始動法は、電流を抑えるだけでは選べません。負荷を回し始めるトルクも必要です。速度制御では、軸の回転数と同期速度、軸に必要な動力と電源から受け取る電力を分けて考えます。
このミニテストでは、条件を読み取って方式や設定値を選ぶ練習をします。全5問に答えてから解説を開き、計算が合うだけでなく、ほかの選択肢が成立しない理由まで確認しましょう。
電験三種「機械」の学習用に作った独自問題です。各問は別の装置を想定しています。基礎から確認したい場合は、誘導電動機の始動法と速度制御の解説を参照してください。
誘導電動機の始動法と速度制御 ミニテスト
第1回 第2回 第3回
第1問|電流上限と始動トルクを同時に満たす方式
指定の三相電源でΔ運転でき、Y-Δ切替用の端子を備えたかご形電動機を考える。停止状態でΔ直入れした場合、線電流は480 A、始動トルクは320 N·mである。
電源側の線電流を280 A以下に抑え、停止時の負荷抵抗トルク150 N·mを上回ることを条件とする。次の候補のうち、停止時のこの2条件を満たすものをすべて含む選択肢はどれか。
- A:Y結線で始動する。
- B:Δ結線のまま、電動機端子の線間電圧を電源線間電圧の0.75倍にするリアクトル始動。
- C:Δ結線のまま、同じ電圧比0.75にする始動補償器。
電源電圧・周波数、停止時の巻線インピーダンスは共通。飽和・電源電圧降下・投入直後の過渡現象を無視し、補償器は励磁電流と損失を無視できる理想変圧器として扱う。
- (1)Aだけ
- (2)Bだけ
- (3)Cだけ
- (4)AとC
- (5)BとC
正解:(3)Cだけ
まず電源から流れ込む線電流を求め、その後でトルクを判定します。電圧比を k とすると、BとCの電動機側線電流はともに k×480=360 A。ただし電源側の値は異なります。
- A:Yの相電圧はΔの1/√3。相電流も1/√3ですが、Δの線電流は相電流の√3倍なので、線電流の比は1/3です。480/3=160 A、320/3≈106.7 N·m。電流は条件内でも、トルクが足りません。
- B:電源と電動機が直列なので、電源側も360 Aです。トルクは 320×0.752=180 N·m。負荷は回せる条件ですが、電流上限を超えます。
- C:変圧器で電圧を下げた分、電源側電流は電動機側より小さくなります。0.75×360=270 A。トルクはBと同じ180 N·mなので、両条件を満たします。
補償器では理想変圧器の入出力関係から、電源側電流=k×電動機側電流。電動機側電流も全電圧時の k 倍なので、電源側は k2倍です。リアクトルに、この変圧器の電流換算を当てはめてはいけません。
- (1):Aは160 Aだけを見れば選べますが、106.7 N·mでは負荷の150 N·mに負けます。
- (2):Bは180 N·mを出せても、360 Aが上限280 Aを80 A超えます。
- (3):Cは270 Aで上限内、180 N·mで負荷を上回ります。条件に合うのはこれだけです。
- (4):Cは合っていますが、トルク不足のAを含めています。
- (5):Cに加え、電流超過のBまで含めています。
ここで選べるのは停止時の条件に合う候補です。実際に所定速度まで加速できるかは、途中の速度域の負荷トルク、加速時間、発熱、切替時の電流も調べます。また、電圧比を指定しないまま「電源電流とトルクがともに1/3だからY-Δ」とは特定できません。補償器でも k=1/√3 なら同じ比になります。
第2問|目標の軸速度から周波数と電圧を逆算する
8極の誘導電動機を、軸速度792 min−1で運転したい。この運転点のすべりを0.04と見込む。
インバータは基底周波数60 Hzで基本波線間電圧240 Vとし、基底周波数以下ではV/f一定とする。求める運転点では電圧降下の補償を無視でき、電流・機械強度などの許容範囲内である。
必要な出力周波数と基本波線間電圧の組合せはどれか。
- (1)55 Hz、220 V
- (2)52.8 Hz、211.2 V
- (3)27.5 Hz、110 V
- (4)55 Hz、240 V
- (5)55 Hz、約262 V
正解:(1)55 Hz、220 V
同期速度 Ns は磁界の回転数で、軸速度 N より大きい値です。すべりの定義 s=(Ns−N)/Ns を変形すると N=(1−s)Ns。軸の792を同期速度の式に直接入れず、先に割り戻します。
Ns=792/(1−0.04)
=825 [min−1]
f=pNs/120
=8×825/120=55 Hz
ここで p は極数、f は周波数です。電圧と周波数の比は 240/60=4 V/Hz なので、V=4×55=220 V。求めた55 Hzは基底60 Hz以下で、指定のV/f一定の範囲に入っています。
- (1):120×55/8=825 [min−1]、825×0.96=792 [min−1] と戻せます。220/55=4 V/Hz も一致します。
- (2):792を同期速度として 8×792/120=52.8 Hz とした値です。すべりが0.04なら、この設定での軸速度は 792×0.96=760.32 [min−1] にとどまります。
- (3):8極を4極として計算しています。「極数」と、極数を2で割った「極対数」を取り違えた値です。
- (4):周波数は正しいものの、電圧を基底時の240 Vに据え置いています。V/fは約4.36 V/Hzとなり、指定の4 V/Hzではありません。
- (5):240×60/55≈261.8 V と、電圧を周波数に反比例させています。V/f一定では、周波数を下げた分だけ電圧も下げます。
この関係が磁束をほぼ一定にするのは、巻線の電圧降下を無視できる範囲です。低周波数では抵抗による電圧降下を補う必要があり、端子電圧のV/fだけで磁束を判断できません。また、今回の電圧上限を240 Vとすれば、60 Hzを超えて比を一定にするには上限超過が必要です。上限に達した後はV/fが下がり、同じトルク特性を保てるとは限りません。
実機のすべりは負荷と制御方式で変わります。55 Hzという設定だけで、どんな負荷でも軸速度792 min−1になるという意味ではありません。
第3問|抵抗を増やしすぎると始動トルクはどうなるか
巻線形誘導電動機の1相当たりの二次巻線抵抗は0.12 Ωである。外部抵抗なしでは、最大トルク185 N·mがすべり1/6で生じる。
二次の各相に外部抵抗を追加して、停止時のトルクを最も大きくしたい。次のうち、追加する1相当たりの抵抗値はどれか。抵抗値はすべて同じ二次側換算値とする。
電圧・周波数・漏れリアクタンスなどを一定とする線形の近似等価回路を使う。一次抵抗、磁気飽和、温度や表皮効果による定数変化は無視する。
- (1)0 Ω
- (2)0.12 Ω
- (3)0.24 Ω
- (4)0.60 Ω
- (5)1.32 Ω
正解:(4)1相当たり0.60 Ωを追加する
抵抗の変更前後で「二次合成抵抗/すべり」を同じにすると、同じトルクになります。これは比例推移です。山の高さを変えず、山の位置を停止時の s=1 へ移します。
必要な抵抗倍率=1/(1/6)=6
合成抵抗=0.12×6=0.72 Ω
外部抵抗=0.72−0.12
=0.60 Ω
ここで0.72 Ωは巻線と外部抵抗の合計です。元からある0.12 Ωを差し引いた値が答えになります。
- (1):外部抵抗なしなので、山はすべり1/6のままです。停止時のすべり1と一致しません。
- (2):合計0.24 Ωで元の2倍。山はすべり1/3へ移りますが、停止時までは届きません。
- (3):合計0.36 Ωで元の3倍。山はすべり1/2で、まだ停止時のトルクを最大にはできません。
- (4):合計0.72 Ωで元の6倍。山がすべり1となり、停止時に185 N·mを得られます。
- (5):合計1.44 Ωで元の12倍。数式上の山がすべり2まで移り、通常の電動運転範囲を越えます。抵抗が最も大きくても、始動トルクは最も大きくなりません。
「大きすぎる抵抗で本当に下がるか」を式でも確かめられます。今回の一次抵抗を無視したモデルでは、全漏れリアクタンスを X、二次合成抵抗を R とすると、最大トルク時のすべりは sm=R/X です。外部抵抗なしの値から X=0.12/(1/6)=0.72 Ω と分かります。
停止時のトルク比は、x=R/X と置くと、
Tst/Tmax=2x/(1+x2)
となります。Tst は始動トルク、Tmax は数式上の最大トルクです。1+x2−2x=(x−1)2 は0以上なので、この比は x=1で最大の1になります。
外部抵抗なしなら x=1/6で始動トルクは60 N·m、0.60 Ω追加なら x=1で185 N·m。1.32 Ω追加では x=2なので、185×4/5=148 N·m に下がります。抵抗を増やすと始動トルクが上がるのは、最適値へ近づく範囲です。
1.32 Ω追加のときも数式上の山の高さは185 N·mですが、山はすべり2です。通常の電動運転域 0<s≦1 の中で得られる最大値と区別します。実際の始動抵抗は、始動中に熱を受け持つため、抵抗値だけでなく通電時間や熱容量も必要です。
第4問|速度の3乗を、設備の消費電力に使ってよいか
あるファンを1,200 min−1から900 min−1へ減速する。変更前のファン軸動力は12.8 kW。今回は同一ファン・同一流体で相似な運転点を比較し、必要な軸動力が回転速度の3乗に比例すると仮定する。
電源からファン軸までの総合効率(インバータと電動機を含む)は、変更前80%、変更後75%。この効率に含まない補機が、前後とも別に0.40 kWを消費する。
変更後の、補機を含む設備全体の有効入力電力として最も近いものはどれか。
- (1)5.40 kW
- (2)6.92 kW
- (3)7.15 kW
- (4)4.45 kW
- (5)7.60 kW
正解:(5)7.60 kW
3乗則で求められるのは、まずファンへ渡す軸動力です。電源からの入力は、そこへ駆動機器の損失と補機の消費分を含めて求めます。
速度比=900/1,200=0.75
軸動力比=0.753=0.421875
変更後の軸動力=12.8×0.421875
=5.40 kW
効率は「出力/入力」ですから、入力を求めるときは効率で割ります。
駆動系の入力=5.40/0.75
=7.20 kW
設備全体の入力=7.20+0.40
=7.60 kW
- (1):5.40 kWは変更後の軸動力です。電動機・インバータの損失と、補機の入力を含んでいません。
- (2):変更前の設備入力 12.8/0.80+0.40=16.40 kW に、速度比の3乗を直接掛けると約6.92 kWになります。効率の変化と、減速しても変わらない補機の電力を無視した計算です。
- (3):5.40/0.80+0.40=7.15 kW と、変更前の効率80%を使っています。変更後は指定どおり75%で割ります。
- (4):5.40×0.75+0.40=4.45 kW と効率を掛けています。入力が軸出力より小さくなってしまい、電力の収支が合いません。
- (5):必要な軸動力を変更後の効率で割り、効率に含まない補機の入力を足しています。
この設定で設備入力は16.40 kWから7.60 kWへ減り、削減率は約53.7%です。軸動力の削減率約57.8%とは一致しません。同じ時間運転すれば電力量の削減割合もこの設備入力の比になりますが、運転時間が違えば時間も掛けて比べます。
ここでは3乗則が使える運転点を問題の条件として与えています。実際の設備では必要流量・圧力、ファン効率、管路特性で運転点が変わります。ポンプなら実揚程も影響します。速度の3乗だけから、どの設備でも同じ割合で節電できるとは判断できません。
第5問|減速エネルギーは、どこへ行くか
誘導電動機をインバータで12秒かけて減速した。インバータの入力側はダイオード整流器で、電源回生用の装置は接続していない。直流回路には制動ユニットと制動抵抗器を備える。
この間に回転体から取り出した機械エネルギーは60 kJ。うち電動機とインバータ内部の損失が6 kJで、残りはすべて制動抵抗器で熱になった。直流コンデンサの蓄積エネルギーは減速前後で同じとし、ほかのエネルギーの出入りはない。
制動抵抗器が12秒間に受け持つ平均電力と、この制動の説明として正しいものはどれか。
- (1)平均5.0 kWで、商用電源へ電力を返す電源回生である。
- (2)平均4.5 kWで、戻ってきた電力を抵抗で消費しており、商用電源へは返していない。
- (3)平均5.0 kWで、60 kJすべてを制動抵抗器が消費する。
- (4)平均4.5 kWで、固定子へ直流を流す直流制動を行っている。
- (5)平均4.5 kWで、同じ抵抗器により停止後も軸を確実に保持できる。
正解:(2)平均4.5 kW。抵抗で熱にし、電源へは返していない
抵抗器へ来る前に、機器内部で6 kJが失われています。
抵抗器のエネルギー=60−6
=54 kJ
平均電力=54 kJ/12 s
=4.5 kW
1 Wは1秒当たり1 Jです。したがってkJを秒で割ればkWになります。エネルギーの流れは「回転体→電動機→インバータ直流回路→制動抵抗器」です。電動機からインバータへ電力が戻ることと、その先の商用電源まで戻ることを区別します。
- (1):内部損失6 kJを引かず、60/12=5.0 kWとしています。加えて、問題の回路には電源へ返す経路がありません。
- (2):抵抗器の54 kJを12秒で割っています。機械エネルギーを電気に変えて制動していますが、その電力は抵抗で熱になります。
- (3):抵抗で消費するという方向は合っていますが、すでに機器内部で消費された6 kJを二重に数えています。
- (4):平均電力の値だけは合っています。直流回路に抵抗器が接続されていることと、固定子へ直流電流を流して制動することは別です。
- (5):減速時のエネルギーを処理する機能から、停止保持は保証できません。軸を止めた位置に保持する要件は別に検討します。
電源回生を行うには、対応した回生コンバータや電源回生ユニットなどの回路が必要です。通常のダイオード整流器だけでは、直流側から商用電源へ電力を送り返せません。一方、直流制動は静止磁界を作って回転を抑える方法で、これも確実な停止保持を保証する機能ではありません。
計算した4.5 kWはこの12秒間の平均です。この値だけで抵抗器の連続定格を選ぶことはできません。瞬時の制動電力、1回のエネルギー、繰返し頻度、冷却条件と許容値を合わせて確認します。
復習用の整理表
第1問の各比は、同じ電源・同じ停止時条件のΔ直入れを1とした値です。k は、Δ結線の電動機端子線間電圧を電源線間電圧で割った値。表の「電流」は電源側の線電流です。
| 始動方式 |
電流の比 |
トルクの比 |
| Y-ΔのY始動 |
1/3 |
1/3 |
| リアクトル |
k |
k2 |
| 始動補償器 |
k2 |
k2 |
補償器の電動機側線電流は k 倍です。同じ「始動電流」でも測定位置が違うと比が変わるので、問題文に線を引いて確認しましょう。
| 確認する境界 |
取り違えを防ぐ見方 |
| 軸と回転磁界 |
目標の軸速度を1−すべりで割って、同期速度へ戻す。 |
| 外部抵抗と合成抵抗 |
巻線抵抗を含む合計で山の位置を計算。始動トルクは最適値を越えると下がる。 |
| 軸動力と設備入力 |
効率で割って駆動系の入力へ戻し、別の補機の電力を足す。 |
| 直流回路と商用電源 |
電動機から戻った電力を、抵抗で消費するか電源へ送るかは回路構成による。 |
間違えた問題は、計算前に「どこの電流・速度・電力なのか」を一言で書いて解き直してみてください。第3問ではさらに、足す抵抗と、足した後の合計を別々に書くと整理できます。
学習を続ける
根拠を確認できる技術資料
下記は原理と適用条件の確認先です。各問の条件、数値、選択肢と解説はこの教材用に組み立てました。資料の設問・文章・図表を転載したものではありません。
2026年10月15日確認・改訂。公式の試験問題ではなく、適用条件を読み分けるための独自の学習問題5問です。
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