地中送電線路の得点は、ケーブルの名前を覚えているかではなく、埋めたせいで新しく出てきた2つの制約を数字にできるかで決まります。逃がしきれない熱と、桁違いに大きい静電容量。この2つです。第1回で確かめるのは5つ。狙った電流を流すために周りの土へどれだけ熱を逃がさなければならないか、電圧をかけただけの線路がどれだけの無効電力を飲み込むか、布設方式を何を根拠に選ぶか、ケーブルから架空線へ抜ける雷サージがなぜ大きくなるか、掘る場所を静電容量の比からどう決めるか、です。
5問はこのページのために新しく作ったものです。答えを1つ選んで終わりにせず、選ばなかった4つがどの一手で崩れているのかまで、解答欄で拾ってください。電圧・こう長・静電容量・熱抵抗・サージインピーダンス・測定値に置いた数字は、計算の道すじをたどるために置いた設定で、実在する線路の設計値ではありません。
考え方から確かめたい人は、地中送電線路|許容電流・充電電流・雷サージ透過・故障点測定の計算に目を通しておくと、式の出どころまで含めて追えます。5問を解いて物足りなければ、地中送電線路 ミニテスト第2回と第3回が続きです。布設方式ごとの特徴、水トリー、シースの役割といった、計算以外の角度から問われます。
解き始める前に|5問で使う式と、単位で外しやすいところ
地中送電の計算は、式そのものは短いのに答えが合わないことが多い分野です。理由は決まっていて、式に入れる前の下ごしらえ——単位の桁、電圧が線間なのか相なのか、数えるべき本数——でずれるからです。先に対応表を置いておきます。
| 求めるもの |
式 |
外しやすいところ |
| 温度上昇 |
Δθ=W×Rth |
W は1 mあたりの発生熱。導体損は3心なら3倍、誘電体損は無負荷でも出る |
| 1相の充電電流 |
Ic=2πfCE |
E は相電圧。静電容量はµF/kmにこう長を掛けてからFに直す |
| 三相の充電容量 |
Qc=√3VIc=2πfCV2 |
V は線間電圧。√3で割るのは電圧を相へ直す1回だけ |
| 透過する電圧 |
2Z2/(Z1+Z2)×入射波 |
Z2 は「これから進む先」。どちら向きの波かで分子が入れ替わる |
| 静電容量法の距離 |
LF=(CF/CH)×L |
静電容量が長さに比例することが根拠。比なのでµFの単位は消える |
5問は、問題文に書いた条件だけで解けるようにしてあります。書いていない損失・周囲の併設ケーブル・温度の季節変動・電圧降下は考えなくてかまいません。途中の式には単位を付けたまま残しておいてください。答えが合わなかったとき、どの下ごしらえで転んだのかをそこから逆にたどれます。
第1問|380 Aを流すために、熱抵抗をいくら以下にすればよいか
3心のCVケーブル1条を単独で埋設する。導体の最高許容温度は90 ℃、基底温度は20 ℃である。誘電体損は1.0 W/m、シース損は導体損の10%、導体1条あたりの交流実効抵抗は0.14 Ω/kmとする。この線路に常時380 Aを流したい。ケーブル内部から大地までを合わせた熱抵抗を、いくら以下にすればよいか。最も近い値を選べ。
(1)約0.0010 K・m/W
(2)約1.0 K・m/W
(3)約1.15 K・m/W
(4)約1.33 K・m/W
(5)約3.0 K・m/W
正解:(2)約1.0 K・m/W。
いつもの「熱抵抗から許容電流を出す」向きを、逆にたどる問題です。先に1 mあたり何ワット発生するかを確定させてから、その熱を捨てきれる熱抵抗を求めます。
導体の抵抗は0.14 Ω/km、つまり1 mあたり1.4×10−4 Ωです。導体損は3心ぶんあります。
導体損=3×3802×1.4×10−4=3×144,400×1.4×10−4=60.6 W/m
シース損はその10%なので6.06 W/m、誘電体損は負荷に関係なく1.0 W/m。合計します。
W=60.6+6.06+1.0=67.7 W/m
使える温度上昇は 90-20=70 K。あとは Δθ=W×Rth を熱抵抗について解きます。
Rth=Δθ/W=70/67.7=約1.03 K・m/W
熱抵抗がこれ以下なら、380 Aを流しても導体は90 ℃を超えません。約1.0 K・m/Wです。
- (1)約0.0010 K・m/Wは、0.14 Ω/kmの「/km」を落として0.14 Ω/mで計算したものです。長さの桁を1,000倍取り違えたので、発生熱もそのまま1,000倍に膨れます。Ω/kmと書かれていたら、mの式に入れる前に1,000で割る。外すとしたら毎回ここです。
- (2)が正解です。
- (3)約1.15 K・m/Wは、導体損の60.6 W/mだけで割った値です(70/60.6)。シース損と誘電体損を落としているので、発生熱を少なく見積もったぶん、熱抵抗を甘く許してしまいます。誘電体損は電流が流れていなくても出続ける熱で、地中ケーブルではこれを無視できません。
- (4)約1.33 K・m/Wは、基底温度の20 ℃を引き忘れ、90 Kまるごと使えるとしたものです(90/67.7)。周りの土がすでに20 ℃あるのだから、こちらの持ち分は70 Kしか残っていません。
- (5)約3.0 K・m/Wは、3心ぶんの3倍を忘れて導体損を20.2 W/mとしたものです。3心ケーブルは導体が3本あり、3本とも発熱します。
この向きで解くと、熱抵抗が「設計で動かせる値」だということがはっきりします。ケーブルの型番を変えなくても、埋設の深さ、まわりに何条並べるか、埋め戻しの土をどうするか、暗きょなら換気を入れるかで、この値は動きます。逆にいえば、同じケーブルでも土が乾けば熱抵抗が上がり、この不等式が成り立たなくなって電流を絞ることになります。日本電気技術者協会の資料も、地中ケーブルの許容電流について、隣に並べたケーブルの影響が大きいこと、埋めた先の土壌がどんな熱の伝え方をするかで値が大きく動くことを挙げています。ここで求めた熱抵抗が、その影響の入り口にあたります。
なお、ここで扱っているのは常時の許容電流です。短絡のような一瞬の話は、熱を捨てるひまがないので導体の熱容量だけで決まり、はるかに高い温度まで許されます。決まり方からして別物なので、混ぜて覚えないでください。
第2問|電圧をかけただけの線路が飲み込む、三相の充電容量
使用電圧66 kV、こう長15 kmのCVケーブル線路がある。1相あたりの作用静電容量は0.24 µF/km、周波数は60 Hzである。負荷をつながずに電圧だけをかけたとき、この線路が消費する三相ぶんの充電容量に最も近いのはどれか。
(1)約0.39 MVA
(2)約3.4 MVA
(3)約4.9 MVA
(4)約5.9 MVA
(5)約10.2 MVA
正解:(4)約5.9 MVA。
静電容量を先に線路1相ぶんへまとめます。0.24×15=3.6 µF。続いて相電圧を出します。
E=66,000/√3=38,105 V
1相に流れる充電電流は、この相電圧を使います。
Ic=2πfCE=2π×60×3.6×10−6×38,105=1.357×10−3×38,105=約51.7 A
三相ぶんに直すときは、いま使った相電圧ではなく線間電圧のほうを持ってきます。
Qc=√3VIc=√3×66,000×51.7=約5.9 MVA
相電圧と線間電圧を1回ずつ使うので、心配なら Qc=2πfCV2 でまとめて検算できます。2π×60×3.6×10−6×66,0002=1.357×10−3×4.356×109=5.91×106 で、同じ値です。この式に√3が出てこないのは、相電圧で割った√3と三相で掛けた√3が打ち消し合うからで、暗記ではなく計算の結果です。
- (1)約0.39 MVAは、こう長の15 kmを掛けずに C=0.24 µFで押し切った値です。単位に付いている「/km」を読み飛ばすと、答えはきっちり15分の1になります。
- (2)約3.4 MVAは、V×Ic=66,000×51.7 として、三相の√3を掛け忘れたものです。単相の式のまま止まっています。正解の√3分の1になっていることに気づけば、掛け忘れだと分かります。
- (3)約4.9 MVAは、50 Hzで計算した値です(5.9×50/60)。充電容量も充電電流も周波数に比例するので、同じケーブルでも東日本と西日本で1.2倍違います。問題文の周波数は必ず読んでください。
- (4)が正解です。
- (5)約10.2 MVAは、充電電流を出すときに線間電圧66,000 Vをそのまま入れて Ic=89.6 Aとしたものです。相電圧へ直す√3を落としているので、正解の√3倍になります。
この5.9 MVAは、荷物を1 kWも運んでいない状態で線路が飲み込んでいる無効電力です。同じ電圧・同じこう長を架空送電線でつくった場合、作用静電容量は0.01 µF/km前後にしかなりません。ケーブルでは導体のすぐ外、絶縁体1枚を隔てた数mmのところに金属遮蔽層があります。相手が近いほど静電容量は大きくなるので、電線どうしが数m離れている架空とは桁が変わります。
そして、この差がそのまま送電距離の制限になります。充電電流はこう長に比例して増えるので、同じケーブルを倍の距離引けば充電電流も倍。導体を通れる電流には第1問で見た熱の上限があるのだから、その一部を荷物を運ばない電流に先取りされる格好になります。負荷が軽い時間帯に受電端のほうが電圧が高くなってしまうフェランチ効果も、この進み電流の大きさから来ています。打ち消すには、遅れ電流を流す分路リアクトルを線路に入れます。
もうひとつ、第1問とのつながりも見ておいてください。誘電体損の大きさは、充電容量に誘電正接(tanδ)を掛けた形で決まります。つまり静電容量の大きい線路は、電流をほとんど流していない時間帯にも余分に温まっている。熱と静電容量は別々の話に見えて、絶縁体をはさんで導体と遮蔽層が近いという、ひとつの構造から出てきています。
第3問|布設方式について、正しく述べているのはどれか
地中電線路の布設方式に関する記述として、最も適切なものはどれか。
(1)直接埋設式は、道路を掘り返さずにケーブルの引替えができるので、将来の増設を見込むルートに向く。
(2)管路式は、将来の所要回線数に応じた条数の管をあらかじめ布設し、200〜400 m程度ごとに設けた地中箱からケーブルの引入れ・引抜き・接続を行う。
(3)暗きょ式は建設費が最も安いので、回線数の少ないルートで第一に検討される。
(4)直接埋設式の埋設の深さは、車道など重量物の圧力を受ける場所のほうが、その他の場所より浅くてよい。
(5)暗きょ式は人が立ち入れる空間なので、ケーブルの防火に関する措置は不要である。
正解:(2)。
布設方式は「安い順に並べて覚える」とかえって選べなくなります。実際に効くのは何回線いるか、この先増やす予定があるか、掘り返しやすい道か、熱がどれだけ逃げるかのほうで、値段はその結果としてついてきます。(2)は管路式の性格をそのまま述べたものです。管をあらかじめ必要な条数だけ並べておき、ケーブルは後から管の中を通す。だから増設のときも引替えのときも、地中箱と地中箱のあいだは掘らずに済みます。
- (1)は、管路式の長所を直接埋設式のものとして書いたものです。直接埋設式はトラフごとケーブルを土に埋めるので、引替えにも修理にも道路の掘削が伴います。日本電気技術者協会の資料も、この方式が向くのは条数が1〜3回線と少なく、増設の計画がなく、事故復旧や引替えのための掘削が比較的容易なルートだとしています。増設を見込むなら選ばない方式です。
- (2)が正解です。同じ資料には管の太さも載っていて、3心ケーブルを通すならφ100〜150 mm、単心を3条まとめて1孔へ引き入れるならφ200〜300 mmとされています。
- (3)は、値段の順が逆です。暗きょ式は建設費が最も高い方式で、選ばれるのは安いからではありません。条数を多く入れても1条あたりの送電容量が落ちにくく、防護の面でも有利なため、超高圧の線路や大都市の重要幹線で選ばれます。近ごろはシールド工法でつくる円形断面の洞道が増えました。
- (4)は、大小が逆です。直接埋設式の埋設の深さ(路面から埋設物の上面まで)は、重量物の圧力を受ける車道などで1.2 m以上、それ以外の場所では0.6 m以上と示されています。重い荷重がかかるところほど深い、という向きです。この寸法を決めているのは省令ではなく、経済産業省の「電気設備の技術基準の解釈」のほうになります。
- (5)は、結論が正反対です。人が入れる空間であることは、そのまま火災時の危険の大きさになります。省令第47条第2項は、地中電線路のうちその内部で作業が可能なものには防火措置を講じなければならないと定めています。現場では、難燃性の被覆を持つケーブルを使う、難燃塗装を施す、自動消火装置を設ける、といった形で対応します。
ついでに、管路式の地中箱(マンホール)についても押さえておいてください。水が入りにくく、たまり水を排除でき、蓋は施設者以外が容易に開けられない構造にすること。そして爆発性のガスが侵入するおそれのある1 m3以上のものには通風装置などの発散装置を設けること。閉じた地下空間へ人が降りていく以上、感電より先に酸素とガスを確かめる、という優先順位がここに出ています。
もうひとつ、どの方式にも共通するものとして、埋めた場所を地上から分かるようにする表示があります。管路式では、管の上部にビニルシートなどで約2 mごとに「高電圧線路」「管理者名」「埋設年」を表示するとされ、これは布設後の外傷事故を防ぐための、どの方式にも共通した事項だと説明されています。ケーブルを止めるのは過負荷より先に、そこに何が埋まっているかを知らない工事のほうだと考えておくと、法令が埋設表示を求める理由がつながります。
第4問|ケーブルから架空送電線へ抜けるとき、サージ電圧はどうなるか
サージインピーダンスが30 Ωのケーブル区間と、400 Ωの架空送電線が接続されている。いま、ケーブル区間を200 kVの進行波が伝わってきて、この接続点に達した。架空送電線側へ進む電圧に最も近いのはどれか。反射の繰り返しは考えないものとする。
(1)約28 kV
(2)約172 kV
(3)約186 kV
(4)200 kV
(5)約372 kV
正解:(5)約372 kV。入射波より大きくなります。
透過係数の Z2 は「これから波が進んでいく先」のインピーダンスです。今回はケーブルから架空線へなので、Z1=30 Ω、Z2=400 Ωになります。
透過係数=2Z2/(Z1+Z2)=2×400/430=800/430=約1.86
架空線へ進む電圧=200×1.86=約372 kV
係数が1を超えました。反射係数も見ておくと、この値が変ではないことが確かめられます。
反射係数=(Z2-Z1)/(Z2+Z1)=(400-30)/430=+0.86
接続点の電圧=入射波+反射波=200+200×0.86=200+172=372 kV
どちら側から数えても372 kVになりました。1つの接続点に2通りの電圧があってはならないのだから、ここは一致しないほうがおかしい。係数の形をうろ覚えでも、この突き合わせで自分の式を点検できます。
- (1)約28 kVは、Z1 と Z2 を取り違えて、架空線からケーブルへ入るときの係数 2×30/430=0.14 を掛けた値です。同じ接続点でも、どちら向きに波が進むかで答えは13倍違います。「地中は雷に強い」という印象だけで式を当てはめると、この向きを取り違えます。
- (2)約172 kVは、反射波の大きさ(200×0.86)です。これはケーブル側へ跳ね返っていく波であって、架空線側へ進む波ではありません。ただし上の検算で使ったとおり、入射波と足せば正解になります。
- (3)約186 kVは、係数の2を落として 400/430=0.93 を掛けたものです。分子の2がないと透過係数は必ず1より小さくなるので、この式のままでは「進む波は必ず小さくなる」という誤った結論しか出てきません。
- (4)200 kVは、「透過波が入射波より大きくなるはずがない」と考えて、そのまま通り抜けたとした値です。透過係数が1になるのは Z1=Z2 のとき、つまり接続点で何も変わらないときだけです。
- (5)が正解です。
電圧が上がるのに、エネルギーは増えていません。進行波では電圧と電流の比がサージインピーダンスに等しいので、インピーダンスの大きい架空線側では電圧が上がるかわりに電流が下がります。行き止まり(開放端)で電圧が2倍になるのと同じ理屈の、途中の段階だと考えてください。Z2 が Z1 よりずっと大きいとき、透過係数は2に近づきます。
実務でよく問われるのは逆向き、つまり架空送電線に落ちた雷がケーブルへ入ってくる場合です。日本電気技術者協会の資料は、電力ケーブルのサージインピーダンスを30 Ω程度、架空電線を約400 Ωとしています。この向きなら係数は約0.14で、電圧は7分の1程度に下がる。ただしケーブルに入った波が開放端や変圧器で反射を繰り返すうちに、条件によっては元の電圧より大きくなることがあるとも注意しています。ただし減衰もあるため、1 km以上の長さがあれば入ってきた波を上回ることはないとも書かれています。裏を返せば、短い区間ほど反射の往復が速く重なるということです。対策は接続点への避雷器の設置になります。
架空側が雷をどう受け止めているのか——架空地線の遮蔽角、雷電流が通る塔脚の接地抵抗、逆フラッシオーバの成立条件——は、架空送電線路の解説記事のほうで数字にしています。上で受けきれなかったものが、この接続点から下へ入ってくる。その順に並べて覚えると迷いません。
第5問|断線した相の故障点までの距離を、静電容量から出す
こう長3.0 kmのCVケーブル線路で、1相が断線を伴う事故を起こした。故障相は途中で切れているため相手端で短絡できず、マーレーループ法ではループを作れない。そこで測定端で対地静電容量を測ったところ、健全相は0.72 µF、故障相は0.30 µFであった。測定端から断線点までの距離に最も近いのはどれか。ケーブルの太さは全長で同じものとする。
(1)約880 m
(2)約1,250 m
(3)約1,750 m
(4)約2,500 m
(5)約7,200 m
正解:(2)約1,250 m。
式を覚えていなくても導けます。ケーブルの導体と金属遮蔽層のあいだの静電容量は、長さに比例して増えます。健全相は全長3.0 kmぶんの静電容量を持ち、断線した故障相は測定端から断線点までのぶんしか持たない。だから静電容量の比が、そのまま長さの比になります。
LF=(CF/CH)×L=(0.30/0.72)×3,000=0.4167×3,000=1,250 m
検算はすぐできます。0.72 µFが3.0 kmぶんなら1 kmあたり0.24 µF。故障相の0.30 µFはその1.25 kmぶん、というだけの話です。3,000 mを超える答えが出た時点で、どこかで式を取り違えています。
- (1)約880 mは、CF/CH ではなく CF/(CF+CH) を掛けた値です(0.30/1.02×3,000)。比べる相手は「全長ぶんの静電容量」なのだから、分母は健全相の0.72 µFだけです。足してしまうと、ありもしない長さを分母に入れることになります。
- (2)が正解です。
- (3)約1,750 mは、(CH-CF)/CH×3,000 として、断線点から相手端までの残りの距離を出したものです。計算そのものは合っていて、聞かれている向きが違います。3,000-1,250=1,750 mですから、正解と足すとこう長になります。問題文が測定端からの距離を聞いているのか、相手端からなのかは必ず読んでください。
- (4)約2,500 mは、マーレーループ法と混同して係数の2を掛けたものです。2が要るのは、健全相と故障相をつないだループが行って帰ってくるからで、静電容量の比較にはループが出てきません。測っているのは片道の長さそのものです。
- (5)約7,200 mは、比を逆にして CH/CF×3,000 としたものです。こう長3.0 kmの線路で7,200 mという答えが出た時点で、比の向きが逆だと気づけます。静電容量が小さいほうが短い、という当たり前の関係で確かめてください。
測定するときの要点がひとつあります。測定端でも相手端でも、測る相以外はすべて接地しておくことです。余計な静電容量が混ざると比がずれます。この方法は2本を比べる測定なので絶対精度はあまり要求されません。故障点の地絡抵抗も、100 Ω以上あれば実用上は測れるとされています。途中で太さの違うケーブルがつながっている線路では、それぞれの標準静電容量を使って補正します。
3つある測定法のどれを使うかは、断線しているかどうかと、地絡抵抗がどれくらい残っているかの2点で決まります。
| 測定法 |
使える場面 |
距離の出し方と注意 |
| マーレーループ法 |
断線を伴わない地絡・短絡。健全相が残っていることが条件 |
x=2L×a/(a+b)。ホイートストンブリッジの変形で、測定精度は1%以下。太さが違えば1種に換算する |
| 静電容量法 |
断線していて、健全相でループが作れないとき |
LF=(CF/CH)×L。測る相以外を両端で接地する。地絡抵抗100 Ω以上で実用可 |
| パルス法 |
断線で故障抵抗が小さい場合(低圧パルス法)、地絡抵抗が極めて大きく炭化が困難な場合(放電検出法) |
反射が返るまでの時間から出す。高度な測定器と技術が要り、故障点の波動インピーダンスがケーブルに近づくと原理的に測定不能になる |
マーレーループ法の側も一度導いておくと、係数の2で迷わなくなります。こう長 L、測定端から故障点までを x、1 mあたりの抵抗を r とすると、ループの全長は2L。目盛 a、b で平衡したとき a/b=rx/{r(2L-x)} から x=2L×a/(a+b) が出てきます。r が分子にも分母にも現れて消えてしまうので、ケーブルが太かろうが細かろうが答えは変わりません。目盛の比だけで距離が出るのは、このためです。
5問を通して残ること
- 許容電流の計算はどちら向きにも解ける。熱抵抗から電流を出すのも、流したい電流から熱抵抗の上限を出すのも、Δθ=W×Rth の同じ一行から出てくる。
- 発生する熱は導体損・シース損・誘電体損の3つ。導体損は3心なら3本ぶん、誘電体損は電流が流れていなくても出続ける。ひとつ落とすと熱抵抗を甘く見積もる。Ω/kmはmの式に入れる前に1,000で割る。
- 充電電流は相電圧で計算し、充電容量は線間電圧で仕上げる。√3で割るのは1回だけ。Qc=2πfCV2 で検算できる。周波数に比例するので50 Hzと60 Hzで1.2倍違う。
- 布設方式は値段の順では選べない。効くのは回線数・増設の予定・掘り返しやすさ・熱の抜けやすさのほう。管路式は掘らずに引替えができ、暗きょ式は最も高いが多条数と防護に強く、直接埋設は条数が少なく増設予定のないルート向き。
- 透過係数の Z2 はこれから進む先。ケーブル→架空では1を超えて電圧が上がり、架空→ケーブルでは0.14程度まで下がる。入射波+反射波=透過波で必ず検算する。
- 故障点測定は事故の型で選ぶ。非断線ならマーレーループ法、断線なら静電容量法。どちらも答えがこう長を超えたら計算違い。
次に読むところ
出典・公式資料の確認先
許容電流を何が縛るのか、布設方式の寸法、サージインピーダンスの目安、故障点測定の使い分け、法令が求めていること。この5つは、次の資料で中身を確かめたうえで書いています。ただし問題の設定、25の選択肢、計算に入れた数字、2つの表は、いずれもこのページ用に組み立てたものです。引用元の問題や図表を写したものではありません。
- 「地中ケーブルの許容電流(I)」/日本電気技術者協会 第1問の背景。許容電流が隣接するケーブルの影響を強く受けること、土壌の熱特性しだいで値が動くこと、基準になる周囲温度を普通土壌で25 ℃に取ること、発熱が導体損・誘電体損・シース損に分かれることが書かれています。
- 「地中電線路の布設方式」/日本電気技術者協会 第3問の根拠。管路式が将来の所要回線数に応じた条数で布設され、地中箱の間隔が200〜400 m程度であること、管の太さ、直接埋設式が向くルートの条件と埋設の深さ、暗きょ式の防護性と難燃化、地中箱の構造と通風装置、そして約2 mごとの埋設表示までを、この1ページで確認できます。
- 「電力ケーブルの故障点簡易測定法」/日本電気技術者協会 第5問の根拠。マーレーループ法がホイートストンブリッジの変形で、精度が1%以下であること、健全相が要るので全心線が切れていると使えないこと、そのときに静電容量計で対地静電容量を測ること、測る相以外を両端で接地すること、100 Ωという地絡抵抗の目安、パルス法を使う場面とその限界が載っています。なお本文の2つの式は、抵抗も静電容量も長さに比例することから自分で導いた形にしてあります。
- 「送電線の雷異常電圧とその対策」/日本電気技術者協会 第4問の根拠。サージインピーダンスを電力ケーブルで30 Ω程度、架空電線で約400 Ωと見ること、ケーブル内で反射が繰り返されると入ってきた波より高くなる場合があること、その一方で減衰があるため一定の長さ以上なら超えないことが説明されています。
- 「電力ケーブルの静電容量と諸計算」/日本電気技術者協会 第2問で相電圧を使う理由の背景。各相が遮蔽されているケーブルには線間の静電容量がなく、対地静電容量だけで作用静電容量が決まることが説明されています。
- 「電気設備に関する技術基準を定める省令」/e-Gov法令検索 第3問の(5)の根拠。地中電線にケーブルを求める第21条第2項、地中箱の第23条第2項、埋設の表示と防火措置の第47条を、この画面で最新の条文のまま読めます。省令は改正されるので、条文は必ずここで確かめてください。
- 過去の問題と解答の公開ページ/電気技術者試験センター 本番の与えられ方を見る場所。同じ充電電流でも、静電容量をµF/kmで渡されるのか寸法から出させるのか、選択肢をどれくらいの幅で刻むのかは、出題した機関そのものの原文を見るのがいちばん早いと思います。
上の資料を開いて確かめたのは2026年9月9日です。5問に置いた導体抵抗・誘電体損・シース損の割合・作用静電容量・こう長・使用電圧・進行波の大きさ・静電容量の測定値は、計算の手順を追うために設定した数字であって、どこかの線路の実際の値ではありません。導体の最高許容温度90 ℃は架橋ポリエチレン絶縁で広く使われている値、基底温度・埋設の深さ・管の太さ・サージインピーダンスは上の資料が挙げている値を借りています。現場で使える許容電流や布設の条件は、ケーブルの規格、まとめて埋める条数、土の状態、電圧の階級、そしてそのとき有効な法令と電力会社の規程が決めるものです。問題を解くときは、その問題文に書かれた条件だけを根拠にしてください。
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