電力

配電方式と配電計算|単相2線式・単相3線式・三相3線式の電圧降下と損失、電線量の比、力率改善【電験三種】

送電の電気的計算では、三相3線式の送電線を1相分の回路に直して、電圧の下がり方と損失を計算しました。この記事は、その先にある配電線路です。変電所から工場やビルや家庭までの区間では、三相3線式のほかに、単相2線式、単相3線式、三相4線式が使われます。方式が変わると、電流が通る電線の数が変わり、式の前につく係数が変わります。負荷が線路の途中にいくつもつながっていること、負荷のすぐそばにコンデンサを置けることも、送電線との違いです。

この記事で押さえること

  • 電圧降下は、どの方式でも I(R cos θ+X sin θ) に係数を掛けた形になる。係数は、単相2線式が2、三相3線式が √3。負荷が平衡した単相3線式は、外線と中性線のあいだの電圧について1。
  • 係数は、電流が通る電線を数えた結果。行きと帰りの2条に同じ電流が流れれば2、帰りの電線に電流が流れなければ1。
  • 損失は、電流が流れている電線1条ずつの I2R を足す。単相2線式は 2I2R、三相3線式は 3I2R。
  • 単相3線式の中性線には、2つの負荷の電流の差が流れる。差があると、電流の少ない側の電圧が高めになる。中性線が切れると、その偏りが一気に大きくなる。
  • 電線量の比(3/8、3/4、1/3)は、電力・距離・損失を同じにしたうえで、どの電圧をそろえたかで決まる。そろえる電圧を変えれば、値も変わる。
  • 負荷が途中にある線路は、区間ごとに、そこを流れる電流で計算して足す。
  • 力率改善用のコンデンサが減らすのは、つないだ点から電源側の電流だけ。負荷側の線路の電流はそのまま。

記号と前提。抵抗 R とリアクタンス X[Ω]は、どちらも電線1条あたりの値です。線電流は I[A]、負荷の力率は cos θ、負荷の有効電力は P、無効電力は Q と書きます。v は電圧降下で、電源側の電圧の大きさから負荷側の電圧の大きさを引いたものです。三相3線式では線間電圧、単相2線式では2線間の電圧、単相3線式では、断りがなければ外線と中性線のあいだの電圧で考えます。電線はどれも同じ太さ、三相の負荷は平衡、力率は遅れとします。電圧降下の式は近似式で、電源側と負荷側の電圧の位相がほとんどずれていないときに成り立ちます。例題の電圧・こう長・抵抗は、計算の順序を追うための仮の値です。実際の配電線の値ではありません。

配電線路の電圧と区分

電気事業連合会の説明では、配電用の変電所で6,600 V に下げられた電気は、その電圧のまま大規模なビルや中規模の工場へ届けられ、街なかの電線にも6,600 V で配られます。それが電柱の上の変圧器(柱上変圧器)で100 V か200 V に下げられ、引込線を通って各家庭に入ります。変電所から先の、電気を配るための電線が配電線です。6,600 V の区間を高圧配電線、柱上変圧器から先を低圧配電線と呼びます。高圧配電線は三相3線式で、中性点は接地しません。接地しない理由と、地絡事故の見つけ方は、電力系統の保護と安定で扱います。

「低圧」「高圧」という言葉には、法令上の区切りがあります。電気設備の技術基準を定めた省令(題名は「電気設備に関する技術基準を定める省令」)は、第2条で電圧を次の3種に分けています。

区分 交流 直流
低圧 600 V 以下 750 V 以下
高圧 600 V を超え、
7,000 V 以下
750 V を超え、
7,000 V 以下
特別高圧 7,000 V を超えるもの

6,600 V は高圧、100 V と200 V は低圧です。この区分が設備の決まりにどう関わるかは、法規の電気設備技術基準・総則と電路の絶縁の範囲です。

低圧で届ける電圧にも決まりがあります。電気事業法施行規則の第38条は、電気を供給する場所での電圧を、標準電圧100 V に対しては101 V の上下6 V 以内、標準電圧200 V に対しては202 V の上下20 V 以内に保つよう定めています。配電線路の電圧降下を計算するのは、線路のいちばん端の需要家でも、この幅に入るかどうかを確かめるためです。

負荷は時間帯で変わるので、電圧降下も1日のなかで動きます。この調整について日本電気技術者協会の解説講座では、配電用変電所の送り出し電圧の調整、柱上変圧器などのタップ、電線を太くすることが挙げられ、それでも線路全体を許容値に収められない長い配電線では、線路の途中に自動電圧調整器(SVR)を設ける、と説明されています。

線路の組み方と、停電する範囲

配電線路は、変電所から枝分かれしながら伸びていく形(樹枝状)が基本です。つくりは簡単ですが、途中で事故が起きると、そこから先が停電します。停電の範囲を小さくするために、線路を輪にして両側から送れるようにしたループ方式や、予備の線をもう1本引いておく本線予備線方式があります。停電をさらに減らす方式に、スポットネットワーク方式があります。日本電気技術者協会の解説講座によると、常時2〜4回線の22 kV または33 kV の特別高圧配電線から受電し、各回線の変圧器の二次側をつないでおく方式で、配電線が1回線止まっても支障なく受電できます。

配電方式と取り出せる電圧

配電方式の名前は、「単相か三相か」と「電線が何本か」の組み合わせです。

方式 電線と電圧 おもな
使われ方
単相
2線式
2本。
電圧は1種類。
小さな負荷。
屋内の
分岐回路。
単相
3線式
外線2本と
中性線。
外線と中性線
の間が100 V、
外線どうしが
200 V。
住宅や商店。
100 V と
200 V の機器
を同じ3本で。
三相
3線式
3本。
線間電圧は
1種類。
6,600 V、
200 V など。
高圧配電線。
電動機など
の動力。
三相
4線式
3本と中性線。
線間電圧と、
その 1/√3 の
電圧。
ビルや工場
の構内。
動力と照明を
同じ4本で。

単相3線式は、柱上変圧器の低圧側の巻線の真ん中から線を1本引き出して、中性線にしたものです。中性線から見ると、2本の外線の電圧はどちらも100 V で、向きが逆です(交流回路の基礎)。そのため、外線と中性線のあいだには100 V、外線どうしのあいだには200 V が現れます。

三相4線式は、Y結線の中性点から中性線を引き出したものです。線間電圧が415 V なら、線と中性線のあいだは 415/√3≒240 V です(三相交流回路)。日本電気技術者協会の解説講座は、スポットネットワーク受電の変圧器の二次側を、通常は Y結線の240/400 V とする、と説明しています。

低圧配電線では、三相の動力と単相の電灯を、1組の変圧器からまとめて送ることもあります。容量の違う単相変圧器2台をV 字形につなぐ異容量V結線です。日本電気技術者協会の別の講座は、この結線では1つのバンクから単相(電灯)の負荷と三相(動力)の負荷に供給でき、柱上では電柱を中心に左右に振り分けて置ける、としています。変圧器の結線そのものは、機械科目の変圧器の構造と原理で扱います。

電圧降下の係数と電線の数

電圧降下の近似式は、送電の電気的計算でフェーザ図から導きました。電線1条に電流 I が流れたとき、その1条で生じる電圧降下のうち、負荷の電圧と同じ向きの成分は I(R cos θ+X sin θ) です。これを「1条分」と呼ぶことにします。配電方式ごとの式は、回路をひと回りするあいだに、この1条分を何回通るかで決まります。

方式ごとの電圧降下(近似式)

単相2線式

v=2I(R cos θ+X sin θ)

三相3線式

v=√3 I(R cos θ+X sin θ)

単相3線式(負荷が平衡)

v=I(R cos θ+X sin θ)

R・X:電線1条あたり[Ω]
単相3線式は、外線と中性線の
あいだの電圧についての式

  • 単相2線式。電流は1本の電線で負荷へ行き、もう1本で帰ってきます。2条に同じ電流が流れるので、1条分の2倍です。三相3線式の送電線の計算で、抵抗を2条分にしなかったのとは、ここが違います。
  • 三相3線式。3つの相が平衡していれば、1相分を取り出した回路に、帰りの電線での降下はありません。1条分がそのまま相電圧の降下で、線間電圧に直すために √3 倍します。
  • 単相3線式。2つの負荷が同じなら、中性線には電流が流れません。外線と中性線のあいだの電圧(100 V の側)で見ると、電流が通るのは外線の1条だけなので、1条分です。外線どうしの電圧(200 V の側)で見れば、外線2条分で、2倍になります。

単相3線式の「係数は1」には、条件が2つついています。どの電圧の降下を見ているかと、負荷が平衡していることです。平衡していないときは中性線にも電流が流れるので、この式は使えません。次の節で計算します。

低圧の短い線路では、リアクタンスを無視して抵抗だけで計算する問題があります。そのとき消えるのは X sin θ の項だけで、cos θ は残ります。単相2線式なら 2IR cos θ、三相3線式なら √3 IR cos θ です。2IR や √3 IR になるのは、力率が1のとき(電熱器のような抵抗負荷)です。

電力で書いた形もあります。I cos θ と I sin θ を、有効電力と無効電力で置きかえます。

単相2線式:v=2(PR+QX)/V

三相3線式:v=(PR+QX)/V

V:負荷側の電圧(三相は線間電圧)

同じ電力を、同じ電圧、同じ電線で送るなら、単相2線式の電圧降下は三相3線式の2倍です。

計算例1|高圧配電線の電圧降下

設定。こう長2.5 km の三相3線式の高圧配電線がある。電線1条あたりの抵抗は0.32 Ω/km、リアクタンスは0.35 Ω/km である。線路の末端に、6,600 V、1,200 kW、力率0.75(遅れ)の負荷が1つだけつながっている。電圧降下、電圧降下率、線路の損失を求める。

① 抵抗:0.32×2.5=0.8 Ω
リアクタンス:0.35×2.5=0.875 Ω

② 電流:1,200×103/(√3×6,600×0.75)≒140 A

③ sin θ=√(1−0.752)≒0.6614

④ 電圧降下:√3×140×(0.8×0.75+0.875×0.6614)
=√3×140×(0.6+0.5787)≒285.8 V

⑤ 電圧降下率:285.8/6,600≒4.33%
変電所側の電圧は約6,886 V

⑥ 損失:3×1402×0.8=47,040 W
(負荷の電力の約3.9%)

検算:無効電力は 1,200×0.6614/0.75≒1,058 kvar。(1,200×0.8+1,058×0.875)/6.6=(960+926)/6.6≒285.8 V で、④と合います。kW と kvar と kV で入れると、答えは V で出ます。

読み取り。括弧の中の2つの項は0.6 Ω と約0.58 Ω で、ほぼ同じ大きさです。送電線ではリアクタンスの項が大半でした。配電線は電線が細く、抵抗がリアクタンスと同じくらいあるので、有効電力と無効電力の両方が、同じ程度に電圧を下げます。フェーザで計算しても約285.8 V で、近似式との差は0.1 V もありません。

単相3線式と中性線の役目

単相3線式では、外線 A と中性線のあいだに負荷 A を、外線 B と中性線のあいだに負荷 B をつなぎます。中性線には、負荷 A の電流と負荷 B の電流の差が流れます。2つが同じなら、差は0です。力率の違う負荷どうしでは、大きさの引き算ではなくフェーザの引き算になるので、ここでは2つとも抵抗負荷(力率1)とします。

平衡していない単相3線式
(力率1、IA≧IB のとき)

中性線:IN=IA−IB

A 側:vA=IAR+INRN

B 側:vB=IBR−INRN

R:外線1条の抵抗
RN:中性線の抵抗

電流の多い A 側では、外線での降下に、中性線での降下が足されます。電流の少ない B 側では、中性線での降下が引かれます。中性線の電流の向きが、B 側の回路をひと回りする向きとは逆だからです。差が大きいと vB はマイナスになり、B 側の負荷の電圧は、電源の電圧より高くなります。

損失は、3本それぞれの I2R の和です。平衡していれば外線2条だけで 2I2R、平衡していなければ IA2R+IB2R+IN2RN です。

計算例2|2線式と3線式の比較

設定。100 V の抵抗負荷が、合わせて3 kW ある。電線は1条あたり0.08 Ω で、中性線にも同じ電線を使う。負荷の電圧が100 V のときの電圧降下と線路の損失を、4通りで求める。(a) 単相2線式で、30 A をまとめて送る。(b) 単相3線式で、両側に15 A ずつ分ける。(c) 単相3線式で、A 側が20 A、B 側が10 A に偏った。(d) (c) の線路の末端にバランサを入れた。

① (a) 降下:2×30×0.08=4.8 V
損失:2×302×0.08=144 W

② (b) 降下:15×0.08=1.2 V
(A 側も B 側も同じ)
損失:2×152×0.08=36 W

③ (c) 中性線:20−10=10 A
A 側:20×0.08+10×0.08=2.4 V
B 側:10×0.08−10×0.08=0 V

④ (c) 損失:(202+102+102)×0.08=48 W

⑤ (d) 外線は15 A ずつ
電源側の中性線は0 A
降下と損失は (b) と同じ

読み取り。(a) と (b) は、同じ電線で同じ3 kW を送っています。3線式にすると電流が半分になり、損失は4分の1です。電圧降下も、電流が半分で、通る電線が2条から1条になるので、4分の1です。(c) は、合計の電流が30 A のままなのに、損失が36 W から48 W に増えました。B 側の降下は0 V で、軽い側の電圧は下がっていません。A 側が25 A、B 側が5 A まで偏ると、B 側は−1.2 V、つまり電源より1.2 V 高くなります。

バランサは、巻数比が1対1の単巻変圧器です。線路の末端で、両端を2本の外線に、巻線の中点を中性線につなぎます。2つの負荷の電流に差があると、バランサは、その差の半分ずつを自分の2つの巻線に流します。(c) では、差の10 A のうち5 A ずつが巻線を流れて、外線の電流は 20−5=15 A と 10+5=15 A にそろいます。バランサより電源側の中性線には、電流が流れなくなります。この計算では、バランサ自身の損失と励磁電流を無視しています。

中性線が切れたとき

中性線が途中で切れると、負荷 A と負荷 B は、外線どうしの200 V に直列につながった形になります。直列回路の電圧は、抵抗の比で分かれます(直流回路の基礎の分圧と同じ計算です)。

計算例3。単相3線式の A 側に100 V・800 W、B 側に100 V・200 W の抵抗負荷がつながっている。中性線が切れたとき、それぞれの負荷にかかる電圧を求める。外線どうしの電圧は200 V のままとし、電線の抵抗と、温度による負荷の抵抗の変化は考えない。

① 負荷の抵抗:
A は 1002/800=12.5 Ω
B は 1002/200=50 Ω

② 直列の電流:200/(12.5+50)=3.2 A

③ A の電圧:3.2×12.5=40 V
B の電圧:3.2×50=160 V

読み取り。160 V がかかるのは、消費電力の小さい(抵抗の大きい)B のほうです。B が消費する電力は 1602/50=512 W で、定格の約2.6倍になります。A には40 V しかかからず、128 W です。2つの負荷が同じ大きさなら、中性線が切れても100 V ずつのままです。

軽い負荷の側に高い電圧がかかると、機器が壊れるおそれがあります。そこで、中性線だけが切れることのないように配線します。中性線にはヒューズを入れない、というのがその代表です。ヒューズが溶ければ、中性線だけが切れた状態になるからです。三相交流回路で扱った、Y結線の中性線が切れて中性点の電位がずれる現象は、これの三相版にあたります。

電力損失と電線量の比較

損失の式も、電流が流れている電線を数えれば書けます。下の表の「1条分」は、I(R cos θ+X sin θ) のことです。

方式 電圧降下 損失
単相
2線式
1条分の2倍 2I2R
単相
3線式

(平衡)
1条分
(外線と
中性線の間)
2I2R
三相
3線式
1条分の √3 倍
(線間電圧)
3I2R
三相
4線式

(平衡)
1条分の √3 倍
(線間電圧)
3I2R

電力で書き直すと、方式どうしを比べやすくなります。単相2線式は I=P/(V cos θ) なので、損失は 2P2R/(V2 cos2θ) です。三相3線式は I=P/(√3 V cos θ) なので、P2R/(V2 cos2θ) です。同じ電力を、同じ線間電圧、同じ太さの電線で送ると、三相3線式の損失は単相2線式の半分になります。電線は3本に増えますが、1本あたりの電流が 1/√3 に減るためです。

同じ損失で送るときの電線量

どの方式が電線を節約できるかは、条件をそろえて比べます。送る電力、距離、線路の損失、負荷の力率、電線の材料を同じにして、必要な電線の量(断面積×長さ×本数)を比べます。

電流が流れる電線がn 条あると、損失は nI2R です。これを決まった値にするには、抵抗 R を nI2 に反比例させます。抵抗は断面積に反比例するので、1条の断面積は nI2 に比例します。電線が全部でN 条なら、電線量は N×n×I2 に比例します。あとは、方式ごとの電流を入れるだけです。下の表では、単相2線式の電流を1としています。

方式
(そろえる電圧)
電流 電線量
単相2線式
(2線間)
1 2×2×1=4
これを1とする
単相3線式
(外線と
中性線の間)
1/2 3×2×(1/4)
=1.5 → 3/8
三相3線式
(線間)
1/√3 3×3×(1/3)
=3 → 3/4
三相4線式
(線と中性線の間)
1/3 4×3×(1/9)
=4/3 → 1/3

左の列の括弧が、単相2線式の電圧と同じ値にそろえた電圧です。単相3線式と三相4線式でそろえているのは、線と中性線のあいだの電圧です。つまり、単相3線式の外線どうしの電圧は2倍、三相4線式の線間電圧は √3 倍になっています。この2つの方式で電線量が大きく減るのは、中性線を1本足すことで、実質的に高い電圧で送っているからです。表は、中性線を外線と同じ太さとし、負荷が平衡しているとした値です。中性線を細くすれば、比はもう少し小さくなります。

そろえる電圧を変えれば、比も変わります。電線量は電圧の2乗に反比例するので、三相3線式の線間電圧を単相2線式の2倍にすると (3/4)×(1/4)=3/16 です。「三相3線式は3/4」は、線間電圧を同じにしたときの値です。数字を覚える前に、何をそろえた比なのかを問題文で確かめます。

計算例4|電線量の比の確かめ

設定。200 V で20 kW の負荷(力率1)に、同じ長さの線路で送る。線路の損失を400 W にするには、電線1条の抵抗をいくらにすればよいか。単相2線式と三相3線式のそれぞれで求め、電線量を比べる。

① 単相2線式の電流:20,000/200=100 A
2×1002×R=400 より R=0.02 Ω

② 三相3線式の電流:100/√3≒57.7 A
3×(100/√3)2×R=10,000×R=400
より R=0.04 Ω

③ 抵抗が2倍 → 断面積は半分

④ 電線量の比:(3本×1/2)/(2本×1)=3/4

読み取り。三相3線式は、半分の太さの電線3本で足ります。本数は1.5倍でも、量は4分の3です。表の 3×3×(1/3)=3 と 2×2×1=4 の比と同じになりました。

途中に負荷がある線路

送電線の計算では、負荷は受電端に1つでした。配電線には、線路の途中にいくつもの負荷がつながっています。電源に近い区間には、その先にあるすべての負荷の電流が流れ、先へ行くほど電流は減っていきます。電圧降下も損失も、区間ごとに、その区間を流れる電流で計算してから足します。

負荷ごとに力率が違うと、電流は大きさだけでは足せません。有効分と無効分に分けてから足します。次の例は、力率が同じ負荷どうしなので、電流の大きさをそのまま足しています。

計算例5|2か所に負荷がある線路

設定。計算例1と同じ電線(0.32 Ω/km、0.35 Ω/km)の三相3線式の配電線で、変電所から1.5 km の点 A に80 A、そこから1.0 km 先の末端 B に60 A の負荷がある。力率はどちらも0.75(遅れ)である。変電所から B までの電圧降下と、線路の損失を求める。

① 変電所〜A:電流は 80+60=140 A
抵抗0.48 Ω、リアクタンス0.525 Ω

② この区間の降下:√3×140×(0.48×0.75+0.525×0.6614)
=√3×140×0.7072≒171.5 V

③ A〜B:電流は60 A
抵抗0.32 Ω、リアクタンス0.35 Ω

④ この区間の降下:√3×60×(0.32×0.75+0.35×0.6614)
=√3×60×0.4715≒49.0 V

⑤ B までの降下:171.5+49.0=220.5 V

⑥ 損失:3×1402×0.48+3×602×0.32
=28,224+3,456=31,680 W

読み取り。合計の電流140 A と、線路の長さ2.5 km は、計算例1と同じです。140 A がすべて末端にあった計算例1は、電圧降下が285.8 V、損失が47,040 W でした。80 A が手前の A で降りるだけで、降下は約0.77倍、損失は約0.67倍になります。全部の電流を全長に流して計算すると、どちらも大きく出すぎます。

負荷が線路に沿って切れ目なく一様に並んでいるときは、電流が、電源側の端の I から末端の0まで、直線的に減っていきます。区間ごとの電圧降下を足し合わせると、全部の負荷が末端に集まっている場合の2分の1になります。損失は、電流の2乗を足し合わせるので、3分の1です。街路灯が等間隔に並んだ線路のような場合の見積もりに使います。

力率改善と配電線路の損失

工場やビルの負荷は電動機が多く、遅れの無効電力を必要とします。無効電力も電流として線路を流れるので、その分だけ電流が増え、電圧降下と損失が増えます。負荷と並列にコンデンサをつなぐと、必要な無効電力の一部をコンデンサがその場で出すので、線路を流れる無効電力が減ります。必要な容量は Qc=P(tan θ1−tan θ2) で、導き方は交流電力と力率改善と変電所の設備にあります。ここでは、配電線路の側で何が変わるかを見ます。有効電力と負荷の電圧はそのままで、力率だけを cos θ1 から cos θ2 に上げたとします。

変わるもの どう変わるか
線路の
電流
cos θ1/cos θ2 倍に減る。
線路の
損失
電流の2乗に比例するので、
(cos θ1/cos θ2)2 倍。
電圧降下 三相3線式なら、
QcX/V だけ減る。
有効電力の分は残る。
設備の
余裕
皮相電力が減るので、
変圧器と電線に余裕ができる。

効果が出るのは、コンデンサをつないだ点から電源側だけです。コンデンサと負荷のあいだの線路には、今までどおり、負荷が必要とする無効電力が流れます。変電所の母線にコンデンサを置いても、そこから負荷までの配電線の電流は変わりません。配電線の損失と電圧降下を減らしたければ、負荷に近いところに置きます。

日本電気技術者協会の解説講座は、200 A、力率80%で動いている電動機の負荷端にコンデンサを置いて力率をほぼ100%にすると、配電線の電流が160 A に減り、こう長50 m のケーブルの損失が約1.43 kW から約0.92 kW に下がる、という試算を示しています。同じ講座は、省エネルギーに関する事業者の判断基準として、受電端の力率を90%以上とすることと、進相コンデンサを、それをつけた設備の稼働・停止に合わせて入り切りすることを紹介しています(講座が書かれた時点の基準です)。負荷が止まっているのにコンデンサだけがつながっていると、進みの無効電流が線路を流れて、かえって損失が出ます。電圧も上がります。送電の電気的計算の、進み力率の計算例と同じことが起こります。

計算例6|力率を0.95にした線路

設定。計算例1の負荷(6,600 V、1,200 kW、遅れ力率0.75)のすぐそばにコンデンサを置いて、力率を0.95(遅れ)にする。コンデンサの容量と、線路(1条あたり0.8 Ω、0.875 Ω)の電流、損失、電圧降下を求める。負荷の電圧は6,600 V のままとする。

① tan θ1=0.6614/0.75≒0.8819
tan θ2=√(1−0.952)/0.95≒0.3287

② 容量:1,200×(0.8819−0.3287)≒664 kvar

③ 電流:140×0.75/0.95≒110.5 A

④ 損失:3×110.52×0.8≒29,300 W

⑤ 残る無効電力:
1,200×0.3287≒394.4 kvar

⑥ 電圧降下:
(1,200×0.8+394.4×0.875)/6.6
=(960+345.1)/6.6≒197.7 V
(約3.0%)

読み取り。電流は約0.79倍、損失は47,040 W の約0.62倍になりました。0.62は (0.75/0.95)2 です。電圧降下は285.8 V から197.7 V へ、約88 V 減っています。減った分は 664×0.875/6.6≒88 V で、コンデンサが引き受けた無効電力にリアクタンスを掛けたものです。有効電力による 960/6.6≒145 V は、コンデンサでは減りません。皮相電力は、1,600 kV·A から約1,263 kV·A に下がるので、同じ変圧器と電線に、ほかの負荷を足せる余裕もできます。

取り違えやすい点の整理

確かめる点 取り違えやすいところ
2と √3 2は、行きと帰りの2条。
√3 は、相電圧の降下を
線間電圧に直す倍率。
単相3線式
の係数
1になるのは、負荷が平衡
していて、外線と中性線の
間の電圧を見るとき。
抵抗だけ
の式
リアクタンスを無視しても、
cos θ は残る。
消えるのは力率1のとき。
中性線の
電流
2つの負荷の電流の差。
和ではない。
中性線の
断線
高い電圧がかかるのは、
消費電力の小さい負荷。
電線量
の比
そろえた電圧で値が変わる。
3/8 と1/3 は、中性線との
間の電圧をそろえた値。
途中の
負荷
区間ごとの電流で計算する。
全電流を全長に流さない。
コンデンサ
の位置
電流が減るのは、
つないだ点から電源側だけ。

理解度チェック

仕上げに3問です。どれも当サイトでつくった問題で、実際の試験問題を写したものではありません。解答の欄には、ほかの4つの選択肢が、どこを取り違えると出てくるのかも書いてあります。

確認1|負荷が偏った単相3線式

単相3線式の線路で、電源の電圧は、外線と中性線のあいだがどちらも105 V である。電線の抵抗は、外線も中性線も1条あたり0.1 Ω で、リアクタンスは無視する。A 側に30 A、B 側に18 A の抵抗負荷がつながっているとき、B 側の負荷にかかる電圧[V]はいくらか。

  1. (1)100.8
  2. (2)101.4
  3. (3)102.0
  4. (4)103.2
  5. (5)104.4

確認2|負荷が2つある単相2線式

単相2線式の線路で、電線1条あたりの抵抗は、電源から点 A までが0.05 Ω、点 A から末端の点 B までが0.1 Ω である。点 A に20 A、点 B に10 A の抵抗負荷がつながっている。電源から点 B までの電圧降下[V]はいくらか。リアクタンスは無視する。

  1. (1)2.5
  2. (2)4.0
  3. (3)5.0
  4. (4)7.0
  5. (5)9.0

確認3|5つの記述の正誤

配電線路について述べた次の5つの文のうち、正しいものはどれか。

  1. (1)同じ電力を、同じ線間電圧、同じ力率、同じ太さの電線で送るとき、三相3線式の線路の損失は、単相2線式の2分の1である。
  2. (2)送る電力、距離、損失、線間電圧を同じにして比べると、三相3線式に必要な電線の量は、単相2線式の8分の3である。
  3. (3)単相3線式の中性線が切れると、2つの負荷のうち、消費電力の大きいほうに高い電圧がかかる。
  4. (4)力率改善用のコンデンサを配電用変電所の母線につなぐと、その母線から負荷までの配電線の損失も減る。
  5. (5)電気設備の技術基準を定めた省令では、交流の電圧は、600 V を超え10,000 V 以下のものを高圧としている。

まとめ

  • 電圧降下は、1条分の I(R cos θ+X sin θ) に係数を掛ける。単相2線式は2、三相3線式は √3、平衡した単相3線式(外線と中性線の間)は1。
  • 損失は、電流が流れる電線ごとの I2R の和。同じ電力・線間電圧・電線なら、三相3線式は単相2線式の半分。
  • 単相3線式の中性線には、電流の差が流れる。差があると、損失が増え、軽い側の電圧が高めになる。バランサは、外線の電流をそろえる。
  • 中性線が切れると、2つの負荷が200 V に直列になり、消費電力の小さい負荷に高い電圧がかかる。
  • 電線量は N×n×I2 に比例する。単相2線式を1として、単相3線式は3/8、三相3線式は3/4、三相4線式は1/3。そろえた電圧とセットで読む。
  • 途中に負荷がある線路は、区間ごとの電流で計算する。一様に並んだ負荷では、末端に集めた場合に比べて降下が1/2、損失が1/3。
  • 力率改善で、電流は cos θ1/cos θ2 倍、損失はその2乗倍になる。効くのは、コンデンサから電源側の線路だけ。

演習と、前後のテーマ

外部の資料は、2026年10月3日に本文を読んで確かめたものです。電圧の3つの区分は技術基準の省令の第2条、供給電圧の幅は電気事業法施行規則の第38条で、どちらも e-Gov 法令検索の条文を見ました。配電用変電所から家庭までの電圧の段階は、電気事業連合会のページにあります。自動電圧調整器、スポットネットワーク方式、異容量V結線、力率改善の試算と事業者の判断基準の4点は、日本電気技術者協会が公開している解説講座から引きました。電力科目に配電線路が含まれることは、試験センターの試験概要で確かめています。方式ごとの電圧降下と損失の式、平衡していない単相3線式とバランサの計算、中性線が切れたときの電圧、電線量の比、一様に並んだ負荷の2分の1と3分の1は、送配電の教科書で広く扱われている事項で、ここでは式から計算し直しています。中性線にヒューズを入れないという点は、配線の原則として書きました。もとになる規定(電気設備の技術基準の解釈)は、公開ページを開けなかったので、今回は原文を確かめられていません。計算例と確認問題の数値は仮に置いたもので、実在の配電線の値ではありません。この記事は、電験三種を独学中の個人が書いています。配電線路の設計や工事の経験にもとづくものではありません。

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