電動力応用では、「どこで測ったkWか」を決めてから計算しましょう。荷物や流体に渡る動力、電動機の軸から出る動力、電源から入る電力は、損失があれば同じ値になりません。
この第1回は、部分積載のエレベータ、揚水ポンプ、送風機、速度変更、回転体の加速を扱う独自の5問です。答えを1つ選び、「解答を見る」で途中式と全選択肢の理由を確認してください。数値と効率は演習用の設定です。
公式から復習するなら電動力応用の解説記事へ。基本式を繰り返し使う練習には第2回・第3回も利用できます。
第1問|満載でないエレベータの電気入力
ロープ式エレベータのかごの質量は950 kg、定格積載質量は1,000 kgである。釣合いおもりの質量は、かごの質量に定格積載質量の45%を加えた値とする。
実際には680 kgを積み、かごを96 m/minの一定速度で上昇させる。かごとおもりは同じ速さで逆向きに動くものとし、ロープ質量・加減速は無視する。
- 電動機軸から昇降機構への機械効率:80%(機構の摩擦損失を含む)
- 電動機効率:92%
- 重力加速度:9.8 m/s2
補助装置の消費電力と余裕係数は考えない。この運転中に電動機へ入る電力として、最も近い値はどれか。
- (1)3.61 kW
- (2)3.92 kW
- (3)4.90 kW
- (4)4.51 kW
- (5)34.73 kW
第2問|高さだけでなく配管損失も含める
大きな開放水槽から、自由水面が16 m高い別の開放水槽へ、水を144 m3/h送る。両水面は大気圧で、水面の流速は無視できる。指定流量での配管・弁などの損失水頭の合計は8 mである。
水の密度は1,000 kg/m3、重力加速度は9.8 m/s2、ポンプ効率は70%、直結する電動機の効率は84%とする。ポンプ効率にはポンプ内部の損失だけを含み、配管等の損失は含めない。余裕係数と補助電力は考えない。
一定流量で運転しているときの電動機の電気入力として、最も近い値はどれか。
- (1)9.41 kW
- (2)13.44 kW
- (3)5.53 kW
- (4)16.00 kW
- (5)10.67 kW
第3問|送風機の軸出力と4時間の電力量
低圧の送風機を、風量450 m3/min、全圧上昇0.84 kPaで4時間連続運転する。空気の圧縮性と密度変化は無視し、運転点は一定とする。
送風機の全圧効率(空気動力÷軸入力)は75%、直結する電動機の効率は90%である。伝達損失、制御装置・補助装置の消費電力、始動時の電力量、余裕係数は考えない。
必要な電動機軸出力と、4時間の電動機入力電力量の組み合わせとして、最も近いものはどれか。
- (1)軸出力8.40 kW、電力量37.3 kWh
- (2)軸出力6.30 kW、電力量25.2 kWh
- (3)軸出力8.40 kW、電力量33.6 kWh
- (4)軸出力504 kW、電力量2,240 kWh
- (5)軸出力9.33 kW、電力量37.3 kWh
第4問|回転速度が90%でも入力は72.9%とは限らない
実揚程のない密閉循環系で、遠心ポンプの回転速度を1,450 min−1から1,305 min−1へ下げる。同じ羽根車・同じ液体で運転し、管路の抵抗条件は変わらず、抵抗水頭は流量の2乗に比例する。両運転点は相似で、ポンプ効率は変わらないとする。
変更前のポンプ軸動力は12.0 kW。直結する電動機効率は変更前90%、変更後81%とする。制御装置や補助装置の電力は含めず、電動機端子での電気入力を比較する。
変更後の電気入力が変更前に対して占める割合と、その削減率の組み合わせはどれか。
- (1)入力は72.9%、削減率は27.1%
- (2)入力は81.0%、削減率は19.0%
- (3)入力は90.0%、削減率は10.0%
- (4)入力は65.61%、削減率は34.39%
- (5)入力は81.0%、削減率は81.0%
第5問|負荷を回しながら加速する時間
電動機と負荷を合わせ、電動機軸に換算した全慣性モーメントは2.4 kg·m2である。回転速度600 min−1から1,500 min−1まで、同じ方向に加速する。
この速度区間では電動機トルクが48 N·m、回転を妨げる負荷トルクが18 N·mで、ともに一定とする。摩擦抵抗は負荷トルクに含み、慣性モーメントも一定とする。
1,500 min−1へ到達するまでの時間として、最も近い値はどれか。円周率はπ=3.1416とする。
- (1)4.71秒
- (2)12.57秒
- (3)72.00秒
- (4)3.43秒
- (5)7.54秒
整理表|効率の位置と単位を先に書く
効率は「出てくる動力÷入る動力」です。下表は、電動機から負荷へ動力を渡す力行運転での整理です。
| 計算する位置 | 負荷側からの求め方 | 今回の例 |
|---|---|---|
| 荷物・流体へ渡る動力 | 昇降:Δmgv ポンプ:ρgQH 送風機:QΔp |
第1問は質量差、第2問は全揚程、第3問は全圧を使う |
| 電動機軸出力 | 負荷へ渡る動力÷機械側の効率 | 第2問13.44 kW、第3問8.40 kW |
| 電動機の電気入力 | 軸出力÷電動機効率 | 第2問16.00 kW。電力量にはこの段階の電力を使う |
「ポンプの入力」は軸動力、「電動機の入力」は電気入力を指します。同じ「入力」でも、対象を省くと1段ずれます。設問の余白に「水→ポンプ軸→電源」のように書いて位置を確かめてください。
| 与えられた量 | 式へ入れる前の処理 | 混同しやすいもの |
|---|---|---|
| 速度 m/min |
60で割りm/sへ | 昇降速度と回転速度は別の量 |
| 流量 m3/min m3/h |
それぞれ60・3,600で割りm3/sへ | 分単位と時単位の割り数 |
| 圧力kPa | 1,000倍してPaへ | QΔp はQがm3/s、ΔpがPaならW |
| 回転速度n [min−1] |
ω=2πn/60 | 加速時間には到達速度ではなく増加量を使う |
| 動力比・削減率 | 入力比=軸動力比×変更前効率÷変更後効率 | 削減率は「1−入力比」。相似条件と各効率も確認 |
電力量のkWhは、kWに時間hを掛けたものです。第3問の4時間を秒へ直すなら、得られる単位もkJなどへ変わります。数値だけを換算せず、単位を最後まで添えましょう。
間違えた箇所から復習する
- 第1問:おもりを決める定格積載量と、運転時の実積載量を別に書きます。公式と力行・制動の考え方は電動力応用の親記事へ。
- 第2・3問:単位を直してから、流体の動力、軸動力、電気入力を3段で計算します。運転点や測定の見方は配管・弁・ポンプの診断とダクト・吹出口・送風機の診断で扱っています。
- 第4問:速度の3乗で求めた値が何の比かを確認します。周波数を変える方法は誘導電動機の始動法と速度制御へ。
- 第5問:電動機トルクから負荷トルクを引き、速度の増加量をrad/sへ直します。
- 追加の5問:電動力応用 第2回、第3回。式の条件に迷った場合は親記事も参照してください。
- 前のテーマ:照明と電熱の解説・第1回ミニテスト。電気入力と有効に使われるエネルギーの区別を復習できます。
- 次のテーマ:自動制御の基礎・第1回ミニテスト。速度や流量を目標値に合わせる仕組みへ進みます。
式の前提を確認できる資料
数値・選択肢・解き方は本ページ用に作成しました。原理や用語は、次の技術資料と照合しています。
- 日本電気技術者協会「機械装置駆動用電動機の所要出力の算出方法」:ポンプ・送風機・巻上機・エレベータの動力。おもりの割合は本問の指定値を用いています。
- 環境省「空気調和用搬送動力低減設備の導入」(PDF):全揚程と実揚程・配管損失の関係。
- 日本電気技術者協会「ポンプ・ファンの回転数制御による省エネの実際」:管路抵抗、実揚程、回転数制御時の運転点。
- 日本電気技術者協会「電動機の機械エネルギー」:仕事・動力、角速度、回転体の慣性。
- 日本電気技術者協会「三相誘導電動機の保護システム」:負荷トルクを差し引いた加速トルクと始動時間。
- 電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の問題と解答」:公表問題で学習を続ける際の公式確認先。このページの5問は公式試験問題ではありません。
資料確認・改訂:2026年10月28日。演習の条件を明示し、入力と出力を段階ごとに追えるよう解説を見直しました。
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