電力

原子力発電と新エネルギー|質量欠損・風力出力の計算【電験三種】

結論から言います。このテーマは暗記だけでは足りません。「何がエネルギーの入口で、どこで電気になるか」を式でたどれるかが分かれ目です。原子力は質量の減りが熱になり、風力は風の運動エネルギーの一部だけが軸を回します。

原子炉のしくみ → 太陽光 → 風力 → 燃料電池の順に、単位をそろえた計算例で確認します。本文の数値例と確認問題は、条件を明示した当サイト独自の学習用設定です。実在設備の仕様値ではありません。

原子力発電の全体像|熱源が原子炉に変わる

原子力発電は、ウラン燃料の核分裂で出た熱で水を蒸気にし、蒸気タービンと発電機で電気にする方式です。蒸気でタービンを回す部分は火力発電と同じ考え方で、燃料を燃やすボイラーの代わりに原子炉が熱を作ります。

ただし「ボイラーが原子炉に変わるだけ」と単純化しすぎると、次の点を見落とします。

  • 燃料の中では核分裂の連鎖反応が続くので、反応の速さそのものを制御する仕組みが要る。
  • 運転を止めても、核分裂生成物の崩壊で熱(崩壊熱)が出続けるため、停止後も冷却が必要
  • 放射性物質を扱うので、系統のどこまでが放射線管理の対象かが型式で変わる。

基本原理は電気事業連合会「原子力発電のしくみ」で図とあわせて確認できます。

燃料の量が桁違いに少ない

公表資料では、100万kW級の発電所を1年間動かすのに必要な燃料は、濃縮ウランで約21トン、石炭では約235万トンと見積もられています(エネ百科 原子力・エネルギー図面集【4-1-01】、資源エネルギー庁資料より作成)。単純な比では10万倍以上です。

この差は、次に見るエネルギーの取り出し方の違いから来ます。燃焼は原子核の外側にある電子の結び付きを組み替える反応で、核分裂は原子核そのものが分かれる反応です。1回あたりに出るエネルギーの桁が違います。

核分裂のエネルギー|減った質量が熱になる

ウラン235(235U)の原子核に中性子が吸収されると、原子核は2つ程度の核に分かれ、同時に2〜3個の中性子が飛び出します。この中性子が次の核分裂を起こす流れが連鎖反応です。

核分裂の前後をすべて足し合わせると、あとの質量の合計が、もとより少しだけ小さくなります。この差を質量欠損 Δm[kg]といい、減った分がエネルギーとして出てきます。

E=Δm c2[J]

Δm:質量欠損[kg]、c:真空中の光の速さ(約3.0×108 m/s)

c2は約9.0×1016と非常に大きいので、わずかな質量の減りでも大きなエネルギーになります。単位は必ずkgで代入してください。gのまま入れると1,000倍ずれます。

計算例|1日の運転で減る質量は何グラムか

電気出力90万kW(900 MW)、発電端熱効率30%で定常運転する発電所を考えます。核分裂で出た熱がすべて原子炉の熱出力になり、他の損失はないという学習用のモデルです。

  1. 熱出力:900 MW÷0.30=3,000 MW=3.0×109 W。
  2. 1日のエネルギー:3.0×109×86,400 s=2.592×1014 J。
  3. 質量欠損:2.592×1014÷(9.0×1016)=2.88×10−3 kg。

つまり1日あたり約2.88 g、1年でも約1.05 kgです。これは「使うウランが2.88 g」ではなく、核分裂したウランのうち、質量として消えた分である点に注意してください。実際には核分裂しなかった分や、装荷したまま取り出す分も含めて燃料は数十トン単位で扱います。

効率の扱いは火力と同じで、発電端出力を熱出力で割ったものが発電端熱効率です。基準のそろえ方は火力発電の仕組みと熱効率で整理しています。

原子炉の構成|4つの材料の役割を分ける

原子炉の中では、材料ごとに役割が分かれています。ここを混ぜて覚えると、選択肢問題で必ず迷います。

材料 役割 代表的なもの
核燃料 核分裂して熱を出す 低濃縮の二酸化ウランなど
減速材 速い中性子を遅くする 軽水、重水、黒鉛
冷却材 熱を炉外へ運び出す 軽水、重水、ガス
制御材 中性子を吸収して反応を抑える ホウ素、カドミウム、ハフニウム

減速材が必要な理由は、核分裂で飛び出す中性子が速すぎるからです。速度が大きい中性子(高速中性子)よりも、周囲の原子と衝突を繰り返して遅くなった中性子(熱中性子)のほうが、ウラン235に吸収されて核分裂を起こしやすくなります。減速材は、中性子を軽い原子核にぶつけて速度を落とす役目です。

軽水は減速の効きが大きい一方、中性子を吸収する割合も無視できません。そのため軽水炉では、天然ウランに約0.7%しか含まれないウラン235の割合を数%程度まで高めた濃縮ウランを使います。中性子の吸収が少ない重水や黒鉛を減速材にする炉では、天然ウランのままでも運転できる型式があります。「軽水だから濃縮が要る」という因果でつながっています。

制御材は制御棒として出し入れするほか、加圧水型では冷却水に溶かしたほう酸の濃度でも反応度を調整します。制御棒を深く挿すほど中性子の吸収が増え、出力は下がります。

BWRとPWR|蒸気をどこで作るかで系統が変わる

日本の商業炉は、減速材と冷却材の両方に軽水を使う軽水炉が中心で、沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の両方が設置されています(エネ百科 図面集【4-1-03】日本の原子力発電所の運転・建設状況)。稼働している基数は時期によって変わるので、最新の数字は出典側で確認してください。

項目 沸騰水型(BWR) 加圧水型(PWR)
蒸気を作る場所 原子炉圧力容器の中 蒸気発生器の2次側
系統の数 1系統(炉水がタービンへ) 1次系と2次系に分離
沸騰の扱い 炉心で沸騰させる 加圧器で高圧に保ち沸騰させない
制御棒の向き 炉心の下から入れる 炉心の上から入れる
ほう酸の運用 通常運転の出力調整には使わない 濃度調整を日常的に使う

BWRでは炉心で発生した蒸気をそのままタービンへ送るため、タービンや復水器も放射線管理の対象になります。炉心上部は蒸気が占めるので、制御棒は下から押し込む構造です。炉心を通る水の流量を変えて出力を調整する方法もあります。

PWRでは1次系の水を加圧器で高い圧力に保ち、沸騰させないまま蒸気発生器へ送ります。蒸気発生器の伝熱管を隔てて2次系の水が蒸気になり、その蒸気がタービンを回します。1次系と2次系が分かれているぶん、タービン側は通常、放射性物質を含みません。

覚え方はシンプルです。B=Boiling(沸騰)で炉内に蒸気、P=Pressurized(加圧)で沸騰させない。「蒸気発生器」「加圧器」という語が出てきたらPWRの系統だと判断できます。

熱効率が火力より低めになりやすい理由

軽水炉の発電端熱効率は、一般に汽力の火力発電より低めになります。原因は原子炉の側にあります。燃料被覆管などの健全性を保つ必要から、炉内で作れる蒸気の温度・圧力は、火力のボイラーほど高くできません。

火力の熱効率の考え方(受熱の平均温度が上がるほど効率は上がる方向にはたらく)を当てはめると、蒸気条件の上限が低いことがそのまま効率の差になります。「原子力は効率が悪い設備だから」ではなく、蒸気を作れる条件が違うからだ、と理由まで押さえてください。

太陽光発電|半導体から直流を取り出す

太陽電池は、p形とn形の半導体を接合したものです。接合部に光が当たると電子と正孔が生まれ、接合部の電界で分けられて電位差が生じます(光起電力効果)。回転する部分がないので、出力は直流です。

項目 内容
原理 pn接合に光を当て、光起電力効果で電圧を得る
出力の形 直流。パワーコンディショナで交流に変換して系統へ
性能表示 標準試験条件(日射1,000 W/m2・素子温度25℃)での出力
弱点 日射で出力が変わる。素子温度が上がると出力は下がる傾向

カタログの「◯kW」は標準試験条件で測った直流出力です。晴天の真昼でも、素子の温度上昇や汚れ、配線・変換の損失があるため、実際の交流出力はふつうこれより小さくなります。逆に、条件を書かずに効率だけを比べても意味がありません。

変換効率は、受けた光の電力に対する出力の割合です。受光面積1.7 m2のモジュールが標準試験条件で340 Wを出すなら、入射は1,000×1.7=1,700 W なので、340÷1,700=0.20(20%)です。結晶シリコン系の市販品はおおむね15〜20%台に収まりますが、製品と世代で変わるため、固定の数字として覚えないでください。

計算例|設備利用率から年間の発電量を見積もる

設備利用率は、定格出力で1年間ずっと運転したと仮定した電力量に対する、実際の発電電力量の割合です。1年は8,760時間とします。

定格5.0 kWの住宅用設備で、設備利用率を13%と見込むと、年間発電量は 5.0×8,760×0.13=5,694 kWh。逆に実績が5,500 kWhだったなら、5,500÷(5.0×8,760)=約12.6%と求められます。日射条件・向き・影・機器の損失で変わる値なので、地域ごとの実績で確認するのが前提です。

pn接合で電気が出る理屈と変換効率の考え方は、MIT OpenCourseWare「Solar Photovoltaics」(英語PDF・13、14枚目)で確認できます。実際の出力が1日のなかでどう動くかは、エネ百科 図面集【3-1-03】太陽光・風力発電の出力変動の実測グラフが分かりやすいです。

風力発電|風のエネルギーを全部は取り出せない

受風面積 A[m2]を、密度 ρ[kg/m3]の空気が速さ v[m/s]で通り抜けるとき、そこを1秒あたりに通過する運動エネルギーは次の式になります。

Pwind=(1/2)ρA v3[W]

ロータ直径 D のとき A=πD2/4

風車が取り出す機械出力:P=Cp×(1/2)ρA v3(Cp:出力係数)

導き方はこうです。1秒間に面積Aを通る空気の質量は ρAv[kg/s]。その運動エネルギーは (1/2)×(ρAv)×v2 なので、まとめると (1/2)ρAv3 になります。v が2つの経路(通る量と速さ)で効くので3乗です。風速が2倍になれば8倍、1.2倍でも1.728倍になります。

ここで大事なのは、この値がそのまま発電できる電力ではないことです。風がすべての運動エネルギーを渡してしまうと、風車の後ろで空気が止まって流れが続かなくなります。理論上の取り出せる割合の上限は16/27、つまり約0.593で、これをベッツ限界と呼びます。実際の風車の出力係数はおおむね0.4〜0.5程度です(MIT OpenCourseWare「Wind Energy」英語PDF・15、22枚目)。さらに増速機や発電機の効率も掛かります。

計算例|直径40 m・風速10 m/sの風車

空気密度1.2 kg/m3、ロータ直径40 m、風速10 m/s、出力係数0.40として求めます。

求める量 計算 結果
受風面積 π×402÷4 約1,257 m2
風のエネルギー 0.5×1.2×1,257×103 約754 kW
機械出力 754×0.40 約302 kW

同じ風車が理論上限で回れたとしても754×0.593=約447 kWで、754 kWにはなりません。また風速が12 m/sに上がれば(1.2)3=1.728倍で約521 kWですが、実機では定格出力を超えないよう羽根の角度などで制御し、強すぎる風では停止します。「風速の3乗に比例」は、この制御が働く範囲での話だと押さえてください。国内の導入状況はエネ百科 図面集【3-1-05】日本の風力発電導入量の推移で確認できます。

燃料電池|化学反応から直接、直流を取り出す

燃料電池は、水素と酸素を反応させて水ができるときのエネルギーを、燃焼を経ずに直接電気として取り出す装置です。水の電気分解の逆向きの反応にあたります。

燃料極:H2 → 2H+ + 2e

空気極:(1/2)O2 + 2H+ + 2e → H2O

全体:H2 + (1/2)O2 → H2O

電子が外部回路を通るので、出力は直流です。系統や家庭で使うにはインバータで交流に変換します。1セルの電圧は1 V前後と低いため、多数のセルを直列に積んで必要な電圧にします。

種類 おおよその作動温度 主な用途の例
固体高分子形(PEFC) 常温〜100℃程度 家庭用、車載
りん酸形(PAFC) 200℃程度 業務用の熱電併給
固体酸化物形(SOFC) 700℃前後以上 高効率の定置用

計算例|効率は発熱量の基準で変わる

水素を毎時1.0 kg消費し、発電端で20 kWを得ている装置を考えます。水素の発熱量は、生成した水蒸気の凝縮熱を含む高位発熱量で約142 MJ/kg、含まない低位発熱量で約120 MJ/kgとします。

  1. 低位基準の熱入力:120×106÷3,600=約33.3 kW。効率は20÷33.3=約60%
  2. 高位基準の熱入力:142×106÷3,600=約39.4 kW。効率は20÷39.4=約50.7%

発電量も水素の消費量も変えていないのに、表示は10ポイント近く違います。カタログの効率を比べるときは、高位・低位どちらの基準か、発電効率か熱も含めた総合効率かを必ず確認してください。熱を給湯などに使うコージェネレーションの総合効率は、発電効率と同じ土俵では比較できません。

また、発電時に出るのは水ですが、燃料の水素を作る段階で化石燃料を使えばCO2が出ますエネ百科 図面集【3-1-06】燃料電池のしくみ)。「排出ゼロ」と一言で片づけず、どこまでを数えた話かを分けて理解しておくと、選択肢の言い回しに強くなります。

発電方式の比較|出力の形と変動のしかた

試験で問われやすいのは、回転機を使うかどうか出力が交流か直流かの組み合わせです。太陽光と燃料電池は回転機を持たず、直接電気が出るので直流になります。

方式 エネルギーの流れ 出力の形
火力 化学→熱→回転→電気 交流
原子力 核分裂→熱→回転→電気 交流
水力・風力 運動→回転→電気 交流
太陽光 光→電気(直接) 直流
燃料電池 化学→電気(直接) 直流

CO2の扱いも整理しておきます。原子力と太陽光・風力は発電している間は燃焼をともなわないので排出しませんが、設備の製造や建設まで含めればゼロではありません。燃料電池は上に書いたとおり、水素をどう作ったかで変わります。「発電時か、一生分か」で答えが変わる問いだと意識してください。

出力変動の性質も方式ごとに違います。太陽光は夜間に発電せず、天候と時間帯で大きく上下します。風力は夜間でも風があれば発電しますが、風速の3乗の効きで変動が大きくなります。どちらも需要に合わせて出力を決められないため、系統側での調整力や蓄電と組み合わせて使われます。

理解度チェック|条件を読み取る3問

各問で正しいものを1つ選び、「解答を見る」を押してください。用語を覚えたかではなく、条件を読み分けられるかを確認します。

確認1|蒸気発生器がある側はどちらか

加圧水型(PWR)の説明として適切なものはどれですか。

(1)炉心で発生させた蒸気を、そのままタービンへ送る。
(2)減速材を使わず、高速中性子のまま連鎖反応を続ける。
(3)制御棒を炉心の下から挿入する構造が標準である。
(4)1次系を加圧して沸騰を抑え、蒸気発生器で2次系に熱を渡す。
(5)冷却材に軽水を使うため、天然ウランのままで運転できる。

確認2|出力係数を掛け忘れない

空気密度1.25 kg/m3、ロータ直径50 m、風速8 m/s、出力係数0.45の風車があります。増速機や発電機の損失を無視するとき、取り出せる機械出力に最も近いのはどれですか。

(1)約283 kW
(2)約373 kW
(3)約565 kW
(4)約628 kW
(5)約1,131 kW

確認3|時間の単位をそろえる

熱出力3,000 MWの原子炉を1時間運転しました。発生した熱エネルギーがすべて質量欠損によるものとするとき、減った質量に最も近いのはどれですか。光の速さは3.0×108 m/sとします。

(1)0.012 g
(2)0.12 g
(3)1.2 g
(4)2.88 g
(5)12 g

まとめと次の学習先

  • 核分裂で減った質量Δmが E=Δmc2 で熱になる。kgと秒に直してから代入する。
  • 減速材は中性子を遅く、制御材は吸収する。軽水は減速材と冷却材を兼ねるので濃縮ウランを使う。
  • BWRは炉内で蒸気を作り、PWRは加圧器と蒸気発生器で1次系と2次系を分ける。
  • 太陽光の定格は標準試験条件の値。年間発電量は設備利用率と8,760時間で見積もる。
  • 風力は (1/2)ρAv3 に出力係数を掛ける。理論上限のベッツ限界は約0.593。
  • 燃料電池の効率は発熱量の基準で変わる。水素の製造方法まで含めるとCO2はゼロではない。

このあと手を動かす

内容・出典確認日:2026年9月9日。数値例は実在設備の仕様ではなく、条件を明示した学習用の設定です。試験問題で光の速さ・空気密度・発熱量・効率の基準が指定された場合は、その値と条件に合わせて計算してください。

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-電力