電力

配電方式と配電計算ミニテスト第1回|こう長の上限・単相3線式の負荷電圧・3方式の損失・電線量の比・力率改善の5問

配電線路の計算で迷うのは、式の前につく数字です。電圧降下は2倍か、√3 倍か、そのままか。損失は2倍か、3倍か。電線量の比は 3/8 か、3/4 か。どれも、電流が流れている電線を1本ずつ数えれば決まります。この回は、その数え方を、電圧降下、損失、電線量、力率改善の順に5問で試します。

問題は5問とも、この回のために用意した自作です。本番の試験の問題文や数値は使っていません。正解でない4つについては、何を数え違えるとその値に行き着くのかを、解答欄で順に説明します。出てくる電流、抵抗、こう長は、筋道を見せるために置いた数字で、どこかの設備を測ったものではありません。

係数がなぜ2や √3 になるのかは、配電方式と配電計算の解説記事に書いてあります。解答欄を読んでいて式の出どころが気になったら、そちらに戻ってください。この回のあとには、ミニテスト第2回と第3回があります。

配電方式と配電計算 ミニテスト

第1回 第2回 第3回

はじめに|数える電線と式

電線1条に電流 I が流れると、その1条で I(R cos θ+X sin θ) だけ電圧が下がります(近似式)。下の表では、これを「1条分」と書きます。損失は、1条につき I2R です。方式ごとの違いは、線電流の出し方と、1条分や I2R を何回数えるかの2点だけです。

方式 線電流 電圧
降下
損失
単相
2線式
P/(V cos θ) 1条分
×2
2I2R
単相
3線式

平衡時
P/(2V cos θ) 1条分
×1
2I2R
三相
3線式
P/(√3 V cos θ) 1条分
×√3
3I2R

P は負荷の有効電力の合計、cos θ は負荷の力率です。V は負荷の電圧で、単相2線式では2本の線のあいだ、単相3線式では外線と中性線のあいだ(100 V の側)、三相3線式では線間の電圧を入れます。抵抗 R とリアクタンス X は、電線1条あたりの値です。単相3線式の行は、2つの100 V の負荷が同じ大きさで、中性線に電流が流れていないときの式です。偏りがあるときは、第2問のように1本ずつ数えます。

試験に持ち込める電卓は、四則演算と開平(√)ができるものまでで、関数電卓は使えません(試験センターの第三種の試験概要)。力率が0.8なら、sin θ は √(1−0.82)=0.6 と、√ のキーで出します。

第1問|こう長の上限

単相2線式の低圧配電線の末端に、負荷が1つだけつながっている。負荷の電流は25 A、力率は0.8(遅れ)である。電線は、1条あたりの抵抗が0.60 Ω/km、リアクタンスが0.10 Ω/km のものを使う。近似式で求めた電圧降下を、4.0 V 以下に収めたい。こう長は、最大でおよそ何 m まで延ばせるか。

  1. (1)114 m
  2. (2)133 m
  3. (3)148 m
  4. (4)182 m
  5. (5)296 m

第2問|3線式の負荷電圧

単相3線式の低圧配電線がある。電源の電圧は、外線 A と中性線のあいだも、外線 B と中性線のあいだも、103 V に保たれている。外線2本と中性線は同じ電線で、抵抗は1条につき0.05 Ω、リアクタンスは考えない。線路の末端には、次の3つの抵抗負荷(力率1)がつながっていて、電流は書かれた値のとおりに流れている。

  • A 側(外線 A と中性線のあいだ):24 A
  • B 側(外線 B と中性線のあいだ):12 A
  • 外線 A と外線 B のあいだ:16 A

このとき、A 側の負荷の電圧は何 V になるか。

  1. (1)100.4 V
  2. (2)101.0 V
  3. (3)101.2 V
  4. (4)101.6 V
  5. (5)102.2 V

第3問|3つの方式の損失

合わせて4 kW の抵抗負荷(力率1)に、次の (a)、(b)、(c) の3つの方式で電気を送る。電線はどの方式でも同じもので、1条あたりの抵抗は0.06 Ω である。負荷にかかる電圧が下の値のとき、線路の損失[W]を正しく組み合わせたものはどれか。

  • (a) 単相2線式。負荷は100 V。
  • (b) 単相3線式。A 側と B 側に2 kW ずつで、負荷はどちらも100 V。
  • (c) 三相3線式。負荷は平衡した三相負荷で、線間電圧は200 V。
  1. (1)(a) 96 (b) 48 (c) 24
  2. (2)(a) 192 (b) 48 (c) 14
  3. (3)(a) 192 (b) 48 (c) 72
  4. (4)(a) 192 (b) 72 (c) 24
  5. (5)(a) 192 (b) 48 (c) 24

第4問|中性線と電線量

100 V の単相2線式の線路を、単相3線式(外線と中性線のあいだが100 V)に張り替える。送る電力、こう長、線路の損失、負荷の力率、電線の材料は変えない。単相3線式の負荷は平衡していて、中性線の断面積は外線の半分とする。単相3線式に必要な電線量(断面積×長さを全部の電線について足したもの)は、単相2線式の何倍か。

  1. (1)1/4
  2. (2)5/16
  3. (3)3/8
  4. (4)5/8
  5. (5)3/4

第5問|コンデンサと損失

三相3線式の高圧配電線の末端に、480 kW、力率0.8(遅れ)の負荷がある。この負荷のすぐそばに、160 kvar のコンデンサを、負荷と並列につないだ。負荷の有効電力と電圧は、つなぐ前と変わらないものとする。線路の抵抗による損失は、コンデンサをつなぐ前の約何%になるか。

  1. (1)約25%
  2. (2)約31%
  3. (3)約56%
  4. (4)約75%
  5. (5)約87%

同じ電力を送る4通り

第3問と第4問を、1枚の表にまとめます。100 V の単相2線式を1として、同じ電力を、同じ距離、同じ力率で送ったときの比です。「損失」の列は、どの方式にも同じ太さの電線を使った場合です。「電線量」の列は、損失が同じになるように電線の太さを変えた場合です。

方式と
負荷の電圧
線電流 損失 電線量
単相2線式
100 V
1 1 1
単相3線式
100 V・200 V
1/2 1/4 3/8
三相3線式
200 V
1/(2√3)
≒0.29
1/8 3/16
三相3線式
100 V
1/√3
≒0.58
1/2 3/4

単相3線式の行は、負荷が平衡していて、中性線が外線と同じ太さのときの値です。中性線を半分の太さにすると、電線量は 5/16 になります(第4問)。三相3線式の電圧は、線間電圧です。

「電線量」の列は、「損失」の列に、電線の本数の比を掛けたものになっています。単相3線式と三相3線式は3本、単相2線式は2本なので、3/2 を掛けます。1/4×3/2=3/8、1/8×3/2=3/16、1/2×3/2=3/4 です。同じ電線で送ったときに損失が4分の1になる方式は、断面積を4分の1にしても元の損失に収まります。あとは本数を数えるだけです。3/8 や 3/4 を忘れても、損失の比から出し直せます。

  • 電圧降下(単相2線式):係数の2は、行きと帰りの2条。抵抗には cos θ、リアクタンスには sin θ を掛ける。そろえている条件が電流か電力かを読む。
  • 電圧降下(単相3線式):3本の電流を1本ずつ出す。200 V の負荷の電流は中性線を通らない。中性線での降下は、電流の多い側では足し、少ない側では引く。
  • 損失:電流が流れている電線ごとの I2R を足す。同じ電力・同じ電線なら、100 V の単相2線式、単相3線式、200 V の三相3線式で 8:2:1。
  • 電線量:損失を同じにする断面積を出してから、本数を数える。3/8 は中性線が外線と同じ太さのとき、5/16 は半分の太さのとき。
  • 力率改善:損失は、線路を通る皮相電力の2乗に比例する。コンデンサの容量は、無効電力から引く。入れすぎると損失は増える。

次に読むところ

出典と確認先

5問の設定と数値、25の選択肢、3つの表は、当サイトでつくったものです。説明の裏づけに使った資料は、次のとおりです。

外部の資料を開いて本文を確かめたのは、2026年10月3日です。使える電卓の決まりは、試験センターの試験概要のページにあります。電圧降下の近似式、力率がほぼ1のときに電圧降下率と損失率がほぼ等しくなること、線路損失が力率の2乗に反比例すること、コンデンサの入れすぎで進み力率になることは、日本電気技術者協会のウェブ講座の記述に沿っています。供給電圧の幅は、施行規則の条文を見ました。単相3線式の3本の電流の数え方、方式ごとの損失の式、電線量の比(3/8、5/16、3/16、3/4)は、送配電の教科書に載っている定番の内容を、このページの数値で計算し直したものです。「電線量の比は、損失の比に本数の比を掛けたもの」というまとめ方と、コンデンサの容量ごとの損失の表は、当サイトの計算です。書いているのは、電験三種を独学している個人で、配電線の設計や工事にたずさわった経験はありません。実際の設備については、電力会社や国の資料にあたってください。

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