パワーエレクトロニクスの計算は、回路名だけでなく、電圧の基準と負荷の条件から式を選びます。整流した電圧の平均と、抵抗で消費する電力に使う実効値は別の量です。
この第1回は、整流波形・半導体の動作・直流変換・PWMを扱う独自の5問です。まず答えを1つ選び、「解答を見る」で計算と全選択肢の理由を確認してください。
公式の導出から復習する場合はパワーエレクトロニクスの解説記事へ。追加演習はミニテスト第2回・第3回から進められます。
第1問|相電圧から三相ブリッジの出力を求める
平衡した正弦波三相電源を、理想ダイオード6個の三相全波ブリッジで整流する。電源はY結線で、相電圧の実効値が110 V、電源周波数が50 Hzである。
負荷は抵抗だけとし、平滑コンデンサは接続しない。電源インピーダンス、配線の電圧降下、転流の重なりは無視する。出力電圧の平均値と、出力電圧に含まれる脈動の基本周波数の組み合わせはどれか。平均値は小数第1位まででよい。
- (1)約148.6 V、300 Hz
- (2)約257.3 V、300 Hz
- (3)約257.3 V、150 Hz
- (4)約269.4 V、300 Hz
- (5)約99.0 V、100 Hz
第2問|点弧角90°でも抵抗で電力を消費するか
実効値120 Vの正弦波単相電源に、理想サイリスタ4個の単相全制御ブリッジを接続する。負荷は12 Ωの抵抗だけで、コイル、平滑コンデンサ、還流ダイオードは付けない。
正負それぞれの半周期の開始から90°遅らせて適切な対のサイリスタを点弧し、電流は電源電圧の零点で消滅する。素子の電圧降下や転流の重なりを無視すると、負荷電圧の平均値と、抵抗の平均消費電力の組み合わせはどれか。
- (1)0 V、0 W
- (2)約54.0 V、約243 W
- (3)約108.0 V、1200 W
- (4)約54.0 V、600 W
- (5)約84.9 V、600 W
第3問|ラッチング電流と保持電流を読み分ける
通常のサイリスタ(SCR)について、ある温度・試験条件でラッチング電流IL=80 mA、保持電流IH=35 mAとする。GTOではない。以下は同じ条件での動作記録である。
- 十分なゲートパルスで点弧し、アノード電流が100 mAになってからゲートパルスを取り除いた。
- その後、外部回路によってアノード電流を50 mAへゆっくり減らした。
- さらに外部回路で主電流をゼロにし、指定のターンオフ時間を満たす逆バイアスを与えた。その後、ゲート信号なしで順方向電圧を再び加えた。
順方向電圧はブレークオーバ電圧より低く、急な電圧変化による誤点弧もないものとする。この記録について正しい説明はどれか。
- (1)100 mAであっても、ゲートパルスを取り除いた時点で必ずオフになる。
- (2)50 mAは80 mAより小さいので、記録2でオフになる。
- (3)35 mAは、点弧に必要なゲート電流の値である。
- (4)記録3の最後は、順方向電圧を加えるだけでオンに戻る。
- (5)記録2では導通を保ち、記録3の消弧後は順方向電圧を再印加してもオフを保つ。
第4問|同じ通流率の降圧・昇圧を比較する
回路Aは降圧チョッパ、回路Bは昇圧チョッパで、互いに独立している。いずれも直流入力90 V、スイッチの通流率D=0.40で運転する。通流率は1周期のうちスイッチがオンの時間の割合である。
両回路とも損失のない理想回路で、定常状態とする。コイル電流は常に流れる連続電流モードで、出力電圧の脈動は十分小さい。各回路の負荷はそれぞれ360 Wを消費する。
Aの直流出力電圧、Bの直流出力電圧、各回路が電源から取る平均入力電流の組み合わせはどれか。最後の電流は2回路の合計ではない。
- (1)A:36 V、B:150 V、各4.0 A
- (2)A:36 V、B:225 V、各4.0 A
- (3)A:54 V、B:150 V、各4.0 A
- (4)A:36 V、B:150 V、各10 A
- (5)A:150 V、B:36 V、各4.0 A
第5問|PWMの短い平均と交流の周期を区別する
直流電圧280 Vから交流を作る単相フルブリッジインバータを考える。出力電圧が+280 Vと−280 Vの2値を取るバイポーラPWMとし、素子の電圧降下や切替の時間を無視する。
40 Hzの正弦波指令と8 kHzの三角波キャリアを比較して制御している。正弦波指令はキャリアの振幅内にあり、過変調はない。あるキャリア1周期では、+280 Vの時間が65%、−280 Vの時間が35%であった。
そのキャリア1周期の出力電圧の平均値と、出力の目的とする基本波の周波数の組み合わせはどれか。
- (1)182 V、40 Hz
- (2)84 V、8 kHz
- (3)84 V、40 Hz
- (4)0 V、40 Hz
- (5)280 V、40 Hz
解き直しに使う2つの整理表
| 読み分ける量 | どこを見るか |
|---|---|
| 相電圧・線間電圧 | 三相整流の約2.34倍は相実効値、約1.35倍は線間実効値が基準。 |
| 平均値 | 波形を符号付きで時間平均する。PWMでは平均を取る区間も指定する。 |
| 実効値 | 二乗→時間平均→平方根。抵抗の電力は実効値の二乗を抵抗で割る。 |
| 基本波・キャリア | 目的の交流の周期と、その中でパルスを作る速さを分ける。 |
| 式・動作 | 先に確認する条件 |
|---|---|
| 制御整流のcosα | 全制御ブリッジで負荷電流が連続するか。抵抗だけの波形と混同しない。 |
| SCRの導通保持 | 点弧直後はIL、成立後はIH。消弧には回復時間も必要。 |
| 降圧D、昇圧1/(1−D) | 標準回路・定常・コイル電流連続・損失無視。Dはオン時間の割合。 |
| 入出力の電力収支 | 入力側か出力側かを明記。理想回路なら両側の平均電力が等しい。 |
間違えた問題は、数字を入れる前に「どの電圧か」「どの時間の平均か」「電流は連続か」を余白に書いてみてください。第3問では、点弧直後と導通中という時間の順序を追うと、2つの電流の違いが整理できます。
復習と次の演習
- 原理に戻る:パワーエレクトロニクス。整流・素子・位相制御・PWM・チョッパを復習できます。
- 追加問題:パワーエレクトロニクス ミニテスト第2回、第3回。
- 前のテーマ:同期機の計算、同期機の計算ミニテスト第1回。
- 次のテーマ:照明と電熱、照明と電熱ミニテスト第1回。第2問の抵抗の発熱は電熱の計算にもつながります。
原理を確かめる技術資料
回路と動作条件は次の一次資料で確認しています。問題の数値・設定、選択肢、計算過程は本ページ用に作成しました。
- IIT Delhi Virtual Labs:三相ダイオードブリッジ(英語)。6パルスの波形と電圧の定義。教材は誘導性負荷ですが、本問の理想抵抗負荷でも出力電圧は同じ線間電圧の包絡線になります。
- 同:単相全制御ブリッジ(英語)。抵抗負荷と誘導性負荷の波形を比較できます。
- STMicroelectronics AN302:保持電流(英語PDF)、AN303:ラッチング電流(英語PDF)。通常SCRにも適用する定義と、使用条件による変化。
- 日本電気技術者協会「パワーエレクトロニクスの応用」。降圧・昇圧の回路構成と通流率。
- Texas Instruments SLVA061:昇圧回路の解析(英語PDF)。連続・不連続電流の区別と、定常状態の電圧・電流の関係。
- 日本電気技術者協会「インバータ機器(1)基礎」。素子とPWM制御の原理。
2026年10月25日確認・改訂。公式試験問題や資料の図表を転載せず、適用条件を読み分けるための独自問題5問として作成しています。
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