機械

【電験三種・機械】直流機の構造と原理(直流発電機・直流電動機・誘導起電力)

結論:直流機は「発電機にも電動機にもなる」万能マシン

直流機(DC Machine)は、構造がまったく同じで、外から力を加えれば発電機(Generator)、電気を流せば電動機(Motor)として働きます。電験三種の機械科目では「四機」の1つとして毎回出題される最重要テーマです。

🏗️ 構造

固定子(界磁)と
回転子(電機子)
整流子とブラシ

⚡ 発電機の原理

磁界中で導体を回す
起電力が発生
(フレミング右手の法則)

🔄 電動機の原理

磁界中の導体に電流
力(トルク)が発生
(フレミング左手の法則)

直流機の構造

主な構成部品

固定子(ステータ)= 界磁
継鉄(ヨーク):磁気回路の外枠
界磁鉄心(磁極):磁束を集中させる
界磁巻線:電流を流して磁界を作る
→ 磁界(磁束)を作る側
回転子(ロータ)= 電機子
電機子鉄心:けい素鋼板の積層体
電機子巻線:起電力が発生する巻線
整流子(コミュテータ):交流→直流に変換
→ 電力の入出力を担う側

整流子とブラシ

直流機の最大の特徴が、整流子(コミュテータ)とブラシです。

電機子巻線で発生する起電力は、実は交流です。しかし整流子が回転に合わせて接続を切り替えるため、ブラシから取り出される電流は直流になります。この仕組みを機械的整流といいます。

覚え方:整流子=交流を直流に変える機械スイッチ」。ブラシは整流子に接触して外部回路に電流を取り出す(または供給する)部品です。ブラシは摩耗するため定期的な交換が必要で、これが直流機の弱点でもあります。

電機子巻線の種類

巻線方式 並列回路数 a 特徴
重ね巻 a = p(極数) 並列回路が多い → 大電流・低電圧向き
波巻 a = 2(常に) 並列回路が2つ → 高電圧・小電流向き

試験のコツ:重ね巻は a = p」「波巻は a = 2」。起電力の計算で必要になるので確実に覚えましょう。

直流発電機の原理

フレミングの右手の法則

磁界の中で導体を動かすと、導体に起電力(EMF)が発生します。これが発電の原理です。起電力の方向はフレミングの右手の法則で決まります。

フレミングの右手の法則(発電機)

親指:導体の運動方向(v)
人差し指:磁界の方向(B)
中指:起電力(誘導電流)の方向(E)

誘導起電力の公式

直流発電機の誘導起電力(EMF)は次の式で計算します。

直流機の誘導起電力

E = pZφ60a N [V]

記号 意味
p 極数
Z 電機子の総導体数
φ 1極あたりの磁束 [Wb]
a 並列回路数(重ね巻: a=p、波巻: a=2)
N 回転速度 [min−1]

ポイント:起電力は「磁束 φ × 回転速度 N に比例」します。磁束を増やす(界磁電流を増やす)か、回転を速くすれば起電力が上がります。逆に言えば、E ∝ φN という比例関係を使うと、条件変化の計算が楽になります。

【練習問題①】誘導起電力の計算

【問題】4極の直流発電機。電機子の総導体数 Z = 200、1極あたりの磁束 φ = 0.02 Wb、回転速度 N = 1,500 min−1。重ね巻のとき、誘導起電力 [V] を求めよ。

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重ね巻なので a = p = 4

E = pZφ60a N = 4 × 200 × 0.0260 × 4 × 1,500

= 16240 × 1,500 = 0.0667 × 1,500

= 100 V

【練習問題②】波巻の場合

【問題】上の発電機を波巻にした場合、誘導起電力は何Vになるか。

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波巻なので a = 2

E = 4 × 200 × 0.0260 × 2 × 1,500 = 16120 × 1,500

= 200 V

重ね巻(100V)の2倍になりました。波巻は並列回路が少ない(a=2)ため、電圧が高くなります。

直流電動機の原理

フレミングの左手の法則

磁界の中の導体に電流を流すと、導体に力(トルク)が働きます。これが電動機の原理で、方向はフレミングの左手の法則で決まります。

フレミングの左手の法則(電動機)

親指:力の方向(F)
人差し指:磁界の方向(B)
中指:電流の方向(I)

覚え方:「発電機は右手(Right = 発生 Generate)」「電動機は左手(Left = 力 Motor)」。右手が発電、左手がモーターと覚えましょう。

逆起電力

電動機が回転すると、発電機と同じ原理で起電力が発生します。この起電力は外部から加えた電圧と逆向きに働くため、逆起電力と呼びます。

電動機の回路方程式

V = E + RaIa

V:端子電圧、E:逆起電力、Ra:電機子抵抗、Ia:電機子電流

起動時(N = 0)は逆起電力 E = 0 なので、非常に大きな電流が流れます。そのため起動時には起動抵抗を直列に入れて電流を制限します。

発電機と電動機の回路方程式の比較

種類 回路方程式 エネルギーの流れ
発電機 V = ERaIa 機械エネルギー → 電気エネルギー
電動機 V = E + RaIa 電気エネルギー → 機械エネルギー

覚え方:発電機は E から V を「取り出す」(E > V)ので引き算。電動機は V で E に「打ち勝つ」(V > E)ので足し算です。

【練習問題③】逆起電力の計算

【問題】直流電動機。端子電圧 V = 200 V、電機子抵抗 Ra = 0.5 Ω、電機子電流 Ia = 40 A のとき、逆起電力 E [V] を求めよ。

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V = E + RaIa より、

E = VRaIa = 200 − 0.5 × 40 = 200 − 20

= 180 V

トルクの公式

直流機のトルクは次の式で表されます。

直流機のトルク

T = pZa φIa [N·m]

構造定数(p, Z, a)が一定なら、T ∝ φIa(磁束 × 電機子電流に比例)です。

また、出力とトルクの関係も重要です。

P = EIa = N60 T = ωT [W]

【練習問題④】出力とトルクの関係

【問題】直流電動機の出力が 10 kW、回転速度が 1,200 min−1 のとき、トルク [N·m] を求めよ。

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P = N60 T より、

T = 60PN = 60 × 10,0002π × 1,200

= 600,0007,539.8

≈ 79.6 N·m

理解度チェック

【第1問】

直流機において、電機子巻線で発生する起電力の交流を直流に変換する部品はどれか。

(1) ブラシ (2) 界磁巻線 (3) 整流子 (4) 継鉄 (5) 補極

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正解:(3) 整流子

整流子(コミュテータ)は、電機子巻線で発生した交流起電力を機械的に整流して直流に変換する部品です。ブラシは整流子と接触して外部回路と電流をやりとりする部品です。

【第2問】

4極の直流発電機で波巻のとき、並列回路数 a はいくつか。

(1) 1 (2) 2 (3) 4 (4) 8 (5) 極数による

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正解:(2) 2

波巻の並列回路数は極数に関係なく常に a = 2 です。重ね巻の場合は a = p(極数)なので、4極なら a = 4 になります。

【第3問】

直流電動機の端子電圧 100 V、電機子抵抗 0.2 Ω、電機子電流 30 A のとき、逆起電力 [V] はいくらか。

(1) 88 (2) 90 (3) 94 (4) 96 (5) 106

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正解:(3) 94

E = VRaIa = 100 − 0.2 × 30 = 100 − 6 = 94 V

【第4問】

直流機の誘導起電力に関する記述として、正しいものはどれか。

(1) 磁束に反比例する
(2) 回転速度に反比例する
(3) 電機子電流に比例する
(4) 磁束と回転速度の積に比例する
(5) 並列回路数に比例する

解答を見る

正解:(4) 磁束と回転速度の積に比例する

E = (pZ/60a) × φN なので、起電力はφ(磁束)と N(回転速度)の積に比例します。電機子電流 Ia は起電力の式に含まれません。

まとめ

  • 構造:固定子(界磁)+ 回転子(電機子)+ 整流子とブラシ
  • 整流子:交流を直流に変換する機械スイッチ
  • 巻線:重ね巻(a=p、大電流向き)、波巻(a=2、高電圧向き)
  • 起電力:E = (pZφ/60a) × N → φN に比例
  • 発電機:フレミング右手の法則、V = E − RaIa
  • 電動機:フレミング左手の法則、V = E + RaIa
  • トルク:T ∝ φIa。出力 P = ωT

次の記事では、「直流機の特性と計算」を学びます。他励・分巻・直巻の違いと効率計算に進みましょう。

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