結論:複雑な回路を「解ける」ようになる武器を手に入れよう
記事5でオームの法則や合成抵抗を学びましたが、実際の試験では直列・並列に分けられない複雑な回路が出題されます。そんなときに使う武器が、キルヒホッフの法則、ホイートストンブリッジ、テブナンの定理です。
🔍 キルヒホッフ
電流と電圧の
保存則で方程式を立てる
⚖ ブリッジ回路
平衡条件を使って
未知の抵抗を求める
🎯 テブナンの定理
複雑な回路を
1つの電源+1つの抵抗に簡略化
キルヒホッフの法則 ― 回路解析の大黒柱
第1法則(電流則・KCL)
キルヒホッフの第1法則(KCL)
回路の任意の節点(分岐点)において、
流入する電流の和 = 流出する電流の和
かみ砕くと:水道管の分岐と同じです。分かれ道に入った水と出た水の量は必ず等しい。電流も同じで、ある点に流れ込む電流の合計と流れ出す電流の合計は必ず一致します。電流は「消えも増えもしない」のです。
第2法則(電圧則・KVL)
キルヒホッフの第2法則(KVL)
回路の任意の閉回路(ループ)を一周すると、
起電力の和 = 電圧降下の和
かみ砕くと:山をぐるっと一周して元の場所に戻ると、標高差はゼロですよね。電圧も同じで、回路を一周すると電圧の上がり(電源)と下がり(抵抗での電圧降下)が打ち消し合って、合計はゼロになります。
キルヒホッフの法則の使い方(手順)
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 各枝路に電流の向きを仮定して記号(I1, I2, ...)を付ける |
| 2 | KCL(第1法則)で節点の式を立てる |
| 3 | KVL(第2法則)で閉回路の式を立てる |
| 4 | 連立方程式を解いて各電流を求める |
コツ:電流の向きは「仮定」なので、間違えても大丈夫です。計算結果がマイナスになったら、実際の電流は仮定と逆向きに流れているだけ。気楽に仮定して計算を進めましょう。
【計算例】キルヒホッフの法則
例題
2つの電源 E1 = 10 V、E2 = 6 V と3つの抵抗 R1 = 2 Ω、R2 = 3 Ω、R3 = 6 Ω からなる回路がある。R3 に流れる電流 I3 を求めよ。
【解き方の流れ】
① 節点Aで KCL:I1 = I2 + I3
② 左ループで KVL:E1 = I1R1 + I3R3 → 10 = 2I1 + 6I3
③ 右ループで KVL:E2 = I2R2 + I3R3 → 6 = 3I2 + 6I3
④ ①を②③に代入して連立方程式を解く:
10 = 2(I2 + I3) + 6I3 = 2I2 + 8I3
6 = 3I2 + 6I3 → I2 = (6 − 6I3)/3 = 2 − 2I3
10 = 2(2 − 2I3) + 8I3 = 4 − 4I3 + 8I3 = 4 + 4I3
I3 = (10 − 4)/4 = 1.5 A
ホイートストンブリッジ ― 平衡条件で一発解答
ブリッジ回路の構造
4つの抵抗をダイヤモンド形に接続し、対角に検流計(ガルバノメータ)をつないだ回路がホイートストンブリッジです。
平衡条件
検流計に電流が流れない(つまり対角の2点が同電位の)とき、ブリッジは平衡状態にあると言います。
ブリッジの平衡条件
R1 × R4 = R2 × R3
つまり「対辺の積が等しい」という簡単な条件です。
かみ砕くと:天秤をイメージしてください。4つの抵抗がつり合っていると、対角線にある検流計には電流が流れません。この「つり合い」の条件が R1R4 = R2R3 です。
【計算例】ブリッジの平衡
例題
ブリッジ回路で R1 = 100 Ω、R2 = 200 Ω、R3 = 300 Ω のとき、平衡するための R4 を求めよ。
【解答】
R1R4 = R2R3 より
R4 = R2 × R3R1 = 200 × 300100 = 600 Ω
実務メモ:ホイートストンブリッジは実際の計測器にも使われています。温度センサ(測温抵抗体)を含むブリッジ回路で温度変化を高精度に検出するなど、ビルメンの計装分野にも関連する技術です。
テブナンの定理 ― 複雑な回路をシンプルに
テブナンの定理とは?
テブナンの定理は、どんな複雑な回路でも、特定の端子から見れば「1つの電圧源+1つの抵抗」に置き換えられるという強力な定理です。
テブナンの定理
任意の二端子回路は、
テブナン電圧 V0(開放電圧)とテブナン抵抗 R0(内部抵抗)の
直列回路に等価変換できる
テブナンの定理の使い方
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 求めたい部分の負荷を取り外す |
| 2 | 端子間の開放電圧 V0 を求める |
| 3 | 電源を短絡して端子から見た内部抵抗 R0 を求める |
| 4 | V0 と R0 の直列回路に負荷を接続して電流を計算 |
手順3の補足:「電源を短絡」とは、電圧源を導線(0 Ω)に、電流源を開放(切断)に置き換えること。電源を殺して抵抗だけの回路にしてから、端子間の合成抵抗を求めます。
【計算例】テブナンの定理
例題
12 V の電源に R1 = 4 Ω と R2 = 6 Ω が直列に接続されている。R2 の両端に負荷抵抗 RL = 3 Ω を並列に接続したとき、RL に流れる電流を求めよ。
【解答】
① RL を外した状態で端子間の開放電圧を求める:
V0 = 12 × R2/(R1+R2) = 12 × 6/10 = 7.2 V
② 電源を短絡し、端子間の内部抵抗を求める:
R0 = R1 // R2 = (4 × 6)/(4 + 6) = 2.4 Ω
③ テブナン等価回路に RL を接続:
IL = V0R0 + RL = 7.22.4 + 3 = 7.25.4 ≈ 1.33 A
最大電力供給の定理
テブナンの定理から導かれる重要な定理があります。
最大電力供給の条件
RL = R0 のとき、負荷に最大電力が供給される
そのときの最大電力は:
Pmax = V024R0 [W]
試験のコツ:「最大電力 = 内部抵抗と負荷抵抗が等しいとき」はそのまま暗記でOKです。試験では「RL をいくらにすれば最大電力が得られるか」と聞かれるパターンが典型です。
まとめ ― 解法の使い分け
| 手法 | 使う場面 | ポイント |
|---|---|---|
| キルヒホッフ | 複数電源、複雑な回路 | KCL+KVLで連立方程式 |
| ブリッジ | 4抵抗のダイヤモンド形 | R1R4 = R2R3 で一発 |
| テブナン | 特定の負荷の電流を求めたい | V0とR0を求めて簡略化 |
| 最大電力 | RL の最適値を求める | RL = R0 で最大 |
学習アドバイス:「どの手法を使うか」の判断力が合否を分けます。ブリッジの形を見抜いたら平衡条件、特定箇所の電流を知りたいならテブナン、どちらにも当てはまらない一般的な回路ならキルヒホッフ。問題をたくさん解いて、パターンを体に染み込ませましょう。
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