。回路図では、その誘導起電力をコイルや変圧器という部品の端子間の電圧として書き込みます。だから図の上でたどる限り、KVLはそのまま使えます。直流の定常状態では磁束が変化しないので、この心配はありません。
符号の約束を先に決める
一周する向きを決めたら、各素子を通るたびに次の約束で項を足していきます。
| たどり方 | 式に入れる項 |
|---|---|
| 抵抗を、仮定した電流の向きに沿って通る | −IR 電位が下がる |
| 抵抗を、仮定した電流の向きに逆らって通る | +IR |
| 電源を、−極から+極へ通る | +E |
| 電源を、+極から−極へ通る | −E |
抵抗の項の符号は「仮定した電流の向き」で決まり、電源の項の符号は「極性」だけで決まります。電源の中を実際にどちら向きに電流が流れているかは、電源の項には関係ありません。この2つを混ぜると式がずれます。仮定した電流の向きが実際と逆でも困ることはなく、答えが負になって知らせてくれるだけです。
独立な式はいくつ立てられるか
節点が n 個、枝が b 本ある回路で、b 本の枝電流を未知数にするとします。
KCLで立つ独立な式:n−1 本
KVLで立つ独立な式:b−n+1 本
合計:b 本(未知数の数と同じ)
KCLを n 個の節点すべてで立てても、最後の1本は、ほかの式を全部足し合わせると出てきてしまいます。新しい情報を持っていないので、数えるのは n−1 本です。KVLは、平面に描ける回路なら、回路図の「窓」(網目)ごとに1本ずつ立てればちょうど足ります。外周をぐるりと回る閉路の式は、窓の式を足したものなので、検算には使えても、独立な式としては数えません。立てる前に数を数えておくと、連立方程式が解けないときに、どこが足りないのかがすぐ分かります。
計算例1|2つの電源が並んだ回路を枝電流で解く
設定。上の節点をa、下の節点を電位の基準(0 V)とします。aと下の節点のあいだに、次の3本の枝が並んでいます。
- 左の枝:電源 E1=40 V(+極がa側)と R1=5 Ω の直列。電流 I1 は下からaへ向かう向きを正とする。
- 中の枝:R3=10 Ω だけ。電流 I3 はaから下へ向かう向きを正とする。
- 右の枝:電源 E2=12 V(+極がa側)と R2=10 Ω の直列。電流 I2 は下からaへ向かう向きを正とする。
①式の数を数える。節点2個、枝3本なので、KCLが1本、KVLが2本です。
②式を立てる。
節点aのKCL:I1+I2=I3
左の窓(左の枝と中の枝):40=5I1+10I3
右の窓(右の枝と中の枝):12=10I2+10I3
③解く。I3 にKCLを入れると、
40=15I1+10I2、12=10I1+20I2
2本目から I1=1.2−2I2。1本目に入れて
40=18−30I2+10I2=18−20I2
I2=−1.1 A、I1=3.4 A、I3=2.3 A
④符号を読む。I2 が負なので、右の枝では実際にはaから下へ 1.1 A 流れています。電源 E2 の+極に電流が流れ込んでいるということで、E2 は電力を出すのではなく、12×1.1=13.2 W を受け取っています。E2 が蓄電池なら、充電されている状態です。
⑤使わなかった閉路で検算する。外周を、左の枝を上へ、右の枝を下へと回ります。
40−5I1+10I2−12=0 のはず
40−5×3.4+10×(−1.1)−12
=40−17−11−12=0 一致
⑥電力で検算する。
E1 が出す電力:40×3.4=136 W
R1:3.42×5=57.8 W、R2:1.12×10=12.1 W
R3:2.32×10=52.9 W、E2:13.2 W
受け取る側の和:57.8+12.1+52.9+13.2=136 W 一致
節点電圧法とミルマンの定理|未知数を減らす
枝電流法は考え方が素直な反面、未知数が枝の数だけ必要です。そこで未知数を節点の電位に替えます。基準の節点を1つ決めれば、未知数は(節点数−1)個です。各枝の電流は、両端の電位差をオームの法則で書けば出てきます。それをKCLに入れれば、そのまま方程式になります。
計算例1の回路なら、未知数はaの電位 Va の1つだけです。各枝について「aから出ていく電流」で統一して書き、その和を0とします。
(Va−40)/5+(Va−12)/10+Va/10=0
両辺を10倍:2Va−80+Va−12+Va=0
4Va=92、Va=23 V
あとは I1=(40−23)/5=3.4 A、I2=(12−23)/10=−1.1 A、I3=23/10=2.3 A。3本の連立が1本で済みました。
「出ていく電流」でそろえるのがこつです。枝ごとに入る・出るを考え直すと、符号の取り違えが起きやすくなります。どの枝も「aの電位−相手側の電位」から書き始めれば、迷う場面がありません。
ミルマンの定理
Va=Σ(Ek/Rk)
÷Σ(1/Rk)
2つの節点のあいだに「電源 Ek と抵抗 Rk の直列」の枝が並んでいるとき。電源のない枝は Ek=0。
上の節点方程式を Va について解いただけのものです。計算例1で確かめると、(40/5+12/10+0/10)÷(1/5+1/10+1/10)=9.2÷0.40=23 V で一致します。分子は「各枝の電源が、2つの節点を短絡したときに流し込む電流」の和、分母は各枝のコンダクタンス(単位はS)の和です。この見方は、あとで出てくるノートンの定理と同じ形をしています。
- Ek の符号は、a側が+極なら正、下側が+極なら負で入れる。
- 抵抗を持たない理想電圧源だけの枝があると、使えない。その電源が Va をそのまま決めてしまうからで、式の上では 1/Rk が無限大になる。電圧の違う理想電源を直接並列にした回路は、そもそも成り立たない。
- 電流源だけの枝があれば、その電流を分子にそのまま足し、分母には何も足さない。
重ね合わせの理|電源ごとの影響を分けて見る
重ね合わせの理
独立電源が複数ある線形回路の電流・電圧は、
電源を1つずつ単独で働かせたときの値の和
足すときは同じ基準の向きにそろえ、符号つきで足す。
線形とは、抵抗値が電圧や電流の大きさで変わらないことです。ダイオードのように電圧と電流が比例しない素子(半導体と電子回路)や、発熱で抵抗が大きく変わる電球が入った回路には使えません。1つずつ働かせるとき、ほかの電源は次のように「休ませ」ます。
| 休ませるもの | 置き換え方と理由 |
|---|---|
| 理想電圧源 | 短絡する(導線に置き換える)。電圧0 Vの電源は、両端の電位差が0の導線と同じだから |
| 理想電流源 | 開放する(取り外す)。電流0 Aの電源は、電流を通さない切れ目と同じだから |
| 電源の内部抵抗 | そのまま残す。内部抵抗は電源ではなく、回路の一部だから |
| 従属電源 | 休ませない。ほかの場所の電圧や電流に応じて決まる電源なので、回路の性質の一部として残す |
電力は足せません。電力は電流の2乗に比例するので、(I′+I″)2R と I′2R+I″2R は、2I′I″R だけ違います。電流を足し終えてから、最後に電力を計算します。
計算例2|同じ回路を電源1つずつに分けて解く
計算例1の回路を使います。電流の正の向きも計算例1と同じにします。
①E1 だけを働かせる(E2 は短絡)。右の枝は 10 Ω だけになり、中の 10 Ω と並列です。
並列部分:10×10/(10+10)=5.0 Ω
I1′=40/(5+5.0)=4.0 A、Va′=4.0×5.0=20 V
I3′=20/10=2.0 A、I2′=−2.0 A(右の枝をaから下へ流れるので、正の向きとは逆)
②E2 だけを働かせる(E1 は短絡)。左の 5 Ω と中の 10 Ω が並列です。
並列部分:5×10/(5+10)=10/3 Ω
I2″=12/(10+10/3)=12/(40/3)=0.90 A
Va″=0.90×10/3=3.0 V
I3″=3.0/10=0.30 A、I1″=−3.0/5=−0.60 A
③足す。
Va=20+3.0=23 V、I1=4.0−0.60=3.4 A
I2=−2.0+0.90=−1.1 A、I3=2.0+0.30=2.3 A 計算例1と一致
④電力を足すとどうなるか。R3 の電力を電源ごとに出して足すと、
2.02×10+0.302×10=40+0.9=40.9 W
正しくは 2.32×10=52.9 W。差の 12 W は 2×2.0×0.30×10 の分
⑤この形の便利なところ。I3′/E1=2.0/40=0.050、I3″/E2=0.30/12=0.025 なので、I3=0.050E1+0.025E2(E はV、I はA)と書けます。E2 を1 V上げると I3 は 0.025 A 増える、ということが、解き直さなくても分かります。1つの電源の値だけを変えて何通りも計算したいときに、この道具が効いてきます。
ブリッジ回路と平衡条件
4つの抵抗をひし形に組み、上の頂点と下の頂点のあいだに電源を、左右の頂点のあいだに検出器(検流計など)をつないだ回路が、ホイートストンブリッジです。図がなくても位置が分かるよう、ここでは上左 R1、下左 R2、上右 R3、下右 R4 と呼びます。
検出器に電流が流れないとき、左の辺は途中で電流が分かれない直列回路です。だから分圧の公式がそのまま使えます(1227で書いた「分岐がないときだけ」という条件が、ここでちょうど満たされます)。下の頂点を0 Vとすると、
左の中点:ER2/(R1+R2)
右の中点:ER4/(R3+R4)
この2つが等しい条件を整理すると、R2(R3+R4)=R4(R1+R2)、つまり次の式になります。
ブリッジの平衡条件
R1R4=R2R3
上左×下右=下左×上右
比で書けば R1/R2=R3/R4。左右の辺で、上と下の比が等しい。
「向かい合う辺の積が等しい」という覚え方もありますが、図が回転していたり四角形に描かれていたりすると、どれが向かい合う辺なのかを取り違えます。電源と検出器がどこにつながっているかを確かめてから、上下左右の位置で書くほうが確実です。平衡しているブリッジには、計算を楽にしてくれる性質があります。
| 平衡しているとき | 理由 |
|---|---|
| 電源電圧を変えても平衡は崩れない | 条件の式に E が入っていない。左右の中点の電位は、どちらも E に比例して同じ割合で動く |
| 検出器の内部抵抗が何Ωでも同じ | 電流が流れないので、検出器の抵抗は電圧降下を生まない |
| 中央の枝を外しても短絡しても、ほかの電流は変わらない | 両端が同じ電位なので、つないでも切っても電流の出入りが起きない |
3行目は、平衡していないときには使えません。平衡を確かめずに中央を外すと、答えがずれます。その例を計算例4・5で見ます。
計算例3|測温抵抗体を2線式と3線式でつないだとき
設定。白金の測温抵抗体Pt100(0℃で100 Ω)の抵抗を、ブリッジで測ります。上左 R1 と下左 R2 はどちらも 1,000 Ω、上右は目盛つきの可変抵抗 Rv、下右が離れた場所にあるセンサ Rx です。センサの実際の温度は20℃で、抵抗は 107.79 Ω。センサまでの導線は、1本あたり 0.60 Ω とします。
①2線式。センサの両端を2本の導線でブリッジまで戻します。下右の辺には、センサと導線2本がすべて入ります。
下右:Rx+0.60+0.60、上右:Rv
平衡条件:1,000×(Rx+1.20)=1,000×Rv
Rv=107.79+1.20=108.99 Ω
目盛の 108.99 Ω をセンサの値として読むと、導線の 1.20 Ω がそのまま誤差になります。Pt100は20℃付近で1 Kあたり約 0.39 Ω 変わるので、1.20÷0.39=約3.1 K。20℃のものを約23℃と読んでしまいます。
②3線式。導線を3本にして、1本を下右の辺(センサ側)に、1本を上右の辺(可変抵抗側)に、残る1本を検出器の枝に入れます。
下右:Rx+0.60、上右:Rv+0.60
平衡条件:1,000×(Rx+0.60)=1,000×(Rv+0.60)
Rv=Rx=107.79 Ω 導線の抵抗が打ち消される
検出器の枝に入れた3本目の導線は、平衡しているときは電流が流れないので効きません。上の表の2行目の性質そのものです。ただし打ち消しが完全なのは、比率の辺(R1 と R2)が等しく、2本の導線の抵抗が等しいときだけです。導線の長さや温度が違えば、差の分が残ります。さらに精度が要る場面では、電流を流す線と電圧を測る線を分ける4線式が使われます。
測温抵抗体の抵抗と温度の関係、2線式・3線式・4線式という導線の形式は、JIS C 1604(対応する国際規格はIEC 60751)に定められています。この例ではその関係のうち、20℃付近での変化の割合だけを使いました。
テブナンの定理とノートンの定理
テブナンの定理
線形な回路を2つの端子から見ると、
電圧 Vth の電源と抵抗 Rth の直列に置き換えられる
IL=Vth/(Rth+RL)
Vth:負荷を外したときの端子間の電圧(開放電圧)
Rth:独立電源を休ませて、端子から見た抵抗
使うときの条件と注意は2つです。
- 端子の内側が線形であること。抵抗値が一定で、独立電源と、線形な従属電源だけでできていれば使えます。
- 元の回路と一致するのは、端子から見た電圧と電流の関係だけ。中の各抵抗に流れる電流や、中で消費される電力は、等価回路からは分かりません(計算例4の最後で数字で確かめます)。
| 手順 | やることと注意 |
|---|---|
| 1 | 求めたい枝(負荷)を外し、残った2つの端子に名前をつける |
| 2 | 端子間の開放電圧 Vth を出す。どちらの端子が高いかまで書いておく |
| 3 | 独立電源を休ませ(電圧源は短絡、電流源は開放)、端子から見た合成抵抗 Rth を出す。従属電源があるときは休ませられないので、端子を短絡したときの電流 Isc を出して Rth=Vth/Isc とする |
| 4 | 等価回路に負荷を戻して、IL を出す。負荷を何通りに変えても、ここだけ計算し直せばよい |
ノートンの定理。同じ回路は、電流 IN の電流源と抵抗 Rth の並列にも置き換えられます。IN は端子を短絡したときの電流で、IN=Vth/Rth です。
テブナンとノートンは、同じものの2つの書き方です。「開放電圧」「短絡電流」「その比としての抵抗」の3つのうち2つが分かれば、残りの1つが決まります。ミルマンの定理の分子(短絡電流の和)と分母(コンダクタンスの和)は、並んだ枝をノートンの形に直して足し合わせたものと読めます。
計算例4|平衡していないブリッジの中央の電流
設定。上の頂点T と下の頂点B(0 V)のあいだに E=20 V の理想電源。上左(T–C)20 Ω、下左(C–B)30 Ω、上右(T–D)40 Ω、下右(D–B)10 Ω、左右の中点CとDのあいだに 20 Ω。この中央の電流 Ig を求めます。
⓪平衡を確かめる。上左×下右=20×10=200、下左×上右=30×40=1,200。等しくないので、中央には電流が流れます。外すことも短絡することもできません。
①中央を外して開放電圧を出す。中央がなければ、左右の辺はどちらも分岐のない直列なので、分圧がそのまま使えます。
C:20×30/(20+30)=12 V
D:20×10/(40+10)=4.0 V
Vth=12−4.0=8.0 V(Cのほうが高い)
②電源を短絡して、CとDから見た抵抗を出す。電源を導線にするとTとBが1つの点になります。Cから見ると 20 Ω と 30 Ω が並列、Dから見ると 40 Ω と 10 Ω が並列で、その2つが直列につながります。
20×30/50=12 Ω、40×10/50=8.0 Ω
Rth=12+8.0=20 Ω
③中央の抵抗を戻す。
Ig=8.0/(20+20)=0.20 A(CからDへ)
中央に 0.20 A 流れると、C–D間の電圧は 0.20×20=4.0 V です。開放のときの 8.0 V から下がっています。この 4.0 V を、計算例5で別の道具から出し直します。ノートンの形なら、IN=8.0/20=0.40 A の電流源と 20 Ω の並列です。
④等価回路で分からないこと。中央を外したとき、テブナン等価回路には電流が流れないので、中の消費電力は0 Wです。ところが実際のブリッジでは、左右の辺に 20/50=0.40 A ずつ流れていて、合計 20×0.80=16 W を消費しています。等価回路と元の回路で一致するのは、端子から見た関係だけです。
Δ-Y変換|三角形と星形を置き換える
3つの端子のあいだに抵抗が三角形に入っている形をΔ(デルタ)、1つの点から3本の抵抗が星形に出ている形をY(スター)と呼びます。どの2端子のあいだを測っても同じ抵抗になるように値を決めると、互いに置き換えられます。Δの3本を Rab、Rbc、Rca、Yの3本を Ra、Rb、Rc とします(Ra は端子aにつながる1本)。
Δ→Y
Ra=RabRca
÷(Rab+Rbc+Rca)
端子aの両側にあるΔの2本の積を、3本の和で割る
Y→Δ
Rab=(RaRb+RbRc+RcRa)
÷Rc
3本とも等しいときは RY=RΔ/3
置き換えても変わらないのは、3つの端子の電位と、端子に出入りする電流だけです。Δの中の1本1本に流れる電流は、Yの形からは直接読めません。必要なら、端子の電位を出してから元のΔに戻って計算します。三相の負荷が平衡しているときのインピーダンスの変換は、三相交流回路で扱っています。
計算例5|同じブリッジの電源電流をΔ-Y変換で出す
計算例4のブリッジで、電源から流れ出す電流を求めます。T・C・Dの3点を結ぶ三角形(T–C 20 Ω、T–D 40 Ω、C–D 20 Ω)をYに直します。
①Δ→Y。3本の和は 20+40+20=80 Ω。新しい中心をNとします。
T–N:20×40/80=10 Ω
C–N:20×20/80=5.0 Ω
D–N:40×20/80=10 Ω
②直並列にまとめる。Nから下へは、Cを通る道(5.0+30=35 Ω)と、Dを通る道(10+10=20 Ω)の並列になります。
並列:35×20/55=約12.73 Ω
全体:10+12.73=22.73 Ω
電源電流:20÷22.73=0.88 A
③計算例4と突き合わせる。
Nの電位:20−0.88×10=11.2 V
Cを通る道:11.2/35=0.32 A、Cの電位 0.32×30=9.6 V
Dを通る道:11.2/20=0.56 A、Dの電位 0.56×10=5.6 V
C–D間:9.6−5.6=4.0 V、Ig=4.0/20=0.20 A テブナンの答えと一致
④中央を勝手に扱うと。中央を外したことにすると 50 Ω どうしの並列で 25 Ω、電流は 0.80 A。短絡したことにすると、20 Ωと40 Ωの並列(約13.33 Ω)に、30 Ωと10 Ωの並列(7.5 Ω)が直列につながって 約20.83 Ω、電流は 0.96 A。正しい 0.88 A はその中間で、どちらとも違います。外しても短絡しても同じになるのは、平衡しているときだけです。
計算例4と5は、同じ回路に別の問いを立てています。1本の枝の電流だけが知りたいならテブナン、電源から見た全体の抵抗や電流が知りたいならΔ-Y変換が近道です。ただし、どちらで解いても答えは同じで、片方の結果をもう片方で確かめられます。
最大電力の条件|電力と効率は同時に最大にならない
直流回路の基礎で内部抵抗のある電源を扱ったとき、負荷を重く(抵抗を小さく)すると電流は増えるが、端子電圧と効率は下がる、というところまで見ました。それなら、負荷の抵抗をいくつにしたとき、負荷に届く電力は最も大きくなるのか。線形な回路なら、負荷から見れば必ずテブナン等価回路(Vth と Rth の直列)になるので、この形1つで考えれば足ります。
負荷の電力を式にする。
PL=IL2RL
=Vth2RL/(Rth+RL)2
分母を RL で割って形を変える。
(Rth+RL)2/RL
=(√RL−Rth/√RL)2+4Rth
2乗の項は0以上で、0になるのは RL=Rth のときだけです。そのとき分母がいちばん小さくなり、電力が最大になります。微分を使わなくても、ここまで式の形だけで言えます。
最大電力の条件
RL=Rth のとき
Pmax=Vth2/(4Rth)
このとき端子電圧は Vth/2、効率は50%。
電源側(Vth と Rth)が決まっていて、負荷を選べるときの条件。
Vth=48 V、Rth=4.0 Ω の電源に、いろいろな負荷をつないだ結果です。効率は、電源が発生する電力のうち負荷に届く割合(RL/(Rth+RL))とします。
| 負荷 RL | 電流 | 負荷の電力 | 効率 |
|---|---|---|---|
| 1.0 Ω | 9.6 A | 92.16 W | 20% |
| 2.0 Ω | 8.0 A | 128 W | 33% |
| 4.0 Ω | 6.0 A | 144 W | 50% |
| 8.0 Ω | 4.0 A | 128 W | 67% |
| 16 Ω | 2.4 A | 92.16 W | 80% |
表から読み取れることが3つあります。
- 最大は4.0 Ωの144 Wで、482/(4×4.0)=144 W と一致する。
- 2.0 Ωと8.0 Ω、1.0 Ωと16 Ωは同じ電力になる。RL と Rth2/RL の組は、どちらも同じ電力を受け取る(2.0×8.0=4.02)。だから電力の値だけから負荷の抵抗は1つに決まらない。
- 効率は RL を大きくするほど上がり続ける。電力が最大の点と、効率が最大の点は別の場所にある。
条件を逆にすると答えも変わる。負荷の RL が決まっていて、電源側の Rth を選べるのなら、Rth は小さいほど負荷の電力は大きくなり、最大は Rth=0 です。「等しいとき最大」は、どちらを動かすのかとセットで覚えてください。
効率50%は、負荷に届けるのと同じだけの電力を、電源の中で熱にしている状態です。電力会社の送配電や建物の電源設備は、損失を小さくするために、負荷の抵抗を電源の内部抵抗よりずっと大きい状態で使います。最大電力の条件が意味を持つのは、無線のアンテナと受信機のあいだのように、元の電力が小さく、少しでも多く受け取りたい場面です。なお、効率を50%と言えるのは、電源が本当に起電力と内部抵抗の直列でできているときです。複雑な回路をテブナン等価回路に置き換えただけなら、計算例4の④のとおり、中で消費される電力は等価回路からは決まりません。
ビルメンの現場では、どこに出てくるか
- 直流電源装置。受変電設備の遮断器を操作する電源や、非常用の照明などに使う直流電源では、整流器(充電器)と蓄電池が並列になって負荷に給電する構成がよく使われます。計算例1で E2 が電力を受け取る側に回ったように、並列の電源どうしは、電圧の関係によって一方が他方を充電する向きの電流が流れます。浮動充電は、整流器が負荷へ給電しながら蓄電池にもわずかな電流を流し続ける方式です。実際の蓄電池の起電力は充電の状態で変わるので、一定の E と R で表すのはおおまかなモデルです。
- 漏れ電流の測定。負荷へ向かう電線をすべて(単相2線なら2本、単相3線や三相3線なら3本。接地線は除く)まとめてクランプ形の電流計で挟むと、平常時はKCLを囲んだ範囲に当てはめたとおり、電流の和は0です。電路から大地へ漏れている電流があると、その分だけ和が0でなくなり、読みとして現れます。停電させずに絶縁の劣化を探す手がかりになります。漏電遮断器も同じ「差だけを見る」考え方で、磁気の側から見た仕組みは電磁誘導とインダクタンス、どこに設置しなければならないかは電気使用場所の施設にまとめています。
- 温度センサの配線。空調や熱源の配管・ダクトの温度計測では、センサと計器が離れていることが多く、計算例3のとおり導線の抵抗が誤差になります。センサが2線式・3線式・4線式のどれでつながっているかは、計器の仕様書や結線図に書いてあります。センサを交換するときに結線の形式を変えてしまうと、表示が数℃ずれることがあります。
- ケーブルの事故点探し。地中ケーブルで地絡が起きたとき、掘る場所を電気的に決めるマーレーループ法は、ブリッジの平衡条件を応用したものです(地中送電線路)。
- 測定器の中身。抵抗を精密に測るブリッジの種類と使い分けは、電気計測と測定器で扱っています。
理解度チェック
まず自分で1つ選び、それから解答を開きます。正解の理由だけでなく、残り4つの選択肢がどこで道を外れたのかまで追っておくと、本番で数字や形を変えて出されても対応できます。
確認1|重ね合わせと電力
線形な直流回路に2つの独立電源がある。抵抗 5.0 Ω に流れる電流を重ね合わせの理で電源ごとに求めたところ、電源Aだけが働くときは右向きに 3.0 A、電源Bだけが働くときは左向きに 1.0 A だった。2つの電源が同時に働いているとき、この抵抗の消費電力はいくらか。
(1)10 W (2)20 W (3)40 W (4)50 W (5)80 W
確認2|開放電圧と短絡電流から最大電力を出す
起電力と内部抵抗の直列とみなせる直流電源がある。端子に何もつながない状態の電圧は 30 V、端子を短絡したときの電流は 6.0 A だった。この端子に負荷抵抗をつなぎ、負荷の電力が最大になるよう調整した。そのときの負荷抵抗、負荷の電力、効率(電源が発生する電力のうち負荷に届く割合)を組にしたとき、正しいのはどれか。
(1)5.0 Ω、45 W、50%
(2)5.0 Ω、180 W、50%
(3)5.0 Ω、90 W、50%
(4)10 Ω、40 W、67%
(5)2.5 Ω、40 W、33%
確認3|平衡したブリッジの性質
上の頂点と下の頂点のあいだに 18 V の理想直流電源、左右の中点のあいだに 50 Ω の抵抗をつないだブリッジ回路がある。上左 60 Ω、下左 30 Ω、上右 40 Ω、下右 20 Ω である。次の記述のうち、正しいものはどれか。
- (1)平衡条件は「上左×上右=下左×下右」なので、60×40 と 30×20 は等しくなく、中央の抵抗に電流が流れる。
- (2)平衡しているのは電源電圧が 18 V のときだけで、24 V にすると中央に電流が流れる。
- (3)中央の抵抗を 50 Ω から 5 Ω に取り替えると、中央に電流が流れ始める。
- (4)下の頂点を0 Vとすると、左右の中点の電位はどちらも 9.0 V である。
- (5)中央の枝を取り外しても導線で短絡しても、電源から流れ出す電流は 0.50 A で変わらない。
まとめ
- KCLは電荷の保存、KVLは電位が1つに決まること。抵抗の符号は仮定した電流の向き、電源の符号は極性で決める。
- 独立な式は、KCLが(節点数−1)本、KVLが(枝数−節点数+1)本。数えてから立てる。
- 節点電圧法は「出ていく電流」でそろえて書く。節点が2つならミルマンの定理。
- 重ね合わせは線形回路だけ。電圧源は短絡、電流源は開放で休ませる。足すのは電流と電圧で、電力は最後に計算する。
- テブナンは開放電圧と、電源を休ませて見た抵抗。ノートンは短絡電流と同じ抵抗の並列。一致するのは端子から見た関係だけ。
- ブリッジは上左×下右=下左×上右で平衡。平衡していれば中央は外しても短絡してもよいが、していなければテブナンかΔ-Y変換。
- 最大電力は電源側が決まっているとき RL=Rth。効率は50%で、電力の最大と効率の最大は別の点。
- 同じ回路を2つの道具で解き、答えが合うことを確かめる。これがいちばん確実な検算。
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- 直流回路解析ミニテスト第1回:KCLの符号、向かい合う2電源のKVL、平衡ブリッジ、2電源のテブナン等価、重ね合わせの5問。25の選択肢すべてに、どこで間違えたのかの説明がある。
- ミニテスト第2回と第3回:電源の休ませ方、ノートン等価、Δ-Y変換、ミルマンの定理、独立な式の数を確かめる追加演習。
- 直流回路の基礎:前のテーマ。合成抵抗、分圧と分流、内部抵抗と端子電圧。この記事の計算の前提になっている。
- 交流回路の基礎:次のテーマ。正弦波、実効値、位相。
- RLC回路とインピーダンス:キルヒホッフの法則・重ね合わせ・テブナンの定理は、抵抗をインピーダンスに置き換えれば交流でもそのまま使える。最大電力の条件だけは、リアクタンスを打ち消す形に変わる。
- 三相交流回路:Δ-Y変換を、平衡した三相負荷のインピーダンスで使う。
- 過渡現象:時定数に入る抵抗は、コンデンサやコイルの端子から見たテブナン抵抗として求められる。
- 半導体と電子回路:重ね合わせが使えない非線形の素子を、どう扱うか。
- 電気計測と測定器:ブリッジによる抵抗・インダクタンス・静電容量の測定。
- 地中送電線路:マーレーループ法で、ブリッジの平衡から事故点までの距離を出す。
- 電磁誘導とインダクタンス:KVLが図の上で成り立つようにするため、誘導起電力をどう書き込むか。
- 電気使用場所の施設:漏電遮断器の設置が求められる場所。
- 電験三種とは?日程と科目合格の仕組み:年間の試験日程と、科目合格の制度。
- 試験概要(電気技術者試験センター):4科目それぞれの範囲と、マークシート方式・CBT方式のどちらも五肢択一であること。
- 過去の試験問題と解答(同センター):実際の問題文で、電源の極性や電流の向きがどう指定されているかを確かめられる。
- BIPM(国際度量衡局)のSI文書:ミルマンの定理の分母に出てくるジーメンス(S)が、オームの逆数として組み立てられた単位であること。
- 日本産業標準調査会(JIS検索):規格番号 C1604 で、測温抵抗体の規格(抵抗と温度の関係、導線の形式)の情報にたどり着ける。
この記事の資料は2026年9月29日に確認しました。理論科目が何を範囲とし、どう解答するのかは電気技術者試験センターが公表している試験概要で、単位の組み立ては国際度量衡局のSI文書で確かめました。測温抵抗体の抵抗と温度の関係は JIS C 1604 によります。計算例と確認問題の電圧・抵抗・電流は、途中の計算を最後まで追えるようにこちらで決めた値で、特定の設備や製品の実測値ではありません。Pt100の20℃での抵抗値と1 Kあたりの変化は、規格の式から計算した代表値です。実際の計器やセンサを扱うときは、その製品の仕様書と結線図を確認してください。
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