結論:変圧器は「電圧を自由に変える」電力の要
変圧器(トランス)は、交流の電圧を上げたり下げたりするための装置です。発電所→送電→配電→需要家まで、何度も電圧を変えて電力を届けるため、電力系統のあらゆる場所で使われています。
🏗️ 構造
鉄心+巻線
回転部分なし(静止器)
🔄 原理
電磁誘導で
一次側→二次側へ
エネルギーを伝達
🔢 巻数比
巻数の比で
電圧と電流の比
が決まる
変圧器の構造
基本構成
変圧器は主に鉄心と巻線から構成されます。直流機や誘導電動機のように回転する部分がない静止器です。
| 部品 | 役割 | 材料 |
|---|---|---|
| 鉄心 | 磁束の通り道(磁気回路) | けい素鋼板の積層体。鉄損を低減するため薄い板を重ねる |
| 一次巻線 | 電力を受け取る側 | 絶縁された銅線 |
| 二次巻線 | 電力を送り出す側 | 絶縁された銅線 |
鉄心の構造
| 種類 | 特徴 | 用途 |
|---|---|---|
| 内鉄形 | 鉄心が巻線の内側にある。巻線が鉄心を囲む | 大容量変圧器 |
| 外鉄形 | 鉄心が巻線の外側を囲む。漏れ磁束が少ない | 小〜中容量 |
冷却方式
変圧器は損失による発熱を冷却する必要があります。
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 油入自冷式 | 最も一般的。絶縁油の自然対流で冷却 |
| 油入風冷式 | 油入+ファン(送風機)で強制冷却 |
| 乾式 | 油を使わず空気で冷却。ビル内の受変電設備に使用 |
| モールド形 | 巻線をエポキシ樹脂で固めた乾式。防火性が高い |
変圧器の原理
電磁誘導による変圧
一次巻線に交流電圧を加えると、鉄心に交番磁束が発生します。この磁束が二次巻線を貫くことで、二次側に誘導起電力が生じます。これがファラデーの電磁誘導の法則です。
誘導起電力
E = 4.44 fNφm [V]
f:周波数 [Hz]、N:巻数、φm:最大磁束 [Wb]
一次側も二次側も同じ鉄心を通る同じ磁束 φm で誘導されるので、次の関係が成り立ちます。
巻数比と電圧比
V1V2 = N1N2 = a(巻数比・変圧比)
ポイント:巻数が多い方が高電圧、少ない方が低電圧です。N1 > N2 なら降圧変圧器(ステップダウン)、N1 < N2 なら昇圧変圧器(ステップアップ)です。
理想変圧器
理想変圧器の3つの条件
- 鉄損ゼロ(ヒステリシス損・渦電流損なし)
- 銅損ゼロ(巻線の抵抗がゼロ)
- 漏れ磁束ゼロ(すべての磁束が一次・二次巻線を貫く)
理想変圧器では損失がないので、入力 = 出力 です。
理想変圧器の関係式
V1V2 = N1N2 = a (電圧比 = 巻数比)
I1I2 = N2N1 = 1a (電流比 = 巻数比の逆数)
V1I1 = V2I2 (入力 = 出力)
覚え方:「電圧は巻数に比例、電流は巻数に反比例」。電圧を上げると電流は下がる。V × I(= 電力)は変わらない。これが変圧器の基本です。
【練習問題①】変圧比の計算
【問題】一次巻線 2,000 回、二次巻線 100 回の変圧器がある。一次側に 6,600 V を加えたとき、二次側の電圧 [V] を求めよ。
【練習問題②】電流の計算
【問題】上の変圧器の二次側に 33 A の電流が流れている。一次側の電流 [A] を求めよ(理想変圧器とする)。
三相変圧器の結線方式
主な結線方式
| 結線方式 | 線間電圧と 相電圧の関係 |
特徴 |
|---|---|---|
| Y-Y 結線 | VL = √3 Vp | 中性点を接地できる。第3調波の問題あり |
| Δ-Δ 結線 | VL = Vp | 第3調波を環流で処理。1台故障→V結線で運転可 |
| Y-Δ 結線 | 一次Y、二次Δ | 降圧に最適。送電系で広く使用。一次に中性点あり |
| Δ-Y 結線 | 一次Δ、二次Y | 昇圧に最適。発電所から送電線への昇圧に使用 |
V結線
Δ-Δ結線の変圧器3台のうち1台が故障したとき、残りの2台で三相電力を供給できる方式がV結線です。
V結線の利用率
利用率 = V結線の出力Δ結線の出力 = √33 = 1√3 ≈ 57.7%
Δ-Δ結線の1/√3 ≈ 57.7%の容量しか出せません。しかし、停電を避けるための緊急対応としては非常に有効です。
【練習問題③】V結線の出力
【問題】定格容量 100 kVA の単相変圧器3台でΔ-Δ結線の三相変圧器を構成していた。1台が故障しV結線にした場合、三相出力 [kVA] はいくらになるか。
変圧器の極性と並行運転
極性(加極性・減極性)
変圧器の端子の電圧の方向を極性といいます。2台以上の変圧器を並行運転するときは、極性を合わせる必要があります。日本の変圧器は減極性が標準です。
並行運転の条件
- 極性が一致していること
- 変圧比が等しいこと
- %インピーダンスが等しいこと
- 各変圧器の抵抗とリアクタンスの比が等しいこと
試験のコツ:「極性・変圧比・%Z」の3つは並行運転の必須条件としてよく出題されます。容量は同じでなくてもOKです(%Zが同じなら容量に応じて負荷分担)。
理解度チェック
【第1問】
変圧器の誘導起電力 E = 4.44fNφm において、誘導起電力に影響しないものはどれか。
(1) 周波数 (2) 巻数 (3) 最大磁束 (4) 鉄心の材質 (5) 巻数と磁束の積
【第2問】
巻数比 a = 20 の変圧器で、一次側に 6,600 V を加えた。二次側の電圧 [V] はいくらか。
(1) 110 (2) 220 (3) 330 (4) 440 (5) 660
【第3問】
Δ-Δ結線の変圧器(単相100kVA × 3台)をV結線にした場合の出力 [kVA] に最も近いものはどれか。
(1) 100 (2) 141 (3) 173 (4) 200 (5) 300
【第4問】
変圧器の並行運転の条件として、必要でないものはどれか。
(1) 極性が等しい
(2) 変圧比が等しい
(3) 定格容量が等しい
(4) %インピーダンスが等しい
(5) 抵抗とリアクタンスの比が等しい
まとめ
- 構造:鉄心(けい素鋼板積層)+ 一次巻線+二次巻線の静止器
- 原理:E = 4.44fNφm(電磁誘導)
- 巻数比:V1/V2 = N1/N2 = a。電圧は巻数に比例、電流は反比例
- 理想変圧器:入力=出力(V1I1 = V2I2)
- 結線方式:Y-Y、Δ-Δ、Y-Δ、Δ-Y。降圧にはY-Δ、昇圧にはΔ-Y
- V結線:2台で三相運転。利用率 = 1/√3 ≈ 57.7%
- 並行運転:極性・変圧比・%Z・R/X比が一致。容量は不問
次の記事では、「変圧器の等価回路と計算」を学びます。電圧変動率や効率の計算に進みましょう。
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