「電力系統の保護と安定」のミニテスト第2回(全5問)です。この回は変圧器の保護・過渡安定度の向上策・187 kV 以上の接地方式・保護協調・直接接地と非接地の比べ方を、1問ずつ短く確かめます。計算の問題は第1回にあります。
テストの使い方
まず自分で答えを考えてから「解答を見る」をタップしてください。間違えた問題は解説記事に戻って確認すると効果的です。
第1問
容量の大きい変圧器で、巻線の短絡のような内部の事故を見つけるために、ふつう使われる継電器(リレー)はどれか。
(1)距離継電器
(2)過電流継電器
(3)比率差動継電器
(4)周波数低下継電器(UFR)
(5)地絡過電圧継電器(OVGR)
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正解:(3)比率差動継電器
変圧器の一次側と二次側の電流を、変流器(CT)で同じ大きさにそろえて比べます。負荷の電流も、外で起きた事故の電流も、入った分だけ出ていくので、差は出ません。差が出るのは、内部で事故が起きたときです。
(1)送電線の保護に使います。自分の端の電圧と電流から、事故点までの距離を見ます(第1回の第5問)。(2)電流の大きさで判定します。容量の小さい変圧器はこれで守り、容量が大きくなると、事故を見つける力の高い差動の方式にします。(4)系統の周波数が大きく下がったときに、負荷の一部を切り離します。(5)零相電圧から、系統のどこかで地絡が起きたことを知ります。
名前の「比率」は、変圧器を通り抜ける電流が大きいほど動きにくくする工夫です。CT の特性の違いやタップ切換で出る小さな差では、動かないようにしています。電源を入れた瞬間の励磁突入電流には、別の対策を使います。差の電流に第2調波が多く含まれていたら、動作を止めます(解説記事の「保護リレーの役割分担」)。
第2問
送電線で短絡事故が起きたあとも、発電機が同期を保てるようにする対策(過渡安定度の向上策)として、最も適切なものはどれか。
(1)送電線の抵抗を小さくする
(2)事故を速く切り離す(高速度遮断)
(3)送電線のリアクタンスを大きくする
(4)変電所に避雷器を増やす
(5)負荷の力率を1に近づける
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正解:(2)事故を速く切り離す(高速度遮断)
事故のあいだは、発電機の送り出せる電力が減ります。タービンから受ける力との差で発電機は加速し、相差角が開きます。開きは、事故の続いた時間の2乗に比例します。解説記事の計算例4の設定では、0.07 s で切れば同期に戻り、0.20 s では脱調(同期が外れること)しました。
(1)損失を減らす対策です。送れる電力の上限を決めるのは、抵抗ではなくリアクタンスです。(3)逆です。リアクタンスを大きくすると、送れる電力の上限が下がり、同期を保ちにくくなります。(4)避雷器は、雷などの異常電圧から機器の絶縁を守る装置です。事故のあとの加速は抑えません。(5)ふだんの線路の電流と損失を減らす対策です。
電気学会の用語解説が過渡安定度の向上策に挙げているのは、事故点を速く切ることのほか、発電機の速応励磁、制動抵抗、高速度再閉路です。
第3問
日本の187 kV 以上の送電系統で使われている中性点接地方式はどれか。
(1)非接地方式
(2)消弧リアクトル接地方式
(3)抵抗接地方式
(4)直接接地方式
(5)補償リアクトル接地方式
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正解:(4)直接接地方式
187 kV 以上の系統は、すべて直接接地方式です(日本電気技術者協会の解説講座)。1線地絡のとき、健全な相の電圧上昇が30%以下に収まるので、線路や機器の絶縁を減らせます。電圧が高いほど、上がる電圧の大きさも大きいので、抑える効果が大きくなります。
(1)6.6 kV の配電系統で使われます。(2)ほとんどが架空送電線でできた系統に使い、地絡のアークを自然に消します。(3)22〜154 kV で最も広く使われます。(5)大都市の地中送電系統で、ケーブルの充電電流を打ち消します。
直接接地は、地絡電流が数万 A になることもあり、通信線への誘導が大きくなります。そのかわり感度の高いリレーが使えるので、数サイクルのうちに切って、誘導の続く時間を短くしています。非接地の √3 倍との比べ方は、第1回の第2問にあります。
第4問
系統のあちこちに置いた保護リレーが、事故点にいちばん近い遮断器だけを動かすように、動作する大きさと時間をそろえておくことを何というか。
(1)保護協調
(2)速応励磁
(3)高速度再閉路
(4)力率改善
(5)自動電圧調整
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正解:(1)保護協調
事故点に近いリレーほど速く、電源に近いリレーほど遅く動くように、動作する電流の大きさと時間をそろえます。切り離すのは事故の区間だけになり、停電の範囲を小さくできます。電源側のリレーが先に動くと、事故のない区間まで停電します。
(2)発電機の内部の電圧をすばやく上げて、送れる電力の上限を引き上げることです。(3)切った送電線を、1秒以内に自動で入れ直すことです(第3回の第3問)。(4)コンデンサなどで無効電力を補い、線路の電流を減らすことです。(5)発電機の端子の電圧を、決めた値に保つことです。
電源側のリレーは、遅く動くだけで、不要なわけではありません。近いほうの遮断器が切れなかったときに、時間をおいて代わりに切ります(後備保護)。時間の差の積み上げ方は、変電所の保護装置の計算例3にあります。
第5問
1線地絡が起きたときの、直接接地方式と非接地方式を比べる。正しい記述はどれか。
(1)直接接地方式は地絡電流が小さく、非接地方式は大きい
(2)直接接地方式は健全相の電圧上昇が大きく、非接地方式は小さい
(3)直接接地方式は地絡電流が大きく、健全相の電圧上昇が小さい
(4)非接地方式は地絡電流が大きく、健全相の電圧上昇も大きい
(5)どちらの方式でも、地絡電流と電圧上昇に差はない
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正解:(3)直接接地方式は地絡電流が大きく、健全相の電圧上昇が小さい
地絡電流と、健全な相の電圧上昇は、逆向きに動きます。
直接接地:電流は数万 A になることもある。電圧上昇は30%以下
非接地:電流は対地静電容量を通る充電電流だけ。電圧は、完全地絡で √3 倍
(1)電流の大小が逆です。(2)電圧上昇の大小が逆です。(4)後半は正しく、前半が誤りです。非接地は、電流が中性点から戻れないので、小さくなります。(5)差が大きいので、系統の電圧によって方式を使い分けています。
6.6 kV の非接地系統の地絡電流は、第1回の第3問の値で約7.9 A です。直接接地の数万 A とは、数千倍から1万倍ほどの開きがあります。中性点の抵抗を0から大きくしていくと、直接接地から抵抗接地、非接地へとつながります(第1回の第1問)。
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