系統の事故の計算で手が止まるのは、相電圧と線間電圧のどちらを式に入れるか、です。中性点の抵抗にかかるのは何 V か。地絡電流の式の3は、√3 と何が違うのか。短絡電流の基準電流は、なぜ √3 で割るのか。距離リレーは、どの電圧をどの電流で割っているのか。三相の事故は、1相分の回路に直すと、どれも同じ形で解けます。この回は、接地方式の見分け方が1問、非接地系統の1線地絡が2問、短絡電流が1問、送電線の保護が1問です。
5問は、どれもこのページのために新しく作りました。本番で出た問題の文や数値は借りていません。正解以外の4つの選択肢は、何を取り違えた結果なのかを、解答欄で1つずつたどります。電圧、静電容量、変圧器の容量、こう長は、計算の道すじを見せるために置いた数字で、実在の系統を調べた値ではありません。
それぞれの接地方式が使われる理由と、式の出どころは、電力系統の保護と安定の解説記事にまとめてあります。解答欄を読んで引っかかったところは、そちらで確かめられます。追加の演習として、ミニテスト第2回と第3回も用意しています。
はじめに|入れる電圧と式
問題文の電圧は、ふつう線間電圧 V で書かれています。事故のときに1相分の回路にかかるのは、相電圧 E=V/√3 です。この回で使う4つの式を、入れる電圧といっしょに並べます。
| 求めるもの | 式 | 入れる電圧 |
|---|---|---|
| 抵抗接地 中性点電流 |
E/R | 相電圧 |
| 非接地 地絡電流 |
3ωCE | 相電圧 |
| 三相短絡 短絡電流 |
In×100/%Z In=P/(√3 V) |
線間電圧 √3 で割る |
| 距離リレー 事故点まで |
Z=E/I | 相電圧 |
R は中性点と大地のあいだに入れた抵抗、C は電線1条あたりの対地静電容量を母線につながる線路ぜんぶで合計したもの、ω は 2πf です。P は基準容量、In はその基準電流で、%Z は同じ基準容量に直した値を使います。4つとも、事故点の抵抗を0とした完全な地絡と短絡の式です。
5問の計算は、四則演算と √ のキーだけで足ります。本番で使える電卓もそこまでで、関数電卓は使えないと、試験センターの第三種の案内に書かれています。ω は 2×3.1416×50=314.16 と、手で出しておきます。
第1問|5つの接地方式
送電系統と配電系統の中性点のつなぎ方について述べた(1)〜(5)の中に、内容の正しい文が1つだけある。それはどれか。
- (1)直接接地方式は、1線地絡の電流が大きすぎて、保護リレーが地絡を見分けにくい。そのため、事故を切り離すまでに時間がかかる。
- (2)抵抗接地方式では、中性点の抵抗を大きくするほど1線地絡の電流が増え、保護リレーが地絡を見つけやすくなる。
- (3)消弧リアクトル接地方式は、地絡のアークを自然に消して送電を続ける方式なので、地中ケーブルが主体の系統に向いている。
- (4)補償リアクトル接地方式は、中性点の抵抗をリアクトルに取り替えた方式で、1線地絡が起きても遮断せずに送電を続ける。
- (5)非接地方式は、1線地絡のときに健全な相の対地電圧が上がる割合が、5つの方式の中で最も大きい。ただし6.6 kV の配電系統では、上がる電圧の大きさそのものは小さい。
第2問|地絡のあとの電圧
線間電圧が6,600 V の非接地の配電系統で、a 相の電線が大地に触れた。地絡点の抵抗は0で、a 相の対地電圧は0 V になったものとする。このときの (a)、(b)、(c) の電圧[V]の組み合わせで、正しいのはどれか。
- (a) b 相の対地電圧
- (b) 零相電圧(中性点の対地電圧)
- (c) a 相と b 相のあいだの線間電圧
- (1)(a) 6,600 (b) 3,810 (c) 6,600
- (2)(a) 3,810 (b) 0 (c) 6,600
- (3)(a) 6,600 (b) 6,600 (c) 6,600
- (4)(a) 6,600 (b) 3,810 (c) 11,430
- (5)(a) 6,600 (b) 3,810 (c) 3,810
第3問|地絡電流の大きさ
6.6 kV・50 Hz の非接地の配電系統がある。配電用変電所の母線から出ている配電線は、架空線が合わせて80 km、地中ケーブルが合わせて6 km である。電線1条あたりの対地静電容量は、架空線が0.005 µF/km、ケーブルが0.30 µF/km とする。この系統のどこかで完全な1線地絡が起きたとき、地絡点に流れる電流は約何 A か。EVT の抵抗を通る電流は考えない。
- (1)約2.6 A
- (2)約4.6 A
- (3)約6.5 A
- (4)約7.9 A
- (5)約13.7 A
第4問|並列2台の短絡電流
77 kV の母線と6.6 kV の母線のあいだに、変圧器 A と変圧器 B が並列に入っている。77 kV の母線の三相短絡容量は2,000 MV·A である。変圧器 A は容量30 MV·A で%インピーダンス10%、変圧器 B は容量15 MV·A で%インピーダンス7.5% で、どちらも自分の容量を基準にした値である。6.6 kV の母線で3相がまとめて短絡すると、事故点には約何 kA の電流が流れるか。抵抗は考えず、リアクタンスだけで計算する。
- (1)約9.9 kA
- (2)約22.8 kA
- (3)約35.0 kA
- (4)約45.4 kA
- (5)約60.6 kA
第5問|距離リレーの判定
A 端と B 端を結ぶ、こう長70 km の77 kV 送電線(1回線)がある。電線1条あたりのインピーダンスは0.50 Ω/km で、リアクタンスだけとする。この線路の途中で三相短絡が起きた。A 端の距離リレーが事故のあいだに測った値は、線間電圧が26.0 kV、A 端から線路へ流れ出す電流が1相あたり1,500 A だった。事故点は、A 端から約何 km のところか。事故点の抵抗は0とする。
- (1)約10.0 km
- (2)約20.0 km
- (3)約34.7 km
- (4)約50.0 km
- (5)約60.0 km
4つの事故を並べる
この回に出てきた4つの事故を、電流の小さい順に並べます。数値は問題ごとに置いたもので、1つの系統をたどった値ではありません。
| 事故 | 電流 | 電流を 決めるもの |
|---|---|---|
| 1線地絡 6.6 kV 非接地 第3問 |
7.9 A | 線路ぜんぶの 対地静電容量 |
| 1線地絡 77 kV 抵抗接地 第1問の解答 |
296 A | 中性点の抵抗 |
| 三相短絡 77 kV 送電線 第5問 |
1,500 A | 電源から 事故点までの インピーダンス |
| 三相短絡 6.6 kV 母線 第4問 |
35.0 kA | 基準をそろえた %Z の合計 |
いちばん小さい7.9 A と、いちばん大きい35,000 A では、4,400倍ほどの開きがあります。電流の桁がこれだけ違うので、見つけ方も切り方も同じにはなりません。35.0 kA は、遮断器がその電流を切れるかどうかを確かめるための値です。7.9 A は、電流の大きさでは負荷と区別できないので、零相電圧と零相電流の向きを使います。296 A は、通信線への誘導を抑えながら、リレーが地絡を見つけられるように、抵抗で決めた値です。
- 接地方式:中性点に入れるもので、地絡電流と、健全な相の電圧の上がり方が、逆向きに決まる。抵抗を大きくすれば、電流は減る。
- 非接地の電圧:完全地絡で大地は地絡した相と同じ電位になる。健全な相は、対地電圧が線間電圧と同じ値まで上がる。零相電圧は相電圧と同じ値。線間電圧は変わらない。
- 非接地の地絡電流:3ωCE。C は母線につながる線路ぜんぶの合計。E を入れるなら3、V を入れるなら √3。
- 短絡電流:基準容量をそろえる。並列は抵抗の並列と同じ形でまとめ、直列は足す。基準電流は √3 で割る。
- 距離リレー:自分の端の相電圧を電流で割り、事故点までのインピーダンスを出す。電源側の事情で電流が変わっても、比は変わらない。
次に読むところ
- 解説記事:電力系統の保護と安定|中性点接地方式・地絡の見つけ方・%Zの合成・過渡安定度と再閉路。事故の回線を零相電流の向きで選ぶ計算、二相短絡、再閉路、事故を切る速さと過渡安定度もある。
- 同じテーマの追加演習:電力系統の保護と安定 ミニテスト第2回(変圧器の保護、過渡安定度の向上策、保護協調)と、第3回(漏電遮断器、短絡容量、高速度再閉路、安定度の3種類)。
- ひとつ前のテーマ:配電方式と配電計算。ミニテスト第1回とあわせて、事故のないときの電圧降下と損失を扱う。第5問の(1)で触れた、往復2条を数える単相2線式の計算がある。
- ひとつ先:電気材料の種類と特性と、そのミニテスト第1回。導電材料、絶縁材料、磁性材料へ進む。
- 受電設備の側の保護:変電所の保護装置と、そのミニテスト第1回。構内のケーブルの充電電流から、地絡リレーの方式を選ぶ問題がある。第3問と同じ式を、需要家の側で使う。
- %Z 1つから短絡電流を出す:変電所の設備。第4問の土台になる計算と、遮断器の選び方。
- ケーブルの静電容量:地中送電線路。第3問で、短いケーブルが地絡電流の大半を占めた理由。
- 1相分の回路と √3:三相交流回路。相電圧と線間電圧の関係。
- 試験の日程:電験三種の日程と科目合格のしくみで、受ける時期と科目の順番を決める。
- 電験三種のあとの資格選び:ビルメン資格の学習ロードマップに、資格を取る順番の考え方がある。
出典と確認先
問題の設定、数値、25の選択肢、表3点は、このサイトで用意しました。解説の裏づけとして読んだ資料を挙げます。
- 過去の本試験の問題と解答(電気技術者試験センターのサイト) 実施回ごとの本番の問題。接地方式や短絡電流が、どんな条件で問われたかを原文で読める。
- 日本電気技術者協会の講座「中性点接地方式」 第1問の5つの記述と、抵抗値・中性点電流の目安、有効接地の30%、ケーブルの静電容量。
- 同協会の講座「架空送電線の再閉路」 第1問の(3)。架空線の事故は一時的なものがほとんどで、地中送電線や機器の事故は絶縁物の破壊であること。
- 同協会の講座「6kV配電系統の地絡検出と保護」 第2問と第3問。線間電圧がほとんど変わらないこと、EVT に現れる電圧、過電流リレーでは見つけられないこと。
- 同協会の講座(%インピーダンスと短絡電流の計算) 第4問。%Z が基準容量に比例することと、基準をそろえてから合成すること。
- 電気学会の用語解説「モーリレー」(電力・エネルギー部門) 第5問。距離リレーが、設置点の電圧と電流から事故点までの線路インピーダンスを求めること。
- 日本電気技術者協会の講座「電力系統用保護継電器の変遷(2)」 第5問。ディジタル形の電流差動リレー。
上に挙げた資料は、どれも2026年10月3日に開いて、該当する箇所を読みました。5つの接地方式の特徴と使われる系統、6.6 kV 配電系統の地絡の見つけ方、%インピーダンスの換算、距離リレーと電流差動リレーの説明は、上の資料の記述に沿っています。抵抗接地の中性点電流を相電圧÷抵抗で出すこと、非接地系統の地絡電流と対地電圧、並列にした%インピーダンスのまとめ方、三相短絡を1相分の回路で解くことは、送配電の教科書で広く扱われている内容です。数値はこのページ用に置いて、計算をやり直しました。第5問の、電源側のインピーダンスを変えた表と、4つの事故の電流を並べた表は、当サイトの計算です。距離リレーの実際の整定や、変圧器を並列にするかどうかの判断には、ここで扱っていない条件がいくつもあります。このページの書き手は、電験三種を独学で勉強している個人です。系統の保護や運用を仕事にしたことはないので、実際の設備の扱いは、電力会社や国の公開資料を見て判断してください。
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
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