機械

直流機の特性と計算|他励・分巻・直巻・複巻の違い、速度制御、損失と効率【電験三種・機械】

直流機の構造と原理では、界磁を別の電源につないだ他励に話をしぼって、起電力とトルクの式を組み立てました。ここでは、界磁巻線のつなぎ方を変えると何が変わるのかを見ていきます。つなぎ方は、他励・分巻・直巻・複巻の4つです。発電機なら負荷をかけたときの端子電圧の下がり方が、電動機なら負荷をかけたときの速さとトルクの出方が、つなぎ方ごとに違ってきます。後半では、速さの変え方と、損失と効率の計算を扱います。機械科目の公開問題(電気技術者試験センター)を、2022年8月の令和4年度上期から2026年8月の令和8年度上期まで9回分たどると、つなぎ方ごとの特性や運転のしかたを文章か図で問う問いが4回、電動機の回路から回転速度・効率・抵抗を求める計算が6回ありました。

この記事で押さえること

  • つなぎ方で変わるのは、界磁電流の出どころ。他励は別の電源、分巻は端子電圧、直巻は負荷の電流そのもの、複巻は分巻と直巻の両方。
  • 分巻は、外の電流と電機子電流が、界磁電流のぶんだけ違う。発電機は Ia=I+If、電動機は Ia=I−If。
  • 発電機の端子電圧は、負荷をかけると下がる。下がり方は、他励より分巻が大きい。直巻は負荷の電流で電圧が大きく動き、複巻は直巻のぶんで下がりを補える。
  • 電動機の回転速度は N=(V−RaIa)/(KΦ)。分巻と他励は磁束が一定なので、負荷が変わっても速さはあまり変わらない。
  • 直巻は、飽和していないあいだ、磁束が電流に比例する。トルクは電流の2乗に比例し、負荷が軽くなると速さが大きく上がる。
  • 速さを変えるには、電圧・磁束・電機子回路の抵抗のどれかを変える。磁束を弱めると、速くなる。
  • 効率は、出力÷入力。電動機は入力から損失を引き、発電機は出力に損失を足して求める。損失は、負荷で変わるものと変わらないものに分ける。

記号と前提。V は端子電圧、E は誘導起電力(電動機では逆起電力)です。I は外の回路とやりとりする電流で、発電機なら負荷へ送る電流、電動機なら電源から入る電流を指します。Ia は電機子電流、If は分巻や他励の界磁電流。Ra は電機子回路の抵抗、Rf は分巻界磁の回路の抵抗、Rs は直巻界磁巻線の抵抗です。Φ は1極あたりの磁束、N は回転速度[min−1]、ω は角速度[rad/s]、T はトルク。K は機械ごとに決まる定数で、E=KΦN と書いたときの K=pZ/(60a) です(直流機の構造と原理の「起電力の式を組み立てる」)。ミニテストの φ は磁束 Φ のこと、「起動」は始動のことです。計算例や確認問題の電圧・電流・抵抗の値は、計算の筋道を見せるために置きました。実在の機械の定格ではありません。断りのないかぎり、ブラシの電圧降下と電機子反作用は入れずに計算します。

界磁のつなぎ方4種類

界磁巻線に流す電流をどこから取るかで、直流機は4つに分かれます。別の電源から取るのが他励です。自分の電機子から取るものをまとめて自励といい、つなぎ方によって分巻・直巻・複巻に分かれます。この分け方は、日本電気技術者協会の公開講座にならっています。「発電機と電動機(2)」と「同(3)」は、電機子巻線と界磁巻線のつくりはほぼ同じで、つなぎ方によって4種類に分かれる、として、発電機も電動機も同じ順で回路と特性を説明しています。

方式 界磁のつなぎ方と、界磁電流
他励 別の電源につなぐ。
界磁電流は、負荷と
関係なく決められる。
分巻 電機子と並列につなぐ。
界磁電流は、端子電圧÷
界磁回路の抵抗。
直巻 電機子と直列につなぐ。
界磁電流は、負荷の
電流そのもの。
複巻 分巻界磁と直巻界磁を
両方もつ。2つの磁束が
足し合う向きを和動、
打ち消す向きを差動という。

試験センターの公開問題には、界磁に永久磁石を使った小形の直流電動機も出てきます。磁束が変わらないので、計算の上では、界磁電流を一定にした他励と同じように扱えます。

つなぎ方ごとの式

電機子回路の読み方は、どのつなぎ方でも変わりません。起電力 E に抵抗が直列についた電源として読みます(直流機の構造と原理の「発電機と電動機の式」)。つなぎ方で変わるのは2点だけです。電機子電流が外の電流と同じかどうか。直列に入る抵抗が増えるかどうか。

方式 電流と電圧の式
他励 Ia=I
発電機:V=E−RaIa
電動機:V=E+RaIa
分巻 If=V/Rf
発電機:Ia=I+If
電動機:Ia=I−If
電圧の式は他励と同じ。
直巻 Ia=I=If
発電機:
V=E−(Ra+Rs)Ia
電動機:
V=E+(Ra+Rs)Ia

分巻の発電機は、電機子がつくった電流のうち、界磁のぶんを自分で使い、残りを負荷へ送ります。だから電機子電流は、負荷電流より界磁電流のぶんだけ大きくなります。分巻の電動機は逆で、電源から入った電流が界磁と電機子に分かれるので、電機子電流は界磁電流のぶんだけ小さくなります。直巻は、電流が界磁巻線も通るので、その抵抗 Rs での電圧降下が加わります。複巻は回路も式も込み入るので、この記事では特性だけを扱います。

計算例1|電流と起電力

設定。電機子回路の抵抗が0.8 Ω の直流機がある。分巻界磁の回路(抵抗440 Ω)と、直巻界磁巻線(抵抗0.2 Ω)を備えていて、つなぎ方を選べる。端子電圧は440 V とする。発電機として負荷へ24 A を送るときの起電力と、電動機として電源から26 A を受け取るときの逆起電力を、他励・分巻・直巻のそれぞれで求める。

① 分巻の界磁電流:
If=440/440=1 A

② 他励の発電機(24 A):
440+0.8×24=459.2 V

③ 分巻の発電機:
Ia=24+1=25 A
440+0.8×25=460 V

④ 直巻の発電機(24 A):
440+(0.8+0.2)×24=464 V

⑤ 他励の電動機(26 A):
440−0.8×26=419.2 V

⑥ 分巻の電動機:
Ia=26−1=25 A
440−0.8×25=420 V

⑦ 直巻の電動機(26 A):
440−(0.8+0.2)×26=414 V

読み取り。分巻は、発電機でも電動機でも、電機子電流が25 A になりました。外の電流は24 A と26 A で違うのに、電機子の中は同じです。界磁の1 A を、発電機は自分でまかない、電動機は電源から受け取るからです。

直巻は、界磁巻線の0.2 Ω が電機子と直列に入るぶん、他励より電圧降下が大きくなります。このあとの計算例は、すべてこの機械を使います。

発電機の特性

発電機の性格は、2本の曲線で表します。無負荷のときの界磁電流と起電力の関係を示す無負荷飽和曲線と、負荷電流と端子電圧の関係を示す外部特性曲線です。どちらも、回転速度は一定に保って考えます。

無負荷飽和曲線

他励発電機を一定の速さで回し、界磁電流を0から増やしていきます。起電力は E=KΦN で、磁束は界磁電流にほぼ比例するので、はじめは起電力も界磁電流にほぼ比例して上がります。界磁電流をさらに増やすと、鉄心が磁気飽和して磁束が増えにくくなり、起電力は頭打ちになります(磁気飽和は磁気の基礎と電磁力の「磁気飽和とヒステリシス」)。

界磁電流が0のときも、起電力はぴったり0にはなりません。鉄心に磁束が少し残っているからです(残留磁束)。この小さな起電力が、次の分巻発電機で大事な役目をします。

分巻発電機が立ち上がるしくみ

分巻発電機は、自分の端子電圧で界磁電流を流します。回し始めたときは端子電圧がないので、界磁電流も流れないはずです。それでも発電が始まるのは、残留磁束があるからです。協会の講座「発電機と電動機(2)」の説明を、順に並べます。

① 残留磁束を導体が横切り、
小さな起電力が出る。

② その電圧で、界磁巻線に
わずかな電流が流れる。

③ 磁束が増え、起電力が上がる。

④ ②と③をくり返して、
電圧が上がっていく。

⑤ 鉄心が飽和に近づき、起電力と、
界磁回路にかかる電圧 RfIf が
一致したところで落ち着く。

試験センターの公開問題も、分巻発電機は残留磁束によってまず低い電圧で発電を始め、界磁電流が流れて磁束が強まることで、必要な励磁が確立する、としています。②で流れる電流が残留磁束を強める向きでなければ、③へ進めません。界磁巻線をつなぐ向きと回す向きが合っていることが、立ち上がりの条件になります。

外部特性と電圧変動率

負荷電流を増やしたときに端子電圧がどう動くかを、つなぎ方ごとに並べます。中身は、協会の同じ講座によります。

方式 負荷を増やしたときの端子電圧
他励 起電力は変わらない。
RaIa のぶんだけ、
ほぼ直線で下がる。
下がりは小さい。
分巻 端子電圧が下がると、
界磁電流も減って、
起電力まで下がる。
他励より下がりが大きい。
直巻 無負荷では界磁電流が0で、
電圧はほとんど出ない。
負荷電流とともに上がり、
飽和すると頭打ちになる。
複巻
和動
分巻の下がりを、直巻の
磁束で補う。ほぼ一定に
したものが平複巻、上がる
ようにしたものが過複巻。
複巻
差動
直巻の磁束が、分巻の
磁束を打ち消す。負荷と
ともに電圧が大きく下がる。

分巻発電機は、定格を超えて電流を取り出していくと、端子電圧と界磁電流がそろって下がり続け、安定して運転できない点に行き着きます。直巻発電機は、負荷の電流がそのまま界磁電流なので、負荷が変わるたびに電圧が動きます。同じ講座によれば、直巻発電機が用いられることは少ないそうです。公開問題のほうは、直巻発電機について、磁極が飽和しない範囲より、飽和する範囲で使うほうが出力電圧が安定する、という扱いです。飽和していれば、電流が変わっても磁束があまり変わらないからです。

端子電圧の下がり方を1つの数字で表すのが、電圧変動率です。定格の負荷で定格電圧 Vn を出している発電機を、回転速度と界磁の調整はそのままにして無負荷にします。そのときの端子電圧を V0 とすると、次の式になります。

電圧変動率

ε=(V0−Vn)/Vn×100[%]

V0 は無負荷の端子電圧、Vn は定格電圧
割るのは、定格電圧のほう

計算例2|電圧変動率

設定。計算例1の機械を他励発電機にして、定格の440 V・25 A を出している。回転速度と界磁電流を変えずに負荷を外したときの端子電圧と、電圧変動率を求める。

① 定格のときの起電力:
440+0.8×25=460 V

② 無負荷の端子電圧:
電流が0なので、
V0=E=460 V

③ 電圧変動率:
(460−440)/440×100≒4.5%

読み取り。他励なら、起電力は負荷によらず460 V のままです。電圧変動率は、定格のときの電圧降下20 V を、定格電圧440 V で割った値になります。

同じ機械を分巻発電機にすると、話が変わります。負荷を外して端子電圧が上がると、界磁電流も増えて、起電力そのものが上がります。無負荷の端子電圧は460 V より高くなり、電圧変動率は他励より大きくなります。どこまで上がるかは、無負荷飽和曲線がないと計算できません。

電動機の速度とトルク

電動機で知りたいのは、負荷をかけたときに、速さとトルクがどう変わるかです。協会の講座「発電機と電動機(3)」は、端子電圧と界磁の調整を一定にして、電流に対する速さを表したものを速度特性曲線、トルクを表したものをトルク特性曲線と呼んでいます。もとになる式は2本です。

回転速度とトルク

N=(V−RaIa)/(KΦ)[min−1]

T∝ΦIa

上の式は E=KΦN と E=V−RaIa から
直巻は Ra を Ra+Rs に読みかえる

どちらの式にも、磁束 Φ が入っています。負荷が変わったときに磁束がどうなるか。そこが、つなぎ方で分かれます。

分巻と他励は定速度

分巻と他励は、端子電圧と界磁電流が一定なら、磁束も一定です。速さは V−RaIa に比例します。電圧降下 RaIa は端子電圧にくらべて小さいので、負荷が増えても、速さは少ししか下がりません。トルクは、電機子電流に比例します。同じ講座の説明では、分巻電動機は他励電動機と同じ特性になり、界磁電流が電源の側から流れるぶんだけ、曲線が横にずれます。負荷が変わってもほぼ一定の速さを保つことから、公開問題は、分巻電動機を定速度電動機と呼んでいます。

計算例3|分巻の負荷を変える

設定。計算例1の機械を分巻電動機にして、端子電圧440 V で使う。界磁電流は1 A のまま変えない。電機子電流が25 A のとき、回転速度は840 min−1 だった。電機子電流が12.5 A と37.5 A のときの、回転速度とトルクを求める。

① 25 A のときの逆起電力:
440−0.8×25=420 V

② 磁束が一定なら、速さは
逆起電力に比例する。
420 V で840 min−1 なので、
1 V あたり2 min−1。

③ 12.5 A:
440−0.8×12.5=430 V
430×2=860 min−1

④ 37.5 A:
440−0.8×37.5=410 V
410×2=820 min−1

⑤ 25 A のときのトルク:
420×25=10,500 W
ω=2π×840/60≒87.96 rad/s
10,500/87.96≒119.4 N·m

⑥ トルクは電流に比例:
12.5 A で 119.4×0.5≒60 N·m
37.5 A で 119.4×1.5≒179 N·m

電機子
電流
逆起
電力
速さ
[min−1]
トルク
[N·m]
12.5 A 430 V 860 約60
25 A 420 V 840 119.4
37.5 A 410 V 820 約179

読み取り。電流を12.5 A から37.5 A へ3倍にすると、トルクは3倍になります。速さは860 min−1 から820 min−1 へ、5%足らずしか下がりません。

電機子電流が0なら、逆起電力は440 V で、速さは880 min−1 です。これを無負荷の速さとみて、25 A を定格とすると、無負荷から定格までの速さの変わり方は (880−840)/840×100≒4.8% です。この割合を速度変動率といいます。

計算例3を、速さの側から読み直してみます。速さが820 min−1 から880 min−1 へ上がるあいだに、トルクは約179 N·m から0へ下がっています。分巻電動機は、速く回るほどトルクが小さくなる機械です。送風機のように、速く回すほど大きなトルクが要る負荷をつなぐと、電動機のトルクと負荷のトルクが等しくなる速さで落ち着きます。何かの拍子に速さが上がっても、電動機のトルクは減り、負荷のトルクは増えるので、元の速さへ戻ります。試験センターの公開問題でも、電源電圧を一定に保った分巻電動機は、送風機を安定に駆動できる、とされています。

直巻は電流で磁束が変わる

直巻は、電機子電流がそのまま界磁電流です。鉄心が飽和していないあいだ、磁束は電流に比例します。これを2本の式に入れると、分巻とはまるで違う性格が出てきます。

  • トルクは Φ×Ia に比例する。磁束が電流に比例するなら、トルクは電流の2乗に比例する。
  • 速さは、逆起電力を磁束で割ったものに比例する。電流が小さいと磁束も小さいので、速さは大きく上がる。電流が大きいと、速さは大きく下がる。

「2乗に比例」には条件がついています。電流が大きくなって鉄心が飽和すると、磁束は電流に比例しなくなります。協会の講座は、飽和したあとは磁束が一定になるので、トルクは電流に比例する直線になり、速さも分巻と同じような、ゆるい右下がりになる、と説明しています。公開問題のほうも、未飽和の領域では、と断ったうえで直巻のトルクを問うています。

計算例4|直巻の負荷を変える

設定。計算例1の機械を直巻電動機にして、端子電圧440 V で使う。電流が25 A のとき、磁束は計算例3と同じ大きさで、回転速度は830 min−1 だった。磁束は電流に比例する(飽和しない)ものとして、電流が12.5 A と37.5 A のときの、回転速度とトルクを求める。

① 直列に入る抵抗:
0.8+0.2=1.0 Ω

② 25 A のときの逆起電力:
440−1.0×25=415 V

③ 12.5 A(磁束は0.5倍):
440−1.0×12.5=427.5 V
830×(427.5/415)÷0.5
=1,710 min−1

④ 37.5 A(磁束は1.5倍):
440−1.0×37.5=402.5 V
830×(402.5/415)÷1.5
≒537 min−1

⑤ トルクは 磁束×電流:
25 A は計算例3と同じ119.4 N·m
12.5 A:119.4×0.5×0.5≒30 N·m
37.5 A:119.4×1.5×1.5≒269 N·m

電流 磁束 速さ
[min−1]
トルク
[N·m]
12.5 A 0.5倍 1,710 約30
25 A 1倍 830 119.4
37.5 A 1.5倍 約537 約269

読み取り。電流が3倍になるあいだに、トルクは9倍になり、速さは3分の1より下まで落ちます。計算例3の分巻は、トルクが3倍、速さは5%足らずの低下でした。直巻は、重い負荷には速さを落として大きなトルクで応え、軽い負荷では速く回ります。

37.5 A の値は、飽和しないとした場合のものです。実際の機械では、電流が大きいところで磁束の伸びが鈍るので、トルクはここまで大きくならず、速さもここまでは下がりません。

始動のときも、この性格が効きます。始動抵抗で電流を50 A(25 A の2倍)に抑えて回し始めるとします。分巻のトルクは 119.4×2≒239 N·m です。直巻は、飽和しなければ 119.4×2×2≒478 N·m になります。同じ電流で、分巻より大きなトルクが出ます。試験センターの公開問題は、直巻電動機を、始動トルクが大きく、クレーンや巻上機に適した電動機としています(始動抵抗そのものは、直流機の構造と原理の「始動のときの電流」)。

直巻を無負荷にしない理由

計算例4の機械で、負荷がごく軽くなって、電流が5 A まで減ったとします。逆起電力は 440−1.0×5=435 V、磁束は25 A のときの0.2倍です。速さは 830×(435/415)÷0.2≒4,350 min−1。25 A のときの5倍を超えます。負荷がなくなれば電流はさらに減り、速さはさらに上がります。回転子は、速く回るほど大きな遠心力を受けます。

回転機がどこまでの過速度に耐えるべきかは、1999年版の JIS C 4034-1(定格及び特性)が、機械の種類ごとに決めています。分巻と他励の電動機は、最大定格速度の1.2倍か、無負荷回転速度の1.15倍の、大きいほうです。直巻電動機は、定格の速さも無負荷の速さも基準にしていません。製造業者が最大安全運転速度を取り決め、過速度はその1.1倍とし、最大安全運転速度を定格銘板に表示することになっています(定格電圧での無負荷回転速度の1.1倍を過速度として許容できる電動機は、表示しなくてよい)。直巻電動機は、いきなり無負荷になるおそれのあるつなぎ方を避けて使います。ベルト掛けは、ベルトが外れたり切れたりした瞬間に無負荷になるので、向きません。

複巻電動機

複巻電動機は、分巻界磁と直巻界磁の両方をもちます。試験センターの公開問題は、合わさった磁束が2つの和になる和動複巻電動機と、差になる差動複巻電動機がある、としています。和動複巻は、分巻と直巻の中間の性格です。負荷が軽くなっても分巻界磁の磁束が残るので、直巻のように速さが上がり続けることがありません。負荷が重くなると直巻界磁の磁束が加わるので、分巻より大きなトルクが出て、速さの下がりも分巻より大きくなります。協会の講座は、差動複巻電動機はほとんど使われない、としています。

方式 重い負荷での、速さとトルク
分巻
他励
速さは少し下がるだけ。
トルクは電流に比例。
直巻 速さは大きく下がる。
トルクは、飽和するまで
電流の2乗に比例。
無負荷では速さが
上がりすぎる。
和動
複巻
分巻と直巻のあいだ。
無負荷でも、分巻界磁の
磁束が残る。

速さを変える方法

回転速度の式 N=(V−RaIa)/(KΦ) のうち、外から変えられるのは、端子電圧 V、磁束 Φ、電機子回路の抵抗の3つです。協会の講座「発電機と電動機(3)」は、これを3つの制御法として説明しています。

方法 変えるものと、性格
電圧制御 電機子に加える電圧を
変える。応答が速く、
効率がよい。電圧を変える
装置の費用は高い。
界磁制御 界磁電流を変えて、
磁束を変える。扱う電流が
小さいので、損失が少なく、
装置も小さくてすむ。
抵抗制御 電機子回路に、直列に
抵抗を入れる。
抵抗での損失が大きい。

界磁制御では、界磁調整器と呼ぶ可変抵抗を使います。他励と分巻は界磁巻線と直列に、直巻は界磁巻線と並列に入れます。直巻で並列にするのは、電流の一部を界磁巻線からそらして、磁束を弱めるためです。

磁束と速さは、逆に動きます。磁束は式の分母にあるので、界磁を弱めると速くなり、強めると遅くなります。試験センターの公開問題でも、他励電動機の界磁電流を大きくすると回転速度が上がる、という記述は誤りの側です。

端子電圧は、定格より高くしないのがふつうです。だから電圧制御は、定格の速さから下の範囲で使います。界磁は、弱める向きに使えば、定格の速さから上へ広げられます。協会の別の講座(半導体の変換装置で直流電動機の速さを制御する回)は、一般には電機子の電圧を変える方式を使うことが多く、界磁電流を変える方式は、速度制御の範囲を広げるために補助的に組み合わせる、としています。

計算例5|3つの方法を比べる

設定。計算例3の機械を、他励電動機として使う。負荷のトルクは速さによらず一定で、440 V・840 min−1 のとき、電機子電流は25 A である。(a)電圧制御と(b)抵抗制御で、速さを半分の420 min−1 にする。(c)界磁制御で磁束を0.8倍にする。それぞれの条件を求める。

① 420 min−1 の逆起電力:
420÷2=210 V
トルクが同じなので25 A のまま。

②(a)端子電圧を下げる:
210+0.8×25=230 V
入力は 230×25=5,750 W

③(b)440 V のまま抵抗を足す:
(440−210)/25=9.2 Ω
足す抵抗は 9.2−0.8=8.4 Ω
入力は 440×25=11,000 W

④(b)で足した抵抗の損失:
8.4×25×25=5,250 W

⑤(c)磁束を0.8倍にする:
電流は 25÷0.8=31.25 A
440−0.8×31.25=415 V
840×(415/420)÷0.8
≒1,038 min−1

読み取り。同じ420 min−1 でも、入力は電圧制御が5,750 W、抵抗制御が11,000 W です。差の5,250 W は、足した抵抗で熱になります。動力に変わるのは、どちらも 210×25=5,250 W。抵抗制御では、入力の半分も動力になっていません。

(c)では、速さが840 min−1 から約1,038 min−1 へ上がりました。ただし、同じトルクを出すのに、電流が25 A から31.25 A に増えています。電流を25 A に抑えるなら、出せるトルクは0.8倍の約95.5 N·m までです。界磁を弱めて速くすると、そのぶん出せるトルクは小さくなります。

逆に磁束を1.1倍に強めると、電流は 25÷1.1≒22.73 A、逆起電力は約421.8 V で、速さは 840×(421.8/420)÷1.1≒767 min−1。遅くなります。

電圧を変える装置

電圧制御には、直流の電圧をなめらかに変えられる電源が要ります。協会の講座に出てくる方式を並べます。

方式 電圧の変え方
ワード・
レオナード
直流発電機を、電動機の
電源に使う。
静止
レオナード
交流電源を、サイリスタの
変換器で直流に変える。
点弧の位相で、電圧を
調整する。
直流
チョッパ
直流電源を、半導体の
スイッチで入り切りする。
オンとオフの時間の割合で、
平均の電圧を変える。

講座は、静止レオナード方式の長所として、ワード・レオナード方式とくらべて応答が速いこと、効率がよいこと、回転する部分がないので騒音が少なく、保守がしやすいことを挙げています。試験センターの公開問題では、静止レオナード方式は電圧制御法の一種で、主に他励電動機に用いられ、広い範囲の速度制御ができる、とされています。直流チョッパは、抵抗制御とくらべて、可変抵抗器での電力の損失がありません。使われる先として講座が挙げるのは、電気鉄道や電気自動車です。回路の中身は、パワーエレクトロニクスのテーマです。

電車の直巻電動機には、直並列制御という方法もあります。何台かの電動機を、遅いときは直列に、速いときは並列につなぎかえて、1台あたりの電圧を変えます。電圧が段階的にしか変わらないので、抵抗制御と組み合わせて使います。

逆転と制動

トルクの向きは、磁束の向きと電機子電流の向きで決まります(フレミングの左手の法則)。回る向きを逆にするには、どちらか一方だけを逆にします。両方を逆にすると、トルクの向きは元のままです。直巻電動機は、電源の極性を入れかえても、磁束と電機子電流がいっしょに逆になるので、回る向きが変わりません。試験センターの公開問題では、逆転には、応答の速い電機子電流の向きを変える方法が一般に使われる、とされています。

電動機を止めたり、速さを落としたりするのが制動です。電動機と発電機はつくりが同じなので、回っている電動機を発電機として働かせれば、回転を妨げる向きのトルクが出ます。協会の講座は、電気的な制動を2つに分けています。

方法 発電した電力の行き先
発電制動 電動機を電源から切り離し、
抵抗につなぐ。
電力は、抵抗で熱になる。
回生制動 電源につないだまま、
逆起電力を端子電圧より
高くする。
電力は、電源へ戻る。

電動機と発電機が入れかわる速さの計算は、直流機の構造と原理の計算例4にあります。

損失と効率

入力と出力の差が、損失です。JIS C 4034-2-1(単一速度三相かご形誘導電動機の損失及び効率の算定方法、2011年版)は、全損失を入力と出力の差と定め、固定損(鉄損・摩擦損・風損の合計)、負荷損(巻線の抵抗による損失)、漂遊負荷損の和としています。この規格が扱うのは誘導電動機ですが、直流機の計算でも、損失を「負荷で変わるもの」と「変わらないもの」に分けるところは同じです。

損失の分け方

損失 中身と、負荷との関係
電機子の
銅損
RaIa2
電機子電流の2乗で増える。
界磁の
銅損
分巻と他励は V×If。
端子電圧が一定なら、
負荷によらず一定。
直巻は RsI2 で、
負荷とともに増える。
鉄損 電機子鉄心の、
ヒステリシス損と渦電流損。
磁束と速さが同じなら一定。
機械損 軸受の摩擦損と、風損。
速さが同じなら一定。

分巻や他励の電動機を、端子電圧と界磁電流を変えずに使うと、速さもほとんど変わりません。そのあいだ、鉄損・機械損・界磁の銅損は、ほぼ一定とみなせます。負荷で大きく変わるのは、電機子の銅損だけです。鉄損が出るわけは、電気材料の種類と特性の節「鉄心材料と鉄損」で扱っています。ブラシで生じる損失と漂遊負荷損は、この記事の計算には入れていません。試験センターの公開問題の計算にも、ブラシの電圧降下は無視できるものとする、という断り書きがついています。

効率

η=出力/入力×100[%]

電動機:(入力−損失)/入力

発電機:出力/(出力+損失)

電動機と発電機で式の形を変えるのは、電気の側の電力が、電圧×電流ですぐ求まるからです。電動機は電気の入力から損失を引いていき、発電機は電気の出力に損失を足していきます。

計算例6|電力の流れを追う

設定。計算例3の分巻電動機が、端子電圧440 V、電源からの電流26 A、界磁電流1 A、回転速度840 min−1 で運転している。電機子回路の抵抗は0.8 Ω、鉄損と機械損の合計は500 W とする。入力から軸の出力までを順に追い、効率を求める。次に、同じ機械を分巻発電機にして、440 V で負荷へ24 A を送るときの効率を求める。鉄損と機械損は、同じ500 W とする。

① 電動機の入力:
440×26=11,440 W

② 界磁の銅損:
440×1=440 W

③ 電機子の銅損:
0.8×25×25=500 W

④ 動力に変わる電力:
11,440−440−500=10,500 W

⑤ 軸の出力:
10,500−500=10,000 W

⑥ 電動機の効率:
10,000/11,440×100≒87.4%

⑦ 発電機の出力:
440×24=10,560 W

⑧ 発電機の損失の合計:
440+500+500=1,440 W

⑨ 軸からの入力:
10,560+1,440=12,000 W

⑩ 発電機の効率:
10,560/12,000×100=88.0%

読み取り。④の10,500 W は、逆起電力×電機子電流の 420×25 と同じ値です。電機子の中で動力に変わった電力から、鉄損と機械損を引いたものが、軸の出力になります。軸のトルクは 10,000/87.96≒113.7 N·m で、計算例3の119.4 N·m より約5.7 N·m 小さくなります。この差が、鉄損と機械損に打ち勝つのに使われるトルクです。

発電機は、流れが逆です。軸から入った12,000 W のうち、鉄損と機械損の500 W を除いた11,500 W が、電機子で電力に変わります(起電力×電機子電流の 460×25 と同じ)。そこから電機子の銅損500 W と界磁の銅損440 W を引いた10,560 W が、負荷に届きます。

負荷と効率

計算例6の分巻電動機で、負荷だけを変えてみます。界磁の銅損440 W と、鉄損・機械損の500 W は、変わらないものとします。

電機子
電流
入力 損失 効率
6.25 A 3,190 W 約971 W 69.6%
12.5 A 5,940 W 1,065 W 82.1%
25 A 11,440 W 1,440 W 87.4%
31.25 A 14,190 W 約1,721 W 87.9%

負荷が軽いと、効率が大きく落ちます。6.25 A のときの損失約971 W のうち、940 W は、負荷で変わらない損失です。入力が小さくなっても、この940 W は減りません。負荷が増えると、今度は電機子の銅損が、電流の2乗で増えていきます。電機子の銅損が940 W に並ぶのは約34 A のときで(0.8×34×34≒925 W)、効率の伸びは、そのあたりで止まります。

軸の出力が0のときも、電流は0になりません。鉄損と機械損の500 W は、電機子が電力を動力に変えてまかない続けるからです。この機械なら、電機子電流は約1.14 A です(439 V×1.14 A≒500 W)。界磁の1 A と合わせて、約2.1 A が流れます。これが無負荷電流です。速さは約878 min−1 で、計算例3で電流を0として出した880 min−1 より、わずかに遅くなります。

試験センターの公開問題の計算は、6問のうち5問が、損失を電機子巻線の銅損だけとする条件つきでした。その条件なら、入力は VIa、出力は EIa なので、効率は E/V です。計算例6の数字で、界磁の銅損も鉄損も機械損もないとすれば、420/440≒95.5% になります。この形の計算は、直流機の構造と原理のミニテスト第1回の第4問で試せます。

取り違えやすい点の整理

項目 こう考える
分巻の
電機子電流
外の電流と同じではない。
発電機は界磁電流を足し、
電動機は引く。
直巻の
電圧降下
界磁巻線の抵抗も、
電機子と直列に入る。
電圧変動率
の分母
定格電圧。
無負荷の電圧ではない。
分巻発電機
の下がり
他励より大きい。
界磁電流まで減るから。
分巻電動機
の速さ
負荷が増えると、
少しだけ下がる。
上がるのではない。
直巻の
トルク
電流の2乗に比例するのは、
飽和するまで。
飽和すれば電流に比例。
磁束と速さ 逆に動く。
弱めると速く、
強めると遅くなる。
抵抗制御 速さは変えられるが、
足した抵抗で
電力が熱になる。
分巻の
界磁の銅損
端子電圧が一定なら、
負荷で変わらない。
2乗で増えるのは
電機子の銅損。
効率の式 電動機は入力から引く。
発電機は出力に足す。
無負荷の
電流
0ではない。
鉄損と機械損のぶんが
流れている。

理解度チェック

確認問題を3問置きます。どれも、この記事の計算例と表から解けるように、当サイトで用意しました。解答欄には、選択肢ごとに、どこで取り違えるとその値になるのかを書いてあります。

確認1|分巻発電機の起電力

分巻発電機が、端子電圧110 V で負荷に45 A を送っている。界磁回路の抵抗は22 Ω、電機子回路の抵抗は0.3 Ω である。ブラシの電圧降下と電機子反作用を無視すると、誘導起電力は何 V か。いちばん近い値を選べ。

  1. (1)95
  2. (2)110
  3. (3)122
  4. (4)123.5
  5. (5)125

確認2|界磁を弱めたときの速さ

他励直流電動機が、端子電圧300 V、電機子電流20 A、回転速度1,440 min−1 で運転している。電機子回路の抵抗は0.6 Ω である。端子電圧を変えずに界磁電流を減らして、磁束を0.8倍にした。負荷のトルクが変わらないとき、回転速度は何 min−1 になるか。ブラシの電圧降下と電機子反作用は無視して、いちばん近い値を選べ。

  1. (1)1,152
  2. (2)1,425
  3. (3)1,440
  4. (4)1,781
  5. (5)1,800

確認3|特性と運転

直流機の特性と運転について、次の(1)〜(5)のうち、誤っているものはどれか。

  1. (1)分巻電動機は、端子電圧と界磁電流を一定に保てば、負荷が重くなっても回転速度が少ししか下がらない。
  2. (2)界磁を強めて磁束を増やすと、端子電圧が同じでも、電動機の回転速度は上がる。
  3. (3)直巻電動機のトルクは、磁束が飽和していないあいだ、電流の2乗に比例する。
  4. (4)抵抗制御は、電機子回路に直列に入れた抵抗が電力を熱に変えるので、効率が低い。
  5. (5)分巻発電機は、磁極に残っている磁束による小さな起電力をもとに、端子電圧を立ち上げる。

まとめと次に読むところ

  • 他励は別の電源、分巻は並列、直巻は直列、複巻は両方。界磁電流の出どころが違う。
  • 分巻の電機子電流は、発電機が I+If、電動機が I−If。直巻は、界磁巻線の抵抗が直列に加わる。
  • 発電機の端子電圧の下がりは、他励より分巻が大きい。電圧変動率は (V0−Vn)/Vn×100。
  • 分巻発電機は、残留磁束による小さな起電力から立ち上がる。
  • 分巻と他励の電動機は、速さがほぼ一定で、トルクは電流に比例する。
  • 直巻電動機は、飽和するまでトルクが電流の2乗に比例する。負荷が軽いと速さが上がりすぎるので、無負荷にしない。
  • 速さは、電圧・磁束・抵抗で変える。磁束を弱めると速くなる。抵抗制御は損失が大きい。
  • 電動機の軸の出力は、EIa から鉄損と機械損を引いたもの。効率は、電動機が (入力−損失)/入力、発電機が 出力/(出力+損失)。

演習と、前後のテーマ

リンク先と、根拠にした資料は、2026年10月6日に開いて中身を読んでいます。問いの回数は、試験センターのサイトにある機械科目の問題を、令和4年度上期から数えて9回分読んで出した数です。静止レオナード方式の位置づけ、逆転の方法、界磁電流と回転速度の関係、直巻電動機の始動トルクと用途、未飽和という条件、分巻電動機が定速度電動機と呼ばれること、送風機の駆動、和動複巻と差動複巻、分巻発電機の励磁の確立、直巻発電機と磁気飽和、直巻電動機の極性と回る向きは、この9回分の該当する問いを、公式の解答と突き合わせ、正しい側の記述であることを見てから使いました。問題の文章は、この記事には写していません。4種類のつなぎ方と回路の式、無負荷飽和曲線、分巻発電機の起電力が立ち上がる過程、外部特性と複巻の分類、速度特性とトルク特性、3つの速度制御法と界磁調整器の入れ方、直並列制御、発電制動と回生制動、レオナード方式とチョッパ方式は、上にリンクした日本電気技術者協会の講座3本(「音声付き電気技術解説講座」の電気機器の分野)が根拠です。過速度と最大安全運転速度は JIS C 4034-1(1999年版)、損失の定義は JIS C 4034-2-1(2011年版)から取りました。JIS の本文は、規格を載せている公開サイトで読みました。規格の原文は、日本産業標準調査会の JIS検索で、利用者登録をして読めます。JIS は改正で中身が変わることがあります。仕事で使うなら、いちばん新しい版にあたってください。電圧変動率の式は、協会の講座「変圧器の電圧変動率と損失及び効率計算」にある変圧器の定義と同じ形で、直流発電機に当てはめて書きました。速度変動率の式、電圧制御と界磁制御の使い分け、ベルト掛けの説明は、本文の式から筋道を立てて書いたもので、上の資料に同じ文があるわけではありません。計算例と確認問題の数値は、本文の式から計算しました。書き手は、電験三種を独学で勉強している受験者です。直流機を運転したり保守したりした経験をもとにした記事ではありません。

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