機械

同期機の原理と特性|同期速度・励磁・V曲線・並行運転【電験三種】

同期機は、交流の周波数と回転速度が極数を介して結び付く回転機です。発電機としては軸の回転を電力へ、電動機としては電力を軸の回転へ変換します。

「同期速度で回る」は、同期運転が成立しているときの説明です。始動中や脱調時まで同じ速度とは限りません。また、直流の界磁電流を使う機種と、永久磁石を使う機種を分けて考えます。

ここでは電験三種で基本となる巻線界磁式の三相同期機を中心に説明します。三相交流の回転磁界は誘導電動機の原理と構造、演習は同期機の原理と特性ミニテスト第1回で確認できます。以下の計算例と問題は学習用の独自設定です。

1.同期速度|負荷が変わると何が変わる?

極数 p はN極とS極を合計した数です。2極なら磁極は1組、4極なら2組あります。回転子が1回転すると、電圧は p/2 周期変化します。

回転速度 n を1分間の回転数 [min−1] で表すと、1秒間では n/60 回転です。したがって、周波数 f [Hz] は次のようになります。

f=(p/2)×(n/60)
=pn/120

同期速度:ns=120f/p [min−1]

電源の周波数と極数が同じなら、安定した同期運転の回転速度は同じです。負荷を増やすと、回転子と回転磁界の位置関係を表す角度が変わり、必要なトルクを受け持ちます。負荷変更の途中には速度の揺れもあります。

限界を超えた負荷や系統の事故などで、この位置関係を保てなくなる現象が脱調(だっちょう)です。「負荷にかかわらず、いつでも一定速度」と覚えると、脱調や始動を説明できなくなります。

比較する点 一般的な三相誘導電動機 同期電動機
通常の電動運転 軸は回転磁界より遅い 同期が成立すれば同じ速度
すべり 負荷・機種で変化する 定常同期運転では0
磁界の作り方 固定子の励磁電流と回転子の誘導電流 界磁巻線や永久磁石など

誘導電動機のすべりを「常に2〜5%」とは決められません。また、一般的な誘導電動機に独立した直流励磁装置がないことと、励磁そのものが不要であることは別です。

練習例1|600 min−1で50 Hzを発電する極数

同期発電機が600 min−1で回っています。発生する電圧が50 Hzなら、極数はいくつでしょうか。

2.界磁と電機子|巻線界磁式と永久磁石式

界磁(かいじ)は主な磁界を作る部分、電機子(でんきし)は起電力が生じ、電力をやり取りする巻線の部分です。大容量の同期発電機では、固定子に三相の電機子巻線、回転子に界磁を置く回転界磁形が一般的です。

巻線界磁式では、回転子の界磁巻線へ直流を流します。回転子とともに動く座標では磁極の向きが一定でも、固定子から見ると磁極が回ってくるため、電機子に交流の起電力が生じます。

界磁の方式 磁界を作るもの 学ぶときの注意
巻線界磁式 直流を流した界磁巻線 界磁電流を調整できる
永久磁石式(PM) 回転子の永久磁石 直流を流す界磁巻線はない

PM式にも固定子の巻線と駆動用電源は必要です。「直流界磁巻線がない」からといって、電気を使わずに電動機として仕事をするわけではありません。界磁電流を変える後述のV曲線を、そのままPM式へ当てはめることもできません。

同期機には磁気抵抗の方向差を利用するリラクタンス形などもあります。ここでの2方式は、このページで比較する代表例です。メーカーの実例として、富士電機の同期ドライブシステムでは、永久磁石を持つ回転子とインバータを組み合わせた構成を確認できます。

円筒形と突極形は、回転子の形状の違い

形状 代表的な用途 回転速度との関係
円筒形(非突極形) 大型の蒸気タービン発電機 高速・少極に適した構造
突極形 多極の水車発電機 比較的低速で多くの磁極を配置

これは代表的な組み合わせです。すべての火力・水力発電機を、発電方式の名前だけで分類できるという意味ではありません。例えば2極・50 Hzなら3000 min−1、同じ2極でも60 Hzなら3600 min−1です。速度の数値には周波数の条件が要ります。

3.誘導起電力|巻線係数と相電圧を忘れない

正弦波の磁束分布を前提とする基本波の誘導起電力は、1相分について次の式で表せます。

E=4.44kwfNΦ [V]

  • E:1相の誘導起電力の実効値 [V]
  • kw:巻線係数。巻線を分散して配置することやコイルの幅による影響をまとめた値
  • f:周波数 [Hz]
  • N:1相の直列巻数。回転速度の n とは別の記号
  • Φ:1極当たりの磁束 [Wb]

正弦波の磁束と鎖交する1巻の起電力を微分から求め、実効値にすると係数は 2π/√2≒4.44 になります。これに直列巻数と巻線係数を掛けます。巻線係数を1とする問題では 4.44fNΦ に簡略化できますが、常に省いてよい値ではありません。

計算例|1相の起電力から線間電圧へ

巻線係数0.90、50 Hz、1相100巻、1極の磁束0.010 Wbとします。三相対称・Y結線で、無負荷とします。

E=4.44×0.90×50
×100×0.010=199.8 V

無負荷なら電機子電流による内部電圧降下を無視でき、相電圧は約199.8 V。Y結線の線間電圧は √3×199.8≒346 V です。4.44の式に代入して得た199.8 Vを、そのまま線間電圧にしないことがポイントです。負荷時は内部の電圧降下と位相関係も考えます。

起電力の実効値と巻線係数は、日本電気技術者協会「誘導起電力と電磁力」を確認先にできます。

4.同期電動機はどうやって回り始める?

停止した巻線界磁式同期電動機へ、いきなり商用周波数の三相交流を加えても、同期トルクだけで回転磁界へ追いつくことは通常できません。回転子を引く方向が短い周期で変わり、加速が続かないためです。

ただし「同期電動機は自力始動できない」の一言で終わらせると、始動用の構造や制御を備えた機種を説明できません。

始動方法 加速の仕組み 同期運転への移り方
制動巻線による始動 かご形導体を利用し、誘導電動機として加速 同期速度近くで界磁を励磁し引き入れる
始動用電動機 別の電動機で軸を回す 速度と同期条件を整えて切り替える
可変周波数電源 低い周波数から電圧・周波数などを制御 回転子の状態に合わせて加速する

制動巻線を使う方式は自己始動法とも呼ばれます。巻線界磁式では始動中の界磁回路にも処置が必要です。表は原理の整理であり、実機の操作手順は各機器の取扱説明書に従います。

始動法の説明は日本電気技術者協会「直流電動機、同期電動機、同期調相機」、可変周波数電源による方式は電気学会の用語「低周波始動」で確認できます。

同期電動機でも、インバータで周波数を変えれば速度を変えられます。また、効率は容量、負荷率、励磁損失、駆動装置などで変わるので、「同期機なら常に誘導機より高効率」とは断定できません。

5.V曲線|界磁を強くすると電流はどう変わる?

V曲線は、端子電圧・周波数・機械的負荷を一定に保ち、巻線界磁式同期電動機の界磁電流 If と電機子電流 Ia の関係を調べたものです。横軸が直流の界磁電流、縦軸が交流の電機子電流の実効値です。

損失の変化を無視して三相有効入力 P を一定とみなすと、線間電圧 VL、線電流 IL、力率 cosφ には P=√3VLILcosφ の関係があります。電圧と有効電力が固定なら、力率が1に近づくほど電流を小さくできます。

その負荷に対する励磁 電動機へ入る電流 電流の大きさ
不足励磁 端子電圧より遅れる 最小値より大きい
力率1となる励磁 端子電圧と同相 基本モデルでは最小
過励磁 端子電圧より進む 最小値より大きい

不足側から界磁電流を増やすと、電機子電流は小さくなり、底を過ぎると進み電流が増えて再び大きくなります。すでに底にいる場合は、そこから界磁電流を増やすと電機子電流も増えます。負荷を変えれば別のV曲線になるので、条件の違う点をつないで考えないようにしましょう。

練習例2|進み・遅れの両側で電流が増える理由

三相対称・Y結線の同期電動機で、1相の端子電圧を200 V、有効入力を7.2 kWとします。損失変化は無視します。各相で電圧と同相の電流成分は 7200/(3×200)=12 A です。

電圧より90°遅れる成分が9 Aある場合と、90°進む成分が9 Aある場合、電流の大きさと力率はそれぞれどうなるでしょうか。

電機子電流が最小でも、総合効率が最大とは限りません。電機子の銅損だけでなく、界磁巻線の銅損、鉄損、摩擦・風損、励磁装置などの損失を合わせて評価する必要があります。力率は交流入力の使われ方、効率は入力に対する有効な出力の割合で、別の指標です。

「内部起電力が端子電圧より大きい」だけでは判定できない

負荷がある同期電動機では、内部起電力と端子電圧の位相差も関係します。非突極機の1相分で電機子抵抗を無視し、電流を電源から電動機へ流れ込む向きに取ります。フェーザ(大きさと位相を表す量)では、端子電圧は内部起電力と同期リアクタンスの電圧降下の和です。

相電圧の実効値を V、内部起電力の実効値を E、内部起電力が端子電圧より遅れる角度を δ、同期リアクタンスを Xs [Ω] とすると、1相の進み方向の電流成分は、フェーザの関係から次のように求まります。

進み方向の電流成分 [A]
=(Ecosδ−V)/Xs

このモデルでは Ecosδ>V なら進み、等しければ力率1、小さければ遅れです。例えば E=220 V、V=200 V、δ=30° なら、Ecosδ≒190.5 V。E の大きさが V を超えていても、電流は遅れ側です。

この式は、協会資料の同期電動機の等価回路・ベクトル図を、進み方向の成分で書き表したものです。詳細な複素数計算は同期機の計算で扱います。

6.同期調相機|軸出力がなくても入力は必要

同期調相機(どうきちょうそうき)は、軸で外部の機械を駆動する代わりに、励磁を調整して無効電力をやり取りする同期機です。無効電力とは、磁界や電界の形成に関わり、電源と機器の間を往復する電力の成分です。

電動機へ流れ込む電流を基準にすると、過励磁では進み電流となり、進相コンデンサに似た補償ができます。不足励磁では遅れ電流となり、リアクトルのように遅れ無効電力を吸収します。用途は力率改善や系統電圧の調整です。

「無負荷」は外部への機械的な軸出力がないという意味です。実機には摩擦・風損・鉄損・銅損などがあるため、定常運転を続ける有効電力の入力も必要です。「無効電力だけを扱うから消費電力はゼロ」とは考えません。

系統電圧との関係は日本電気技術者協会「電力系統の電圧・無効電力制御」、有効・無効電力の符号は交流電力と力率改善で確認できます。

7.並列投入の条件と、投入後の電力分担

同期発電機を、すでに運転している交流系統や別の発電機へつなぎ、電力を分担することを並行運転(並列運転)といいます。投入前に比較するのは、接続する遮断器の両側の端子電圧です。

そろえるもの 確認する理由
電圧の大きさ 差が大きいと循環電流が生じる
周波数 違うと位相差が時間とともにずれる
投入時の位相 同じ時刻の電圧のずれを小さくする
相順(相回転) 三相の対応を一致させる
波形 基本波以外の差による循環電流も避ける

理論上はこれらを一致させます。実機では同期検定器や自動同期装置などを用い、機器で定めた許容差と投入条件を確認します。定格容量が同じであることは必要条件ではありません。

接続後は同じ母線の電圧・周波数で運転しますが、両発電機の内部起電力まで常に同じとは限りません。電圧・周波数がほぼ一定の大きな系統では、原動機への入力を変えると主に有効電力の分担が、励磁を変えると主に無効電力の分担が変わります。

容量に比例して自動的に分担するとは限らず、調速機や電圧調整器の設定なども関係します。独立した小規模な系統では、操作に伴い周波数・電圧も変化するため、大きな系統につながった場合と分けて考えます。

原理と循環電流は日本電気技術者協会「直流発電機、同期発電機」の同期発電機・並列運転の節を参照してください。

8.確認問題4問|条件を読んで判断する

確認問題1|回転子の形状を選ぶ

50 Hzの系統につながる、高速の大型蒸気タービン用・2極の巻線界磁式同期発電機を考えます。代表的な回転子の形状と定常回転速度の組み合わせはどれでしょうか。

  1. (1)円筒形・3000 min−1
  2. (2)円筒形・1500 min−1
  3. (3)円筒形・3600 min−1
  4. (4)多極の突極形・3000 min−1
  5. (5)かご形誘導機の回転子・3000 min−1

確認問題2|V曲線の底から界磁電流を増やす

巻線界磁式同期電動機が、力率1の点で安定運転しています。電圧・周波数・負荷は一定、損失変化は無視します。同期運転を保てる範囲で、界磁電流をその点から増やしたときの説明はどれでしょうか。

  1. (1)電機子電流は減り続け、0になる。
  2. (2)電機子電流が増え、進み力率になる。
  3. (3)電機子電流が増え、遅れ力率になる。
  4. (4)電機子電流が増えると、必ず総合効率も上がる。
  5. (5)電源周波数が同じでも、定常回転速度が上がる。

確認問題3|容量の違う発電機を並列にする

定格容量の異なる2台の同期発電機を、各機の許容範囲内で並行運転します。正しい説明を選んでください。

  1. (1)容量が違うため、電圧などの条件をそろえても接続できない。
  2. (2)周波数が同じなら、投入時の位相は確認しなくてよい。
  3. (3)端子電圧・周波数・位相・相順・波形などをそろえ、投入後の分担も調整する。
  4. (4)投入後は、内部起電力と有効電力の分担が必ず同じになる。
  5. (5)大きな系統につないだ後、有効電力の分担は主に励磁だけで決める。

確認問題4|同期調相機の「無負荷」を読む

外部へ機械的な軸出力を取り出さず、同期調相機を過励磁で定常運転しています。正しい説明はどれでしょうか。

  1. (1)軸出力が0なので、有効入力も必ず0である。
  2. (2)直流の電荷を蓄える蓄電池として働く。
  3. (3)電源から見た進み電流で力率改善に使え、損失を補う有効入力も必要である。
  4. (4)過励磁でも、電機子電流は必ず端子電圧より遅れる。
  5. (5)原動機なしで、損失を超える有効電力を継続的に発電する。

9.復習と次の学習

速度は周波数と極数、V曲線は一定の電圧・周波数・負荷、並列投入は遮断器の両側の電圧を出発点にします。「電機子電流が最小」と「効率が最大」、「外部への軸出力が0」と「入力が0」を区別できれば、暗記だけに頼らず判断できます。

試験範囲は電気技術者試験センターの第三種試験概要、公式問題は同センターの問題・解答で確認できます。本文の表・計算例・確認問題は独自に構成し、公式問題や他の解説の文章・図表を転載していません。

2026年10月15日確認・改訂。同期運転の成立条件、励磁方式、起電力の定義、V曲線と並行運転の説明を見直しました。本文の一次資料と照合し、数値は式から検算しています。運営者は資格を独学中の個人です。

※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-機械