電線1条に電流 I が流れると、その1条で I(R cos θ+X sin θ) だけ電圧が下がります(近似式)。下の表では、これを「1条分」と書きます。損失は、1条につき I2R です。方式ごとの違いは、線電流の出し方と、1条分や I2R を何回数えるかの2点だけです。
方式
線電流
電圧 降下
損失
単相 2線式
P/(V cos θ)
1条分 ×2
2I2R
単相 3線式 平衡時
P/(2V cos θ)
1条分 ×1
2I2R
三相 3線式
P/(√3 V cos θ)
1条分 ×√3
3I2R
P は負荷の有効電力の合計、cos θ は負荷の力率です。V は負荷の電圧で、単相2線式では2本の線のあいだ、単相3線式では外線と中性線のあいだ(100 V の側)、三相3線式では線間の電圧を入れます。抵抗 R とリアクタンス X は、電線1条あたりの値です。単相3線式の行は、2つの100 V の負荷が同じ大きさで、中性線に電流が流れていないときの式です。偏りがあるときは、第2問のように1本ずつ数えます。
単相2線式の低圧配電線の末端に、負荷が1つだけつながっている。負荷の電流は25 A、力率は0.8(遅れ)である。電線は、1条あたりの抵抗が0.60 Ω/km、リアクタンスが0.10 Ω/km のものを使う。近似式で求めた電圧降下を、4.0 V 以下に収めたい。こう長は、最大でおよそ何 m まで延ばせるか。
(1)114 m
(2)133 m
(3)148 m
(4)182 m
(5)296 m
正解:(3)148 m
こう長がわからないので、先に1 km あたりの電圧降下を出します。4.0 V がその何 km 分にあたるかを、最後に割り算で求めます。
① sin θ=√(1−0.82)=0.6
② 括弧の中:0.60×0.8+0.10×0.6 =0.48+0.06=0.54 Ω/km
③ 1 km あたりの降下: 2×25×0.54=27 V/km
④ こう長:4.0/27≒0.148 km=148 m
③の「2×」が、行きの電線と帰りの電線の2条分です。検算:148 m の電線1条は、抵抗が約0.0889 Ω、リアクタンスが約0.0148 Ω です。2×25×(0.0889×0.8+0.0148×0.6)=50×0.08=4.0 V で、条件ちょうどになります。
(1)抵抗とリアクタンスをそのまま足して、0.70 Ω/km にしています。4.0/(2×25×0.70)≒0.114 km です。抵抗で下がる電圧と、リアクタンスで下がる電圧は、向きが90°ずれています。負荷の電圧と同じ向きの成分だけを取り出すために、抵抗には cos θ、リアクタンスには sin θ を掛けます。
(2)リアクタンスを捨て、力率も掛けずに、4.0/(2×25×0.60)≒0.133 km としています。2IR で済むのは、力率が1の負荷だけです。
(3)正しい値です。
(4)cos θ と sin θ を逆に掛けています。0.60×0.6+0.10×0.8=0.44 Ω/km となり、4.0/(2×25×0.44)≒0.182 km です。
(5)係数を1にして、4.0/(25×0.54)≒0.296 km としています。行きの1条しか数えていません。係数が1になるのは、平衡した単相3線式で、外線と中性線のあいだの電圧を見るときです。
係数を √3 にすると、約171 m になります。これは、三相3線式で、線間電圧の降下を4.0 V にする場合の値です。
「電流が同じ」と「電力が同じ」で、力率の効き方が逆になる。(2)の133 m は、電流が25 A のまま力率だけが1になった負荷なら、正しい上限です。力率がよくなったのに、148 m より短くなりました。この電線はリアクタンスが小さいので、1条分の括弧の中が、力率0.8では0.54 Ω/km、力率1では0.60 Ω/km と、力率1のほうが大きいからです。
ただし、同じ25 A で力率が違えば、負荷の電力が違います。有効電力を同じにして比べると、力率1の負荷の電流は 25×0.8=20 A です。1 km あたりの降下は 2×20×0.60=24 V/km、上限は 4.0/24≒167 m で、今度は148 m より長くなります。問題文がそろえているのが電流なのか電力なのかを、先に読みます。
同じ4.0 V でも、重みは電圧で違う。4.0 V は、100 V の負荷にとっては4%、200 V の負荷にとっては2%です。需要家に届ける電圧には、電気事業法施行規則に決まりがあります。第38条の表では、標準電圧が100 V なら101 V から上下6 V まで、200 V なら202 V から上下20 V までが、維持すべき値です。許される幅は、100 V のほうがずっと狭くなっています。
第2問|3線式の負荷電圧
単相3線式の低圧配電線がある。電源の電圧は、外線 A と中性線のあいだも、外線 B と中性線のあいだも、103 V に保たれている。外線2本と中性線は同じ電線で、抵抗は1条につき0.05 Ω、リアクタンスは考えない。線路の末端には、次の3つの抵抗負荷(力率1)がつながっていて、電流は書かれた値のとおりに流れている。
A 側(外線 A と中性線のあいだ):24 A
B 側(外線 B と中性線のあいだ):12 A
外線 A と外線 B のあいだ:16 A
このとき、A 側の負荷の電圧は何 V になるか。
(1)100.4 V
(2)101.0 V
(3)101.2 V
(4)101.6 V
(5)102.2 V
正解:(1)100.4 V
3本の電線の電流を、1本ずつ出します。外線どうしにつないだ負荷(200 V の負荷)の16 A は、外線 A から入って外線 B へ出ていきます。中性線は通りません。
① 外線 A:24+16=40 A
② 外線 B:12+16=28 A
③ 中性線:24−12=12 A
④ A 側の降下: 40×0.05+12×0.05=2.0+0.6=2.6 V
⑤ A 側の負荷の電圧: 103−2.6=100.4 V
A 側は、100 V の負荷の電流が多い側です。A 側の回路をひと回りすると、外線 A で下がった分に、中性線で下がった分が同じ向きで加わります。
検算:B 側は 103−28×0.05+12×0.05=103−1.4+0.6=102.2 V です。外線どうしの電圧は 206−2.0−1.4=202.6 V で、100.4+102.2 と合っています。
(1)正しい値です。
(2)中性線で下がる分を数えずに、103−40×0.05 としています。中性線の電流が0になるのは、A 側と B 側の100 V の負荷が同じ大きさのときです。
(3)外線 A の電流を24 A のままにして、103−24×0.05−12×0.05 としています。200 V の負荷の16 A も、外線 A を通ります。
(4)中性線で下がる分を、足さずに引いて、103−2.0+0.6 としています。引くのは、電流の少ない B 側を計算するときです。
(5)B 側の負荷の電圧です。100 V の負荷の電流が少ない側のほうが、電圧は高くなります。
選択肢にはありませんが、200 V の負荷の16 A を中性線にも流してしまう数え違いがあります。中性線を28 A とすると、103−2.0−1.4=99.6 V になります。
200 V の負荷は、A 側と B 側の差をつくらない。A 側と B 側の電圧の差は 102.2−100.4=1.8 V です。この差のもとは、100 V の負荷の偏り(24 A と12 A)です。200 V の負荷は、外線2本の降下を同じだけ増やしますが、中性線の電流は変えません。16 A を32 A に増やすと、A 側は99.6 V、B 側は101.4 V に下がりますが、差は1.8 V のままです。
100 V の負荷を18 A ずつに分け直すと。中性線の電流は0になり、外線はどちらも 18+16=34 A です。負荷の電圧は、両側とも 103−34×0.05=101.3 V にそろいます。線路の損失は、偏っているときが (402+282+122)×0.05=126.4 W、分け直したあとが 2×342×0.05=115.6 W です。負荷の合計は同じでも、偏りがあるだけで損失が増えます。
② (b) 外線の電流:2,000/100=20 A 中性線:20−20=0 A 損失:2×202×0.06=48 W
③ (c) 電流:4,000/(√3×200)≒11.55 A 損失:3×11.552×0.06≒24 W
③は、電流を数値にする前に2乗すると、√3 が消えます。3×(4,000/(√3×200))2×0.06=(4,000/200)2×0.06=24 W です。三相3線式の損失は、力率が1なら P2R/V2 で出せます。
(1)(a) を、1条分の 402×0.06=96 W にしています。単相2線式は、帰りの電線にも同じ40 A が流れます。
(2)(c) を、√3×11.552×0.06≒14 W にしています。√3 を掛けるのは、三相の電力と、線間電圧の降下です。損失は、電線3条のそれぞれで出る分を足すので、3倍です。
(3)(c) の電流を、4,000/200=20 A としています。3×202×0.06=72 W になります。三相の電力は √3×線間電圧×線電流 なので、電流を出すときに √3 で割ります。
(4)(b) で、中性線にも20 A が流れるとして、3×202×0.06=72 W としています。A 側と B 側が同じ2 kW なので、中性線の電流は0 A です。
(5)正しい組み合わせです。
損失は 8:2:1。(a) から (b) へは、電流が半分になるので、4分の1です。(b) の単相3線式は、負荷が平衡していれば、外線2本に20 A が流れているだけなので、200 V の単相2線式と同じ流れ方をしています。そこから、同じ200 V の三相3線式 (c) にすると、さらに半分です。電線は3本に増えても、1本の電流が 1/√3 に減るからです。
力率が1なら、損失率と電圧降下率は同じ値になる。損失を負荷の電力で割ると、(a) は4.8%、(b) は1.2%、(c) は0.6%です。電圧降下は、(a) が 2×40×0.06=4.8 V(100 V の4.8%)、(b) が 20×0.06=1.2 V(100 V の1.2%)、(c) が √3×11.55×0.06≒1.2 V(200 V の0.6%)で、3つとも損失率と同じ数字です。日本電気技術者協会の解説講座にも、力率がほぼ1なら、電圧降下率と配電線の損失率はほぼ等しい、とあります。電圧が大きく下がる線路は、損失も大きい線路です。
第4問|中性線と電線量
100 V の単相2線式の線路を、単相3線式(外線と中性線のあいだが100 V)に張り替える。送る電力、こう長、線路の損失、負荷の力率、電線の材料は変えない。単相3線式の負荷は平衡していて、中性線の断面積は外線の半分とする。単相3線式に必要な電線量(断面積×長さを全部の電線について足したもの)は、単相2線式の何倍か。
損失がいちばん小さいのは、無効電力がちょうど0になる360 kvar のときです。最初の160 kvar で25ポイント減りますが、残りの200 kvar を足しても、減るのはあと11ポイントです。360 kvar を超えると、今度は進みの無効電力が線路を流れて、損失は増えていきます。720 kvar では、つなぐ前と同じに戻ります。同じ協会の別の講座には、コンデンサの容量が固定のままだと、消費電力が小さくなったときに補償しすぎて進み力率になること、進み力率では需要端の電圧が変電所の電圧に近づくか、それより高くなることが書かれています。
減るのは、コンデンサより電源側の電流だけ。問題文でコンデンサを「負荷のすぐそば」に置いたのは、線路の端から端まで電流を減らすためです。同じ160 kvar を配電用変電所の母線につないだ場合は、変電所から負荷までの線路に、今までと同じ600 kV·A 分の電流が流れます。この線路の損失は、100%のままです。
同じ電力を送る4通り
第3問と第4問を、1枚の表にまとめます。100 V の単相2線式を1として、同じ電力を、同じ距離、同じ力率で送ったときの比です。「損失」の列は、どの方式にも同じ太さの電線を使った場合です。「電線量」の列は、損失が同じになるように電線の太さを変えた場合です。