磁界の回転、軸の回転、回転子電流の変化は、それぞれ別の速さです。誘導電動機の計算では、求めた数字がどれを表すかまで確かめましょう。構造の問題では、磁束の通り道と電流の通り道を分けて考えます。
この回は、極数の判定、すべりの逆算、巻線形の回路、かご形の速度変更、鉄心と導体の役割を5問で演習します。自分の答えを決めてから「解答を見る」を押すと、選ばなかった選択肢の理由も確認できます。
問題・数値・選択肢は当サイトで独自に作成した学習用の設定です。各問は別の電動機を扱います。原理から読み直したい場合は、誘導電動機の原理と構造を参照してください。
最初に区別する3つの量
外側の動かない巻線が固定子巻線、軸と一緒に回る側が回転子です。固定子を一次側、回転子を二次側とも呼びます。電源周波数 f は固定子へ加える交流の周波数 [Hz]、p はN極とS極を合わせた極数です。
| 求める量 | 意味・単位・関係 |
|---|---|
| 同期速度 Ns |
回転磁界が回る速さ [min−1]。 Ns=120f/p |
| 回転速度 N |
軸の回る速さ [min−1]。 N=(1−s)Ns |
| 二次周波数 f2 |
回転子上での起電力・電流の周波数 [Hz]。 通常の電動運転では f2=sf。 |
すべり s は (Ns−N)/Ns で定義する無次元の比です。min−1 は1分間の回転数を表し、r/minやrpmも同じ意味で使われます。軸の毎秒の回転数を求めるには N を60で割りますが、それがそのまま二次周波数になるわけではありません。
以下は平衡三相の基本波で考え、回転子へ別の電源を加える方式は扱いません。回転速度は磁界と同じ方向を正とします。通常の電動運転の範囲は 0<s<1。外力で同期速度より速く回る場合はすべりが負になり、二次周波数の大きさには |s|f を使います。
第1問|磁界の一周から極数を読む
三相誘導電動機の基本波の回転磁界について、あるN極の位置を連続して追うと、電源の5周期で機械的に一周した。電源周波数が45 Hzのとき、極数と同期速度の組合せとして正しいものはどれか。
同期速度の単位はmin−1。回転子の実測速度ではなく、磁界の回る速さを求める。
- (1)5極・540 min−1
- (2)10極・9 min−1
- (3)10極・270 min−1
- (4)10極・540 min−1
- (5)2極・2,700 min−1
第2問|二次周波数と軸速度から逆算する
ある三相誘導電動機を60 Hzで通常の電動運転にしたところ、軸の回転速度は1,170 min−1、回転子電流の周波数は1.5 Hzだった。すべりと極数の組合せとして正しいものはどれか。
測定値は正確とし、すべりは百分率ではなく小数で示す。
- (1)すべり0.975・6極
- (2)すべり0.025・6極
- (3)すべり0.025・4極
- (4)すべり2.5・6極
- (5)すべり0.025・12極
第3問|起電力があっても電流が流れない回路
巻線形三相誘導電動機の回転子を停止させ、固定子へ平衡三相交流を加える。回転子の三相巻線はY結線で、スリップリングから出る3端子をすべて開放している。回転子巻線に別の電源は接続しない。
巻線に誘導される起電力と電流による基本波トルクだけを考え、寄生容量・鉄心の渦電流などの影響は無視する。このとき正しい説明はどれか。
- (1)回転子が止まっているので、巻線の誘導起電力はゼロである。
- (2)回転子巻線のY結線の共通点だけで閉回路になるため、三相電流が流れる。
- (3)二次側が開いている以上、一次側にも磁界を作る電流は流れない。
- (4)スリップリングは交流を直流へ整流するため、開放中も直流トルクが生じる。
- (5)回転子巻線に起電力は生じるが、電流が流れず、その電流によるトルクは生じない。
第4問|かご形をインバータで運転する
6極のかご形誘導電動機で送風機を回している。インバータが固定子へ供給する基本波の周波数を36 Hzから48 Hzに変えた。変更前後とも定常状態のすべりは0.025で、極数と相順は変えないものとする。
電圧は運転に適するよう調整されている。変更後の軸の回転速度 [min−1] はどれか。
- (1)702
- (2)720
- (3)936
- (4)942
- (5)960
第5問|鉄心は絶縁して重ね、導体棒はつなぐ理由
かご形誘導電動機の構造図には、薄い電磁鋼板を絶縁して重ねた鉄心と、両端を短絡環でつないだ回転子の導体棒が描かれていた。「電流を流れにくくする部分」と「電流の経路を確保する部分」がある理由として、正しい説明はどれか。
- (1)鉄心内の渦電流による損失を抑えつつ、導体棒にはトルクを生む誘導電流を流すため。
- (2)積層鉄心によって、回転子の導体棒の電流も完全にゼロにするため。
- (3)短絡環から、ブラシを通して導体棒へ直流を供給するため。
- (4)鉄心を流れる渦電流の発熱だけで軸を回し、導体棒は補強材として使うため。
- (5)鋼板間を絶縁すると主磁束も完全に遮断されるので、空隙だけに磁束を通すため。
解き終えた後の整理表
| 区別する点 | 答えを確かめる手順 |
|---|---|
| 極数と 極対数 |
一周の周期数は極対数。N極とS極を合計すると極数。 |
| すべりと 軸速度の比 |
すべりは速度差/同期速度。軸速度/同期速度は1−すべり。 |
| 起電力と 電流 |
磁束変化があっても、回路が開いていれば巻線電流は流れない。 |
| 二次抵抗と 周波数制御 |
回転子回路へ抵抗を挿入する方法と、固定子の電源を変える方法を分ける。 |
| 鉄心と 導体棒 |
鉄心は磁束の通り道。導体棒と短絡環は、トルクを生む電流の通り道。 |
正答数だけでなく、第2問は測定値を再現できたか、第3問は電流の輪を説明できたか、第4問は「割合一定」と「速度差一定」を区別できたかを振り返ってください。
復習と次の演習
- 親記事で復習:誘導電動機の原理と構造。第1問は極対数と同期速度、第2問はすべりと二次周波数、第3〜5問は回転原理と回転子構造の節が対応します。
- 追加の5問:原理と構造ミニテスト第2回、第3回。別の設問で確認を続けられます。
- 前のテーマ:変圧器の等価回路と計算と、変圧器の等価回路と計算ミニテスト第1回。励磁電流や一次・二次の関係を復習できます。
- 次のテーマ:誘導電動機の特性と計算と、誘導電動機の特性と計算ミニテスト第1回。すべりを用いた損失・出力やトルクの計算へ進みます。
解説の確認先
式と構造の根拠は次の一次資料で確認しました。資料中の問題や図の転載はせず、このページの数値設定から独自に計算しています。
- 日本電気技術者協会「誘導機の巻線配置と回転磁界」:極対数と磁界の一周、電源周波数と同期速度の関係。第1問の確認先。
- 同協会「誘導電動機の基本原理、アラゴの円板、等価回路、主な構造」:二次周波数とすべり、回転子開放時の電流、巻線形の接続。第2問・第3問の確認先。
- 同協会「誘導電動機の始動方法、速度特性、制動方法」:二次抵抗による制御と電源周波数による制御。第4問の確認先。
- 同協会「三相誘導電動機の回転原理」:導体の閉回路、かご形回転子の導体棒と短絡環。第5問の確認先。
- 日鉄テクノロジー「電磁鋼板の特性評価」:鉄心の薄板化・絶縁・積層と渦電流損失の関係。第5問の鉄心側の確認先。
- 日本電気技術者協会「誘導電動機の単相誘導電動機、誘導発電機」:外力で同期速度を超えて回す場合の原理。冒頭で示した通常の電動運転との区別の確認先。
2026年10月11日確認・改訂。5問を新作し、全選択肢の理由を追加しました。本ページは独自の学習教材で、公式の試験問題ではありません。
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